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遊ばれる陰キャ
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ふぅ。
夜勤明けの元ちゃん家と、このマンションの往復などバタバタで疲れていたものの、とりあえず持ってきた自分の荷物をクローゼットにしまい終わった。
お昼は京平さんがデリバリーを注文し一緒に食べた。
定番のピザ。
こんなにお金持ちでも名の知れたデリバリーのピザなんか食べるんだと驚いたら、笑われた。
その辺は普通の感覚で助かる。
夜はさすがに何か作ろうかな……。
そういえば、食の好みなど聞いてない。
食べられない物など聞いておこう。
買い物に行くついでに京平さんの部屋に立ち寄る。
部屋をノックすると、イケボで「どうぞ」と言われる。
京平さんは高そうな椅子に座って、PCの画面を見ていた。
視線をこちらに向けてくれる。
「あの、夜ご飯の買い物に行こうと思うんですけど、好き嫌いを教えて貰ってもいいですか?」
「ああ。特にないよ。まかせる。今日は初日なんだから、また何かデリバリーでもいいよ。寝てないんだろう?寝たら?」
「いえ、大丈夫です。休みの日しか夜は食べないんですよね?なら、せっかくなので……」
数日でいなくなるしね、とは言わない。
大人だから。空気読めるし。
「そう?じゃあ、楽しみにしておく。あと、敬語は禁止。次に敬語使ったら……何か罰ゲームね?」
はぁっ?
勝手に決めんな!
くそぅ……雇い主めっ。
「じゃあ、行ってきま……行ってくる」
「あぁ、待って。私も行こう。重くなる?車だそうか」
京平さんは椅子から立ち上がると、ぐっと伸びをしながら僕の方へ歩いてくる。
「いや、買い物も僕の仕事だから。京平さんは、仕事でしょ?重いものはネットで注文するから大丈夫。今晩と明日の朝の食材だけ」
車って、どうせ高級外車とかだろ?
無理無理。
この汚いスニーカーで乗れるか!
「いや、気分転換したいから、付き合う。食材を買いに行くって、そういえばしたことないなぁ」
「えっ」
人生初?その歳で?
ヤバイな、コイツ。
マジで王子様だ。
「世間知らずだよねぇ。今まで気にしたことなかったけど、春澄にいろんな経験させて貰おうかな?」
おい。
エロい感じに言うな。
声と視線がエロい。
まぁ、僕はもう慣れたけどね?
ぶはっ。
また京平さんが吹き出してる。
何も言ってないけど?
「は、春澄っ、平気そうに顔作ってるけどっ、真っ赤だよっ……」
なっ……。
そこは大人として知らん顔しろよ!
空気読めないな!
「も、もう行くっ」
「ごめん、ごめん。もうからかわないよ。可愛くてつい、ね」
完全に僕をからかって気分転換してるじゃないか。
もう、気分転換できたなら行かなくていいだろ……。
「よし。じゃあ、買い物デートに行こうか」
より僕に近づくと、見下ろし微笑む。
くそー!
陽キャはすぐデートとか言うんだよ。
僕の人生初デートが京平さんなんてごめんだ!
「デートじゃないっ」
その視線から逃れるように、僕は玄関へと急いだ。
夜勤明けの元ちゃん家と、このマンションの往復などバタバタで疲れていたものの、とりあえず持ってきた自分の荷物をクローゼットにしまい終わった。
お昼は京平さんがデリバリーを注文し一緒に食べた。
定番のピザ。
こんなにお金持ちでも名の知れたデリバリーのピザなんか食べるんだと驚いたら、笑われた。
その辺は普通の感覚で助かる。
夜はさすがに何か作ろうかな……。
そういえば、食の好みなど聞いてない。
食べられない物など聞いておこう。
買い物に行くついでに京平さんの部屋に立ち寄る。
部屋をノックすると、イケボで「どうぞ」と言われる。
京平さんは高そうな椅子に座って、PCの画面を見ていた。
視線をこちらに向けてくれる。
「あの、夜ご飯の買い物に行こうと思うんですけど、好き嫌いを教えて貰ってもいいですか?」
「ああ。特にないよ。まかせる。今日は初日なんだから、また何かデリバリーでもいいよ。寝てないんだろう?寝たら?」
「いえ、大丈夫です。休みの日しか夜は食べないんですよね?なら、せっかくなので……」
数日でいなくなるしね、とは言わない。
大人だから。空気読めるし。
「そう?じゃあ、楽しみにしておく。あと、敬語は禁止。次に敬語使ったら……何か罰ゲームね?」
はぁっ?
勝手に決めんな!
くそぅ……雇い主めっ。
「じゃあ、行ってきま……行ってくる」
「あぁ、待って。私も行こう。重くなる?車だそうか」
京平さんは椅子から立ち上がると、ぐっと伸びをしながら僕の方へ歩いてくる。
「いや、買い物も僕の仕事だから。京平さんは、仕事でしょ?重いものはネットで注文するから大丈夫。今晩と明日の朝の食材だけ」
車って、どうせ高級外車とかだろ?
無理無理。
この汚いスニーカーで乗れるか!
「いや、気分転換したいから、付き合う。食材を買いに行くって、そういえばしたことないなぁ」
「えっ」
人生初?その歳で?
ヤバイな、コイツ。
マジで王子様だ。
「世間知らずだよねぇ。今まで気にしたことなかったけど、春澄にいろんな経験させて貰おうかな?」
おい。
エロい感じに言うな。
声と視線がエロい。
まぁ、僕はもう慣れたけどね?
ぶはっ。
また京平さんが吹き出してる。
何も言ってないけど?
「は、春澄っ、平気そうに顔作ってるけどっ、真っ赤だよっ……」
なっ……。
そこは大人として知らん顔しろよ!
空気読めないな!
「も、もう行くっ」
「ごめん、ごめん。もうからかわないよ。可愛くてつい、ね」
完全に僕をからかって気分転換してるじゃないか。
もう、気分転換できたなら行かなくていいだろ……。
「よし。じゃあ、買い物デートに行こうか」
より僕に近づくと、見下ろし微笑む。
くそー!
陽キャはすぐデートとか言うんだよ。
僕の人生初デートが京平さんなんてごめんだ!
「デートじゃないっ」
その視線から逃れるように、僕は玄関へと急いだ。
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