犬より猫が好きな理由

砂山一座

文字の大きさ
上 下
4 / 10

猫のいる生活

しおりを挟む
 猫のいる生活は苦労の連続だ。
「ネロ、重い! どいてよ。なんで決まったところで寝ないのよ!」
 ネロと名乗った猫の獣人は、怠惰な生活を送っている。
 昼間は大体寝ている。
 食事の時間が決まっていない。
 まぁそれは、猫舌で熱々は食べられないのだと主張するから、割り切る事にした。保冷庫に作り置きして置けば、いつの間にか食べている。
 好き嫌いが激しいのは腹立たしい。
 好物なのかと思って多めに作っておくと、飽きたから食べないとかす。その癖、この間のあれはないのかとは、これ如何に。

「今日はここで寝たい気分なんだけど」
 寝る場所がころころ変わるのも何なのだろう? 小さなネコもを飼ったことがないので、全く理解しがたい。
 最近は暑いのか、キッチンの作業台で大の字になって寝てたり、水の入ってないバスタブに丸まって入っていたり――全裸で対面するエロハプニングを引き起こしてしまった――非常に邪魔だ。

「だから、私の寝室には入ってこないでって言ったじゃない」
 今日は布団の上で寝たい気分だったらしい。
「はいはい。聞いたよ。きく気はないけど」
 問題は私に跨って胸を揉みしだいていることだ。
「ご主人、おっぱいでかいじゃん。ちよっとフミフミさせてよ」
 手の腹でパンをこねるように、リズミカルに胸を押していく。
「やだっ、つ、爪を立てないでよ! パジャマに穴が開くじゃない?!」
「あー、やわらかい。おちつくー」
 手を動かしながら、下半身を擦り付けてくる。
「落ち着くとかいって、下のモノ擦り付けるのやめてよ。落ち着くのとは反応が真逆でしょうが!」
 明らかにネロの息が不穏に上がり始める。
「そうでもないんだなー。俺、中に突っ込んでから一息つくのとかすげェ好きだけど? 今度ご一緒にどうですかね、ご主人?」
 クイっと腰を突き出すように動かす。
「あ、ヤベ。ちょっと出ちゃった~」
 慌てて股間に手を突っ込み、変な液体を持て余したように見せつけてくる。
「もうやだ! 捨てる! 捨てたい!」
 一度追い払ったのに、目が覚めると足元に丸まっているネロをベッドの下に蹴り落すまでが戦いだ。





 猫がいる時には仕事が捗らない。
 暇そうにしているのだから、大人しく寝ていればいいのに、こんな時に限って絡んでくる。
「ねー、なにやってんの?」
「仕事」
 仕事を邪魔される前に終わらせてしまいたいのに、ヌルヌルと私の周りを歩き回る。
「俺のごはんは?」
「テーブルの上に置いといたから、勝手に食べて」
 後ろから私に抱きつき、尻尾を絡める。
「一緒に食べようよー」
「今は無理」
「いけずー」
 ザリザリと首筋を舐めるな。皮膚が削れる!

 しばらく無心に線を描くことに集中していた。
 ふと視線をあげると黒いしっぽがやけに近いところに見える
「あんた……何してんのよ」
 図面の上にネロがいる。

 全裸で。

「まぁ、ほら、暇だから」
 長い尻尾をうねらせて、私の作業する手に絡ませる。
「暇だから脱ぐの?」
「フワフワのとこ見る?」
 尻を高くあげ尻尾を立て、ふわりと丸い睾丸を見せつけてくる。
「俺のにじゃれて遊んでもいいんだぜ。ご主人、これ好きだろ?」
「自分の睾丸にどれだけ自信があるのよ」
 どうやらネロは遊んで欲しいらしい。
「私、先の尖ったペンで線引いてるんだけど?」
「俺のも結構尖り気味だけど、ペンの代わりに握る?」
 言いながら興奮したのか凶悪な陰茎を膨らませている。
 ひどいセクハラだ。
「どう? ヒトのとは違うでしょ」
 うっ、つい見ちゃうでしょ、目の前に出されたら。
 赤い猛りは根元が太く、先に行くほど細く尖り、ヒトのものとは違うが亀頭のような膨らみがある。
「……トゲとかないの?」
 うっかり気がそれて訊いてしまう。これは悪手だ。
「どう思う? 挿れてみたらわかると思うけど」
 ニヤニヤと目を細めて笑う。
 ペタペタと紙に陰茎をつけるな。
「くっだらない。もう邪魔だからどいてよ。仕事が終わらないじゃない」
 無理やり仕事に意識を戻す。大変危険だ。
 うっかり乗ったら人生が崩壊する類の遊びに誘われているのだから。
「ねー、ご飯食べようよ。いっしょにたべたほうが美味しいよ」
「いつもご飯ができたと呼んでも来ないくせに」
「ねー、紙とペンより俺のコレとソレだよ~」
「邪魔」
 ここでかまってしまうと、永遠に仕事が終わらない。
 無視をして黙々と仕事に没頭する。
 もう目の前でピクピクと膨らんだ陰茎が踊っていても気にしない。

「ちっ、ここにザーメンでマーキングしてやる」
 ネロは不貞腐れたように図面の上にあぐらをかいて座り、局部を弄りはじめる。

「やだ! もーやめてよ! ぎゃぁ、あんた本気でやるつもりだったでしょ?! なんかちょっとついてる!」
 ついにフサフサの睾丸がキュンと縮むのを見て、慌てて止める。
「わかった、わかったから、ご飯を先にするから、もうソレは仕舞ってよ!」
 私はついにペンを投げだした。
「やったー!」
「その格好でくっつかないで! 服に変なのついちゃうー」
 ネロの機嫌は急上昇した。ゴロゴロと喉を鳴らして全裸でひっついてくる。
「ご主人にマーキングしたっていいんだぜ」
「お断りよ」

 世の中のネコ科の獣人を拾ってしまった女性は、普通の生活が送れているのだろうか。それとも単にネロがおかしいのか……。

「あんた猫舌なんだから、先食べてて。
 私はごはん温めてくるから。
 ……手はちゃんと洗ってよね」
 陰部を弄んだ手で食事をされてはたまらない。

 だいぶ遅い夕食が始まった。
 外から雌猫の鳴き声が聞こえてくる。獣人ではない小さい方の猫だ。
 雄を誘っているのだろう。
 そうだ、恋の季節だし、ネロも番を探しに外に出ればいいのだ。雄猫は繁殖の季節になると元の縄張りを離れて雌に求愛するというし。獣人だって同族と番えば変にヒトの街に現れないかもしれない。

「ネロは番を見つけに行ったりしないの?」
 冷えてふやけたリゾットを舐めるようにして食べていたネロは、スプーンを取り落とし唖然として私を見た。
「本気で言ってるの?」
「ネロだって、番を持てばもう少しまともになるんじゃない?」
 ネロは怒ったのか耳を伏せて、瞳孔を真っ黒開いて床に落ちたスプーンを不機嫌に蹴った。
「ご主人は、全然わかってない」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

一宿一飯の恩義

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 妹のアイミが、一人暮らしの兄の家に泊まりに来た。コンサートで近くを訪れたため、ホテル代わりに利用しようということだった。 兄は条件を付けて、アイミを泊めることにした。 その夜、条件であることを理由に、兄はアイミを抱く。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...