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入学式の次の日からもう授業は始まった。
家庭教師に教わっていた時は一対一だったから僕のペースに合わせて授業を進めてくれていたけど学園の教師は20人も相手にしているからそういう訳にもいかない。
授業中に質問できる雰囲気ではあまりなく分からないところは後で質問に行かないと、と思い分からなかったところをメモしておく。
お昼休みに僕は寮の料理長が作ってくれたお弁当を机の上に広げる。ディナーが終わるまでに希望を出しておけば次の日のお弁当を作ってもらえる。
「美味しそう」
お弁当の蓋を開けると中は彩鮮やかな見た目にも豪華な料理の数々が入っていた。
周りの生徒もまだ2日目ということもあってか1人でお弁当を食べている生徒が多い。半数ほどの生徒しか教室にはいなくて残りは外でお弁当を食べるか学園にある食堂で食べているんだと思う。
誰にどうやって話しかけたらいいのか分からず1人寂しくお弁当を食べていた。
友達作りってどうやっていたっけ。難しいね。
窓からは中庭が見えた。ベンチや木の下でお弁当を食べる姿が見えた。
「ぐふっ」
そこではお弁当を食べさせ合っている者や木の下で膝枕されて横になっている者の姿が見えた。意図せず見つけてしまったその光景に興奮して食べていたものを吹き出しそうになった。慌ててお茶を飲んで口の中のものを飲み込む。
中庭では仲の良いカップルの姿が何組か見えた。
膝枕している人が愛おしそうに相手の髪を撫でていたと思ったら手が伸びてきて引き寄せられキスをしている。唇が離れるとお互い微笑みあっている。
幸せな光景が広がっていた。
そう僕が求めていたものはこれだったんだ。今まで勉強に必死で忘れていたけどこの学園で腐男子としての欲求を満たしたかったんだ。
僕はそれまで1人でお弁当を食べることに寂しさを感じていたのなんか忘れて中庭の光景に見入っていた。
それはそれは幸せな時間だった。
カーン、カーン
幸せな時間は昼休み終了を告げる鐘の音が聞こえてくるまで続いた。その鐘の音が聞こえると中庭には人がいなくなる。僕も慌ててお弁当を片付けて午後の授業の用意をする。
僕は自然と笑顔になっていた。
午後の授業はものすごく集中できて教師にどんな難問をあてられてもすらっと答えることができた。
「大変優秀です」
気難しそうな教師が笑顔でそう言うほどだった。
全て久々の腐活動で心が満たされたおかげだった。
これからも続けていくには退学にならないように勉強もしっかりしないとな。
ということで全ての授業が終わった放課後、僕は今日分からなかったところを質問するために職員室までやって来た。
「まだ授業1日目なのにもう質問に来たのか、流石に首席合格だけあって勉強熱心だな」
「僕には叶えたい夢があるんです。そのためにはこの学園を退学するわけにはいかないので頑張れます」
「君みたいな優秀な生徒が退学なんてないと思うが、君がそこまで言う夢には興味があるな」
「それは叶ったらお教えしますね」
僕の夢なんて教師には教えられるわけがない。笑顔でかわし職員室を後にする。
寮に帰るにはまだ早くどこに行こうか考えた時真っ先に図書館が浮かんだ。
僕が通っていた図書館ほどではないがこの学園の図書館も大きい。
自習室でさっき先生に教えてもらった所の復習をした。他にも何人か自習をしている人がいた。1人でしていたり何人かのグループでいたりする。けど自習室の広さに対して生徒はかなり少なかった。
僕は復習を終え大好きな読書のための本を探すことにした。もちろん魔法に関する本を探すことも忘れてないよ。
「あっ、これ新刊出てたんだ。あっ、これは読みたかったけどずっと借りられてて無理だったやつ」
試験勉強のために読書をセーブしていたため読みたくても読めていない本が沢山あった。それを見つけてどんどん手に取る。勉強熱心な学園の為か辞典など勉強に必要な本は貸し出し中の物が多いが娯楽小説などはあまり借りられていない。
とりあえず5冊ほど手に取り席に戻る。帰る前にお手洗いに行こうと思い奥にあるトイレに向かった。
「ん?」
中に入ろうとしたけどなにやら苦しそうな声が聞こえてくる。これはもしかして、期待して静かに近寄る。
「んぁ、こんな所で駄目だって」
「新学期始まったばかりだし誰も来ないって」
「何人か生徒いたから、バレたらどうするんだ」
予想通りのことが中では行われていた。
「長い間会えなくて俺寂しかったんだ。先生の匂い久しぶり。やっぱり先生の匂い最高。先生は俺に会えなくて寂しくなかったの?」
「私も会えなくて寂しかった」
1人は僕と同じ制服を着ているから生徒なんだろう。生徒と先生の禁断の恋ですか。ご馳走様です。
生徒の方が先生の首筋に顔を寄せ抱きしめている。先生の方も寂しかったと言いながら生徒の肩に甘えるようにもたれかかる。
僕は久しぶりの2人の逢瀬を邪魔しちゃいけないと思いそっとそこから離れた。
本の貸し出し手続きをして寮まで帰る。
寮に帰るまでも帰ってからも寝るまでずっと幸せな気分でニヤニヤが収まらなかった。
学園生活1日目から幸せです。
家庭教師に教わっていた時は一対一だったから僕のペースに合わせて授業を進めてくれていたけど学園の教師は20人も相手にしているからそういう訳にもいかない。
授業中に質問できる雰囲気ではあまりなく分からないところは後で質問に行かないと、と思い分からなかったところをメモしておく。
お昼休みに僕は寮の料理長が作ってくれたお弁当を机の上に広げる。ディナーが終わるまでに希望を出しておけば次の日のお弁当を作ってもらえる。
「美味しそう」
お弁当の蓋を開けると中は彩鮮やかな見た目にも豪華な料理の数々が入っていた。
周りの生徒もまだ2日目ということもあってか1人でお弁当を食べている生徒が多い。半数ほどの生徒しか教室にはいなくて残りは外でお弁当を食べるか学園にある食堂で食べているんだと思う。
誰にどうやって話しかけたらいいのか分からず1人寂しくお弁当を食べていた。
友達作りってどうやっていたっけ。難しいね。
窓からは中庭が見えた。ベンチや木の下でお弁当を食べる姿が見えた。
「ぐふっ」
そこではお弁当を食べさせ合っている者や木の下で膝枕されて横になっている者の姿が見えた。意図せず見つけてしまったその光景に興奮して食べていたものを吹き出しそうになった。慌ててお茶を飲んで口の中のものを飲み込む。
中庭では仲の良いカップルの姿が何組か見えた。
膝枕している人が愛おしそうに相手の髪を撫でていたと思ったら手が伸びてきて引き寄せられキスをしている。唇が離れるとお互い微笑みあっている。
幸せな光景が広がっていた。
そう僕が求めていたものはこれだったんだ。今まで勉強に必死で忘れていたけどこの学園で腐男子としての欲求を満たしたかったんだ。
僕はそれまで1人でお弁当を食べることに寂しさを感じていたのなんか忘れて中庭の光景に見入っていた。
それはそれは幸せな時間だった。
カーン、カーン
幸せな時間は昼休み終了を告げる鐘の音が聞こえてくるまで続いた。その鐘の音が聞こえると中庭には人がいなくなる。僕も慌ててお弁当を片付けて午後の授業の用意をする。
僕は自然と笑顔になっていた。
午後の授業はものすごく集中できて教師にどんな難問をあてられてもすらっと答えることができた。
「大変優秀です」
気難しそうな教師が笑顔でそう言うほどだった。
全て久々の腐活動で心が満たされたおかげだった。
これからも続けていくには退学にならないように勉強もしっかりしないとな。
ということで全ての授業が終わった放課後、僕は今日分からなかったところを質問するために職員室までやって来た。
「まだ授業1日目なのにもう質問に来たのか、流石に首席合格だけあって勉強熱心だな」
「僕には叶えたい夢があるんです。そのためにはこの学園を退学するわけにはいかないので頑張れます」
「君みたいな優秀な生徒が退学なんてないと思うが、君がそこまで言う夢には興味があるな」
「それは叶ったらお教えしますね」
僕の夢なんて教師には教えられるわけがない。笑顔でかわし職員室を後にする。
寮に帰るにはまだ早くどこに行こうか考えた時真っ先に図書館が浮かんだ。
僕が通っていた図書館ほどではないがこの学園の図書館も大きい。
自習室でさっき先生に教えてもらった所の復習をした。他にも何人か自習をしている人がいた。1人でしていたり何人かのグループでいたりする。けど自習室の広さに対して生徒はかなり少なかった。
僕は復習を終え大好きな読書のための本を探すことにした。もちろん魔法に関する本を探すことも忘れてないよ。
「あっ、これ新刊出てたんだ。あっ、これは読みたかったけどずっと借りられてて無理だったやつ」
試験勉強のために読書をセーブしていたため読みたくても読めていない本が沢山あった。それを見つけてどんどん手に取る。勉強熱心な学園の為か辞典など勉強に必要な本は貸し出し中の物が多いが娯楽小説などはあまり借りられていない。
とりあえず5冊ほど手に取り席に戻る。帰る前にお手洗いに行こうと思い奥にあるトイレに向かった。
「ん?」
中に入ろうとしたけどなにやら苦しそうな声が聞こえてくる。これはもしかして、期待して静かに近寄る。
「んぁ、こんな所で駄目だって」
「新学期始まったばかりだし誰も来ないって」
「何人か生徒いたから、バレたらどうするんだ」
予想通りのことが中では行われていた。
「長い間会えなくて俺寂しかったんだ。先生の匂い久しぶり。やっぱり先生の匂い最高。先生は俺に会えなくて寂しくなかったの?」
「私も会えなくて寂しかった」
1人は僕と同じ制服を着ているから生徒なんだろう。生徒と先生の禁断の恋ですか。ご馳走様です。
生徒の方が先生の首筋に顔を寄せ抱きしめている。先生の方も寂しかったと言いながら生徒の肩に甘えるようにもたれかかる。
僕は久しぶりの2人の逢瀬を邪魔しちゃいけないと思いそっとそこから離れた。
本の貸し出し手続きをして寮まで帰る。
寮に帰るまでも帰ってからも寝るまでずっと幸せな気分でニヤニヤが収まらなかった。
学園生活1日目から幸せです。
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