陽キャの国の王子様

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いたたまれない陰キャ

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パンケーキのお店の前に尚さんと並ぶ。
さすが人気店というだけあって、三十分はもう並んでる。
そろそろかな?

並んでる間も、尚さんは気を遣ってくれていろいろと話しかけてくれた。
尚さんは京平さんと同じ歳で、大学が同じだったらしい。
つまりは陽キャの巣窟出身。
さすが。

元ちゃんのことも知っていた。
実は京平さんの会社に元ちゃんも誘ったらしい。
でも、元ちゃんは商社に勤務していろいろと学んだ後に、コンビニ経営を始めたいからと断わられたと言ってた。
……僕のこともあったのかな。
改めて、僕は元ちゃんの負担になってたんだな、と思わされた。
もちろん、元ちゃんに言っても、「お前ごときが俺様の心配なんて百年早いんだよっ」と怒られそうだけど。

そんな話をしている間にも、オープンテラスのお客さんとか後ろに並んでるお客さん、果てには店員さんまで、こちらをチラチラ見ている。
……いや、もちろん僕じゃなくて尚さんを。
いやー、イケメンって大変なんだな。
こんな視線にさらされてるのか。
でも、本人は全く気にしてなさそう。
慣れってやつか……。
僕はものすごくいたたまれない……隣にいるのが可愛い女の子や綺麗なお姉さんならみんな納得するだろうに、まさかのこんなの。
うぅ。

「お次の方は二名様ですか?」
とうとう、順番がきた!
「はい」
「三名で」

え!?

僕も尚さんも驚いて振り返ると、まさかの京平さん!
え?お仕事は??

「ちょっと、割り込まないでもらえますか?待ってた子達にも迷惑ですけど」
「空いてるのは二名席?それなら、まだ待つけど」
尚さんの言葉をさらっと無視した京平さんは、いつもの王子様スマイルで店員さんを瞬殺。
「いえ、四名様席なので、すぐにご案内できますっ」と目がハートの店員さんに案内される。

京平さんは店内に入る時に、後ろに待ってた子達に「ありがとう。ごめんね?」と言うと、「大丈夫ですっ」「全然ですっ」と声が聞こえた。
ちゃんと、待ってた子達にもフォローを入れる……さすがだ。

って、いやいや。
なんで、京平さんが!?

二人のイケメンと陰キャ……ますます僕はいたたまれなくなった。

案内された席には、僕の前に尚さん、横の席に京平さんが座った。
この位置でいいのかな?
二人で並んで座った方が、周りのお客さんや店員さんの目の保養的にもいいかと……。
まぁ、言い出せないけど。
それより、
「京平さん、お仕事は?」
「終わらせてきたよ。春澄から連絡きた時には大体目処がついてたからね。大切な春澄が、尚の毒牙にかかっちゃ大変だから」
そう言いながら、軽く尚さんを睨む。

「まさか、春澄をつけてたんじゃないよね?」
「たまたまだ!こっちこそ、まさかあんなに離れたスーパーに行ってると思わないよ。狙うなら、京平のマンション近くのスーパーに通うわ!」
「春澄、もうそのスーパーに行くのは止めておこうね?またいつ拐かされるか」
「おい!」

仲良しだなぁ。
京平さんは、いつも年相応の大人な雰囲気なのに、尚さんといると少し砕けた雰囲気になる。
たぶん、尚さんもそう。

「ご注文は?」
あっ、しまった。
二人のやり取りに夢中で、決めてなかった。
んーんー、どうしよう……。

「春澄、何と悩んでるの?」
ニコニコ顔の京平さんに聞かれた。
「あっ、僕は抹茶が好きなので、この抹茶のパンケーキと、期間限定の桃のパンケーキで迷ってて……」
「じゃあ、その二つを二人でシェアしよ?なら、両方の味、食べられるよ?」
「じゃ、じゃあ、それで!」
京平さんは店員さんに向き直ると、
「では、注文は抹茶のパンケーキと桃のパンケーキ、飲み物はアイスコーヒーで。春澄、飲み物は?」
「の、飲み物はカフェラテのアイスで!」
京平さんは店員さんに笑顔で合図した。

僕が店員さんに聞かれてオタオタしてる間にすかさず京平さんがフォローしてくれて、オーダーもスムーズに終われた。
さすが、手慣れてる!

「俺はメロンのパンケーキとブレンドで」
尚さんも、もちろんさらりと注文を終えてる。
メロンのパンケーキも気になってた~。

オーダーを聞き終えた店員さんは離れがたい感じを見せながらも、ペコリと頭を下げて戻った。
僕も何度も頭を下げる。

「で?」
「何が?」
二人は笑顔の応酬……。
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