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 今日は家庭教師による初めての授業だというのに昨日あれから部屋に帰っても一睡も出来なかった。
 今僕はひどい顔をしていると思う。

 「ユーマ様、顔色が悪いですが大丈夫ですか?どこかお体の調子が悪いんですか?」

 案の定僕の顔色を見たレンが心配している。

 「ほら今日は初めての授業じゃないか、だから緊張してあんまり眠れなかったんだ」
 「そうですか、でもそれでは何も頭に入ってきませんよ。少々お待ち下さい」

 レンの言う通りこれでは勉強しても頭には入ってこないだろう。学園に入学したいのにこれでは駄目だ。

 「ユーマ様まだ授業までは時間があるのでこれを飲んで少し休んで下さい」

 そう言いながらレンが持ってきたのは人肌に温められたホットミルクだった。ハチミツも入っているのか甘い香りもする。

 「ありがとう」

 僕はカップを両手に持ってゆっくりとホットミルクを飲む。段々と体が温まってきて気分も落ち着いてきた。それと同時に眠気が襲ってきた。

 「ユーマ様眠くなってきたんじゃないですか?体が斜めになっていますよ。カップを落としては危ないのでお渡し下さい」

 レンの笑いを含んだ声が聞こえてくる。僕は素直にレンにカップを渡した。そしてそのままもう一度ベッドに横になる。もう目は半分閉じかけていた。

 「お休みなさいませユーマ様」

 レンの優しい声と優しい手の感触を感じながら僕は眠った。

 「ユーマ様そろそろ起きて下さい」
 「っん、うーん。レンおはよう。僕どれくらい寝てた?」

 レンに起こされ目覚める。最初の目覚めとは違ってすっきりとした目覚めだった。

 「2時間ほどですよ。そろそろ用意しないと授業に間に合わなくなるので申し訳ありませんが起こさせていただきました」
 「大丈夫だよ、ありがとう」

 僕は思ったより寝ていたみたいだ。すっきりとしたとは言っても寝起き特有のぼーっとした感じはあるから冷たい水で顔を洗い頭をすっきりさせる。
 そして用意されていたパンと紅茶で軽くお腹を満たしレンと共に授業が行われる部屋へと行く。

 「失礼します」

 ノックをして部屋の中に入ると中には昨日の話の通りクロードの家庭教師とその息子のアキがいた。

 「今日からよろしくお願いします」
 「こちらこそよろしくお願いします。ユーマ様もご存じの通り私はクロード様の家庭教師でもあるので毎日授業をすることはできません。その代わりユーマ様が学園に入学できるよう厳しく指導していきたいと思います。それに質問はいつでも受け付けますよ。あとこちらは私の息子です。こう言っては親バカのようで恥ずかしいのですが大変優秀なのでユーマ様の良きライバルとなると思い一緒に授業を受けさせることにしました。ご両親の許可は頂いていますがユーマ様もかまいませんか?」

 家庭教師とは会話をしたことは無かったが見た目から優しそうな人だと思っていたが授業は厳しそうだ。でも質問はいつでも聞いてくれるとか優しい。

 「僕も息子さんと授業を受けることはかまいません。ライバルがいた方が競い合い張り合いがあってより頑張れますよね。よろしく」

 家庭教師にそう答え僕はアキに笑顔とともに握手の為手を差し出した。

 「アキと言います。ユーマ様と一緒に勉強するのをとても楽しみにしていました。よろしくお願いします」

 僕の手を握り返して笑顔で挨拶を返してくる。そのほわっとした柔らかい笑顔は天使のようで4人であんなに淫なことをしているなんて思えない姿だった。
 現に僕も一瞬昨日のことや4人の姿を忘れてその笑顔に見入っていた。

 「それでは今日はまずユーマ様の実力を知るためにテストをしてもらいます。アキにも受けてもらいますからね」
 「えー、聞いてないよ」
 「言ってませんからね。つべこべ言わずに椅子に座って下さい。ユーマ様もアキと2つほど離れた椅子に座って下さい」
 「分かりました」

 僕たちは部屋の中にある椅子に間隔を開けて座る。2人が座ったのを確認すると先生が筆記用具とテスト用紙を目の前のテーブルの上に置いた。

 「それでは今から時間は1時間です。テストを始めて下さい」

 先生の声で僕たち2人はペンを持ってテストを始めた。静かな部屋の中に2人のペンを動かす音だけが響いている。
 テストの内容は基本的なことで学園に入ろうと決意して自主勉強をしていた僕にはそこまで難しくなかったが何問か分からない問題があった。

 「終わり。ペンを置いて下さい」

 集中して問題を解いているとあっという間に時間がきてしまっていた。
 
 「今日は初回なのでこのテストだけで終わりです。次回は明後日でその時にこのテストも返却します。今日はお疲れ様でした」
 「ありがとうございました」

 僕は自室に帰りソファに沈み込んだ。

 「疲れた」

 勉強は嫌いじゃないけど初めての授業ということと、なによりアキと会うということで想像以上に疲れた。

 「お疲れ様でした。こちらをどうぞ」
 「ありがとう。美味しい」

 レンに渡された紅茶を飲むといつもより甘めに淹れられていてレンの気遣いを感じた。
 残りの時間は部屋の中で好きな恋愛小説を読んで過ごした。
 先生もいるしアキが僕の邪魔をすることはできないはず。僕は昨日までの不安に無理矢理蓋をして眠りについた。
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