転生腐男子BLゲームの世界でビッチにならずに夢を叶えたい

めぐもふ

文字の大きさ
上 下
55 / 72

55

しおりを挟む
 入学式の次の日からもう授業は始まった。
 家庭教師に教わっていた時は一対一だったから僕のペースに合わせて授業を進めてくれていたけど学園の教師は20人も相手にしているからそういう訳にもいかない。
 授業中に質問できる雰囲気ではあまりなく分からないところは後で質問に行かないと、と思い分からなかったところをメモしておく。
 お昼休みに僕は寮の料理長が作ってくれたお弁当を机の上に広げる。ディナーが終わるまでに希望を出しておけば次の日のお弁当を作ってもらえる。

 「美味しそう」

 お弁当の蓋を開けると中は彩鮮やかな見た目にも豪華な料理の数々が入っていた。
 周りの生徒もまだ2日目ということもあってか1人でお弁当を食べている生徒が多い。半数ほどの生徒しか教室にはいなくて残りは外でお弁当を食べるか学園にある食堂で食べているんだと思う。
 誰にどうやって話しかけたらいいのか分からず1人寂しくお弁当を食べていた。
 友達作りってどうやっていたっけ。難しいね。
 窓からは中庭が見えた。ベンチや木の下でお弁当を食べる姿が見えた。

 「ぐふっ」

 そこではお弁当を食べさせ合っている者や木の下で膝枕されて横になっている者の姿が見えた。意図せず見つけてしまったその光景に興奮して食べていたものを吹き出しそうになった。慌ててお茶を飲んで口の中のものを飲み込む。
 中庭では仲の良いカップルの姿が何組か見えた。
 膝枕している人が愛おしそうに相手の髪を撫でていたと思ったら手が伸びてきて引き寄せられキスをしている。唇が離れるとお互い微笑みあっている。
 幸せな光景が広がっていた。
 そう僕が求めていたものはこれだったんだ。今まで勉強に必死で忘れていたけどこの学園で腐男子としての欲求を満たしたかったんだ。
 僕はそれまで1人でお弁当を食べることに寂しさを感じていたのなんか忘れて中庭の光景に見入っていた。
 それはそれは幸せな時間だった。

 カーン、カーン

 幸せな時間は昼休み終了を告げる鐘の音が聞こえてくるまで続いた。その鐘の音が聞こえると中庭には人がいなくなる。僕も慌ててお弁当を片付けて午後の授業の用意をする。
 僕は自然と笑顔になっていた。
 午後の授業はものすごく集中できて教師にどんな難問をあてられてもすらっと答えることができた。

 「大変優秀です」

 気難しそうな教師が笑顔でそう言うほどだった。
 全て久々の腐活動で心が満たされたおかげだった。
 これからも続けていくには退学にならないように勉強もしっかりしないとな。
 ということで全ての授業が終わった放課後、僕は今日分からなかったところを質問するために職員室までやって来た。

 「まだ授業1日目なのにもう質問に来たのか、流石に首席合格だけあって勉強熱心だな」
 「僕には叶えたい夢があるんです。そのためにはこの学園を退学するわけにはいかないので頑張れます」
 「君みたいな優秀な生徒が退学なんてないと思うが、君がそこまで言う夢には興味があるな」
 「それは叶ったらお教えしますね」
 
 僕の夢なんて教師には教えられるわけがない。笑顔でかわし職員室を後にする。
 寮に帰るにはまだ早くどこに行こうか考えた時真っ先に図書館が浮かんだ。
 僕が通っていた図書館ほどではないがこの学園の図書館も大きい。
 自習室でさっき先生に教えてもらった所の復習をした。他にも何人か自習をしている人がいた。1人でしていたり何人かのグループでいたりする。けど自習室の広さに対して生徒はかなり少なかった。
 僕は復習を終え大好きな読書のための本を探すことにした。もちろん魔法に関する本を探すことも忘れてないよ。

 「あっ、これ新刊出てたんだ。あっ、これは読みたかったけどずっと借りられてて無理だったやつ」

 試験勉強のために読書をセーブしていたため読みたくても読めていない本が沢山あった。それを見つけてどんどん手に取る。勉強熱心な学園の為か辞典など勉強に必要な本は貸し出し中の物が多いが娯楽小説などはあまり借りられていない。
 とりあえず5冊ほど手に取り席に戻る。帰る前にお手洗いに行こうと思い奥にあるトイレに向かった。

 「ん?」

 中に入ろうとしたけどなにやら苦しそうな声が聞こえてくる。これはもしかして、期待して静かに近寄る。

 「んぁ、こんな所で駄目だって」
 「新学期始まったばかりだし誰も来ないって」
 「何人か生徒いたから、バレたらどうするんだ」

 予想通りのことが中では行われていた。

 「長い間会えなくて俺寂しかったんだ。先生の匂い久しぶり。やっぱり先生の匂い最高。先生は俺に会えなくて寂しくなかったの?」
 「私も会えなくて寂しかった」

 1人は僕と同じ制服を着ているから生徒なんだろう。生徒と先生の禁断の恋ですか。ご馳走様です。
 生徒の方が先生の首筋に顔を寄せ抱きしめている。先生の方も寂しかったと言いながら生徒の肩に甘えるようにもたれかかる。
 僕は久しぶりの2人の逢瀬を邪魔しちゃいけないと思いそっとそこから離れた。
 本の貸し出し手続きをして寮まで帰る。
 寮に帰るまでも帰ってからも寝るまでずっと幸せな気分でニヤニヤが収まらなかった。
 学園生活1日目から幸せです。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく
BL
ファンタジーな世界で第二王子が総受けな話。 ボーイズラブ BL 趣味詰め込みました。 苦手な方はブラウザバックでお願いします。

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

異世界では総受けになりました。

西胡瓜
BL
尾瀬佐太郎はある日、駅のホームから突き飛ばされ目が覚めるとそこは異世界だった。 しかも転移先は魔力がないと生きていけない世界。   魔力なしで転移してしまったサタローは、魔力を他人から貰うことでしか生きられない体となってしまう。 魔力を貰う方法……それは他人の体液を自身の体に注ぎ込んでもらうことだった。 クロノス王国魔法軍に保護され、サタローは様々な人物から魔力を貰うことでなんとか異世界を生き抜いていく。 ※アホ設定なので広い心でお読みください ※コメディ要素多め ※総受けだけど最終的には固定カプになる予定

処理中です...