79 / 85
【俺はついにやせ我慢をやめる】
しおりを挟む
いつかのように、俺は茂みに頭からつっこんだ。
顔をかばって腕が傷だらけだ。
「何がバロッキーの番だよ、気に入らなければ攻撃してくるんじゃんか!」
クララベルを追わせない為に揉み合ったら、ナイカは刃物を出してきた。
真剣で狙ってくる時のレトさんに比べたら、ふにゃふにゃの太刀筋だったから、逃げるのは簡単だった。うっかり防御しようとして、刃に触ってしまったところが痛む。
クララベルがレトさんと合流したのが分かって、縄梯子を下りてナイカから離れようとしたら、二本あったロープの片方を切られた。
ほれみろ、結局、バロッキーの番だとか、ぜんぜん関係なかった。
咄嗟に体が縄にぶら下がる動きを思い出す。
レトさんに教えられたのが降りるじゃなくて、ロープを利用して落ちる方法でよかった。
俺は縄梯子の中程から、崖下に落ちた。素手だったら手の皮がずる剥けになるところだった。
ヨミヤの竜が追いかけてくる様子はない。俺が落ちてすぐに、ナイカの呻き声が聞こえたから、きっとレトさんが助けに来てくれたんだろう。悲鳴の度にヨミヤの竜の気配はどんどん勢いを失っていく。
レトさんが、ヨミヤの竜に何かしている。力ない呻き声や悲鳴が聞こえてはナイカは勢いを失う。レトさんがとんでもない蛮行を行っているのがわかって震えた。想像するだけで恐ろしい。
「レトさん、容赦ないからなぁ」
打ち身が重い痛みを伝えてくる。
腕がものすごく痛いから、骨が折れたかもしれない。
困った。ここから動ける気がしない。
ダンと音がして、誰かがこちらへ向かってくる。蛮行を終えたレトさんだ。
痛む体をどうにか起こして、レトさんの方へ首をまわしてみる。クララベルは近くにはいない。
「あの高さから飛んだの? レトさん、おばけじゃん」
「軽口が叩けるようで、安心しましたよ」
「二階から降りる訓練が役に立ったよ。訓練よりもっと高かったけど。ねぇ、クララベルは?」
「怪我一つありません。無事です。敵を制圧したので、ミスティさんの無事を確かめに来ました」
レトさんは素早く俺の傷の具合を確かめる。
すごく痛むところもあったけれど、レトさんは深刻そうな顔をしていない。きっと俺は大丈夫なのだろう。
「以前も思いましたが、頭を守って落下するのは大したものです。左腕は折れましたが、内臓も頭も打っていない。重大な怪我はなさそうです」
女装して参加した茶会を思い出す。あの時の愛らしいクララベルの姿が遠い昔のようにも感じられる。
あれから、そこそこは鍛えられたけれど、番を格好良く助けることができないのは今も変わっていなかった。
「ああ、茶会の時は、顔を怪我したくなかっただけなんだよね。頭を守ることなんか考えてなかったかも」
苦笑すると、レトさんはねぎらうように俺の頭を撫でる。
「なるほど、それはバロッキーらしい美意識です」
崖の上から、クララベルの声と気配がする。
怒っているような声だから、怪我もなく元気なのだろう。よかった。
そこで待っていればいいのに、クララベルの気配がまっすぐ俺に向かってくる。
(あの竜、クララベルが竜だって言ってたな)
竜か――そういえば意識してみれば、確かに竜の気配だ。
でも、やっぱりそれ以上に、愛しい大きな気配であることが際立つ。
「クララベルがこっちに向かってきてる。迎えに行ってやって」
「賊の気配はないですか?」
「ヨミヤの竜は瀕死だね。動けないみたい。レトさん、何をしたの?」
そうしているうちに、道もない茂みが割れて、クララベルが現れる。
急な坂を来たはずなのに、転んで服を汚したり、枝に髪を引っ掛けたりした様子はない。
「ミスティ!」
血だらけの俺を見ると、小さく悲鳴を上げる。
レトさんは立ち上がって、注意深く周りに視線を走らせている。泣いている主人と血だらけの俺は放っておくらしい。
「姫様、国境を越えてしまいましたね。すぐにお戻らなくてはいけません。ミスティさんは軽症ですから、治療はマルス殿に任せましょう」
「いいえ、私はここにいるわ。何かあれば私が責任を取ります。フォレー家にも怪我人がいると知らせて」
クララベルは迷いのない口調でレトに命じる。
「わかりました。では、私は一度戻って賊を連行できるようにして参ります。あの竜に話を聞く前に死なれては困りますので」
なんだかややこしいことにはなりそうだが、とにかく俺はクララベルに手を握られて、もうそれだけで満ち足りていた。
「わかったわ、行って――ねぇ、レト。ミスティはこんなに血だらけで、本当に軽症なの?」
「大丈夫です。多少折れたようですが、頭は打っていません。姫様、少々あずかっていただけますか? もう少しするとマルス殿がやってくるはずです」
「でも、血がたくさん出ているわ」
少し体が重いけれど、クララベルの膝に乗せられてからは、頓着しない。
喋るのも億劫だ。クララベルの膝に乗せられて、揺れる髪やらなにやらを目を細めて見上げる俺に、レトさんの呆れた視線が向けられたが、見逃してくれたようだ。
「ミスティさんが無事かどうかは、姫様の方がお分かりになるでしょう?」
「……そうだけど」
レトさんは片方が外れて細く頼りなく垂れ下がる縄梯子を握ると、ほとんど握力だけでするすると登っていく。
俺たちは二人、残された。
夕暮れで影の濃くなったクララベルをみあげる。
陰影とクララベルの潤んだ瞳の対比が夢のような光景だ。これはいつか絵にしよう。
「クララベル。怪我しなかった?」
こくりと頷く。青い目に涙が溜まっているけれど、なかなか落ちてはこない。
「転んだりも?」
鼻を赤くして頷く。可愛い。
「ミスティは……」
「レトさんも言ってただろ、たぶん腕は折れたっぽいけど、死んでない」
そういうことを尋ねたかったのではなかったのだろう、クララベルは言い淀んで口とへの字にする。可愛い。
目には竜らしいものは何も見当たらないけれど、意識してみれば番の大きな気配の中、竜の気配もする。
「――ほんとだ、竜なんだな。なんで気がつかなかったんだろ」
「ええと、私、竜に……なったの」
「なにそれ」
頭が働いてないので、なんだかよくわからない。頬を撫でるクララベルの手が優しい。ああ、好きだな……。
「本当に知らなかったの? ヒースだって驚いていたし、アビゲイル様もそう言っていたわ」
「なんでだ? 俺には昔から変わらないように思えるけどな……」
だとすれば、クララベルが俺の番だったからだ。
大きすぎる存在に竜の気配が埋もれていた? ということはあるかも。
「竜ってことはさ……クララベルも番がいたりするわけ?」
「い、いるわよ。竜だし」
「ふ、ふぅん……」
なんだかどこも痛くない。ふわふわした期待で、クララベルの次の言葉を待つ。
「女性の竜は、番以外の異性に触れられると、気分が悪くなってしまうのですって――」
「へ、へぇ、そうなんだ……なんだそれ」
それを聞いて、急に頭を持ち上げていられなくなって、ぐったりと力を抜く。
「あのさ、俺、死にそうなんだけど……」
「ちょっと、レトは大丈夫だっていってたんだから! いまさら死んだりしないで」
「ああ、疲れた……」
「どうしたの? 腕以外にどこか具合が悪いの? 心拍がおかしいわ、レトを呼び戻さないと」
慌て始めたクララベルに向けて、折れていない方の手を伸ばす。
きゅっと握った手を頬に当てて、俺を心配そうに見ているのは――俺の、つ!が!い!
バチンと何かがはじけた。
「ミスティ、目が……」
「そうだよ――あんなに頑張って光らせないようにしてきたのに……」
ずっと抑えていた竜の血を抑えないでいいんだとおもうと、頭が馬鹿になりそうだ。
馬鹿げた努力だった。竜の血が暴れるままにして、解放感を味わう。
どっか壊れた。俺はもう金輪際、竜の血を抑えることは出来ないだろう。
「ああ、もう、我慢するの面倒だった! すっごく疲れるんだよこれ。あーあ、なんだよもう! 早く言えよな!」
世界が明るさを増す。草に隠れている虫の声まで鮮明になり、クララベルに触れられている所、全てが脈打つ。
心配で萎れていたクララベルの顔が驚愕から、困惑に変わり、やがて紅潮する。
「……なによそれ、騙していたのね」
目の奥が熱い。わかりやすく番を求めて光っているはずだ。
「もう、どうだっていいだろ」
「よくないわよ!」
クララベルがここにいて嬉しい。
照れ隠しなのか、怒っていて可愛い。
俺が隠してきた嘘がバレても、膝から落とそうとしないし、俺の手を離さない。
「お二人とも、まだやってらっしゃったんですか? 姫様、もうすぐマルス殿が担架を持ってきますから、場所を譲ってください」
俺の幸せな時間は、レトさんの声に遮られた。目が光りっぱなしだけど、もうこのままでいいや……。
夕刻だというのに青い蝶の群れが見える。
幻覚……じゃないよな? 頭がふわふわする。
「あ、やっぱりちょっと、貧血だったかも……」
「え? ええ? やだ、虫! きゃぁ! 虫がいっぱいよ! レト! レト――」
空に舞う青い蝶を眺めて、クララベルの悲鳴を聞いているうちに、視界が急に暗くなった。
顔をかばって腕が傷だらけだ。
「何がバロッキーの番だよ、気に入らなければ攻撃してくるんじゃんか!」
クララベルを追わせない為に揉み合ったら、ナイカは刃物を出してきた。
真剣で狙ってくる時のレトさんに比べたら、ふにゃふにゃの太刀筋だったから、逃げるのは簡単だった。うっかり防御しようとして、刃に触ってしまったところが痛む。
クララベルがレトさんと合流したのが分かって、縄梯子を下りてナイカから離れようとしたら、二本あったロープの片方を切られた。
ほれみろ、結局、バロッキーの番だとか、ぜんぜん関係なかった。
咄嗟に体が縄にぶら下がる動きを思い出す。
レトさんに教えられたのが降りるじゃなくて、ロープを利用して落ちる方法でよかった。
俺は縄梯子の中程から、崖下に落ちた。素手だったら手の皮がずる剥けになるところだった。
ヨミヤの竜が追いかけてくる様子はない。俺が落ちてすぐに、ナイカの呻き声が聞こえたから、きっとレトさんが助けに来てくれたんだろう。悲鳴の度にヨミヤの竜の気配はどんどん勢いを失っていく。
レトさんが、ヨミヤの竜に何かしている。力ない呻き声や悲鳴が聞こえてはナイカは勢いを失う。レトさんがとんでもない蛮行を行っているのがわかって震えた。想像するだけで恐ろしい。
「レトさん、容赦ないからなぁ」
打ち身が重い痛みを伝えてくる。
腕がものすごく痛いから、骨が折れたかもしれない。
困った。ここから動ける気がしない。
ダンと音がして、誰かがこちらへ向かってくる。蛮行を終えたレトさんだ。
痛む体をどうにか起こして、レトさんの方へ首をまわしてみる。クララベルは近くにはいない。
「あの高さから飛んだの? レトさん、おばけじゃん」
「軽口が叩けるようで、安心しましたよ」
「二階から降りる訓練が役に立ったよ。訓練よりもっと高かったけど。ねぇ、クララベルは?」
「怪我一つありません。無事です。敵を制圧したので、ミスティさんの無事を確かめに来ました」
レトさんは素早く俺の傷の具合を確かめる。
すごく痛むところもあったけれど、レトさんは深刻そうな顔をしていない。きっと俺は大丈夫なのだろう。
「以前も思いましたが、頭を守って落下するのは大したものです。左腕は折れましたが、内臓も頭も打っていない。重大な怪我はなさそうです」
女装して参加した茶会を思い出す。あの時の愛らしいクララベルの姿が遠い昔のようにも感じられる。
あれから、そこそこは鍛えられたけれど、番を格好良く助けることができないのは今も変わっていなかった。
「ああ、茶会の時は、顔を怪我したくなかっただけなんだよね。頭を守ることなんか考えてなかったかも」
苦笑すると、レトさんはねぎらうように俺の頭を撫でる。
「なるほど、それはバロッキーらしい美意識です」
崖の上から、クララベルの声と気配がする。
怒っているような声だから、怪我もなく元気なのだろう。よかった。
そこで待っていればいいのに、クララベルの気配がまっすぐ俺に向かってくる。
(あの竜、クララベルが竜だって言ってたな)
竜か――そういえば意識してみれば、確かに竜の気配だ。
でも、やっぱりそれ以上に、愛しい大きな気配であることが際立つ。
「クララベルがこっちに向かってきてる。迎えに行ってやって」
「賊の気配はないですか?」
「ヨミヤの竜は瀕死だね。動けないみたい。レトさん、何をしたの?」
そうしているうちに、道もない茂みが割れて、クララベルが現れる。
急な坂を来たはずなのに、転んで服を汚したり、枝に髪を引っ掛けたりした様子はない。
「ミスティ!」
血だらけの俺を見ると、小さく悲鳴を上げる。
レトさんは立ち上がって、注意深く周りに視線を走らせている。泣いている主人と血だらけの俺は放っておくらしい。
「姫様、国境を越えてしまいましたね。すぐにお戻らなくてはいけません。ミスティさんは軽症ですから、治療はマルス殿に任せましょう」
「いいえ、私はここにいるわ。何かあれば私が責任を取ります。フォレー家にも怪我人がいると知らせて」
クララベルは迷いのない口調でレトに命じる。
「わかりました。では、私は一度戻って賊を連行できるようにして参ります。あの竜に話を聞く前に死なれては困りますので」
なんだかややこしいことにはなりそうだが、とにかく俺はクララベルに手を握られて、もうそれだけで満ち足りていた。
「わかったわ、行って――ねぇ、レト。ミスティはこんなに血だらけで、本当に軽症なの?」
「大丈夫です。多少折れたようですが、頭は打っていません。姫様、少々あずかっていただけますか? もう少しするとマルス殿がやってくるはずです」
「でも、血がたくさん出ているわ」
少し体が重いけれど、クララベルの膝に乗せられてからは、頓着しない。
喋るのも億劫だ。クララベルの膝に乗せられて、揺れる髪やらなにやらを目を細めて見上げる俺に、レトさんの呆れた視線が向けられたが、見逃してくれたようだ。
「ミスティさんが無事かどうかは、姫様の方がお分かりになるでしょう?」
「……そうだけど」
レトさんは片方が外れて細く頼りなく垂れ下がる縄梯子を握ると、ほとんど握力だけでするすると登っていく。
俺たちは二人、残された。
夕暮れで影の濃くなったクララベルをみあげる。
陰影とクララベルの潤んだ瞳の対比が夢のような光景だ。これはいつか絵にしよう。
「クララベル。怪我しなかった?」
こくりと頷く。青い目に涙が溜まっているけれど、なかなか落ちてはこない。
「転んだりも?」
鼻を赤くして頷く。可愛い。
「ミスティは……」
「レトさんも言ってただろ、たぶん腕は折れたっぽいけど、死んでない」
そういうことを尋ねたかったのではなかったのだろう、クララベルは言い淀んで口とへの字にする。可愛い。
目には竜らしいものは何も見当たらないけれど、意識してみれば番の大きな気配の中、竜の気配もする。
「――ほんとだ、竜なんだな。なんで気がつかなかったんだろ」
「ええと、私、竜に……なったの」
「なにそれ」
頭が働いてないので、なんだかよくわからない。頬を撫でるクララベルの手が優しい。ああ、好きだな……。
「本当に知らなかったの? ヒースだって驚いていたし、アビゲイル様もそう言っていたわ」
「なんでだ? 俺には昔から変わらないように思えるけどな……」
だとすれば、クララベルが俺の番だったからだ。
大きすぎる存在に竜の気配が埋もれていた? ということはあるかも。
「竜ってことはさ……クララベルも番がいたりするわけ?」
「い、いるわよ。竜だし」
「ふ、ふぅん……」
なんだかどこも痛くない。ふわふわした期待で、クララベルの次の言葉を待つ。
「女性の竜は、番以外の異性に触れられると、気分が悪くなってしまうのですって――」
「へ、へぇ、そうなんだ……なんだそれ」
それを聞いて、急に頭を持ち上げていられなくなって、ぐったりと力を抜く。
「あのさ、俺、死にそうなんだけど……」
「ちょっと、レトは大丈夫だっていってたんだから! いまさら死んだりしないで」
「ああ、疲れた……」
「どうしたの? 腕以外にどこか具合が悪いの? 心拍がおかしいわ、レトを呼び戻さないと」
慌て始めたクララベルに向けて、折れていない方の手を伸ばす。
きゅっと握った手を頬に当てて、俺を心配そうに見ているのは――俺の、つ!が!い!
バチンと何かがはじけた。
「ミスティ、目が……」
「そうだよ――あんなに頑張って光らせないようにしてきたのに……」
ずっと抑えていた竜の血を抑えないでいいんだとおもうと、頭が馬鹿になりそうだ。
馬鹿げた努力だった。竜の血が暴れるままにして、解放感を味わう。
どっか壊れた。俺はもう金輪際、竜の血を抑えることは出来ないだろう。
「ああ、もう、我慢するの面倒だった! すっごく疲れるんだよこれ。あーあ、なんだよもう! 早く言えよな!」
世界が明るさを増す。草に隠れている虫の声まで鮮明になり、クララベルに触れられている所、全てが脈打つ。
心配で萎れていたクララベルの顔が驚愕から、困惑に変わり、やがて紅潮する。
「……なによそれ、騙していたのね」
目の奥が熱い。わかりやすく番を求めて光っているはずだ。
「もう、どうだっていいだろ」
「よくないわよ!」
クララベルがここにいて嬉しい。
照れ隠しなのか、怒っていて可愛い。
俺が隠してきた嘘がバレても、膝から落とそうとしないし、俺の手を離さない。
「お二人とも、まだやってらっしゃったんですか? 姫様、もうすぐマルス殿が担架を持ってきますから、場所を譲ってください」
俺の幸せな時間は、レトさんの声に遮られた。目が光りっぱなしだけど、もうこのままでいいや……。
夕刻だというのに青い蝶の群れが見える。
幻覚……じゃないよな? 頭がふわふわする。
「あ、やっぱりちょっと、貧血だったかも……」
「え? ええ? やだ、虫! きゃぁ! 虫がいっぱいよ! レト! レト――」
空に舞う青い蝶を眺めて、クララベルの悲鳴を聞いているうちに、視界が急に暗くなった。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします
葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。
しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。
ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。
ユフィリアは決意するのであった。
ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。
だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる