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第一印象は綺麗だけど冷たそう、だった。でもその印象は2日目に覆った。
教室じゃなくて外でお弁当を食べようと食堂の横を歩いていたら人垣を遠目で見ているその人の姿が目に入った。
あまりにもその姿が気になって思わず声をかけてしまった。
「アバーテ様どうしたんですか?」
食堂でオロオロしていたのはユーマだった。
圧倒的な点で首席入学した天才。
小柄だけど可愛いというよりは綺麗な見た目をしている。
ユーマと僕との差が圧倒的過ぎて敵視なんかしたらおこがましい気さえするけど入学試験2位でこの学園の学園長子息のレオンは明らかに敵視している。
不可能なことなんかなさそうな人がオロオロとしていて明らかに困っていた。
「バルバロ君」
「僕のことはミコトでいいですよ」
「じゃあ僕のこともユーマって呼んでよ」
爵位は明らかに向こうの方が上だから様を付けたのに呼び捨てでいいなんて言ってくる。
断れなかった。
「お弁当頼むの忘れちゃったから食堂に来たんだけど......」
食堂の中の人垣を見ながら言うけどあの中に入って行くのは知らない間に攫われそうだからやめてほしい。
「よかったら僕のお弁当食べますか?」
「いいの?」
「いいですよ、昨日多めに入ってたから今日も多めだと思うし」
僕がそう言うとユーマは嬉しそうに笑いながらなんと僕に抱き着いてきた。
「ユーマって最初の印象と大分違いますね」
僕が呟いた声は小さすぎてユーマには聞こえなかったみたいだ。
そのあとユーマは僕に教室に先に帰っておくように言うと自分は食堂の中、人のいない方に走って行った。
そしてお弁当を準備して待っていた僕にユーマはなんとプリンと紅茶を渡してきた。
お礼と言われて渡されたそれを見た僕は自分の目を疑った。
「ありがとうございます。って、えっ、これものすごく高いやつじゃないですか」
ユーマが僕に渡してきた紅茶とプリンはものすごく高級品で値段はこの学園の教師の一か月の給料の四分の一くらいだった。
それを躊躇なく買ってきた。
金銭感覚が違い過ぎる。
「これだから侯爵家のお坊ちゃまは」
自然とそんな言葉が出てしまった。
でもユーマに食べさせられてその美味しさに気付いてしまったから特別な日だけなら買ってもらってもいいんじゃないかな、なんて考えてしまった。
ユーマはそれ以外にも学園でみんなが知っている常識というものを知らなすぎた。
休日に洗濯屋に行くと他の生徒に絡まれているユーマを発見した。
「ユーマ?」
僕が呼ぶと嬉しそうな顔をして走ってやってくる。ユーマに絡んでいた相手はどこかに行った。
事情を聞くとやっぱりお世話に関してだった。
最初は純粋に下位貴族や平民が高位貴族の身の回りの世話をしてお小遣いをもらっていたのだが年頃だからやっぱり性に関して興味がある者が多い。今ではお世話といえば性的なものの意味になっていた。
これくらい学園の卒業生に聞けば教えてくれるのにユーマには周りに卒業生はいなかったんだろうか。それでも6年間も親元を離れて暮らす所なんだから事前に色々情報調べようよ。
「あぁ、もうユーマは学園のみんなが知ってるような裏事情とか知らなすぎ。ちょっと待っててこれ渡して来たらさっきのこと説明してあげるから」
僕は急いで受付けの列に並ぶ。早くしないとまたユーマのこといやらしい目で見てる奴に絡まれる。イライラしながら進むのを待っていた。
案の定ユーマの所に戻ると何人かの生徒に囲まれていた。その中には僕にまでお世話を持ちかけてくる人までいた。
そんな相手を無視してユーマを連れてそこから離れる。
ユーマにはお世話の意味をしっかり教えておいた。
僕は6人兄弟の3番目だ。下にいる弟のことを考えると無駄なお金はなるべく使いたくない。
誰かのお世話をするほど困っていないし自分でできるのにお世話を頼むほどお金に余裕があるわけでもない。
困っていたとしても好きでもない相手の性的なお世話なんてされるのもするのも嫌だ。
何も知らないユーマを見ていると弟を思い出してなんだか放っておけない気になる。
自然と一緒にいる時間が増えた。
教室じゃなくて外でお弁当を食べようと食堂の横を歩いていたら人垣を遠目で見ているその人の姿が目に入った。
あまりにもその姿が気になって思わず声をかけてしまった。
「アバーテ様どうしたんですか?」
食堂でオロオロしていたのはユーマだった。
圧倒的な点で首席入学した天才。
小柄だけど可愛いというよりは綺麗な見た目をしている。
ユーマと僕との差が圧倒的過ぎて敵視なんかしたらおこがましい気さえするけど入学試験2位でこの学園の学園長子息のレオンは明らかに敵視している。
不可能なことなんかなさそうな人がオロオロとしていて明らかに困っていた。
「バルバロ君」
「僕のことはミコトでいいですよ」
「じゃあ僕のこともユーマって呼んでよ」
爵位は明らかに向こうの方が上だから様を付けたのに呼び捨てでいいなんて言ってくる。
断れなかった。
「お弁当頼むの忘れちゃったから食堂に来たんだけど......」
食堂の中の人垣を見ながら言うけどあの中に入って行くのは知らない間に攫われそうだからやめてほしい。
「よかったら僕のお弁当食べますか?」
「いいの?」
「いいですよ、昨日多めに入ってたから今日も多めだと思うし」
僕がそう言うとユーマは嬉しそうに笑いながらなんと僕に抱き着いてきた。
「ユーマって最初の印象と大分違いますね」
僕が呟いた声は小さすぎてユーマには聞こえなかったみたいだ。
そのあとユーマは僕に教室に先に帰っておくように言うと自分は食堂の中、人のいない方に走って行った。
そしてお弁当を準備して待っていた僕にユーマはなんとプリンと紅茶を渡してきた。
お礼と言われて渡されたそれを見た僕は自分の目を疑った。
「ありがとうございます。って、えっ、これものすごく高いやつじゃないですか」
ユーマが僕に渡してきた紅茶とプリンはものすごく高級品で値段はこの学園の教師の一か月の給料の四分の一くらいだった。
それを躊躇なく買ってきた。
金銭感覚が違い過ぎる。
「これだから侯爵家のお坊ちゃまは」
自然とそんな言葉が出てしまった。
でもユーマに食べさせられてその美味しさに気付いてしまったから特別な日だけなら買ってもらってもいいんじゃないかな、なんて考えてしまった。
ユーマはそれ以外にも学園でみんなが知っている常識というものを知らなすぎた。
休日に洗濯屋に行くと他の生徒に絡まれているユーマを発見した。
「ユーマ?」
僕が呼ぶと嬉しそうな顔をして走ってやってくる。ユーマに絡んでいた相手はどこかに行った。
事情を聞くとやっぱりお世話に関してだった。
最初は純粋に下位貴族や平民が高位貴族の身の回りの世話をしてお小遣いをもらっていたのだが年頃だからやっぱり性に関して興味がある者が多い。今ではお世話といえば性的なものの意味になっていた。
これくらい学園の卒業生に聞けば教えてくれるのにユーマには周りに卒業生はいなかったんだろうか。それでも6年間も親元を離れて暮らす所なんだから事前に色々情報調べようよ。
「あぁ、もうユーマは学園のみんなが知ってるような裏事情とか知らなすぎ。ちょっと待っててこれ渡して来たらさっきのこと説明してあげるから」
僕は急いで受付けの列に並ぶ。早くしないとまたユーマのこといやらしい目で見てる奴に絡まれる。イライラしながら進むのを待っていた。
案の定ユーマの所に戻ると何人かの生徒に囲まれていた。その中には僕にまでお世話を持ちかけてくる人までいた。
そんな相手を無視してユーマを連れてそこから離れる。
ユーマにはお世話の意味をしっかり教えておいた。
僕は6人兄弟の3番目だ。下にいる弟のことを考えると無駄なお金はなるべく使いたくない。
誰かのお世話をするほど困っていないし自分でできるのにお世話を頼むほどお金に余裕があるわけでもない。
困っていたとしても好きでもない相手の性的なお世話なんてされるのもするのも嫌だ。
何も知らないユーマを見ていると弟を思い出してなんだか放っておけない気になる。
自然と一緒にいる時間が増えた。
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