陽キャの国の王子様

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困った時の陽キャ

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「大人のデート、しようか?」

大人のデート、とは?
そ、それは、お酒を飲んでそのままホテルへ……みたいなヤツ!?

京平さんにハグされたまま、僕はブンブン顔を横に振った。
「ん?大人のデートは嫌?じゃあ、春澄が決めたデートしよう。それならいい?」
まだ、そっちの方がマシだ。
僕は小さく頷いた。

「やった!じゃあ、次の土曜日。休みを絶対もぎ取るから、デートのプランよろしくね?」
京平さんはもう一度ぎゅっとハグし、頬にチュッとキスをする。
「これくらいはいい?唇は、ちゃんと許可とるから。デート、楽しみにしてる。疲れただろ?今日はもう休んで。私は残りの仕事するから」
そう言い残すと、自室に戻っていった。

僕は一人リビングでぽーっとしていた。
展開に、思考がついていかない。
この、怒涛の展開、何……?
陽キャ王子の京平さんが僕のことを好きで、今度デートする?
この、デートなんか架空の物語でしか知らない陰キャが!?

無理だ。
なんで、デートするなんて言っちゃったんだ!
大人のデートしようとか言われて、パニクったせいだ。
……ん?
もしかして、京平さんの罠にはまった??

……ヤラレタ。

でも、今さらなかったことにして下さいって部屋に言いに行っても軽くいなされることは分かってる。

どうしよう……。
デートのプランなんか無理だよ。

……よし。

仕事をしている京平さんに気づかれないように、そーっとマンションを出る。
行き先は……。

ピンポーン。
ピンポーン。
出ないな。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピン「うるっせぇな!!」

「来ちゃった」
 僕は満面の笑みを浮かべた。
そんな僕を出迎えた鬼……の形相の元ちゃんは僕を見ると舌打ちした。
「何しに来た」
冷たい……。
「元気だった?入ってもいい?合鍵持ってるけど、彼女とか来てたらまずいかなーと思ってー」
えへへと愛想笑いをしながら入ろうとするも、元ちゃんが微動だにしない。
「何しに来た」
こっわっ。
めちゃめちゃ声が低いんですけど?
寝起き?
「と、とりあえず入らせて?」
「……お前、まさか先輩の所から逃げてきたんじゃねぇだろうな?」
「違うよ!」
「……まさか、クビか?」
「違うよ!!」

失礼な!
仲良くやってるわ!
……いや、それが違う方向にいきそうだから相談しに来たのに……。

僕にデートなんて無理だし、そんな相談できるのは元ちゃんだけだし。
元ちゃんは不機嫌そうなまま、ようやく部屋に入れてくれた。

が。
「ちょっ……きったなっ!!」
元ちゃんの部屋は、彼女が来てるどころか汚部屋と化していた。
「仕方ねーだろ。コンビニは忙しいし、人手は足りないし。もう事務所で寝泊まりしてやろーかと思うわ。……そうだ、春澄。せっかく来たんだから、掃除していけ」
「え、え~~~」
不満の声を漏らすと、鬼……いや、元ちゃんは笑顔で「分かったな?」と念押しして、シャワーを浴びにいった。

うぅ。
仕方ない、と掃除を始める。
テーブルの上のコンビニ弁当を片付けながら、ここで暮らしてコンビニで働いていた日々を懐かしく思い出していた。
自分にとってはそれが日常で、京平さんと暮らすことが非日常だったのに。
今では、すっかり逆転してしまった。
ココには相談しに来ただけ、遊びに来た感覚だ。
帰るのは、京平さんと住んでいるあのマンション。
自分の中の変化に驚いていると、元ちゃんが半裸で浴室から出てくる。

「おい、ぼーっとしてないでキリキリ動け」
横暴!
そう言いたい所をぐっと堪え、缶ビールやらワインボトルやらを分別しながらテーブルを片付けていると、タオルで髪を乱雑に拭きながらソファーに座った元ちゃんが「で?」と促す。
「なんか、あって来たんだろ?」

さすがです!
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