俺がペットを飼いたくない理由

砂山一座

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【おまけ】家に帰ろう10

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 ロンの家族の歓迎は温かいものだった。茶色い毛並みのロンの父さんと、白い毛並みの母さんに迎えられ……嗅がれた?
 二人ともしきりに「なるほどね」と頷きあっていたが、ロンに邪魔されて俺の品評会はすぐに終わりになった。
 
 ロンが仔犬のよう母に甘え、妹たちがはしゃぐ。
 ご馳走が振舞われたあとは、博士の研究発表を聞かされた。博士の娘と番のことをそれとなく質問してみたけれど、あまり良い顔をされなかった所を見ると、これからダリアにも一波乱あるのだろう。
 
 里に招かれる伝説なんてなくても、ロンの家族に会えただけで幸福だ。
 まぁ、こういう幸せそうな家庭で育ったって、立派な噛み犬になることがあるってわかったわけだけど。
 


 
 夜になって、二人で客間に通された。ロンが居た部屋は、今は妹二人が使っているらしい。
 二人きりになると、ロンは撫でてくれと俺の膝を枕にして寝転ぶ。
 今日だけでロンの色々な過去をのぞいてしまった。急性すぎて感情が追いつかないことばかりだ。
 
「俺さ、ちょっともやもやしてることがあって」
 
 うっとりと撫でられているロンに本音を漏らすと、ロンは片目だけを開けて俺を見る。
「……嫉妬?」

 嫉妬――だろうか?
 まだこの感情がなんなのか名前がつかない。
 羨望とか寂寥である可能性だってある。
 
「ロンはノッテと何をして遊んだんだろうな、って――」

 獣人とヒトとの価値観は近いようで遠い。性的な事はもっと遠いのかもしれない。だから、俺はロンとノッテが深い関係になったことがあったとしても受け止める覚悟で尋ねた。

「はぁん? フランってば、やらしいこと考えてた?」
「……獣人には獣人のやり方があるって言ったのはロンだろ?」
 
 ロンの言い方を揶揄すれば、ロンは起き上がって俺の口をべろりと舐める。
 
「じゃあ、正直に言うけどさ、僕ね、ノッテとはワルいことして遊んだよ。すごくワルいこと……」
 
 その言い方で内容を察した俺は、少し耳が遠くなった。変に心臓がバクバクするし、冷や汗も出て、吸う息が冷たい。
 追い縋るように撫でていたロンの耳をギュッと掴む。
 俺に耳を掴まれたまま、ロンはニヤリと笑うと悪事を告白し始めた。
 
「ノッテとは不良のようなことをして遊んでた。悪いやつを見つけて喧嘩しに行くんだ。鳥の集落で卵を入れ替えたり。ノッテをおとりにして別の犬のグループに奇襲をかけたり、猫が通るところにマタタビ撒いたりして――僕が街へ行くっていったら、うちとは関係ない集落で宴会が開かれたって。失礼しちゃうよな」
 昔の悪行の告白の間もずっと口を舐められて、変な気分になる。
 
 なんだ、本当に悪い事だった――。
 
 本当の悪事ではあったけれど、ノッテとの性的な関係はなかったと分かり、張り詰めた気持ちがゆるんで、ロンを抱きしめる。

「なんだよ……あきれた。とんだ悪ガキじゃないか。ロンの可愛いのは見た目だけだな」
「なぁ、僕って可愛いだろ?」
 パタパタと愛らしくしっぽを振られると、ほっとして脱力する。
 
「まだ噛まれ足りないのか? 今日みたいなのは本当にやり過ぎだからな」
 ロンがじゃれてくるのをキスで返しながら、首筋を甘噛みしてやると、尻尾が電魔計のように大きく振れた。
 耳の内側も全速力で走った時みたいに色づいている。
 
「僕、噛まれ……たりないよ、全然……」
 
 ロンは頭を傾けて白い首をみせつけ、俺に跨ると硬くなった股間を押し付けてくる。
 本当に噛んで欲しいのか、キューンという高い鳴き声がかすかに混ざる。
 ロンのものが俺のと擦れ合って、俺の頭はだんだんおかしくなってきた。

 ――なんだっけ? ロンが盛ったら俺も盛らなきゃダメなんだっけ?
 
 ロンが小刻みにふくらんだものを擦り付けてきて、俺の理性が悲鳴をあげている。
 
「ちょ、まさかここで盛ったりしないよな? 博士以外、皆獣人だからな。絶対バレるし、気まずい」
「番ったばかりの二人なんて、そんなもんだし、誰も気にしないよ」
 
 ロンはもう俺の寝巻の中に手を突っ込んで、すっかり勃起してしまった俺のものを撫でている。

「俺が気にする……」

 ――突っ込まれて喘いでいるのを皆に聞かれるのは嫌だ。

「僕だって、フランが可愛い声で鳴くのを誰かに聞かせたくはないよ。それに今日はさ、フランに乗っかられたい気分。フランが挿れて、僕からフランの匂いがするなら、別にいいだろ?」
 
 ロンは尻をこちらに向けて、上体を倒すとしっぽを高く上げた。
 ロンは寝巻きの下は穿かない。あざとく尻尾を横に倒して誘ってくる。フサフサの丸い尻から何もかもが丸見えだ。
 
「僕さ、誰かに乗っかられるの大っ嫌いなんだ。でも、フランにされるのは許せる。僕が誰かと悪い遊びをしないように、噛んで躾けてよ」
「……やっぱり、獣人同士では遊びで交尾するのって普通なのか?」
 どす黒い感情に突き動かされて、俺はロンの尾の根元をぎゅっとつかむ。
 
「……んっ、ノッテごときじゃ嫉妬してくれないのかと思ってたのに、里に来てから、やけに素直じゃん? 僕が誰かと仲良いだけでイラつくような、えぐい執着を必死に隠しててさ。なんか、僕、ぞくぞくしちゃった」
 ロンに心中を見透かされていて、慌てて手を離す。

「そんなんじゃ……」
「安心したってこと。ヒトって耳も尻尾もないから、言葉みたいな不確かなものに頼らないといけないだろ? フランが無意識に垂れ流してる不機嫌さとか、安心する」
「それは隠した方がよくないか?」
「僕はさ、その不機嫌さで躾けられたいって言ってるんだよ。ほら、もう挿れなよ」
 いつのまにか準備を始めていたロンが、ちゅぽんと音を立てて、洗浄用の魔道具を引き抜いた。
 乗れとばかりに背を向ける。
 
「いや、ちゃんと慣らしてからだ」
 俺はロンの荷物の中を捜す。頼みもしないのに潤滑油の瓶が出てきた。実家で盛るつもりだったのかと思うと溜め息が出る。
 
「やだよ、フラン、いつも慣らしながら、気持ちいいかどうか訊くじゃないか!」
 そう言いながらも俺に向けて待ちきれない様子で後孔を見せつける。
 桃色の入り口を指でなぞりながらロンをなだめる。
 
「だって痛かったら困るだろ」
「恥ずかしいんだよ。痛い方がまし!」
「いや、痛くない方がいいって」

 ロンは口では抵抗したけれど、俺に指で蹂躙されるのを健気に耐えて、腰をくねらせて俺の侵入を許す。
 少しずつ中に侵攻する間に、何度かロンの性器から射精があったから、痛くはなかったはずだ。
 
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