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処分
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「アキレウスを王家から除籍してそこの男爵令嬢を牢獄に入れるでもしてアキレウスの非を公にしなければ、カノン嬢は『傷物』として扱われてしまうでしょう」
「な、母上……!?」
「そんなぁ……!!」
アキレウスとユーナが同時に悲嘆の声をあげる。やっぱり、お似合いね。
「しかし。これだけの愚行を犯してきたとはいえ、アキレウスは私の息子であり王家の人間なのです。そう易々と処分を下しては王家の信頼も地に落ちてしまうでしょう」
「実際、王家から追放された人間は未だかつておらんのだ。国民が知れば確実に動揺が走るであろう」
「まあ、確かに……」
アキレウスとユーナが明らかな安堵のため息をついた。王妃様は申し訳なさそうに、どうしようもないのです、と俯いた。
私は心の中でチッと舌打ちをした。王族処分の前例がないのなんて、今までの王族たちが賢く聡明であったというだけなのに。それが歴代初の馬鹿王子を処分できない理由にするなんて。
「…カノンを傷つけるような国なんて、地に落ちてしまえばいいのよ」
「……マリエル嬢?」
「いえ、何も」
心の声が出てしまったみたいだ。
それでも、王妃様がアキレウスを切り捨てたくない理由はわかる。それは王位継承権を持つのがアキレウスだけだからだ。
ここパレスニア王国では、健康で子を産みやすい女性が王家に嫁ぐという暗黙の了解があった。しかし恋愛結婚をした陛下と王妃様は、それを意図せず破ることとなったのだ。それでも全く子ができなかったというわけではない。
王妃様は子ども、それも男の子を、2人産んだ。
そう、アキレウスには兄がいるのだ。ヴェルスティン第一王子が。
ただヴェルスティン第一王子は幼い頃から病弱で、今もどこか遠い自然豊かなところで療養している。そういうわけで彼は候補から外されることになり、次期王候補はアキレウスたった一人というわけなのである。
そんなアキレウスを除籍なんかできない、と。
わからなくはないのだけど……
不穏な呟きが微かに聞こえたのだろう、王妃様が怪訝そうに私を見つめる。でも大丈夫。こうなることもある程度想定はしていたから。
「私に考えがあるのです」
「考え?」
「申してもよろしいでしょうか?」
「無論だ」
陛下が威厳ある声で答える。今ではカノンを傷つけた共犯者としか思えないけれど。
「ありがとうございます。考えといっても、至極簡単な話にございます」
「…早く申してみよ」
「アキレウス第2王子とユーナ嬢を結婚させれば良いのです」
「な、母上……!?」
「そんなぁ……!!」
アキレウスとユーナが同時に悲嘆の声をあげる。やっぱり、お似合いね。
「しかし。これだけの愚行を犯してきたとはいえ、アキレウスは私の息子であり王家の人間なのです。そう易々と処分を下しては王家の信頼も地に落ちてしまうでしょう」
「実際、王家から追放された人間は未だかつておらんのだ。国民が知れば確実に動揺が走るであろう」
「まあ、確かに……」
アキレウスとユーナが明らかな安堵のため息をついた。王妃様は申し訳なさそうに、どうしようもないのです、と俯いた。
私は心の中でチッと舌打ちをした。王族処分の前例がないのなんて、今までの王族たちが賢く聡明であったというだけなのに。それが歴代初の馬鹿王子を処分できない理由にするなんて。
「…カノンを傷つけるような国なんて、地に落ちてしまえばいいのよ」
「……マリエル嬢?」
「いえ、何も」
心の声が出てしまったみたいだ。
それでも、王妃様がアキレウスを切り捨てたくない理由はわかる。それは王位継承権を持つのがアキレウスだけだからだ。
ここパレスニア王国では、健康で子を産みやすい女性が王家に嫁ぐという暗黙の了解があった。しかし恋愛結婚をした陛下と王妃様は、それを意図せず破ることとなったのだ。それでも全く子ができなかったというわけではない。
王妃様は子ども、それも男の子を、2人産んだ。
そう、アキレウスには兄がいるのだ。ヴェルスティン第一王子が。
ただヴェルスティン第一王子は幼い頃から病弱で、今もどこか遠い自然豊かなところで療養している。そういうわけで彼は候補から外されることになり、次期王候補はアキレウスたった一人というわけなのである。
そんなアキレウスを除籍なんかできない、と。
わからなくはないのだけど……
不穏な呟きが微かに聞こえたのだろう、王妃様が怪訝そうに私を見つめる。でも大丈夫。こうなることもある程度想定はしていたから。
「私に考えがあるのです」
「考え?」
「申してもよろしいでしょうか?」
「無論だ」
陛下が威厳ある声で答える。今ではカノンを傷つけた共犯者としか思えないけれど。
「ありがとうございます。考えといっても、至極簡単な話にございます」
「…早く申してみよ」
「アキレウス第2王子とユーナ嬢を結婚させれば良いのです」
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