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しおりを挟む今日はとても良いことととても嫌なことの極端な2つのことがあった。
とても良いことはユーマからのプレゼントだ。
俺があげた髪飾りのお礼としてリボンをプレゼントされた。
とてもきれいな水色のリボンだった。
しかもプレゼントしてくれたリボンを俺の髪に結んでくれた。
ユーマが髪を結んでくれる時にあの可愛らしい手が俺の首や耳に触れ柔らかなその手の感触がとても心地良いとともにこそばかった。俺の背後に立つユーマからはとてもいい香りがしてその時間は夢のようだった。
そしてその時間のあと昼休みにとても嫌なことをミコトから聞いた。
「このままでは駄目だ」
学園長である父に言う前にある程度の証拠を揃えることにした。あの父が噂を知らないわけがない。それで何もしていないということはないはずだが俺の方でも独自に調べてみることにした。
「生徒の下着を洗濯屋が盗んでそれを同じ生徒が買っているとは問題だらけだな」
そんな噂があることを知らなかったから俺は勉強ばかりして周りに目を向けなかったことに後悔した。
「さてどうやって調べようか」
俺は学園でも街でも学園長の息子として顔が知れ渡っている。俺自身が動くことは目立ち過ぎてできない。誰か信用できる人に洗濯屋に潜入してもらうのがいいのだが......
「こういう時に人付き合いをしてこなかったのが悔やまれるな」
俺は信頼して潜入を任せられる人を思い付かなかった。
「仕方ない、明日の朝父様に相談するか」
俺は明日の予定を決めて寝ることにした。
なるべく早く解決しないと、と俺は少し焦りを感じていた。
「お前が他人のことに興味を持って他人の為に何かしようという考えになってくれて嬉しいぞ。お前は成績は優秀だが自分以外の人に興味が無く親しい友人もいないようだったから心配していたんだ。それに人に頼ることも覚えたみたいだな。学園長という仕事は1人でできるほど甘くない。人に頼る事のないお前に将来任せられるか不安だったんだ」
俺が洗濯屋の話をすると父はそう言った。確かに今まで人に頼ることなくなんでも自分でこなしてきたが今回のことで自分にできないこともあると実感した。
「洗濯屋のこと多少のアドバイスと信頼できる人手は貸してやる。だけどどう動いてどうしたいのかは自分で考えてこの問題を解決してみせろ」
そして父に紹介されたのは俺と似たような体型の人物だった。
「俺は次の休みにその人物と入れ替わって洗濯屋に潜入してみることにした」
昼休み俺は昨日のメンバーと昨日と同じ場所でお弁当を食べていた。
そして今朝父と会って洗濯屋の話をしてそこで働いている人を紹介されたこと、その人と入れ替わり俺が洗濯屋に潜入することを話した。
体型が似ているから少し変装すればばれないはずだ。その人も元から眼鏡をしているし洗濯屋ではマスクと帽子が基本となっているから余計にバレるリスクは低い。
父はもしかしたら俺の影武者的な役割も考えてあの人を雇い育てていたのかもしれない。それぐらい後ろ姿はそっくりだった。
「潜入って大丈夫なんですか?」
ユーマは俺のことを心配してそんな言葉をかけてくれるし昨日はあんなに怒っていたミコトでさえ不安そうな顔をしている。
「あぁ大丈夫だ。俺がいつ行くかは父様も知っているし失敗しても酷いことにはならないはずだ。ただ失敗したら犯人は捕まらずに逃げるだろう。だけど警戒してもう2度と洗濯屋で物が盗まれることはないはずだ。成功しても失敗してもこんなことは終わるはずだ」
俺が見つかってしまっても洗濯屋ではこれから下着が盗まれることは無くなるだろう。ただ何の証拠もないのに潜入したということで俺自身の問題になり将来この学園の学園長に就くことはできなくなるだろう。それは父にも言われた。それを承知で俺は洗濯屋に潜入することを決めた。
早い方がいいだろうということで潜入するのは次の休みの日に決まった。それまでに少しでも怪しまれないように仕事内容や内部の構造を聞いて覚えておかないといけないな。
失敗できない分事前準備が重要だ。
俺はその日の放課後から次の休みの日まで必死で潜入に必要なことを覚えた。
そのおかげで働いている人間や内部の構造など完璧に覚えた。
ただ父には口調を注意された。それは従業員の口調ではないと言われた。
もう少し丁寧な口調にしないといけないな。
そう誓う俺の髪は水色のリボンで結ばれていた。
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