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選ぶ陰キャ
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うぅ。
どっちも選びたくないんだけど……。
「あーん」を食べるのは陰キャにはハードルが高すぎる!
周囲をキョロキョロ見回すも、とりあえず誰もこちらは見ていない。
みんな、目の前のパンケーキに夢中だ。
仕方ない!絶対やらないと二人とも引かないんだろう……。
どちらを選ぶか、それは、決まってる。
ぱくっと京平さんの桃のパンケーキに食いつく。
その後すぐに周囲を確認する。
よし、見てない。
桃のパンケーキはとても瑞々しくて美味しかった。
京平さんはにこにこしながら僕を見つめてくる。
「やーっぱり、京平を選んじゃうか~」
尚さんはフォークを持ったまま、テーブルに項垂れる。
僕は桃のパンケーキをすぐ食べ終わると、尚さんのメロンのパンケーキにもぱくっと食いついた。
メロンが甘くて、パンケーキと一緒にじゅわーっと溶けた。
食べ終わると、僕は尚さんに頭を下げる。
「メロンも美味しいです。ありがとうございます!」
「俺のも食べてくれるんだ……律儀だね~」
尚さんは顔をあげると、微笑んでくれた。
「メロンも食べたかっただけで、尚は関係ないんだよ」
「また京平は……」
バイブ音がする。
京平さんのスマホだ。
着信先を確し、
「すまない。仕事の連絡だ。少し席を外すね」
京平さんが申し訳なさそうに離席する。
京平さんの姿が見えなくなった後に、僕は尚さんに頭を下げた。
「あのっ、ごめんなさい。僕は……今まで元ちゃんに迷惑かけてずっと下を向いて生活してました。それが、京平さんに会って、前を向くことを教えてもらったんです。僕の存在が京平さんにとって良くないのは分かってます!もう少しだけ、もう少しだけでいいから、側にいさせてもらえませんか?」
尚さんは意表を突かれた顔をした。
「……なるほど。さすが、元のイトコ。こちらの意図もちゃーんと汲んでるんだね」
やっぱり。
尚さんは僕のことを好きなんかじゃない。
京平さんの側から離したかっただけだ。
「京平は完璧だ。そう、見せてる。……でも、本当はすごく脆い。京平が春澄くんを気に入ったのは嘘じゃないよ?でも、これ以上になって欲しくない。君のためにもね。ホント、春澄くんがいつも京平の周囲を飛び回ってる羽虫みたいな連中だったら、俺も苦労しないんだけどな」
尚さんは苦笑しながらコーヒーを口にした。
「あのっ、僕はわきまえてます!京平さんのことを好きになったりしないし、迷惑もかけません!」
「無自覚か~」
えっ、僕、迷惑かけてることに気づいてない?
オロオロしていると、尚さんが僕の頭をふわっと撫でる。
「ホントに良い子だね~。素直で純粋で、俺や京平みたいな奴は春澄くんみたいな子が眩しくてたまらない。ねぇ?ホントに京平やめて俺にしとかない?」
「いやっ、あのっ、ホントに僕は……」
「尚!」
京平さん!
通話を終えた京平さんが戻ってきてくれた。
「春澄はダメだよ。……春澄、食べ終わってるね?もう、帰ろう」
「え?でも……」
僕は京平さんと尚さんを交互に見る。
「ごちそーさま。春澄くん、またね?」
尚さんは笑顔で伝票を京平さんに渡すと座ったまま、ヒラヒラと手を振った。
「または、ない」
不機嫌そうにしながら、僕の手を取る京平さんに連れられる。
背後を振り返り、尚さんにぺこりと頭を下げた。
「……春澄くんだけはダメだよ、京平。お互いが傷つくだけだ」
そんな尚さんの言葉は、足早に店を出る僕たちには届かなかった。
どっちも選びたくないんだけど……。
「あーん」を食べるのは陰キャにはハードルが高すぎる!
周囲をキョロキョロ見回すも、とりあえず誰もこちらは見ていない。
みんな、目の前のパンケーキに夢中だ。
仕方ない!絶対やらないと二人とも引かないんだろう……。
どちらを選ぶか、それは、決まってる。
ぱくっと京平さんの桃のパンケーキに食いつく。
その後すぐに周囲を確認する。
よし、見てない。
桃のパンケーキはとても瑞々しくて美味しかった。
京平さんはにこにこしながら僕を見つめてくる。
「やーっぱり、京平を選んじゃうか~」
尚さんはフォークを持ったまま、テーブルに項垂れる。
僕は桃のパンケーキをすぐ食べ終わると、尚さんのメロンのパンケーキにもぱくっと食いついた。
メロンが甘くて、パンケーキと一緒にじゅわーっと溶けた。
食べ終わると、僕は尚さんに頭を下げる。
「メロンも美味しいです。ありがとうございます!」
「俺のも食べてくれるんだ……律儀だね~」
尚さんは顔をあげると、微笑んでくれた。
「メロンも食べたかっただけで、尚は関係ないんだよ」
「また京平は……」
バイブ音がする。
京平さんのスマホだ。
着信先を確し、
「すまない。仕事の連絡だ。少し席を外すね」
京平さんが申し訳なさそうに離席する。
京平さんの姿が見えなくなった後に、僕は尚さんに頭を下げた。
「あのっ、ごめんなさい。僕は……今まで元ちゃんに迷惑かけてずっと下を向いて生活してました。それが、京平さんに会って、前を向くことを教えてもらったんです。僕の存在が京平さんにとって良くないのは分かってます!もう少しだけ、もう少しだけでいいから、側にいさせてもらえませんか?」
尚さんは意表を突かれた顔をした。
「……なるほど。さすが、元のイトコ。こちらの意図もちゃーんと汲んでるんだね」
やっぱり。
尚さんは僕のことを好きなんかじゃない。
京平さんの側から離したかっただけだ。
「京平は完璧だ。そう、見せてる。……でも、本当はすごく脆い。京平が春澄くんを気に入ったのは嘘じゃないよ?でも、これ以上になって欲しくない。君のためにもね。ホント、春澄くんがいつも京平の周囲を飛び回ってる羽虫みたいな連中だったら、俺も苦労しないんだけどな」
尚さんは苦笑しながらコーヒーを口にした。
「あのっ、僕はわきまえてます!京平さんのことを好きになったりしないし、迷惑もかけません!」
「無自覚か~」
えっ、僕、迷惑かけてることに気づいてない?
オロオロしていると、尚さんが僕の頭をふわっと撫でる。
「ホントに良い子だね~。素直で純粋で、俺や京平みたいな奴は春澄くんみたいな子が眩しくてたまらない。ねぇ?ホントに京平やめて俺にしとかない?」
「いやっ、あのっ、ホントに僕は……」
「尚!」
京平さん!
通話を終えた京平さんが戻ってきてくれた。
「春澄はダメだよ。……春澄、食べ終わってるね?もう、帰ろう」
「え?でも……」
僕は京平さんと尚さんを交互に見る。
「ごちそーさま。春澄くん、またね?」
尚さんは笑顔で伝票を京平さんに渡すと座ったまま、ヒラヒラと手を振った。
「または、ない」
不機嫌そうにしながら、僕の手を取る京平さんに連れられる。
背後を振り返り、尚さんにぺこりと頭を下げた。
「……春澄くんだけはダメだよ、京平。お互いが傷つくだけだ」
そんな尚さんの言葉は、足早に店を出る僕たちには届かなかった。
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