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ギルド組合員の騎士ニコラ・カルセルト*
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「ミア、何度も言うようだが、騎士たちにそんなに親切にしてやる必要はない」
数日の間、城に泊まり込みだったニコラは、分かりやすく不機嫌だった。
「ニコラ様がお留守なので、家で余っていた菓子を振る舞っただけですよ。それの何がいけなかったのですか? 残ったら勿体無いじゃないですか」
「別に、それがいけないとは言っていない」
「じゃぁ、なんです?」
こんなやり取りも慣れたもので、拗ねたニコラの相手は、ミアにとっては赤子をあやしているのと変わらない。
「私は王子寮の改装で手が離せなくて、こんな時間までミアに会えなかったというのに、他の騎士たちはミアに茶を入れてもらって菓子を振舞われたというのか?!」
結婚してから、ニコラの牽制は睨みを利かせるものから、もっと露骨なものに変わった。
ミアの気を引こうとしていた騎士の相談に乗り、相手を紹介して驚く速さで縁談をまとめている。
リリアムはそういう様子を見て、更にニコラに対する警戒を強め、ニコラの逆鱗に触れると性的に不能になるぞ、という噂を流して叱られた。
後世でニコラが婚姻と出産の守護として名を残すことになるのは、このあたりの妙な噂に由来している。
「了見が狭いですね。家に帰れば、わたしはいるじゃないですか」
「今日も帰れないから言っている。だいたい、家のミアと仕事中のミアとでは質が違うのだ」
「同じですよ。ニコラ様がメイド服がお好きなだけじゃないですか?」
「そ、そんなことはない」
そんなことがあるのだろう。制服の採寸の時に長いことかかったのを思い出して、ミアは苦い顔をする。
年季が明けて、ミアは娼婦を辞めた。その前に結婚の書類諸々が出来上がっていたので、花街からも簡単な確認しかされなかった。
新しく名を与えられたカルセルト家は、ニコラウス王子の直属であるだけでなく、アディアール家やモーウェル家との繋がりもあることから、社交界で苦しい立場に立たされることは無い。
たまに夫婦で参加する行事でも、誰かがミアのことを元娼婦だと言い当てるのは不可能だった。ミアの立ち居振る舞いはケイトリンの厳しい指導のおかげで、並みの令嬢よりも熟れたものとなってきている。
「ニコラ様……もしかして、わたしにメイドとは違う仕事をご所望で呼び立てたのですか? 職権濫用ですよ」
ミアはシーツなどを集める為に持ってきた籠をドンと置く。どうやら洗濯物を集めるのはもっと後になりそうだ。
「そ、そんなつもりはないが、別の仕事というと……私の妻としての仕事だろうか? 本当にそんなつもりはないんだが、ああ、そうだ、今ちょうど休憩時間がとれてな」
「白々しい。だから、洗濯物を取りに来ただけなのに鍵までかけたんですね」
ニコラは心情を言い当てられると、胸を押さえて物欲しそうにミアを見つめる。一瞬、目の前に食事を置かれた飼い犬のようにみえて、ミアは頭を振って怪しい幻影を追い払う。
「……そうなんだ」
ニコラは騎士らしさを脱ぎ捨て、愛しい妻を掻き抱く。
「……ミアぁ」
ニコラは薄く付いた紅がとれるのも構わず妻に口付けた。
この展開も回を重ねるとなかなか陳腐だなとは思ったが、ニコラの高い体温が好ましくて、口付けされながらニコラの首に手をまわす。
いつものように奥の部屋の寝台に導かれることなく、机の前の椅子へ連れていかれ、ニコラの膝の上に乗せられる。
嫌な予感しかしない。
「あの、ニコラ様、いくら鍵をかけていても、管理室に鍵があるから、必要があれば誰でも入室出来るって……」
「そうだな」
ニコラは笑って口付けを続ける。
「今日は王子たちもおとなしくしているし、心配はないだろう」
「ええ?! 王子たちがおとなしくしていた事なんてあります?」
ニコラは真面目な顔を作ったが、下心のある笑みを噛み殺しているのだとすぐにわかる。
「そうなったら大変だ。いつ呼び出されるか分からないから、急がなければならないな」
「ひゃっ……」
ニコラはメイド服の裾から手を入れて、あっという間にミアの下着を脱がしてしまう。
首元のボタンを外すのも以前リリアムにされたよりも素早い。前ボタンが開いたところから見える下着を押し上げられて、外気に乳房だけが晒される。
それ以上は脱がされる様子もなく、ニコラは胸の谷間に顔を埋め、大きく深呼吸をする。
「もしかして……着たままですか?」
「嫌か?」
「嫌ですよ」
「そうか、いやなのか」
「いやよいやよも好きのうち、とか言ったら怒りますからね」
椅子に向かい合って座面に膝立ちにされて、ニコラは剥き出しの胸に鼻を埋めながら脚の方から手を入れて太股を撫でる。
そのまま手は臀部まで這い上がって、足の付け根辺りの肉を捏ねながら「穿いてないな」と呟く。
「ニコラ様が脱がせたのでしょ……んっ」
持ち上げるように臀部の双丘を揉んでいた手が片手で腰を抱くと、もう片方を前から股の間に差し入れて遠慮なく秘部をまさぐり始める。敏感な芽も一緒に撫でられて、ミアは甘い声を洩らした
「ふふ、濡れてきた……怒らないのか?」
「んっ……おこってますよ」
喘ぎ声を誤魔化したいのと、これ以上、言葉責めのようなことをされたくなくて、ニコラの頭に縋り付くようにして口付けた。
ニコラのキスはいつもミアの思考を奪う。
流されるように口付けに応えていると、小さな水音が室内に響き始めた。
「待って、ニコラ様、汚れちゃう」
「では裾を捲っていればいい。そうしたら汚れないだろ?」
「えええ、捲って見せるんですか? やだなぁ」
もうミアは娼婦ではないので、ニコラの要求に無条件で応えるわけではない。
あまり普通ではない状況で求められても、こうやって付き合っているのは、結局のところニコラのことが好きだからだ。
「嫌ならそのまま挿れてしまうよ。その場合、汚さない約束はできないが」
ミアは俯きながらしぶしぶスカートの裾を持ち上げる。秘部があらわになると、ニコラはミアの中に出入りする自分の指を熱心に見つめた。濡れた指を膣口ギリギリまで引き抜いて、歓迎するようにうねる秘肉に逆らって奥に埋め戻す動きを繰り返してミアの反応を見ている。
「……や、見ないで……」
「できない相談だ」
剥き出しの胸の先を唇で挟み込んで弄ぶと、ミアは顔を紅潮させてスカートの裾を握り締める。
「もう欲しいのか?」
「……」
ミアは虚勢を張ることもできずに無言で頷いた。
ミアの体液は糸を引いてニコラの服に染みをつけている。これから洗濯に持ち帰るものでなければ悲鳴をあげているところだ。
「それなら、今日はミアが主導してくれないだろうか」
「え?」
ニコラはベルトを外し、さっきから張り詰めていたニコラ自身を取り出した。
赤黒く反り返った猛りが、飛び出してすぐにミアの蜜口に吸い付くように口付ける。
「ほら、私はもうこんなだ。お互い我慢は良くない。裾は私が持っているから」
「そんなの、むり……」
そう言ったけれど、ミアは、ニコラに支えられて、少しずつ腰を落としていく。
熱い杭が食い込んで思わず腰を引くと、逃げられないようにぐっと引き寄せられる。
主導してほしいと言ったくせに、ミアの好きなようにはさせてくれないらしい。
早く早くと蜜口に当てられる大きすぎる質量に、ミアはぞくぞくと戦慄する。
「ほんとに、入らないですよ……」
「入る。挿れてくれ」
ミアはなかなか覚悟が決まらず、ニコラの亀頭を少しばかり飲み込んで、はくはくと膣口で肉茎を締め上げる。
「ミア、もっと奥まで……」
「ん、んっ……ニコラ様、押しこまないで」
その時ニコラの宿泊室のドアを叩く音がした。
ミアは自分がいる場所を思い出して、自分の口を両手で押さえ動きを止める。
「ニコラ! 大変だ! アデルア職員が剣の稽古をつけに城に派遣されるらしいって! さっき陛下にご挨拶にうかがったら、アディアール騎士が派遣を許可したって! 俺たちはお終いだ!」
ドアの前でリウイ王子が絶望したような声で騒いでいる。
ニコラはため息をつくと、ミアの耳元に口を寄せて小さく「続けて」と囁いた。
ミアはニコラに腰を抱かれていて逃げられない。
「ニコラ様……これは、さすがに……」
「しっ、静かに」
ニコラは止める様子がない。きっとそういう遊びなのだ。
ミアは、仕方なく口を押さえたまま、腰を沈めていく。
ミアがふるふると震えながら、それでもどうにかニコラを飲み込もうとする様子に、ニコラは普段以上に直径を大きくして、ミアを追い詰める。
「ニコラ、中にいないのか?」
王子はまたドアを叩く。ミアはいつドアが開けられてしまうかとはらはらしながら、ニコラに抱きしめられて行為を続ける。
ニコラは耳を舐めながら、上手だ、もっとだ、と小声でミアを励まして己の欲を満たす。
「おーい、ニコラー!」
ドンドンとドアを叩く音が再び聞こえる。
ニコラはミアの口を手で塞ぐと、ミアを固定して、下から狭い膣内に入り込む動きを始める。
そうしながら、ドアの外に向かって声を張る。
「リウイ王子、その話は私の休憩が終わってからでも出来る話です。この国の王になる方は家臣に十分な休息も与えられないということでしょうか?」
ニコラに窘められ、リウイはしまったと小さくつぶやいた。
ニコラが王子の世話に嫌気がさして辞めるに至ったという噂は本人たちの耳にもはいった。
ギルドからロイ・アデルアが派遣された時、ニコラがどれほど王子達に敬意をもって仕えてきたのかを知り、誰もがニコラの復帰を望んだ。それからは少しずつ王子達の態度も改まってきている。
「……あ、ああ、わかった。ニコラは休憩中だったな。それなら、また夕食後に……」
「畏まりました。夕食後に伺いましょう」
ミアは王子が去っていくまでに、ニコラに揺すられながら、どうにか一番太い場所まで咥えこんだ。
「もう! あの状態で続けさせるって、なんですか」
王子の足音が遠ざかり、ミアはニコラの頬を抓る。
「ああ、すごく……興奮した……」
ニコラは、悦かったのか、感激して何度もミアの頬にキスを浴びせかける。
「確信犯ですね! いつもより大きいし、大変だったのに……もう抜いてください!」
「大きかったか……ふふ……だがな、ミア、私も限界なんだ――」
「あっあっ……ああっ!」
ニコラはミアの背を抱きしめ半分ほど飲み込まれた屹立を一度に押し込こんだ。
奥まで入り込んだニコラの熱がミアを急速に絶頂まで押し上げる。
ニコラはそのままミアを寝室に連れて行く。
「もう私が嫌になったか?」
「嫌だったら、ニコラ様の様子を見に来たりしません」
ミアの中に這入りこんだ陰茎は、まだその存在を主張し続けている。ミアを組み敷いて、指を絡め、ニコラは続きを強請る。
「もう少しミアが欲しい」
「はいはい。わたしもニコラ様がいないとさみしいですよ」
ニコラの休憩時間が終わるまで、まだもう少し時間がありそうだ。
*
ミアの身支度を整えて、ニコラはすっかり満ち足りた様子で持ち帰り品を籠に入れた。
「こんな顔で一人で帰すわけにはいかないな。家まで送ろう」
「お仕事はいいのですか?」
「夕食後にまた戻ればいい。ミアと何か食べてから城に戻ることにするよ」
化粧まで直したので、ついさっきまでの情事の気配は微塵も感じられないが、ニコラは少しでもミアと一緒にいる時間が欲しかった。
ミアを連れて城外へ向かっていると、リウイ王子が小走りでやって来る。どうしてもさっきの話をニコラに聞かせたかったようだ。
「リウイ王子、何かありましたか?」
「ニコラ、聞いてくれ。さっきも言ったが、ロイ・アデルアが……」
体力に自信のないリウイ王子にとって、ロイ・アデルアの訓練は恐怖だった。今まで仮病を使って休んできたので、次もどうにか休めないかと打診しに来たのであろう。
リウイ王子に必要なのは、克己心だ。ニコラはもう王子達を甘やかすつもりはない。
「王子、食事を抜いておくことをおすすめしますよ」
「え?」
「アデルア殿の訓練は、胃の中に何か残っていると、大変なことになりますから」
「そんな! ニコラ、どうにかしてくれよ!」
「私は妻を家まで送って参りますので、また夕食後に。くれぐれも騒ぎを起こされませんように」
王子の悲鳴を背に聞いて、ミアと家路を急ぐ。
一度は騎士を辞しても何の悔いも無いと思っていたが、今はそれほど王子の世話をするのが苦痛に感じることは無くなってきていた。
ニコラ・カルセルトは絵にかいたような騎士だ。
ギルドの組合員でもあるので、その仕事は多忙を極める。
妻のミア・カルセルトと並ぶと、その騎士らしさは更に際立つ。
ニコラの完璧な仕事ぶりは妻の献身により支えられている。
精神的にも肉体的にも満ち足りた結婚がニコラをより輝かせる。
とはいえ、今日のニコラの夜勤を支えるのは、服の内ポケットに忍ばせた一枚の女性用下着なのだが。
end
数日の間、城に泊まり込みだったニコラは、分かりやすく不機嫌だった。
「ニコラ様がお留守なので、家で余っていた菓子を振る舞っただけですよ。それの何がいけなかったのですか? 残ったら勿体無いじゃないですか」
「別に、それがいけないとは言っていない」
「じゃぁ、なんです?」
こんなやり取りも慣れたもので、拗ねたニコラの相手は、ミアにとっては赤子をあやしているのと変わらない。
「私は王子寮の改装で手が離せなくて、こんな時間までミアに会えなかったというのに、他の騎士たちはミアに茶を入れてもらって菓子を振舞われたというのか?!」
結婚してから、ニコラの牽制は睨みを利かせるものから、もっと露骨なものに変わった。
ミアの気を引こうとしていた騎士の相談に乗り、相手を紹介して驚く速さで縁談をまとめている。
リリアムはそういう様子を見て、更にニコラに対する警戒を強め、ニコラの逆鱗に触れると性的に不能になるぞ、という噂を流して叱られた。
後世でニコラが婚姻と出産の守護として名を残すことになるのは、このあたりの妙な噂に由来している。
「了見が狭いですね。家に帰れば、わたしはいるじゃないですか」
「今日も帰れないから言っている。だいたい、家のミアと仕事中のミアとでは質が違うのだ」
「同じですよ。ニコラ様がメイド服がお好きなだけじゃないですか?」
「そ、そんなことはない」
そんなことがあるのだろう。制服の採寸の時に長いことかかったのを思い出して、ミアは苦い顔をする。
年季が明けて、ミアは娼婦を辞めた。その前に結婚の書類諸々が出来上がっていたので、花街からも簡単な確認しかされなかった。
新しく名を与えられたカルセルト家は、ニコラウス王子の直属であるだけでなく、アディアール家やモーウェル家との繋がりもあることから、社交界で苦しい立場に立たされることは無い。
たまに夫婦で参加する行事でも、誰かがミアのことを元娼婦だと言い当てるのは不可能だった。ミアの立ち居振る舞いはケイトリンの厳しい指導のおかげで、並みの令嬢よりも熟れたものとなってきている。
「ニコラ様……もしかして、わたしにメイドとは違う仕事をご所望で呼び立てたのですか? 職権濫用ですよ」
ミアはシーツなどを集める為に持ってきた籠をドンと置く。どうやら洗濯物を集めるのはもっと後になりそうだ。
「そ、そんなつもりはないが、別の仕事というと……私の妻としての仕事だろうか? 本当にそんなつもりはないんだが、ああ、そうだ、今ちょうど休憩時間がとれてな」
「白々しい。だから、洗濯物を取りに来ただけなのに鍵までかけたんですね」
ニコラは心情を言い当てられると、胸を押さえて物欲しそうにミアを見つめる。一瞬、目の前に食事を置かれた飼い犬のようにみえて、ミアは頭を振って怪しい幻影を追い払う。
「……そうなんだ」
ニコラは騎士らしさを脱ぎ捨て、愛しい妻を掻き抱く。
「……ミアぁ」
ニコラは薄く付いた紅がとれるのも構わず妻に口付けた。
この展開も回を重ねるとなかなか陳腐だなとは思ったが、ニコラの高い体温が好ましくて、口付けされながらニコラの首に手をまわす。
いつものように奥の部屋の寝台に導かれることなく、机の前の椅子へ連れていかれ、ニコラの膝の上に乗せられる。
嫌な予感しかしない。
「あの、ニコラ様、いくら鍵をかけていても、管理室に鍵があるから、必要があれば誰でも入室出来るって……」
「そうだな」
ニコラは笑って口付けを続ける。
「今日は王子たちもおとなしくしているし、心配はないだろう」
「ええ?! 王子たちがおとなしくしていた事なんてあります?」
ニコラは真面目な顔を作ったが、下心のある笑みを噛み殺しているのだとすぐにわかる。
「そうなったら大変だ。いつ呼び出されるか分からないから、急がなければならないな」
「ひゃっ……」
ニコラはメイド服の裾から手を入れて、あっという間にミアの下着を脱がしてしまう。
首元のボタンを外すのも以前リリアムにされたよりも素早い。前ボタンが開いたところから見える下着を押し上げられて、外気に乳房だけが晒される。
それ以上は脱がされる様子もなく、ニコラは胸の谷間に顔を埋め、大きく深呼吸をする。
「もしかして……着たままですか?」
「嫌か?」
「嫌ですよ」
「そうか、いやなのか」
「いやよいやよも好きのうち、とか言ったら怒りますからね」
椅子に向かい合って座面に膝立ちにされて、ニコラは剥き出しの胸に鼻を埋めながら脚の方から手を入れて太股を撫でる。
そのまま手は臀部まで這い上がって、足の付け根辺りの肉を捏ねながら「穿いてないな」と呟く。
「ニコラ様が脱がせたのでしょ……んっ」
持ち上げるように臀部の双丘を揉んでいた手が片手で腰を抱くと、もう片方を前から股の間に差し入れて遠慮なく秘部をまさぐり始める。敏感な芽も一緒に撫でられて、ミアは甘い声を洩らした
「ふふ、濡れてきた……怒らないのか?」
「んっ……おこってますよ」
喘ぎ声を誤魔化したいのと、これ以上、言葉責めのようなことをされたくなくて、ニコラの頭に縋り付くようにして口付けた。
ニコラのキスはいつもミアの思考を奪う。
流されるように口付けに応えていると、小さな水音が室内に響き始めた。
「待って、ニコラ様、汚れちゃう」
「では裾を捲っていればいい。そうしたら汚れないだろ?」
「えええ、捲って見せるんですか? やだなぁ」
もうミアは娼婦ではないので、ニコラの要求に無条件で応えるわけではない。
あまり普通ではない状況で求められても、こうやって付き合っているのは、結局のところニコラのことが好きだからだ。
「嫌ならそのまま挿れてしまうよ。その場合、汚さない約束はできないが」
ミアは俯きながらしぶしぶスカートの裾を持ち上げる。秘部があらわになると、ニコラはミアの中に出入りする自分の指を熱心に見つめた。濡れた指を膣口ギリギリまで引き抜いて、歓迎するようにうねる秘肉に逆らって奥に埋め戻す動きを繰り返してミアの反応を見ている。
「……や、見ないで……」
「できない相談だ」
剥き出しの胸の先を唇で挟み込んで弄ぶと、ミアは顔を紅潮させてスカートの裾を握り締める。
「もう欲しいのか?」
「……」
ミアは虚勢を張ることもできずに無言で頷いた。
ミアの体液は糸を引いてニコラの服に染みをつけている。これから洗濯に持ち帰るものでなければ悲鳴をあげているところだ。
「それなら、今日はミアが主導してくれないだろうか」
「え?」
ニコラはベルトを外し、さっきから張り詰めていたニコラ自身を取り出した。
赤黒く反り返った猛りが、飛び出してすぐにミアの蜜口に吸い付くように口付ける。
「ほら、私はもうこんなだ。お互い我慢は良くない。裾は私が持っているから」
「そんなの、むり……」
そう言ったけれど、ミアは、ニコラに支えられて、少しずつ腰を落としていく。
熱い杭が食い込んで思わず腰を引くと、逃げられないようにぐっと引き寄せられる。
主導してほしいと言ったくせに、ミアの好きなようにはさせてくれないらしい。
早く早くと蜜口に当てられる大きすぎる質量に、ミアはぞくぞくと戦慄する。
「ほんとに、入らないですよ……」
「入る。挿れてくれ」
ミアはなかなか覚悟が決まらず、ニコラの亀頭を少しばかり飲み込んで、はくはくと膣口で肉茎を締め上げる。
「ミア、もっと奥まで……」
「ん、んっ……ニコラ様、押しこまないで」
その時ニコラの宿泊室のドアを叩く音がした。
ミアは自分がいる場所を思い出して、自分の口を両手で押さえ動きを止める。
「ニコラ! 大変だ! アデルア職員が剣の稽古をつけに城に派遣されるらしいって! さっき陛下にご挨拶にうかがったら、アディアール騎士が派遣を許可したって! 俺たちはお終いだ!」
ドアの前でリウイ王子が絶望したような声で騒いでいる。
ニコラはため息をつくと、ミアの耳元に口を寄せて小さく「続けて」と囁いた。
ミアはニコラに腰を抱かれていて逃げられない。
「ニコラ様……これは、さすがに……」
「しっ、静かに」
ニコラは止める様子がない。きっとそういう遊びなのだ。
ミアは、仕方なく口を押さえたまま、腰を沈めていく。
ミアがふるふると震えながら、それでもどうにかニコラを飲み込もうとする様子に、ニコラは普段以上に直径を大きくして、ミアを追い詰める。
「ニコラ、中にいないのか?」
王子はまたドアを叩く。ミアはいつドアが開けられてしまうかとはらはらしながら、ニコラに抱きしめられて行為を続ける。
ニコラは耳を舐めながら、上手だ、もっとだ、と小声でミアを励まして己の欲を満たす。
「おーい、ニコラー!」
ドンドンとドアを叩く音が再び聞こえる。
ニコラはミアの口を手で塞ぐと、ミアを固定して、下から狭い膣内に入り込む動きを始める。
そうしながら、ドアの外に向かって声を張る。
「リウイ王子、その話は私の休憩が終わってからでも出来る話です。この国の王になる方は家臣に十分な休息も与えられないということでしょうか?」
ニコラに窘められ、リウイはしまったと小さくつぶやいた。
ニコラが王子の世話に嫌気がさして辞めるに至ったという噂は本人たちの耳にもはいった。
ギルドからロイ・アデルアが派遣された時、ニコラがどれほど王子達に敬意をもって仕えてきたのかを知り、誰もがニコラの復帰を望んだ。それからは少しずつ王子達の態度も改まってきている。
「……あ、ああ、わかった。ニコラは休憩中だったな。それなら、また夕食後に……」
「畏まりました。夕食後に伺いましょう」
ミアは王子が去っていくまでに、ニコラに揺すられながら、どうにか一番太い場所まで咥えこんだ。
「もう! あの状態で続けさせるって、なんですか」
王子の足音が遠ざかり、ミアはニコラの頬を抓る。
「ああ、すごく……興奮した……」
ニコラは、悦かったのか、感激して何度もミアの頬にキスを浴びせかける。
「確信犯ですね! いつもより大きいし、大変だったのに……もう抜いてください!」
「大きかったか……ふふ……だがな、ミア、私も限界なんだ――」
「あっあっ……ああっ!」
ニコラはミアの背を抱きしめ半分ほど飲み込まれた屹立を一度に押し込こんだ。
奥まで入り込んだニコラの熱がミアを急速に絶頂まで押し上げる。
ニコラはそのままミアを寝室に連れて行く。
「もう私が嫌になったか?」
「嫌だったら、ニコラ様の様子を見に来たりしません」
ミアの中に這入りこんだ陰茎は、まだその存在を主張し続けている。ミアを組み敷いて、指を絡め、ニコラは続きを強請る。
「もう少しミアが欲しい」
「はいはい。わたしもニコラ様がいないとさみしいですよ」
ニコラの休憩時間が終わるまで、まだもう少し時間がありそうだ。
*
ミアの身支度を整えて、ニコラはすっかり満ち足りた様子で持ち帰り品を籠に入れた。
「こんな顔で一人で帰すわけにはいかないな。家まで送ろう」
「お仕事はいいのですか?」
「夕食後にまた戻ればいい。ミアと何か食べてから城に戻ることにするよ」
化粧まで直したので、ついさっきまでの情事の気配は微塵も感じられないが、ニコラは少しでもミアと一緒にいる時間が欲しかった。
ミアを連れて城外へ向かっていると、リウイ王子が小走りでやって来る。どうしてもさっきの話をニコラに聞かせたかったようだ。
「リウイ王子、何かありましたか?」
「ニコラ、聞いてくれ。さっきも言ったが、ロイ・アデルアが……」
体力に自信のないリウイ王子にとって、ロイ・アデルアの訓練は恐怖だった。今まで仮病を使って休んできたので、次もどうにか休めないかと打診しに来たのであろう。
リウイ王子に必要なのは、克己心だ。ニコラはもう王子達を甘やかすつもりはない。
「王子、食事を抜いておくことをおすすめしますよ」
「え?」
「アデルア殿の訓練は、胃の中に何か残っていると、大変なことになりますから」
「そんな! ニコラ、どうにかしてくれよ!」
「私は妻を家まで送って参りますので、また夕食後に。くれぐれも騒ぎを起こされませんように」
王子の悲鳴を背に聞いて、ミアと家路を急ぐ。
一度は騎士を辞しても何の悔いも無いと思っていたが、今はそれほど王子の世話をするのが苦痛に感じることは無くなってきていた。
ニコラ・カルセルトは絵にかいたような騎士だ。
ギルドの組合員でもあるので、その仕事は多忙を極める。
妻のミア・カルセルトと並ぶと、その騎士らしさは更に際立つ。
ニコラの完璧な仕事ぶりは妻の献身により支えられている。
精神的にも肉体的にも満ち足りた結婚がニコラをより輝かせる。
とはいえ、今日のニコラの夜勤を支えるのは、服の内ポケットに忍ばせた一枚の女性用下着なのだが。
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しおりを挟んでくださっている皆様へ。
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