上 下
44 / 72

44

しおりを挟む

 「ユーマ様がいないからびっくりしましたよ。心配させないで下さい」

 朝起きて両親の部屋から自室へ帰ると僕を起こしに来ていたレンに怒られた。

 「ごめんなさい」

 僕は素直に謝って、寂しくなったから両親の部屋にお泊りに行っていたと伝える。

 「最近のユーマ様は甘えることが無くなっていたと思っていましたがそうでもありませんでしたね」
 「もうレンからかわないで」
 
 僕が両親の部屋で寝たことを聞いたレンは笑いながらからかってくる。
 昨日クロードに襲われ両親の所に逃げ込んだのがきっかけだけど最近このお屋敷から離れると思うと無性に寂しくなっていたのも真実だから僕はレンの言葉に顔を赤くしてレンを軽く叩く。

 「今のうちにしっかり甘えておかなくてはいけませんね」
 「もうやめて」

 昨日この隣の部屋、寝室であんなことがあったとは思えないほど平和な空気が流れていた。

 コンコン

 部屋の扉がノックされレンが扉を開けるとジェイドが立っていた。

 「あの、ユーマ、おはよう。で、き、昨日の、ことなんだけど」

 部屋に入ってきたジェイドは僕とレンの顔をチラチラ見ながら何か話したそうに、でもなかなか口に出せないでいた。

 「おはようジェイド。こんな早くにどうしたの?朝ご飯食べた?」
 「いや、まだ食べてない。早くユーマに会いたくて」
 「そっか。それならレン、僕とジェイドの朝ご飯用意してくれる」
 「承知しました。少々お待ち下さい」

 ジェイドが話したそうにしているのはきっと昨夜のことだ。でも昨夜のことを僕もレンに聞かせるわけにはいかない。2人分の朝食を用意してもらうことで自然とレンに部屋から出て行ってもらいジェイドと2人っきりになる。

 「昨日はありがとう。ジェイドはあれから大丈夫だった?」
 「ユーマを逃がした後俺もあの場からすぐ逃げたから何ともなかった。あの3人より力あるとはいえ3人同時に来られると無理だからな。昨日はなんとか間に合ったけどもう3人の傍にいることはできない。ごめんなユーマ」
 「なんで謝るの。昨日はジェイドが助けてくれなかったら僕どうなってたことか」

 昨日のことを思い出すと体が震えてきた。
 ジェイドの話によると前から僕を襲う話はあったみたいだった。僕の部屋の合鍵まで作られていた。
 毎晩のようにクロードの部屋で4人で行為に及んでいたのに昨夜だけは無かった。そんな日もあるかなと思っていたけどなんだか胸騒ぎがしたジェイドはクロードの部屋に行くがそこにはクロードの姿はなかった。いつもは机の引き出しの中にある僕の部屋の合鍵も無くなっていた。急いで僕の部屋に向かい僕をクロードから助け出してくれた、という訳だった。

 「部屋の鍵かけ忘れてたのかと思ってたけど合鍵作られてたのか......」
 「なんとか奪って来れたらいいんだけど」
 「駄目だよ。せっかく逃げられたのに。3人同時に来られると無理だってジェイドも言ってたでしょ。もうあの3人に近寄っちゃ駄目だよ」
 「だけど......」
 
 ガチャと音がして扉が開きレンが2人分の朝食を持って入ってきたからその話はそこで終わりになった。

 「絶対駄目だからね」

 朝食を食べ終わりレンがお皿を片付けに部屋から出た時にもう1度僕はジェイドにくぎをさした。ジェイドは一応頷き部屋から出て行った。
 不安はあるけどもうジェイドがクロードに近寄らないことを祈るしかない。
 不安に思いながらも1日を過ごして最近仲直りしてきたことで使用人用のお風呂にジェイドと一緒に入浴しに行った。今日はレンとカイトも一緒だ。

 「もう俺クロード様には近寄らないから安心してくれ。あと1か月なんとか逃げ切ろうな」

 朝とは違いジェイドはそうはっきりと言った。僕はその言葉に安心して4人で楽しく入浴した。
 部屋に帰り誰もいなくなり1人だけになった。ベッドに入り部屋を暗くする。すると昨日の恐怖が蘇ってきた。暗がりの中からあの3人が現れる。そんな考えが思い浮かび体が小刻みに震える。
 昨日この場所、このベッドで。
 ここに居たくなくてベッドから飛び起き部屋から飛び出す。
 走って向かった先は昨日と同じ両親の部屋。

 「おとーさま、おかーさま。今日も一緒に寝て下さい」

 部屋に入りソファに座り本を読んでいたお母様に僕は涙を流しながら抱き着いた。
 その日も2人に挟まれ安心して眠ることができた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった

藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。 毎週水曜に更新予定です。 宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。

強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー

チョコミント
BL
落ちこぼれ魔法使いと4人の聖騎士とのハーレム物語が始まる。 生まれてから病院から出た事がない少年は生涯を終えた。 生まれ変わったら人並みの幸せを夢見て… そして生前友人にもらってやっていた乙女ゲームの悪役双子の兄に転生していた。 死亡フラグはハーレムエンドだけだし悪い事をしなきゃ大丈夫だと思っていた。 まさか無意識に悪事を誘発してしまう強制悪役の呪いにかかっているなんて… それになんでヒロインの個性である共魔術が使えるんですか? 魔力階級が全てを決める魔法の世界で4人の攻略キャラクターである最上級魔法使いの聖戦士達にポンコツ魔法使いが愛されています。 「俺なんてほっといてヒロインに構ってあげてください」 執着溺愛騎士達からは逃げられない。 性描写ページには※があります。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく
BL
ちょっと早めのハロウィンとは名ばかりのコスプレ呑み会の会場に入ろうとしてドアを開けたら異世界転移してしまった紫苑 魔法があり魔獣もいる世界で生きるためにハンターになることにしたが、特大の問題があった 転移した国は慢性的な水不足で風呂文化が存在しなかったのだ クリーンの魔法では汚れは落ちるが風情が無い! 風呂文化がない事が我慢できない紫苑はチートな魔力で風呂を普及するべく行動に出る 風呂が好きなのに、日本では銭湯・スーパー銭湯・レジャープールに入れなかった鬱憤は異世界で晴らす! もう我慢はしないと決めた男がチート級の魔力にモノを言わせて花嫁たちを溺愛つつ異世界で好き勝手する話 6章から不定期更新になります 嫁を愛でたい男の日常の話です 糖度が高いです お風呂まで長いです R18までも長いです(3章に少し、4章から) 素人がスマホでポチポチ書いています キリの良いところまで複数話更新することがあります 選択肢が増えると良いな、と思い総攻めを投稿してみました 何でも許せる方、お付き合いください

美醜逆転の世界で推し似のイケメンを幸せにする話

BL
異世界転生してしまった主人公が推し似のイケメンと出会い、何だかんだにと幸せになる話です。

異世界に転生したらめちゃくちゃ嫌われてたけどMなので毎日楽しい

やこにく
BL
「穢らわしい!」「近づくな、この野郎!」「気持ち悪い」 異世界に転生したら、忌み人といわれて毎日罵られる有野 郁 (ありの ゆう)。 しかし、Mだから心無い言葉に興奮している! (美形に罵られるの・・・良い!) 美形だらけの異世界で忌み人として罵られ、冷たく扱われても逆に嬉しい主人公の話。騎士団が(嫌々)引き取 ることになるが、そこでも嫌われを悦ぶ。 主人公受け。攻めはちゃんとでてきます。(固定CPです) ドMな嫌われ異世界人受け×冷酷な副騎士団長攻めです。 初心者ですが、暖かく応援していただけると嬉しいです。

処理中です...