陽キャの国の王子様

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餌付けされる陰キャ

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僕の役目は終わったからと帰ろうとしたら、塩顔イケメンに拉致られた。

「俺はちょっと封筒を渡してくるから、ココに居てね?」
有無を言わさず笑顔で部屋を出ていった。

ここは会議室……とかかなぁ?
机と椅子が並んでる。
でも、僕が想像してる会議室よりは、カフェの個室といった方が近い。
机と椅子がオシャレだ。
簡易的な机とパイプ椅子が並んでるのが会議室のイメージだった。
それが、机は木目調のデザインで、椅子は赤と黒の布貼りの椅子がランダムに配置されている。
大人の空間だ……めちゃめちゃ僕がこの空間に馴染めず浮いてる……。

とりあえず、早く帰りたい気持ちも込めて、入り口近くの椅子にそっと座る。
しっかりと固く、座り心地が良い。
オシャレなだけじゃないんだなぁ……。

コンコンコン。
扉がノックされる。

え、これって僕が返事してもいいの?
まさか、ここの会議室使うとか……でもとりあえず返事しないと……!

「ふぁいっ!」
あ、焦ってかんじゃったよ……恥ずかしい。
「ぶっふっっ」
……塩顔イケメンが扉を開けて崩れ落ちてる。
「ひっ、ふぁいって、ふっ、かっわいっ」

陽キャは、すぐそうやって人の失敗を可愛いって言うよね……。

「ふふっ、はぁー、ごめんごめん。あんなにあせって返事してるの聞いたことなくて。あー、腹いてー」
塩顔イケメン、笑いすぎ。そこまでじゃないし。

塩顔イケメンは立ち上がると、僕の向かいに座る。
「いやー、念願の春澄くんと会えて嬉しいよ。俺は京平の秘書をしてる黒津尚くろつなおだよ」

秘書!?
こんなチャラいスーツ姿のイケメンが?
秘書って、真面目そうな眼鏡とかかけた人のイメージだった……。
偏見だな。
社会に出たことないから、そんな偏見持ってしまうのか……現実はこんな陽キャが秘書だった……。

「黒津さん、さっきは本当に失礼なことをしてしまって、すみませんでした。僕のことは気にしないで下さい。お忙しいと思うので、もう、帰ろうかと……」
「黒津さんは寂しいから、尚さんにして?」

ん?話聞いてた?

「まだ時間大丈夫でしょー?京平は忙しいから帰りも遅いだろうし。ここで俺とお茶でもしよ?ね?コーヒーでも紅茶でも好きなの言って~」

強引だ!
京平さんが忙しいのに、秘書は忙しくないとかある?
でも、何か飲まないと帰れそうにない……。

「カフェオレ、ありますか?」
「もちろん!甘いのだよね?待ってて~」

尚さんはまた笑顔でいなくなったけど……本当に仕事の邪魔してないのかな……。
まぁ、強引に誘ってきたのは尚さんの方だけど、実はめちゃめちゃ気を遣う人で忙しいのに僕のために……って、そんな雰囲気の人じゃないな。
自分の意見はきっちり通しそうだ。
京平さんとはまた違う陽キャだな。

「お待たせー!」
尚さんがお盆を持って再登場した。
慌てて僕も手伝う。
えっ……なんかカフェオレの他にケーキとかドーナツとかプリンとかいろんなお菓子がお盆の上にある。
「甘いカフェオレ好きなら、スイーツも好きかと思って。来客用にいろいろ用意してるの持ってきたんだけど」

さすが、秘書!
めちゃめちゃ気が利く!!

僕は実はスイーツが大好きなんだ。
なんとなく、男が好きなの変かな?って思ってたけど、スイーツ男子とか流行って市民権を得てきた。
それでも、こんな薄暗い陰キャとキラキラのスイーツは相容れなくて……。
ホントはパンケーキとか並んででも食べたい!
現実はコンビニスイーツで我慢してる日々。

「た、食べても……いいですか?」
「どーぞ。余ったら持って帰る?」

神!

チャラい陽キャで苦手とか思ってごめんなさい!
良い人!尚さんは良い人だよ!!
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