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11~ロイside~※後半

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 つまらない。
 幼き頃の日常はこれに尽きる。
 齢八歳にして、もうすでに世の中を知った気になっていた嫌な子供だった。
 国王の第二子として生まれ、見目麗しく、才気に溢れ、誰しもが僕を羨んでいると侍従達は口を揃えた。
 実際、国王になることが決まっている兄上ほどの重圧もなく、第二王子として課せられた全ての課題は難なくこなせる程の素養も器用さもあった。黄金の髪と深い藍色の瞳を持ち、母に似た美貌は人を惹きつけ、幼いながらに誘惑も多かった。

 ただそれだけだ。

 自分の未来は思い描いた通りに進んでいくんだろう。あと十年もすれば与えられている領地を治め、誰もが羨む相手を娶り、子を成し、老いて死ぬ。平和なこの国で争いが起こるはずもなく、兄上から玉座を簒奪さんだつするほどの野心も不満もない。
 面白みのない一生だったな。などと、もう一生を終えた気にすらなっていた。

 そんな僕が、全てを覆す運命と出会う。

 その日もいつも通り課せられた課題を終わらせた。隣では兄上が唸りながらまだ半分も終わっていない算学を睨みつけている。またその隣でミハエルが課題を放り出しかねない兄上を睨んでいる。
 いつもの光景だ。
 僕は邪魔にならぬようそっと席を立ち、退室しようとした。
「また、城下町ですか?」
 背後からミハエルに声をかけられた。少し険のある声だ。安全性を言っているんだろう。
「ロイだけずるいぞ!我も行きたい!」
「寝言ですか?」
 今度はかなり険のある声だった。兄上は唸り声をあげながら机に突っ伏した。
「さして面白いものなどないよ。結局、退屈なだけだ」
 そう言い置き、勉強部屋を後にした。

 僕はたまに社会勉強とうそぶいて、城下町へ出かける。
 もちろん王子だとバレないように簡素な服に着替え、護衛も側には一人、離れた位置に数人配置し、それでもやはり隠しきれないことは分かっていたので、貴族の子息が遊びに来ている体裁をとった。
 この国は平和で、城下町も同様に特に何も起こらない。軽微な犯罪はあるのだろうが、目にしたこともなくただ散策していつも終わる。ただ、城の窓から外を眺めているよりは退屈しない程度のものだった。

 今日は時間があるので、少し城から離れた所まで行ってみよう。護衛にもそう告げ、城下町を歩く。
 いつもは商家が立ち並ぶ通りを散策し、衣服や道具などを気まぐれに購入したりしていたが、今日は今まで行ったことがない民家の立ち並ぶ方へ向かう。思っていたよりも多くの民家が集まっており、通りの道からも洗濯を干していたり、子供同士のはしゃぐ声が聞こえたりと穏やかな日常が垣間見えた。
 そんな通りの一画に店、のような建物が建っていた。周囲の家々とは違い、造りが簡素だ。一見納屋のようだが、値段が書いてある紙を建物の前面に大きく貼ってある。売り物の名前も書いていない。
「これは、何を売っているんだ?」
 護衛の騎士に声をかけるが、その者も知らないらしい。何だろう?と興味を惹かれた。
 すると、背後から子供が小走りでかけてくると「トール、お芋くーださーい」と叫んだ。
 お芋……とは、あの家畜の食べる飼料のことか?なるほど……民家に飼っている家畜のための店なのか。納得し、去ろうとすると店の中から男が出てきた。
「焼き立てだから、熱いぞー。気を付けろよ~」
 にこにこ笑いながら男は子供から金を受けとると、紙に包んだ芋を割ろうとしている。固い芋を素手で?と驚いていると、簡単に半分に割れ、湯気がふわっとたちあがった。
 あれは、何だ?芋、か?
「ありがとー」
 子供は嬉しそうに受け取ると、半分に割られた芋?にかぶりついた。
 食べ、た……?
 子供の奇行に驚く。芋を買ったのは、家畜のためではない?いや、芋ではないのか? 
 混乱した。こんなに自分の理解が追い付かないのは人生で初めてかもしれない。自分よりも背の高い護衛の騎士を見上げると、同じように驚愕し、ずっと芋を凝視していて、少し落ち着いた。僕だけではないようだ。
 僕たちの視線に店の男が気づく。
「ん?初めてかな?これは芋を焼いた物だ。甘くてうまいぞ?食べてみるか?」
「は?」
 芋を、焼く?家畜の飼料を僕に食べさせようと?
「美味しいから、食べてみなよっ」
 子供の無邪気な声と笑顔で反応できず困惑する。
「いや、僕は……」
「勇気、出ない?」
「何っ」
 罪のない幼子に差し障りなく断ろうとしたら、その店の男が挑発的に微笑む。
「怖いよな?初めてって。こーんなちっちゃい子が食べられるのに、ちょっとおっきいお兄ちゃんは無理なんだな~?」
「……っ」
 ……僕の人生で初めて侮られた。
「よこせ」
 護衛騎士が止めようと身を乗り出そうとしているが手で制す。
 店の男はにやりと笑うと、店内に戻り同じような紙に包まれた芋を持ってくると半分に割り、僕と護衛騎士に渡す。
「熱いから気をつけて」
 確かに渡された芋は紙の上からでも熱い。その芋は見た事のある飼料の芋とは別物のようで、黄金に近い色をしていた。
 ずっとこちらを見ている店の男の視線に苛立ち、まだ戸惑っている護衛騎士よりも先に口に含む。
「……あまい」
 思わず、声に出してしまっていた。
 その芋は柔らかく、香ばしい匂いと共に今まで果実などで味わった甘みとは違う濃厚さがあった。
 こんな食べ物があったのか……少なからず衝撃を受けていると、店の男は腰を曲げて僕の視線に合わせると、とても嬉しそうに笑った。
「美味いだろっ?」

 ……っ!!
 何だ?
 鼓動が早まる。

「勇気出してくれて、ありがとなっ」
 僕の頭を撫でながら、店の男は無邪気に満面の笑みを見せた。
「うっ……」
 思わず胸を押さえ、その場にうずくまる。
「どうしたっ?喉に詰まったか?水持ってくるから待ってろっ」 
 店の男が慌てて店内に駆け戻る。
「ロイ様、大丈夫ですかっ」
 護衛騎士が慌てて僕の身体を支えようとするが、小さく「問題ない」と言葉を発する。
 いや、問題は、あった。 
 全身が心臓のように脈打っていた。


「一目惚れ、だったんですよ」
「あっ……も、や、め……」
 トールの真っ赤に染まった耳朶を甘噛みする。
「私に向けられる笑顔は、いつも仮面に貼り付けたようなモノばかりで……トールのあの純粋な笑顔に一気に撃ち抜かれた……って、聞いてる?」
 荒い呼吸で虚ろな目をしているトールを見下ろす。もうとっくに頭上で拘束していた両手は自由になっているのに、逃げ出そうとする素振りもない。
 そう、出来なくしたのは私だが。 
 うっそりと微笑む。
 左腕をトールの顔の横につき、右手で頬を撫でる。トールの顔は汗と涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。
 可愛い。
 堪らず、また頬を舐める。トールはそんな些細な刺激にも身体を跳ねさせた。
「ごめ、ん……ごめ、お、おれがわるかっ、だからっ、も……おねが、い」
「何?どうして欲しい?トールのお願いはすべて私が叶えるよ」
 ぽろぽろと涙を零しながら息絶え絶えに懇願するトールに甘く微笑む。
 その涙もすべて舐め取った。
「も、イキた、いっ、おねがいっ、イかせてくれっ」
「え~?」
 わざと不本意そうな声を声を出し、身体を起こす。 
 トールはもう身動ぐくらいの体力しか残っていないようで、離れた俺の身体に助けを求めるように震える手を少し持ち上げた。
 眼下のトールの姿に思わず舌舐めずりをする。
 衣服をはだけられ、下着を剥ぎ取られ、全身を舐め、甘噛みした跡が残る肢体。散々弄ばれた乳首は赤く色付き、一度も触れていない屹立はトロトロと雫をこぼしている。
「おね、が、い……もう、つら、いぃ、イキたい……ロイ、おれ、のちんこさわって、おねが、い」
 トールの強請る声に歓喜で震える。
 昔話をしながら過ぎた快楽を与えた。全身を愛撫しながらも、トールの屹立には一度も触れなかった。
 決定的な瞬間を迎えられず、燻され続けたトールは、もう自身も何を言っているか分かっていないんだろう。
「上手にお願いできたから、おしおきは終わりにしようか?」
 のトールがしてくれたように、トールの頭を優しく撫でて笑む。
 ……まぁ、私の顔は欲に塗れているだろうが。
 自らは見えないその下卑た顔を想像しながら、虚ろな目をしているトールを見つめたまま、左手でそっとトールの屹立に触れる。
「あっあっ、あぁっっ」
 軽く二度擦ると、トールは身体を跳ねさせ私の手に射精した。あまり自慰をしないのか、濃く量も多い。
 トールはようやく迎えた絶頂に安堵した表情をし、気絶するように眠りに落ちた。
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