陽キャの国の王子様

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はしゃぐ陽キャ

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結局、京平さんと一緒に買い物に行くことになる。
はっきり言って、邪魔だ。
そもそも、スーパーまでの道のりで目立つ。
僕一人なら視界にも入れないだろう女性たちがチラチラ見てくるし、信号で立ち止まろうもんなら話しかけてくる。
その度に京平さんは「ごめんね、デート中だから」と笑顔で対応するから、言われた女性は僕のことをものすごい目で見てくる。
京平さんクラスに声をかける女性なんて自信の塊のようなタイプだから、正直怖い。
戦闘能力高そうだし。
ただ、仕事として買い物に行き、雇い主が我が儘でついてきただけなのに、なぜ悪者にされるのか……。
休みの日に買い物はやめよう。
平日にそっと行くに限る。

目的のスーパーにつく。
事前にリサーチ済みで、立地の割にお安い。
まぁ、京平さんのゴールドカードで買うからセレブの高級スーパーでも良かったけど、やはり庶民としては買いにくい。
カートにかごを置き、買い物を始める。

んー、お昼がピザだったから夜はご飯の方がいいな……野菜も摂った方がいいし……。
炒飯と野菜スープでいいかな。
もやしとしめじ、ネギ……人参も彩りでいいな……あと大根が安いから買おう。
「春澄!なぜ、そのまま?みんなこの大根の葉をちぎって手前の箱に捨ててるよ?」
「あぁ、使わない人は邪魔だから捨てるけど、僕は刻んで使うから」
「へぇ~」
スーパーでの買い物が初だからか、キョロキョロ周りを見ている。
とりあえず、放置で買い物を続ける。

明日の朝は味噌汁作りたいよなぁ……麦味噌あるかなぁ?
さつま芋と乾燥ワカメに豆腐も買っておこう……。
「春澄!カニカマって何?蟹じゃないの?」
「かに風味ってだけ」
「えっ、食べてみたい!買っていい?」
「いいけど……」
「やった!」
嬉しそうに笑ってカートに入れる。

子供か!
くそぅ……ついつい見た目とのギャップにきゅんとしてしまった!
なんか、悔しい。
気にせず、買い物の続き、続き。

あ、玉子忘れてる。やばい、やばい。
他に何かいるかな……あっ、米。
量が多い方が安いけど、重い。
京平さんに持たす訳にも……うん、小さいのにしよう。
米売場に行くとまさかのコシヒカリ10キロが2450円!買いだ!
が、頑張ろう……やれるはず。

大体、こんなもんかな。
調味料などは前に使ってたのがあったし、明日の朝までならこれで十分作れる。
またそれからのことは考えよう。
あれ?京平さんは?

スーパーを探して歩くと、お菓子売場で吟味してる京平さんを見つけた。
「あ、春澄!いろんな味のお菓子があるんだね。どれを買おうか迷うよ。春澄は甘い系としょっぱい系はどっちが好き?」
「どっちも好き」
「じゃあ、両方買っちゃおう!」

楽しそうだな……。
まさか、こんなに買い物ではしゃぐと思わなかった。
やっぱり、庶民の暮らしに馴染みのない王子様は普通のことが新鮮なんだな。
反対に僕が知らない世界もたくさん知ってるんだろうけど、そっちは知らなくて大丈夫。
困ってない。

「もうお会計して帰るよ」
「分かった」

会計してレジ袋をもらう。
買った食材をレジ袋に入れ、店のシールのみ貼られたお米10キロを持とうとすると、京平さんがひょいっとそれを担ぐ。
「いやいや、僕が……」
「いいよ。せっかく来たんだから、役に立たせて?お願い」

うぅ……カッコいい……。
自分が手伝うことをお願いって言われたら、断れない。
スマートすぎる。
京平さんが米を軽々と持ち、空いた方でレジ袋も持とうとするので、それはさすがに断った。
「こっちは僕が持ちたい。お願い」
「上目遣いでお願いされるとは思わなかったな?どんな願い事も聞いてあげたくなるね」
京平さんはまたイケボで攻撃してくる。

上目遣いは身長差だ!
カニカマできゃっきゃしてたくせに!
「早く、帰るよ!」
また赤くなった顔を見られたくなくて、足早にスーパーを後にした。
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