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告げる陽キャ
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部屋に戻っても、京平さんの機嫌は悪い。
雰囲気がいつもと違う。
僕のために、わざわざ仕事を早めに切り上げて帰ってきてもらった。
申し訳ないって気持ちが湧いてくる。
リビングに着くなり、後ろにいた京平さんを振り返り、頭を下げた。
少し驚いて、目を見開く京平さんが何か言おうとしたが、それを遮って謝罪した。
「あのっ、京平さんっ。今日は僕が尚さんとパンケーキ食べるって約束したから、迷惑かけてごめんっ。次はちゃんと断るから!あのっ、お仕事の邪魔しちゃって、」
「ストップ!」
京平さんは慌てて僕の前に手のひらを広げて止める。
僕が言われた通りに黙ると、手のひらをぱんっと合わせて、頭を下げた。
「ごめんね。何度も謝らないで。春澄は何も悪くないから。私の態度が悪かったよね……尚のことを考えてたら、ちょっとイライラしちゃった……ごめん」
「いやっ、京平さんも謝らないで!僕が……」
京平さんは苦笑しながら、
「じゃあ、悪いのは尚ってことで、この話はやめよう?」
と言ってくれたけど、尚さんも悪い訳じゃあ……とちょっと僕が尚さんを庇おうとしてしまった。
すると、もっと京平さんの機嫌が悪くなる。
「……尚のこと、庇うよね……」
えっ。
「尚のこと、まさか、好きになったりしてないよね?春澄のことを気に入ってるのは本当だと思うけど、アイツはダメだよ。恋人もコロコロ変わるし、どのコに対しても本気じゃない。もちろん、仕事もできるし、悪い奴じゃないけど、好きになるのはダメ。春澄が尚に泣かされるのなんて、絶対に……」
「待って!」
今度は僕が止めた。
尚さんとのこと、めちゃめちゃ誤解してる。
「尚さんのこと、好きじゃない!いや、人としては、好き?だけど、恋愛とかじゃなくて、あの、京平さんが心配することはなくて、そもそも、尚さんも僕も男だし。いや、尚さんはカッコいいから男の人にもモテるんだろうけど、僕のことなんて……」
「可愛いよ」
「へ?」
「春澄は可愛い。だから、心配してる」
はぁー?
目、悪いのかな?
僕の、どこが?完全にモブ顔だし。
「私は?」
「え?」
「尚、春澄から見て、格好いいって。私は、どう?格好いいって、思ってもらいたい」
なっ……なに、それ。
ちょっと拗ねた感じで、いつもの泰然とした大人の京平さんじゃなくて。
僕なんかに、なんで、そんな。
顔に熱がたまる。
「可愛い」
「え?可愛いって言った?格好いいじゃなくて?」
こ、声に出してた!
「いや、いつもはもちろん、格好いい!めちゃめちゃ。でも、今の京平さんは、なんか、僕に言葉をねだる感じが……可愛いなって……」
「ふはっ」
京平さんが破顔する。
とても、幼い笑顔。
「いや、可愛いなんて初めて言われた。この歳で、まさか可愛いなんて言われるとは……」
さっきまでの、子供みたいな笑顔から一転、大人の色気を滲ませた笑顔になる。
この、振り幅は何!?
僕はオドオドと視線を彷徨わせる。
京平さんは一歩僕に近づくと、そっと僕の両手を握る。
驚いて見上げた僕の目を、京平さんの目が捕らえる。
「春澄といると、驚くことばかりだ。人のデートに割り込んだのも初めてだし、盗られたくないって思ったのも初めて。……実は、尚が私の恋愛相手にちょっかい出すのはよくあることなんだ。まぁ、恋愛相手といっても、お付き合いしたいって私にアピールしてきた相手に、だけどね。でも、私から尚に乗り換えたらすぐに興味をなくす。今までは、特に相手に興味もなかったし、その程度の気持ちなんだろうなって冷めた感情しか持たなかったけど、春澄には違った。尚に……いって欲しくなかった。さっきは、尚のせいにして、相手がアイツだからダメみたいに言ったけど、違う。どんな相手でも、ダメ。春澄の一番近くにいるのは……私がいい」
京平さんの、真剣な眼差し。
心臓が、壊れたみたいに早鐘を打つ。
「好きだ、春澄」
雰囲気がいつもと違う。
僕のために、わざわざ仕事を早めに切り上げて帰ってきてもらった。
申し訳ないって気持ちが湧いてくる。
リビングに着くなり、後ろにいた京平さんを振り返り、頭を下げた。
少し驚いて、目を見開く京平さんが何か言おうとしたが、それを遮って謝罪した。
「あのっ、京平さんっ。今日は僕が尚さんとパンケーキ食べるって約束したから、迷惑かけてごめんっ。次はちゃんと断るから!あのっ、お仕事の邪魔しちゃって、」
「ストップ!」
京平さんは慌てて僕の前に手のひらを広げて止める。
僕が言われた通りに黙ると、手のひらをぱんっと合わせて、頭を下げた。
「ごめんね。何度も謝らないで。春澄は何も悪くないから。私の態度が悪かったよね……尚のことを考えてたら、ちょっとイライラしちゃった……ごめん」
「いやっ、京平さんも謝らないで!僕が……」
京平さんは苦笑しながら、
「じゃあ、悪いのは尚ってことで、この話はやめよう?」
と言ってくれたけど、尚さんも悪い訳じゃあ……とちょっと僕が尚さんを庇おうとしてしまった。
すると、もっと京平さんの機嫌が悪くなる。
「……尚のこと、庇うよね……」
えっ。
「尚のこと、まさか、好きになったりしてないよね?春澄のことを気に入ってるのは本当だと思うけど、アイツはダメだよ。恋人もコロコロ変わるし、どのコに対しても本気じゃない。もちろん、仕事もできるし、悪い奴じゃないけど、好きになるのはダメ。春澄が尚に泣かされるのなんて、絶対に……」
「待って!」
今度は僕が止めた。
尚さんとのこと、めちゃめちゃ誤解してる。
「尚さんのこと、好きじゃない!いや、人としては、好き?だけど、恋愛とかじゃなくて、あの、京平さんが心配することはなくて、そもそも、尚さんも僕も男だし。いや、尚さんはカッコいいから男の人にもモテるんだろうけど、僕のことなんて……」
「可愛いよ」
「へ?」
「春澄は可愛い。だから、心配してる」
はぁー?
目、悪いのかな?
僕の、どこが?完全にモブ顔だし。
「私は?」
「え?」
「尚、春澄から見て、格好いいって。私は、どう?格好いいって、思ってもらいたい」
なっ……なに、それ。
ちょっと拗ねた感じで、いつもの泰然とした大人の京平さんじゃなくて。
僕なんかに、なんで、そんな。
顔に熱がたまる。
「可愛い」
「え?可愛いって言った?格好いいじゃなくて?」
こ、声に出してた!
「いや、いつもはもちろん、格好いい!めちゃめちゃ。でも、今の京平さんは、なんか、僕に言葉をねだる感じが……可愛いなって……」
「ふはっ」
京平さんが破顔する。
とても、幼い笑顔。
「いや、可愛いなんて初めて言われた。この歳で、まさか可愛いなんて言われるとは……」
さっきまでの、子供みたいな笑顔から一転、大人の色気を滲ませた笑顔になる。
この、振り幅は何!?
僕はオドオドと視線を彷徨わせる。
京平さんは一歩僕に近づくと、そっと僕の両手を握る。
驚いて見上げた僕の目を、京平さんの目が捕らえる。
「春澄といると、驚くことばかりだ。人のデートに割り込んだのも初めてだし、盗られたくないって思ったのも初めて。……実は、尚が私の恋愛相手にちょっかい出すのはよくあることなんだ。まぁ、恋愛相手といっても、お付き合いしたいって私にアピールしてきた相手に、だけどね。でも、私から尚に乗り換えたらすぐに興味をなくす。今までは、特に相手に興味もなかったし、その程度の気持ちなんだろうなって冷めた感情しか持たなかったけど、春澄には違った。尚に……いって欲しくなかった。さっきは、尚のせいにして、相手がアイツだからダメみたいに言ったけど、違う。どんな相手でも、ダメ。春澄の一番近くにいるのは……私がいい」
京平さんの、真剣な眼差し。
心臓が、壊れたみたいに早鐘を打つ。
「好きだ、春澄」
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