26 / 28
困った時の陽キャ
しおりを挟む
「大人のデート、しようか?」
大人のデート、とは?
そ、それは、お酒を飲んでそのままホテルへ……みたいなヤツ!?
京平さんにハグされたまま、僕はブンブン顔を横に振った。
「ん?大人のデートは嫌?じゃあ、春澄が決めたデートしよう。それならいい?」
まだ、そっちの方がマシだ。
僕は小さく頷いた。
「やった!じゃあ、次の土曜日。休みを絶対もぎ取るから、デートのプランよろしくね?」
京平さんはもう一度ぎゅっとハグし、頬にチュッとキスをする。
「これくらいはいい?唇は、ちゃんと許可とるから。デート、楽しみにしてる。疲れただろ?今日はもう休んで。私は残りの仕事するから」
そう言い残すと、自室に戻っていった。
僕は一人リビングでぽーっとしていた。
展開に、思考がついていかない。
この、怒涛の展開、何……?
陽キャ王子の京平さんが僕のことを好きで、今度デートする?
この、デートなんか架空の物語でしか知らない陰キャが!?
無理だ。
なんで、デートするなんて言っちゃったんだ!
大人のデートしようとか言われて、パニクったせいだ。
……ん?
もしかして、京平さんの罠にはまった??
……ヤラレタ。
でも、今さらなかったことにして下さいって部屋に言いに行っても軽くいなされることは分かってる。
どうしよう……。
デートのプランなんか無理だよ。
……よし。
仕事をしている京平さんに気づかれないように、そーっとマンションを出る。
行き先は……。
ピンポーン。
ピンポーン。
出ないな。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピン「うるっせぇな!!」
「来ちゃった」
僕は満面の笑みを浮かべた。
そんな僕を出迎えた鬼……の形相の元ちゃんは僕を見ると舌打ちした。
「何しに来た」
冷たい……。
「元気だった?入ってもいい?合鍵持ってるけど、彼女とか来てたらまずいかなーと思ってー」
えへへと愛想笑いをしながら入ろうとするも、元ちゃんが微動だにしない。
「何しに来た」
こっわっ。
めちゃめちゃ声が低いんですけど?
寝起き?
「と、とりあえず入らせて?」
「……お前、まさか先輩の所から逃げてきたんじゃねぇだろうな?」
「違うよ!」
「……まさか、クビか?」
「違うよ!!」
失礼な!
仲良くやってるわ!
……いや、それが違う方向にいきそうだから相談しに来たのに……。
僕にデートなんて無理だし、そんな相談できるのは元ちゃんだけだし。
元ちゃんは不機嫌そうなまま、ようやく部屋に入れてくれた。
が。
「ちょっ……きったなっ!!」
元ちゃんの部屋は、彼女が来てるどころか汚部屋と化していた。
「仕方ねーだろ。コンビニは忙しいし、人手は足りないし。もう事務所で寝泊まりしてやろーかと思うわ。……そうだ、春澄。せっかく来たんだから、掃除していけ」
「え、え~~~」
不満の声を漏らすと、鬼……いや、元ちゃんは笑顔で「分かったな?」と念押しして、シャワーを浴びにいった。
うぅ。
仕方ない、と掃除を始める。
テーブルの上のコンビニ弁当を片付けながら、ここで暮らしてコンビニで働いていた日々を懐かしく思い出していた。
自分にとってはそれが日常で、京平さんと暮らすことが非日常だったのに。
今では、すっかり逆転してしまった。
ココには相談しに来ただけ、遊びに来た感覚だ。
帰るのは、京平さんと住んでいるあのマンション。
自分の中の変化に驚いていると、元ちゃんが半裸で浴室から出てくる。
「おい、ぼーっとしてないでキリキリ動け」
横暴!
そう言いたい所をぐっと堪え、缶ビールやらワインボトルやらを分別しながらテーブルを片付けていると、タオルで髪を乱雑に拭きながらソファーに座った元ちゃんが「で?」と促す。
「なんか、あって来たんだろ?」
さすがです!
大人のデート、とは?
そ、それは、お酒を飲んでそのままホテルへ……みたいなヤツ!?
京平さんにハグされたまま、僕はブンブン顔を横に振った。
「ん?大人のデートは嫌?じゃあ、春澄が決めたデートしよう。それならいい?」
まだ、そっちの方がマシだ。
僕は小さく頷いた。
「やった!じゃあ、次の土曜日。休みを絶対もぎ取るから、デートのプランよろしくね?」
京平さんはもう一度ぎゅっとハグし、頬にチュッとキスをする。
「これくらいはいい?唇は、ちゃんと許可とるから。デート、楽しみにしてる。疲れただろ?今日はもう休んで。私は残りの仕事するから」
そう言い残すと、自室に戻っていった。
僕は一人リビングでぽーっとしていた。
展開に、思考がついていかない。
この、怒涛の展開、何……?
陽キャ王子の京平さんが僕のことを好きで、今度デートする?
この、デートなんか架空の物語でしか知らない陰キャが!?
無理だ。
なんで、デートするなんて言っちゃったんだ!
大人のデートしようとか言われて、パニクったせいだ。
……ん?
もしかして、京平さんの罠にはまった??
……ヤラレタ。
でも、今さらなかったことにして下さいって部屋に言いに行っても軽くいなされることは分かってる。
どうしよう……。
デートのプランなんか無理だよ。
……よし。
仕事をしている京平さんに気づかれないように、そーっとマンションを出る。
行き先は……。
ピンポーン。
ピンポーン。
出ないな。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピン「うるっせぇな!!」
「来ちゃった」
僕は満面の笑みを浮かべた。
そんな僕を出迎えた鬼……の形相の元ちゃんは僕を見ると舌打ちした。
「何しに来た」
冷たい……。
「元気だった?入ってもいい?合鍵持ってるけど、彼女とか来てたらまずいかなーと思ってー」
えへへと愛想笑いをしながら入ろうとするも、元ちゃんが微動だにしない。
「何しに来た」
こっわっ。
めちゃめちゃ声が低いんですけど?
寝起き?
「と、とりあえず入らせて?」
「……お前、まさか先輩の所から逃げてきたんじゃねぇだろうな?」
「違うよ!」
「……まさか、クビか?」
「違うよ!!」
失礼な!
仲良くやってるわ!
……いや、それが違う方向にいきそうだから相談しに来たのに……。
僕にデートなんて無理だし、そんな相談できるのは元ちゃんだけだし。
元ちゃんは不機嫌そうなまま、ようやく部屋に入れてくれた。
が。
「ちょっ……きったなっ!!」
元ちゃんの部屋は、彼女が来てるどころか汚部屋と化していた。
「仕方ねーだろ。コンビニは忙しいし、人手は足りないし。もう事務所で寝泊まりしてやろーかと思うわ。……そうだ、春澄。せっかく来たんだから、掃除していけ」
「え、え~~~」
不満の声を漏らすと、鬼……いや、元ちゃんは笑顔で「分かったな?」と念押しして、シャワーを浴びにいった。
うぅ。
仕方ない、と掃除を始める。
テーブルの上のコンビニ弁当を片付けながら、ここで暮らしてコンビニで働いていた日々を懐かしく思い出していた。
自分にとってはそれが日常で、京平さんと暮らすことが非日常だったのに。
今では、すっかり逆転してしまった。
ココには相談しに来ただけ、遊びに来た感覚だ。
帰るのは、京平さんと住んでいるあのマンション。
自分の中の変化に驚いていると、元ちゃんが半裸で浴室から出てくる。
「おい、ぼーっとしてないでキリキリ動け」
横暴!
そう言いたい所をぐっと堪え、缶ビールやらワインボトルやらを分別しながらテーブルを片付けていると、タオルで髪を乱雑に拭きながらソファーに座った元ちゃんが「で?」と促す。
「なんか、あって来たんだろ?」
さすがです!
0
お気に入りに追加
287
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる