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調子に乗った陽キャ
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出来上がったコーヒーを棚にあったマグカップに淹れる。
オシャレなコーヒーカップもあったが、割ると恐ろしい値段になりそうなので、食器棚から出さなかった。
いや、たぶんこのマグカップもお高いとは思うんだけどね……裏側に知ってるハイブランドの名前が刻印されていると使えないので、裏は見ないことにした。
100均の欲しいな。
「コーヒー、ブラック?」
「あぁ、ブラックがいいな」
そこは見た目通りなんだ……また見た目とのギャップを狙ってくるのかと思ったのに。
京平さんの前にはブラック、僕は自分でコーヒー対牛乳を半々で作った。
ぬるいけど、それがいい。
猫舌だから……とか言わないけどね!
「うん。やっぱり淹れたてのコーヒーは美味しいね」
「うん」
いや、京平さんは仕事とか会社で飲んでるだろ?とか野暮なことは言わないけど、ホントに美味しい。
良い豆なんだろうか?
どこで買ってたのか知りたいけど、家政婦さんには聞けないしなぁ。
「これ、ウチの会社で扱ってる豆なんだよ。なくなりそうなら言ってね」
え、豆とかの会社?貿易?もやってるんだ……。
飲食店を何店舗かって聞いてたけど、確かに販路とかあった方が便利だからってことかな?
まぁ、どうでもいいんだけど……。
「お菓子も少し食べようよ。いろんな味があって驚いたよね!このポテトチップスは昔食べた気がするけど、久しぶりだな。チョコはピスタチオだって!すごいねぇ」
え、ポテチなんて、週一で食べるもんじゃないの?
引きこもりにとって、神のお菓子なのに、久しぶりとは……。
チョコのチョイスはやはりセレブ。
ピスタチオて。
アーモンド一択だろ。
心の中で毒づきつつ、パクつくと……ピスタチオうまっ!
えー、これアーモンドの牙城を崩すかもしれない。
カフェオレ飲みつつ、堪能する。
そんな僕を横目で見ながら、京平さんが
「じゃあ、罰ゲームどうしようか?」
ぐっ……思わずカフェオレを吹き出しそうになる。
忘れてなかったか!
「え、えぇ~、罰とか、いらないよね?」
「そこは、ね。二人の間に壁とか作って欲しくないから、罰ゲームとか作らないと春澄はずっと敬語使いそうだし、あと……楽しいしね」
それだろ!
楽しいだけだろ!
くそぅ……何であんな約束してしまったんだよ……。
『そんな約束しません。敬語のままがいいです』って言えてたら……。
……ま、そんなこと言える度胸があれば引きこもりの陰キャなんかやってないけどね。
「んー、痛みがあることは嫌だしねぇ」
「デコピンにしましょう!それくらいなら耐えます!」
「……また使ったね?」
しまったーーーー!
痛みって言葉に良い案が浮かんだと思って思わず何も考えずに言葉に出してしまった……!
「二回かぁ……どうしようかなぁ……」
「うぅ……」
陽キャの罰ゲームってあれだろ?
キ、キス……とかだろ?
知ってるんだよ!
陽キャはすぐ何番と何番が罰ゲームでキスって言い出す生き物だってことは……!
でも、ここには二人しかいない。
誰かと誰かが嫌がりながらキスする姿を眺めて笑うってヤツができない。
さすがに、京平さんは僕とキスしたくはないはずだからな。
京平さんの罰ゲームになってしまう。
ってことは、何だろう……あと定番の罰ゲームは……。
ジュース買ってこい、も違うし、ここはお前の奢りな、も違うし、ゲテモノ食べる、もそんな物は準備してないし……もうデータない!
うーん、うーん、と考えていると、その姿を面白そうに京平さんが見つめていることに気づく。
「僕だけに考えさせると、京平さんも罰ゲーム受けることになるよ?」
「え?」
「定番の罰ゲームなら、キスとかでしょ?二人しかいないんだから、京平さんも罰ゲームになる」
ふふん、思いもよらなかったって顔したな。
だから、京平さんも考えろ……そう思った時には唇に柔らかいものが触れていた。
へ?
目を見開いたままの僕の目の前に、京平さんのドアップが。
「全然、罰ゲームじゃないけど?ごちそうさま」
な、な、な……。
やりやがったーー!
キスに何の気持ちもなく、誰とでもチュッチュできるタイプの陽キャの種族の存在を忘れてた!!
ぼ、僕のファーストキス……男との罰ゲームなんて、あまりにも可哀想すぎないか……?
でも、平気な顔してキスしてきた京平さんに傷ついた顔を見せたくない。
陰キャにだって、プライドはある。
「京平さんみたいなイケメンがファーストキスの相手なんてラッキー」
明るく言った。言ってやった。
「えっ……ファーストキス?」
あっ……また余計なことを言ってしまった。
京平さんはさっきまでのニヤニヤした顔から一気に申し訳なさそうな顔に変わった。
「春澄……ごめん。春澄が珍しく私に冗談っぽく言ったものだから、つい仲良くなったと思って調子に乗ってしまって……」
「いやっあのっ」
違う。
この歳でこれくらいのこと受け流さないでどうする。
京平さんは、冗談で軽く唇を合わせただけだ。
女の子じゃないんだから、ファーストキスなんてこだわってなかったし。
僕のファーストキスなんて、なんの価値もないのに。
でも。
「セクハラ!!」
叫んで、自分の部屋にダッシュした。
オシャレなコーヒーカップもあったが、割ると恐ろしい値段になりそうなので、食器棚から出さなかった。
いや、たぶんこのマグカップもお高いとは思うんだけどね……裏側に知ってるハイブランドの名前が刻印されていると使えないので、裏は見ないことにした。
100均の欲しいな。
「コーヒー、ブラック?」
「あぁ、ブラックがいいな」
そこは見た目通りなんだ……また見た目とのギャップを狙ってくるのかと思ったのに。
京平さんの前にはブラック、僕は自分でコーヒー対牛乳を半々で作った。
ぬるいけど、それがいい。
猫舌だから……とか言わないけどね!
「うん。やっぱり淹れたてのコーヒーは美味しいね」
「うん」
いや、京平さんは仕事とか会社で飲んでるだろ?とか野暮なことは言わないけど、ホントに美味しい。
良い豆なんだろうか?
どこで買ってたのか知りたいけど、家政婦さんには聞けないしなぁ。
「これ、ウチの会社で扱ってる豆なんだよ。なくなりそうなら言ってね」
え、豆とかの会社?貿易?もやってるんだ……。
飲食店を何店舗かって聞いてたけど、確かに販路とかあった方が便利だからってことかな?
まぁ、どうでもいいんだけど……。
「お菓子も少し食べようよ。いろんな味があって驚いたよね!このポテトチップスは昔食べた気がするけど、久しぶりだな。チョコはピスタチオだって!すごいねぇ」
え、ポテチなんて、週一で食べるもんじゃないの?
引きこもりにとって、神のお菓子なのに、久しぶりとは……。
チョコのチョイスはやはりセレブ。
ピスタチオて。
アーモンド一択だろ。
心の中で毒づきつつ、パクつくと……ピスタチオうまっ!
えー、これアーモンドの牙城を崩すかもしれない。
カフェオレ飲みつつ、堪能する。
そんな僕を横目で見ながら、京平さんが
「じゃあ、罰ゲームどうしようか?」
ぐっ……思わずカフェオレを吹き出しそうになる。
忘れてなかったか!
「え、えぇ~、罰とか、いらないよね?」
「そこは、ね。二人の間に壁とか作って欲しくないから、罰ゲームとか作らないと春澄はずっと敬語使いそうだし、あと……楽しいしね」
それだろ!
楽しいだけだろ!
くそぅ……何であんな約束してしまったんだよ……。
『そんな約束しません。敬語のままがいいです』って言えてたら……。
……ま、そんなこと言える度胸があれば引きこもりの陰キャなんかやってないけどね。
「んー、痛みがあることは嫌だしねぇ」
「デコピンにしましょう!それくらいなら耐えます!」
「……また使ったね?」
しまったーーーー!
痛みって言葉に良い案が浮かんだと思って思わず何も考えずに言葉に出してしまった……!
「二回かぁ……どうしようかなぁ……」
「うぅ……」
陽キャの罰ゲームってあれだろ?
キ、キス……とかだろ?
知ってるんだよ!
陽キャはすぐ何番と何番が罰ゲームでキスって言い出す生き物だってことは……!
でも、ここには二人しかいない。
誰かと誰かが嫌がりながらキスする姿を眺めて笑うってヤツができない。
さすがに、京平さんは僕とキスしたくはないはずだからな。
京平さんの罰ゲームになってしまう。
ってことは、何だろう……あと定番の罰ゲームは……。
ジュース買ってこい、も違うし、ここはお前の奢りな、も違うし、ゲテモノ食べる、もそんな物は準備してないし……もうデータない!
うーん、うーん、と考えていると、その姿を面白そうに京平さんが見つめていることに気づく。
「僕だけに考えさせると、京平さんも罰ゲーム受けることになるよ?」
「え?」
「定番の罰ゲームなら、キスとかでしょ?二人しかいないんだから、京平さんも罰ゲームになる」
ふふん、思いもよらなかったって顔したな。
だから、京平さんも考えろ……そう思った時には唇に柔らかいものが触れていた。
へ?
目を見開いたままの僕の目の前に、京平さんのドアップが。
「全然、罰ゲームじゃないけど?ごちそうさま」
な、な、な……。
やりやがったーー!
キスに何の気持ちもなく、誰とでもチュッチュできるタイプの陽キャの種族の存在を忘れてた!!
ぼ、僕のファーストキス……男との罰ゲームなんて、あまりにも可哀想すぎないか……?
でも、平気な顔してキスしてきた京平さんに傷ついた顔を見せたくない。
陰キャにだって、プライドはある。
「京平さんみたいなイケメンがファーストキスの相手なんてラッキー」
明るく言った。言ってやった。
「えっ……ファーストキス?」
あっ……また余計なことを言ってしまった。
京平さんはさっきまでのニヤニヤした顔から一気に申し訳なさそうな顔に変わった。
「春澄……ごめん。春澄が珍しく私に冗談っぽく言ったものだから、つい仲良くなったと思って調子に乗ってしまって……」
「いやっあのっ」
違う。
この歳でこれくらいのこと受け流さないでどうする。
京平さんは、冗談で軽く唇を合わせただけだ。
女の子じゃないんだから、ファーストキスなんてこだわってなかったし。
僕のファーストキスなんて、なんの価値もないのに。
でも。
「セクハラ!!」
叫んで、自分の部屋にダッシュした。
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