陽キャの国の王子様

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再会した陽キャ

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今週末も京平さんは仕事だ。
本当に休みが少ない。
平日も深夜まで仕事のことがあるのに。
社長じゃなかったら、労働基準監督署に駆け込まないと!!って思う。
京平さんの会社はブラック企業なのかな?
でも、社長が自ら働くブラック企業って……うーん。

でも、今日は少し早く帰って来られるみたいだから晩ご飯は一緒に食べると言われた。
それだけで、朝からちょっとウキウキしている。
元ちゃんと一緒に暮らしている時は何も思わなかった一人ご飯が、最近は少し寂しい……ダメだな、こんなことじゃあ。

会社でいろいろあったあれから、京平さんは毎日と言っていいくらいおやつを買って帰ってくれる。
それを一緒に食べるのが夜の楽しみになっていて、京平さんは中年太りしそうだって笑うけど、もちろんそんなことはなく。
むしろ、僕のお腹のお肉が柔らかくなってきて……だから今日の晩ご飯は野菜たっぷりのお鍋にした。
ジムに通うなんてことは性格上無理なので、食事面で頑張ろう。

二人のおやつの時間は守りたい。

そんなことを考えながらいつものスーパーで買い物をしていると、前方に長身の男の人が一人で買い物をしてる。
自炊する男性も増えてるもんなーと特に気にせず買い物を続けていた。

「春澄くん?」

名前呼ばれた?と白菜を選んでた手を止め振り返ると、まさかの尚さんだった。
「えっ」
こんな所で!?
今までかなりの回数買い物に来ているが、初めて出会った。

「すごい偶然!初めて会ったよね?京平のマンションから離れてない、ココ」
「安いので……」
「安いって、京平にカード渡されてるでしょ?別に近くの高級なスーパーで買えばいいのに」
「でも、京平さんが働いたお金なので、できるだけ抑えたいし……あ、でも僕一人だったら買わない和牛とかちゃんと買ってます!京平さんに貧しい生活させてる訳では……」
「はぁーっ……」

え、めちゃめちゃため息つかれた。
まずかった?
でも、浮いた費用を僕のモノにしてる訳じゃないし、同じ野菜でも近くの高級スーパーとココでは値段が全然違うから、庶民は買いづらいんだよ!
ちょっと歩けばいいだけだし……それも運動になって良いんだよ、たるんだお腹には!

「やっぱり、欲しい」

何が?
え、もしかして、さっきカゴに入れたこの特売のきのこセットかな?
ラス1だったから……でも、尚さんには前にお世話になったし……。

「いります?」
「え?いいの?」
「はい。きのこなしでも大丈夫です」
「は?きのこ?」

きのこのことじゃなかった……!
はずかしっ。

「すみません。てっきり、特売のきのこのことだとっ」
「ぶふっ。相変わらず天然だねぇ」

天然!?
言われたことない!

「今日は京平仕事だよね?夜ご飯用の買い物かな?」
「そうです。夜は一緒に食べられるって言ってたので」
「おーおー、嬉しそうだねぇ」
え?顔に出てた!?

「そういえば、京平さんはお仕事なのに、秘書の尚さんはお休みですか?」
「そうだよ。元々休みだからね。京平は働きすぎなんだよ。こっちがセーブした予定立てても、勝手に自分で詰め込むからね。ワーカーホリックだよ」

ワーカーホリック……ちょっと意味が分からないから帰って調べよう。

「せっかく運命的な出会いをしたんだから、お茶しない?」
「いえ、買い物が……」
「もし、生鮮食品買うなら先にマンションまで送っていくよ。俺は車で来てるし」
「でも、時間が……」
「まだお昼だよ?ちゃんと春澄くんが帰って料理する時間までには送り届けるよ」

こ、断わる理由がない……!

「近くに、有名なパンケーキのお店があるんだよ。口の中で溶けるやつ。食べたくない?」

食べたいっ!
お持ち帰りでは味わえないやつだ!

「あの、短い時間でも、いいですか?」
「もちろん!パンケーキ食べる間だけ、ね」

うぅ。
パンケーキの誘惑に勝てなかった……!

俺は素早く買い物を済ませて、一度マンションまで車で送ってもらった。
二人きりの車内は緊張したが、尚さんが察知してとりとめもない話をしてくれたおかげで、感覚的にもすぐにマンションに着いた。
お鍋に入れるためのお肉とかを冷蔵庫にしまい、念のため尚さんと偶然スーパーで出会って、今からパンケーキを食べに行く約束をしたことを京平さんに連絡しておいた。

すると、すぐ京平さんから返信がある。

『嫌だけど、尚は強引だから春澄断われないよね。到着したら、そのパンケーキのお店の名前教えて。とにかく気をつけて!気を許しちゃダメだよ。人気のない所にはついていっちゃダメだよ!甘い言葉にも乗っちゃダメだよ!』
と、海外旅行先での注意のような言葉が送られてくる。

確かに、尚さんが言ってたみたいに過保護だな。
大事にされている気がして、少しくすぐったい。
保護者目線なんだろうけど。

『了解です!』
僕もすぐに返信して、来客用の駐車スペースで待つ尚さんの元へ急いだ。
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