陽キャの国の王子様

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暇をもて余す陰キャ

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スマホを取りに行き、とりあえず渡されていた京平さんのスマホの番号を登録した。
お昼くらいに電話してくれと言われていたので、もう少ししたら電話してみよう。

……
……
……
いや、やることがない!
昼ご飯は自分だけなら昨日の炒飯を温めたのでいいし、夜ご飯も京平さんは休日しかいらないので、自分だけならコンビニ弁当でいい。
洗濯は朝イチで終わったし、掃除も元が綺麗だからさっとやって終わった。
スマホを取りに行くついでに買い物もすませた。

え……こんな毎日で給料貰うなんて、ダメに決まってる!
ど、どうしよう。
料理とか習いに行く?
何か身につけないといけないスキルは……分からない。

今まで、コンビニの深夜バイトして、帰ってから泥のように寝て、起きてご飯作って食べたらもうバイトの時間で。
毎日がその繰り返し。
こんなに時間が余っても、やることもやりたいこともない。

僕にはそんな何もない毎日が合ってる。

……そろそろ、京平さんに電話しよう。
久しぶりにスマホを操作する。
少し前まで持ってたけど、使わなくて解約した。
着信音を三回聞いたくらいで、少し不安になる。
まだ電話するには早かった?仕事中に邪魔してたらどうしよう。
ドキドキしてくる。
「もしもし」
出てくれた。
京平さんのイケボにほっとする。
「あのっ」
「あぁ、春澄。もう取りに行ったんだね。連絡ありがとう。登録しておくよ。何してたの?」
「えと、何も、してない。すること、なくて」

京平さんの返事がない。
呆れられた?
サボってると思われたかも!
「あっ、掃除とかはもうしたからっ。いや、そんなに汚れてなくてすぐ終わっちゃったけど、もう一回ちゃんとっ」
「いや、掃除とかはそんなに気にしなくていいよ。使ってないんだから。春澄、やりたいことないの?やりたかったことでもいいよ」

やりたいことはない。
やりたかったこと……?
やりたかったこと……自分の今までを振り返って……

「勉強、かな」
「勉強?」
あっ、声に出してた。
「あの、元ちゃんから聞いてるかもしれないけど、高校、卒業できなくて。中卒だから、雇ってくれる所もそんなになくて。せめて、高校卒業資格取れたらって前に思ったことが」
「じゃあ、したらいいよ。近くに本屋あったの分かる?そこで参考書とか買って、やってごらん」
「あっ……うん……考えとく」
「じゃあ、今日は夜十時くらいには帰るから。後で」
「うん」

通話を切る。

……勉強、か。
聞かれるまでそんなこと思ってたことも忘れてた。
いつまでも、この家政夫生活は続かない。
京平さんに、明日には出ていけと言われるかもしれないんだから。
次も元ちゃんのコンビニでバイト……?
またお客さんに嫌われて怒られるのか。
それなら、勉強して違う道を探す?
こんな陰キャでも、学歴があれば少しは自信に繋がるかな?

僕はその足で本屋に急ぎ、中学生用の参考書をいくつか買った。
久しぶりに気分が高揚している。
少し、閉じきってた人生の先が見えた気がした。
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