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  「ユーマ様今日は父の体調が悪く父が授業をすることができなくなりました。代わりに僕がこの間のテストでユーマ様が間違った所を教えることになりました。よろしくお願いします」
 「えっ、先生大丈夫?」
 「心配かけてすみません、お腹が痛いだけなんで大丈夫ですよ」

 2回目の授業の日、今日は僕1人で授業の部屋まで行く。部屋の中に入ると中にはアキ1人だけがいた。そのアキの説明によると家庭教師の先生が体調不良のためお休みだという。代わりにアキがテストで僕が間違った所を教えてくれると言う。正直同い年のアキに教えられることに不安はある。
 でもアキに見せられたテスト結果を見て不安は消えた。アキのテストの点数は満点だった。
 僕の背後から答案用紙をテーブルの上に置いたアキが無言でそのまま立っていた。

 「アキ?」

 どうしたんだろうと思い声をかけた。

 「ごめんなさい、どうやって教えたらいいか考えていました。隣座りますね」

 アキが僕の隣に座ってきた。2人の答案用紙、問題用紙を並べ僕が間違えた問題、分からなかった問題を丁寧に教えてくれる。
 アキの教え方は丁寧でとても分かりやすい。
 ただ、かなりスキンシップが多い。最初は勘違いかと思っていたけど触られる回数が多い。問題を指差すときに手に触られたのを最初に事あるごとに手に触られていた。回数を重ねるごとに触られている時間が長くなっていく。問題が見えにくいと言って僕の腰を抱き寄せ近付いてくる。問題が解けたからご褒美と言って頭を撫でられたり頬にキスされたりした。
 この日は2人だけだから、他の日は先生もいるからこんなことにはならないはずと我慢した。
 頭撫でられてちょっと気持ちよかったし。
 だけど、

 「今日は父の頭痛が酷くて」
 「今日は父の吐き気が」
 「今日は昨日出掛けた先からまだ帰って来なくて」
 「今日は父が......」

 最初の日から1か月経つのに先生の体調不良や予定が合わなく一回も授業を受けれなかった。その度にアキから教えられているがスキンシップがかなり多い。
 先生の体調不良がアキの授業妨害だと気付いているけど証拠がないから僕にはどうすることもできない。

 「家庭教師せっかく決まったのに全然授業受けられないんだよ」

 僕は図書館でケインに愚痴っていた。
 家ではできない勉強をここでしていた。

 「じゃあ僕の家で僕の家庭教師に教えてもらう?」
 「えっ、いいの?」
 「家格が上のユーマの家の頼みなら僕の両親も断れないと思うよ。それに毎日ユーマが僕の家にいると思うとすっごい嬉しい」
 「僕もそうなると嬉しいな。帰ってお父様に相談してみるね」

 僕はケインの提案が嬉しくて早く両親にお願いしたくていつもより早目に図書館を後にした。なのに屋敷に帰っても両親はいなくてやっと話をすることができたのは夕食の時間だった。

 「お父様お願いがあるんです」
 「どうしたんだい?ユーマからお願いなんて珍しいじゃないか」
 「家庭教師の先生に会って1か月経つのにまだ初めの一回しか授業を受けたことがないんです。学園に入学したいのにこのままじゃ入学なんてできません。だから友達のお屋敷でその家の家庭教師に勉強を教えてもらおうと思っているんですけどいいですか?」

 僕は家庭教師の先生に一回も教えてもらったことがないこと、ケインの提案のことなど詳しく話した。

 「お願いします。入学したいんです。だから試験までケインの家で暮らさせて下さい」

 必死に頼み込んでいるユーマの横でクロードが焦った表情をしていた。だが誰もそれには気付いていなかった。

 「一回も授業を受けたことないって、あの先生はクロードの勉強はしっかり見てくれているし。なぜユーマの時だけそんなに欠席するんだろうね。ユーマの願いは叶えてあげたいけどケイン君のお家の迷惑になるかもしれないしね。うーん、どうしたものか」
 「ユーマ、もう一度先生と話し合ってみるからこの話は保留でいいか?」

 悩んでいるお父様の横からお母様が言ってくる。

 「分かりました。先生の授業をきちんと受けられるなら僕に不満はありませんから」

 結果僕はケインのお屋敷ではなくこの屋敷で家庭教師の授業を受けることになったがまた先生の欠席が増えるようならケインのお屋敷に行ってもいい事になった。

 「ユーマ様、本当に申し訳ありません。なんと言って謝ったらいいのか、でもなぜかユーマ様の授業の日になると体調が悪くなるんです。本当に申し訳ございません」

 先生には土下座するほどの勢いで謝られた。僕は薄々先生の体調不良の原因には気付いていたから逆になんだか申し訳なくなってきた。
 必死に謝る先生の横でアキが不満そうな顔をしていた。
 それからは先生もいるからアキの過剰なスキンシップもなく、先生も一度も欠席することなく十分なしっかりとした授業を受けることができた。
 あとは僕が試験でいつも通りの結果を残すだけだ。
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