騎士団長の望んだ褒美は異世界転生した俺でした

文字の大きさ
上 下
6 / 21

しおりを挟む
 いや、言ったよ?
 でもそれはロイ様が例え話みたいな軽い感じで「どうしても、って望む人が居たら、トールはどうしたらいいと思う?」って聞いてきたから、俺なんかに恋愛相談!?って嬉しくなっちゃって。
「それならば、外堀から埋めるんですよ。簡単に逃げられないようにするのが先決です。その相手が優しい人であればかなり有効ですっ!その後に、誠心誠意想いを伝えれば、ロイ様なら間違いないですねっ」
 ……なんて、恋愛上級者みたいなアドバイスをしたが、実は前世で読んだ恋愛漫画の受け売りだった。
 特に少女漫画。
 恋愛童貞だった俺は、やっぱり恋愛したくて、勉強目的で少女漫画を読んだ。本屋でレジに並ぶ勇気はなかったから、電子書籍でひっそりと読んでた。
 女の子の憧れる恋愛を学ぼうと読み始めた少女漫画だったが、中には泣ける話も笑える話もあり、段々勉強とか関係なく読むようになっていた。
 でも、男の俺からすると、恋愛漫画に出てくる主人公の好きな男って、めちゃめちゃ強引だったり、犯罪スレスレだったりしないか!?何度も、コレされて好きになる奴いる?って疑問に思ってた。
 で、俺は気づいたんだよ。

 イケメンなら許されるってことに!

 もし、俺みたいな奴がやったらホラー漫画になるような言葉や行動も、キラキラなイケメンがやるときゅんとするんだよ。
 女の子って、ゲンキンだよな……。もう、イケメンじゃない俺には恋愛漫画を教科書に女の子の憧れを学んでも仕方ないことに気づいたが、その経験がロイ様には活かせる。
 ロイ様はイケメンの中のイケメン。全女の子が憧れる存在である、王子様ってやつだからな。
 そんなロイ様なら、外堀を埋めて逃げられなくしてから口説くのが一番!……って、本気で思ってアドバイスした。
 だって、万が一ロイ様の外見が好みではない相手だったとして、外堀を埋められて不快だとしても、ロイ様は性格も王子様なんだ。
 優しく紳士的で、いつも国民のことを考えその声に耳を傾け、同時に自らの鍛練も怠らず、努力し続けている姿を俺は見てきた。そのストイックさに男も惚れる男ってやつだ。
 そんなロイ様が誠心誠意想いを伝えて好きにならない訳なんかない!

 ……全部、自分にブーメランとして返ってくるなんて、考えてなかったな。
 乾いた笑いしか出ない。
 あくまでロイ様のお相手は恋に臆病な可憐な令嬢の設定だった。決してこんな紙の上でしか恋愛を知らないモブの俺じゃないっ。

 このロイ様の一連の行動のアドバイザーが俺だと知り、思案顔のミハエル様の視線に俺の顔面は真っ青だった。
 ミハエル様どころか、この部屋の視線を一手に集めているが、どう言い訳しようもない。間違いなく言ったし。

「なるほどね……主犯はトール。反論はなしで確定ですね」
 主犯!?
 ミハエル様の言葉にますます青ざめる。
「あぁ、大丈夫ですよ。ロイ様の気持ちは分かっていたし、行動に出るだろうなとは思っていました。まぁ……正直こんなに早くだとは思っていなかった。剣術大会で結果を残し、騎士団長として磐石の地位を築いた後に、だろうと思っていた。私としては、各国の適齢期の王族子息、有力貴族たちにどう間違いを起こさせるか熟考していたのに……まんまとしてやられた、と言った所です」
 ミハエル様が優雅に微笑まれているが、内容が物騒すぎて顔が青から白くなった。
 間違いを起こさせるって……いやいや、間違いを起こさせないために宰相っているんじゃないんですか!?
 こ、こえー。
 手段を選ばないって正々堂々と言われると、もう何も言えない。
 ……ん?
「ミハエル様……さっき、ロイ様の気持ちは分かってたって……」
 もしかして、それって……。
「あれだけトールのことが好きだって全面に出されてたら分からない訳ないでしょう?騎士団を始め、一番身近な厨房の者や側仕えまで、トールと関わる者たちはロイ様に牽制されてますから、城中皆知ってます。気づいてないのはトールとそこの使えない国王陛下だけです」
 国王陛下の前に「使えない」って形容詞必要でした?
 ミハエル様は舌打ちでもせんばかりに苦々しい顔をしながら国王陛下を睨め付ける。さっと下を向いた国王陛下は、もうすでに散々ミハエル様に絞られた後なんだろう。
「あの時も、ロイ様が婚姻の承諾、と口にした時に皆トールだと思った。それを気づかない陛下が私の制止の視線にも気づかずどんどん詰めるから、結局トールの名前まで出て引けなくなったんですよ。今回の失態は陛下のせいでもあります。……まぁ、これも計算の上でしょうから、すべてロイ様の作戦勝ちです」
 さすが、ロイ様!ミハエル様が人を褒める言葉を口にしたのを初めて聞いた……って、皆知ってたの!?
 教えてくれよ!

「ミハエル、兄上はともかく、トールには気づかれないようにしていたから当然だ。トールに外堀を埋めるまでは相手に気持ちを知られない方が良いと言われていたからな。これから、伝える。トールに私のことを好きになってもらうために」
 国王陛下をともかく、であっさり切り捨てないで欲しい。この国のトップなのに。ひどいなー。……なんて、別のどうでもいいことを考えでもしないと、ロイ様の俺に向けられる視線と言葉が甘すぎて、俺の中で消化しきれなくなりそうだった。
 今までとは違う想いが芽生えそうで、怖かったんだ。
 俺、チョロすぎないか!?
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...