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罠にはまった陰キャ
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はぁ、買い物疲れた……。
玄関に到着すると共にどっと疲れが押し寄せてきた。
京平さんは帰るまでの道のりでも、庶民の買い物が楽しかったのか終始ご機嫌で。
また行こうと言ってくるが、お断りしたい。
いや、もちろん重い米は助かった。
ついつい貧乏人目線で、安いけど持ち帰るには重い米に飛び付いてしまい、迷惑をかけた。
お金がある人はしなくていい苦労だった。
「春澄~お米はキッチンに置いておくね~」
「うん」
俺もキッチンへ向かい、食材などを冷蔵庫へ入れる。
まだ作り出すには早いから、とりあえずお米だけ炊こう。
前の家政婦さんが置いてくれていた米櫃にお米を移し、どれだけ食べるか分からないから、お米を四合炊く。
余れば冷凍させればいいしな。
炊飯器にセットした後にリビングにいた京平さんを見ると、テーブルの上にさっき買ったポテチとチョコのお菓子をセッティングしてソファーに座っている。
もしかして、俺を待ってる……?
「京平さん」
とりあえず声をかける。
「春澄、ゆっくりしようよ。お菓子でも食べる?でも、せっかくの手作り晩御飯だから、いっぱい食べたいしなぁ。悩むね」
悩みが子供か!
この、見た目とのギャップは何なんだろう……。
「あ、の、コーヒーでも淹れるから、少しだけつまむ?」
あからさまに京平さんの顔が輝く。
だから、ギャップやめろ!!
キッチンでコーヒーを淹れる。
最新機種で使い方が分からなかったらどうしようかと思ったら、古典的なサイフォン式だった。
棚にも豆が数種類置いてあり、前の家政婦さんはコーヒー好きだったのかな?
豆の種類とかよく分からないから、聞いたことがあるキリマンジャロを挽く。
手動でミルを使うのは元ちゃんの実家以来で、楽しい。
こういう地味な作業、好きなんだよな……。
豆をガリガリ挽いていると、コーヒーの良い香りがしてくる。
「ご機嫌だね?」
ひっ。
突然、背後から声をかけられる。
気づかなかったが、いつの間にか近くにつめられていた。
「べ、別に、ふつー」
京平さんは腕を組みながらキッチンのシンクに軽くもたれる。
「さっきから、お顔がニコニコだよ?コーヒーが好きなの?」
「べ、別に、ふつー」
コーヒーは嫌いじゃないが、缶コーヒーは嫌い。
あと、ブラックも嫌い。
コーヒー好きはブラックを好むと元ちゃんに言われたから、それから僕はコーヒーは普通だと思っている。
……本当はブラックコーヒーに牛乳入れたカフェオレは、好き。
ま、そんな細かい好み、言わないけど。
「そうなの?あまりにご機嫌だから、ついつい見に来たけど、家でコーヒー挽いて飲むの久しぶりだな」
京平さんは不思議な表情をした。
少し、悲しそうな。
辞めてしまった家政婦さんを思い出してるんだろうか。
長く一緒だったみたいだから……。
「あの、コーヒー挽いて淹れるの、僕も久しぶりだから、ちょっと楽しみだったのかもしれません。だから、ニヤニヤしてたのかも。前の家政婦さんみたいに美味しくは淹れられないかもしれないですけど……ちょっと待ってて下さいね」
僕、優しいな。
ちゃんと、ちょっと寂しげな雇い主に気を遣ってるし。
コンビニバイトでスキルが上がったのかな?
うんうん。
ちょっと得意気になりながら、京平さんを見ると、なぜか顔が企み顔だ。
どうした?
「春澄……敬語使ったね?いやー、けっこう頑張ったよね。すぐ使っちゃうかと思ったのになぁ」
な、あの殊勝な表情は罠!?
こいつ、性格悪いな!
「罰ゲーム、どうしようかなぁ?コーヒー飲みながら、ゆっくり相談しようねぇ」
ウキウキの足取りでソファーに戻っている。
罰ゲームって、何……陽キャはすぐ罰ゲームとかではしゃぎ出すんだよ……。
そもそも、何で敬語という、相手を敬った素晴らしい言葉で罰ゲームなんてさせられるんだ……理不尽!
せっかくのコーヒーの香りがしなくなった……精神的苦痛のせいだ。
うぅ、リビングに行きたくない……。
サイフォンに挽いた豆をセットしながら、頭を抱えた。
玄関に到着すると共にどっと疲れが押し寄せてきた。
京平さんは帰るまでの道のりでも、庶民の買い物が楽しかったのか終始ご機嫌で。
また行こうと言ってくるが、お断りしたい。
いや、もちろん重い米は助かった。
ついつい貧乏人目線で、安いけど持ち帰るには重い米に飛び付いてしまい、迷惑をかけた。
お金がある人はしなくていい苦労だった。
「春澄~お米はキッチンに置いておくね~」
「うん」
俺もキッチンへ向かい、食材などを冷蔵庫へ入れる。
まだ作り出すには早いから、とりあえずお米だけ炊こう。
前の家政婦さんが置いてくれていた米櫃にお米を移し、どれだけ食べるか分からないから、お米を四合炊く。
余れば冷凍させればいいしな。
炊飯器にセットした後にリビングにいた京平さんを見ると、テーブルの上にさっき買ったポテチとチョコのお菓子をセッティングしてソファーに座っている。
もしかして、俺を待ってる……?
「京平さん」
とりあえず声をかける。
「春澄、ゆっくりしようよ。お菓子でも食べる?でも、せっかくの手作り晩御飯だから、いっぱい食べたいしなぁ。悩むね」
悩みが子供か!
この、見た目とのギャップは何なんだろう……。
「あ、の、コーヒーでも淹れるから、少しだけつまむ?」
あからさまに京平さんの顔が輝く。
だから、ギャップやめろ!!
キッチンでコーヒーを淹れる。
最新機種で使い方が分からなかったらどうしようかと思ったら、古典的なサイフォン式だった。
棚にも豆が数種類置いてあり、前の家政婦さんはコーヒー好きだったのかな?
豆の種類とかよく分からないから、聞いたことがあるキリマンジャロを挽く。
手動でミルを使うのは元ちゃんの実家以来で、楽しい。
こういう地味な作業、好きなんだよな……。
豆をガリガリ挽いていると、コーヒーの良い香りがしてくる。
「ご機嫌だね?」
ひっ。
突然、背後から声をかけられる。
気づかなかったが、いつの間にか近くにつめられていた。
「べ、別に、ふつー」
京平さんは腕を組みながらキッチンのシンクに軽くもたれる。
「さっきから、お顔がニコニコだよ?コーヒーが好きなの?」
「べ、別に、ふつー」
コーヒーは嫌いじゃないが、缶コーヒーは嫌い。
あと、ブラックも嫌い。
コーヒー好きはブラックを好むと元ちゃんに言われたから、それから僕はコーヒーは普通だと思っている。
……本当はブラックコーヒーに牛乳入れたカフェオレは、好き。
ま、そんな細かい好み、言わないけど。
「そうなの?あまりにご機嫌だから、ついつい見に来たけど、家でコーヒー挽いて飲むの久しぶりだな」
京平さんは不思議な表情をした。
少し、悲しそうな。
辞めてしまった家政婦さんを思い出してるんだろうか。
長く一緒だったみたいだから……。
「あの、コーヒー挽いて淹れるの、僕も久しぶりだから、ちょっと楽しみだったのかもしれません。だから、ニヤニヤしてたのかも。前の家政婦さんみたいに美味しくは淹れられないかもしれないですけど……ちょっと待ってて下さいね」
僕、優しいな。
ちゃんと、ちょっと寂しげな雇い主に気を遣ってるし。
コンビニバイトでスキルが上がったのかな?
うんうん。
ちょっと得意気になりながら、京平さんを見ると、なぜか顔が企み顔だ。
どうした?
「春澄……敬語使ったね?いやー、けっこう頑張ったよね。すぐ使っちゃうかと思ったのになぁ」
な、あの殊勝な表情は罠!?
こいつ、性格悪いな!
「罰ゲーム、どうしようかなぁ?コーヒー飲みながら、ゆっくり相談しようねぇ」
ウキウキの足取りでソファーに戻っている。
罰ゲームって、何……陽キャはすぐ罰ゲームとかではしゃぎ出すんだよ……。
そもそも、何で敬語という、相手を敬った素晴らしい言葉で罰ゲームなんてさせられるんだ……理不尽!
せっかくのコーヒーの香りがしなくなった……精神的苦痛のせいだ。
うぅ、リビングに行きたくない……。
サイフォンに挽いた豆をセットしながら、頭を抱えた。
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