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中に入れてください*
しおりを挟むこの半年間の煮え切らない様子とは違い、ニコラの動きには一切の迷いがない。
ミアが反応するところなど分かっているとばかりに的確に快感を暴いていく。
「ほら、力をぬくんだ。今、楽にしてやろう」
ニコラは、何でもできる男だった。
姫に仕える、ありとあらゆる場面を想定して研鑽に励んできた為だ。それは寝室の中でのことも含まれる。
ニコラの好む、姫と騎士を主題とした艶本では、火照った姫の身体を騎士が慰める場面など、当たり前のように描かれている。
それを参考にしつつ、娼婦に頼み込んで練習させてもらってきたのは、きっとこういう場面の為に違いない。
大きな手が背中の方から股座に滑り込み、秘唇をなぞり通り過ぎたかと思えば、幾度か往復して、ミアの敏感な芽を掠める。
的確な鋭い快感がミアの身体を跳ねさせる。
「あっ……わたしは自分でできますから……んっ、捨ておいてください」
ミアは水揚げこそ済んでいなかったが、先輩娼婦からの研修を受けていた。
秘部を弄られて快感を得る練習もあったが、ニコラの巧みさがその比ではなかったことに驚愕した。
「私の願い出たことで、こんな事になってしまったのなら、私の責任だ」
こんな目も当てられないような場面なのに、ニコラの声はやけに落ち着いていて、本当にただ人助けをしているような語調を保っている。
「だからって……」
ニコラは必要以上にミアを辱めないように、快感が得やすい場所だけに的を絞って触れる。
そこにはニコラの欲は感じ取れない。
優しく頭を撫でられて、泣く子をあやす様な穏やかさでミアの快感をほじくり返す。
「んっ……あっ、あっ……や……っ……」
寝室にミアの押し殺した喘ぎ声と密かな水音だけが響く。
「どうだ? 苦しくないか?」
甘い毒のような囁きで、はっと、ニコラに奉仕されていることに気がついたミアは、ニコラの腕から逃れようと身をよじる。
「ニコラ様、こんなの駄目です……わたしには何もさせてくれないのに……」
もう、指に翻弄されていて、ニコラにすがるしかないというのに、一生懸命何かを主張しようとするミアが愛らしい。
冷静を装ってミアを慰めるつもりだったのに、心臓を掴まれたような切なさに、うっかり欲をぶつけてしまいそうになり、ニコラは頬の裏側の肉を噛んで耐えた。
「ミアはそんなことしなくていい。何度言ったら分かってくれるのだ」
指先に触れる小さな尖った芽を傷つけないように気を付けて摘まみ上げると、面白い程にミアは嬌声をあげる。
「きゃあぁっ……んっ、あっ、ニ……ニコラ様……これではあべこべです。これでは、私だけ達してしまいます……」
かすれた声でミアがニコラを呼ぶので、ニコラは口の中をひどく傷つけて耐えた。
快感に耐えるミアの背中を撫でて、快感に抗うミアを宥める。
(指を挿入して慰めようかと思ったが、これは無理だな……)
ミアの蜜口はたくさん蜜を吐き出してはいるが、まだ初々しくニコラの指の侵入を拒んだ。
「いいんだ、ミアの体が素直なだけだ。よく濡れていて愛らしい。今、楽にしてやるから、私に身を委ねて……」
ミアは暴力的なまでの的確な快感に混乱したまま、ニコラの手を受け入れる。
体のこわばりを解いたミアに気をよくしたのか、ニコラは殊更、目がくらみそうな強い快感ばかりを与えてくる。
「なんか……だめ…お腹、へん……」
花芯を潰されてその奥の芯をゆすられて、ミアは再び慌てだした。
「ミア、大丈夫だ、達するだけだ。怖がらないで、そのままおいで……」
抱きしめて、より一層、甘く愛撫を強めていく。
「や、あっ……」
ミアは、こんな声が出るのかと自分で赤面するほど艶やかな声で鳴いた。
ニコラは、達したミアから、濡れて張り付いた下着を、あっという間に脱がせ、しとどに濡れた股間を拭い、代わりに自分のガウンを纏わせた。
(愛らしかった……とてつもなく愛らしい……)
平気な顔をしていたが、ニコラの内側は真っ赤なのか、真っ黒なのか判別もつかないほどに爛れていた。
神経が焼き切れたようになっているのに、ミアの背を撫で息が整うのを待って、何でもないような顔で一人浴室に入っていく。
内鍵を閉めたとたんにもう駄目だった。
バタン、ガタンと何かにぶつかったような気がしたが、自分でもよくわからない。
「うっ、あっ……」
ニコラは限界だった。
ミアが浴室の近くにいるのは承知していたが、ミアの体液のついた指と、ミアの匂いのしみついた下着で己の猛りを扱く。快感を押し殺せなくて、声が漏れて浴室に響く。
ニコラの状況を把握したミアが、浴室の外からなにか言っているが、耳鳴りがして聞き取れない。
「ニコラ様、お一人でなさるなんて嫌です。ここまでしておいて、なんですか! 私をお使いくださいませ! 浴室の鍵を開けてください! ニコラ様、中に入れてください!」
ミアがドンドンと浴室のドアを叩く。
ミアの「中に」と言う単語が幻想を伴ってニコラをより一層奮い立たせる。
「ば……中に入れてとか……今、そんなこと言うんじゃ、ないっ」
ミアの体液が染みついた夜着に剛直を擦り付けながら、ミアの媚態を思い出す。
「ニコラ様、嫌です! お一人でなさらないでください! 嫌ですってば!」
添い寝の間に溜まりに溜まった欲望の渦が、陰嚢を重くしている。
「ニコラ様、ここを開けて、私の体で慰めさせてください」
(もう長くはもたない……)
「だから、そういうはしたないことを……」
「すぐにお使いいただけるようにしますので、ご自身でなさらないで、ミアのここでしてください!」
今のニコラには、ミアの発する言葉、全てが凶器だった。
(そうだった、ミアの柔らかい秘部に私は触れたのだ……あの柔らかさ……)
ぬるぬると誘うようにあふれる愛液を思い出すともう限界だった。
指についていたミアの愛液をべろりと舐めとると、背徳感が背筋を駆け巡る。
「う、ぐっ……」
ニコラの鈴口から、たいして触れてもいないのに馬鹿馬鹿しい量の白濁が飛び出し、ミアの夜着だけでは止まらず、浴室を汚した。
「ニコラ様のバカぁ……」
ドアの外からミアの罵る声が聞こえたが、今まで味わったことのないような快感を得てしまったニコラは、ミアの罵り声さえ教会の鐘のように聞こえた。
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