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 クロームは丁寧に私を解していく。
 まるで愛する者に触れるように……というのが少し切ないわね。
 外見はクロームが恋するガーネットで、中身は痴女ってだめかしら?
 
 ふと止まって私の古傷をなぞる。
 賢者の顔をして、何かに思いを馳せるように。
 私の脇腹にうっすらと白く残る傷。
 お話のガーネットは大層おせっかいで、いろいろな事に手を出しては、自らの命すら危険に晒してきた。
 クロームと出会った時だって、動物を助けるために登った高い木から落ちている。
 その時はクロームに助けられて、どうにか助かったけれど、うまく落ちられなくて木の枝で掠って、ちょっと傷が残ってしまったのよね。
 あの高さは尋常じゃなかったわ。
 私、あまり高いところは得意ではないのよね。

 クロームは飽きるまで傷を撫でた後、その薄い唇で私の喉をなぞり、たどり着いた鎖骨をきつく吸う。
「……んっ」
 チクリとした痛みと共に紅い斑を付けられて、いくつもいくつも、みるみる白い肌に花が咲く。
 さぞ情熱的な出来上がりになっているに違いない。
 ちゃんと隠せる場所だといいのだけれど。
「まぁ、情熱的だこと。
 クローム様ったら、そんなにガーネットが欲しかったの?」
 古傷にまで唇を寄せるほど執着が滲むクロームを揶揄すると、気に障ったのかそのまま歯を立てられる。
「少し黙っていろ」
 童貞のやる気を挫くのは良くないと、おとなしく口を閉じると、愛撫は私のたわわなふくらみに移動してくる。
 壊れ物を触るように慎重に胸に触れて、反応を確かめるように指に優しく力を込める表情は真剣そのものだ。
 無垢なガーネットには未だに経験のない快感を、少しずつクロームが引き出していく。
「……あ」 
 クロームは少し私が漏らしたため息に後押しされるように、ふくらみの頂のほんの小さな尖りを摘む。
 それは心地よく優しいものであったので、甘く嬌声をあげながら、しばしうっとりと身を任せていた。
 もしかしたら、ゲームのキャラクターらしく、童貞とは思えないほどの巧みさを発揮するのかしら?
 それなら、さほど苦痛がなく完遂できるかもしれない。
 
 私の粘膜に指を差し入れるまではそう思っていた。
 油断したわ。
 所詮、童貞だということを一瞬忘れていたのだ。

 「っつ!! いたいわ!  い、た、い、の!!」

 濡れるまでには至らない処女のそこに、クロームの長く男性らしい太さの指が侵入してくる。
 引き攣れる痛みに声をあげると、クロームはびくりと動きを止める。
 最終的に破瓜の痛みを味わうにしても、最初から傷をつけられたいわけではない。

「……お前がやれといったんだろう?」
 本当なら痛がられてひるむようでは、これから強姦する者としては落第なのだけど、今日は我が身可愛さで、そんなクロームも良しと致しましょう。
「胸は触ったが……」
「頓珍漢なことおっしゃらないで。
 それは心地よかったのですけれど、濡れてなければ入りません」
 頭でっかちの見本のようなことを言っているわね。
「処女は多少の痛みがあると……」
「処女が味わう痛みと、へたくそに触られて味わう痛みとは違います。
 お分かりにならない? 全然、濡れてませんわよ」
ぴしゃりと切り捨てる。

 クロームは確かめるように、膣口でマテをされている指を動かす。
「だ、だめです!! まだ動かさないで。傷がついてしまいます」
 ピリリとした痛みが走り、慌ててクロームの手を押さえる。
「いくらか濡れているようだったが……」
 半眼で抗議するが、童貞の妄想など溝に捨ててしまうといい。
「不貞腐れたような言い方をなさらないで。
 これしき、濡れているうちに入りません」

「……触り方が、少し弱すぎたのか?」
どんな本で学んだ来たのかは知らないが、ここを乱暴にされては困る。
「や、さ、し、く、触らなければ濡れません!」
いっそ凶悪な顔をしているクロームは、混乱からか頭を振る。
一ミリも手を動かさないでいるのは褒めたい。

「あのな、お前は自分の立場をわかっているのか?」
私は、これからクロームに強姦されるところなのだ。
そんなことは百も承知だ。

「わかってるわ。後々の為に、せっかくの実践の機会を無駄になさらないほうがいいわよ。
 お勉強の本にはなんて書いてありましたの?
 何の準備もなく血だらけになさいって書いてあったのかしら。
 だとしたら、読む本を間違えたようね」 
 私が言うと、中に収めた指をそのままに、クロームは羽根のように軽く膣口の上の尖りを弄び始めた。
「……こうか?」
 腹立たしいから、気遣うような顔はしなくていいのよ。
 ああ、そうだった。中身は私でも、体はガーネットのものだ。
 気遣うのも当然か……。

 油断していると、クロームの触れたところから体に異変が起きる。
「……っ、えっ?」
 明らかに大きすぎる快感がクロームに触れられた尖りから子宮まで届く。
 この体が知らない刺激が脳まで走り、狭い膣に入り込んでいたクロームの指をキュッと握り締める。
「あっ、あっ……だめ、まって。これ、なに……?」
 慌てて首をぶんぶんと振る。
 この必死な動きは、ひょっとしたら元のガーネットと同じ動きだったかもしれない。
 しかし、優雅さなんてかまっていられない。
 
「そうか、コレが正解か」
 ほっとしたのか、発見したのを素直に喜んだのか、クロームは機嫌良く赤い芽をいじめ始める。
「やっ、ダメっ、触らないで……」
 これはどうしたことだろう?
 小さな動きに過剰に体が悦ぶ。
 余裕を取り戻したのか、私を押さえつけて、さっき良い反応を見せた胸の先も舐め上げながら蛮行は続く。
「それは悦いということか?」
 違う、これは私をダメにする快感だ。
 背筋を駆け上がるほどに強い快感に意識が遠のく。
「……っ、なんでこの体……あっ……こんな、に……?」
 異常なほどにクロームの動きに合わせて快楽を拾う。
 あれほどきつく指を拒んでいた秘所が、ほんの少しの動きに、こぷりと蜜を零しクロームの手を濡らす。
「そうか、これほど濡れるのか。
 確かにさっきは充分に濡れてはいなかったな……」
 秘部に視線を釘付けにして、私の体の内側を耕していく。
「……ここはなんだ?」
 クロームは発見したところを持ち前の勤勉さでつぶさに検分していく。
 じゅくじゅくとクロームの指を受け入れ始めた膣内の壁を執拗なまでに探りあげ、ガーネットの体が跳ねるところ正確に覚えていく。
「……すると、こっちが子宮で、膀胱が……ああここが……卵巣はたしか……」
 内側から内臓まで内診するように深く指を押し込み、腹の上から手をかぶせて生殖器以外の内臓まで調べ始めて私を焦らせる。
 いろいろと、予定と違うことが起きている。
 徐々に暴かれてきている弱点をねちねちと触られて、嬌声をあげそうになって唇を噛む。
 さっきから、私がうっかり反応してしまったところを何度も何度も撫でられていると、内壁がわななき達しそうな兆しがやってくる。
「やっ、やだ、こんな、嘘?
 私が、こんなすぐに……」
 童貞に少し撫でられたくらいで達してしまうなんて、予定と違う。
「本当によく濡れてきた」
 クロームは目を眇めて、珍しく満足そうに頬を緩める。
 珍しい表情に心臓が跳ねて、きゅっと中が締まる。
 ガーネットったら、こんなだらしない体を授かっていたなんて。
「やめて、これ、ちがうの……」
「いや、やめないだろ。
 さっきと様子が違う。
 果てが来そうなのか?」
 更にくちくちと水音を大きくする。
「……嫌だわ、そんなことは学習済みなのね」
「いや、指を食む力が増したし、膣内がうごめいている。心拍数も上がったな」
 嫌味を言うと、真顔で解説されてぐったりとする。
「……こんなのおかしいわ。一度指を抜いて……」
 クロームは腹側に指をまげて、ガーネットの体が反応を示すところを的確にこすりあげる。
「いや、そのまま果てろ」
 熱のこもった目が私を見る。
「んっ……」
 言われたから従ったのではない。
 私の体がどうしようもなく淫らなのだ。
 声を押し殺しながら、クロームの指をしゃぶりあげ、あっという間に絶頂してしまう。
 こんなに敏感な身体だったとは大きな誤算だわ。
 見事にドロドロになった私をクロームは満足そうに撫でさする。
「童貞のくせに……」
 私、予定では華麗に童貞狩りをする意気込みだったのよ。
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