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しおりを挟む「ケイン、申し訳ないのですが今日ユーマ様は来られなくなりました」
今日はユーマと会うはずだった日。いつもの時間いつもの場所にユーマは来なかった。代わりに来たのはいつもユーマと一緒に来ているレンとカイトの2人だけ。
「ユーマどうしたの?大丈夫?」
レンの言葉にいままで床に座っていた僕は立ち上がりレンに詰め寄る。
「ユーマ様は体調を崩されてて今は外出できる状態じゃないんだ。しばらくはここにも来られないと思う」
レンに詰め寄っていた僕をカイトがそっと肩を掴んで離した。
「体調崩したってどうしたの、いつもあんなに笑顔で元気そうだったのに。いつ元気になるの」
「ユーマ様は眠ると悪夢を見るようであまり眠れていないんだ。そのせいで体調が悪くなっている」
カイトは落ち着いた声で説明してくれる。僕はなんでそんなに落ち着いてるんだ、って思ったけどよく見ると2人とも顔色が悪く疲労がみえる。当たり前だけど2人もユーマのことが心配なんだよな。
冷静になってきた。
「悪夢を見る......」
「寝たと思ったら叫び声をあげて起きるのを繰り返してあまりぐっすり眠れていないようで」
レンがユーマの姿を思い出したのか泣き出した。カイトがレンを抱きしめて慰めている。それでも泣き止まない。それどころか激しく泣き出した。
「ユーマ様にはなんとか安眠してもらおうと薬湯を飲んでもらったりしているんだけど今の所効果がないんだ。お医者様も原因が分からないと言っているし。今俺達にはできることは何もない。ケインも気になると思うからたまに様子を言いに来ようと思っているけど、ここには来るよな?」
「僕は毎日ここにいるよ。ユーマの様子気になるから絶対知らせに来てよ」
カイトは僕の言葉に頷くと泣いているレンを連れて帰って行った。
2人には何も言わなかったけどユーマの症状に心当たりがあった。
「魔法の副作用」
僕はカイト達が居なくなった後小さく呟いた。
それについて書いてある本がなくそれがあることしか知らないけど『魔法には使い続けると副作用がある』という一文が魔法を知った本に書いてあった。
副作用でどんなことが起こるのか、それがいつまで続くのか、どうやったら治るのかが、全く書いてないから分からない。
ユーマの症状が魔法の副作用とは限らないけどあんなに元気だったユーマが悪夢に悩まされるような原因なんて魔法の副作用としか考えられない。
「ユーマが苦しんでるのは僕のせい」
僕がユーマに魔法を教えたせいでユーマが苦しんでいる。自分が嫌になりそうだ。
僕には副作用らしき症状はない。出やすい人出にくい人がいるんだろう。
ユーマが苦しんでいる今後悔ばかりしていては駄目だ。今僕にできることをしなきゃ。
僕はすぐに図書館から家に帰って、今まで読んできた本をもう一度出してきて読み始めた。
寝食忘れて本ばかり読んでいる僕に家族は今まで以上に変な顔をしている。でもそんなこと気にしていられない。
副作用について書かれている所がないか必死に探す。読んだことのある本ばかりだが読み飛ばしている所や忘れていることはないか必死に読み直す。
昼間はカイト達がユーマの様子を知らせに来てくれるかもしれないから図書館に開館時間から閉館時間まで滞在していた。
「なんでなにも書いてないんだよ」
僕は目の下に色濃い隈を作っていた。睡眠時間を削るだけ削って調べているのになにも分からない。
元々魔法について書いてある本が少ないのにその中でももっと少ない副作用について書いてあるものを探すのは無理だったのか。
今日もふらふらになりながら図書館で必死に探しているけど見つからない。
最近は図書館の5階の扉の前にいる騎士にも心配されるようになった。
「ユーマ」
僕は苦しんでいるだろうユーマを思い泣きたくなった。
「ケイン!」
静かなはずの部屋にレンの声が響く。それに注意しつつも自身も声が大きいカイトの声も聞こえる。2人ともなにかいつもより興奮している。
「ケイン、ユーマ様の状態が落ち着きました。ケインに会いたいと言っていますよ。明日ここに来ますからね」
レンのその言葉を聞いて僕の表情が一気に明るくなった。
「ユーマここに来れるくらい元気になったんだ。よかった。よかったよぉ」
「ケイン泣かないで」
僕は嬉しすぎて泣いてしまっていた。僕の涙が移ったのかレンも泣いていた。2人して大泣きしている。カイトが泣きすぎてしゃっくりをしている僕達の背中を優しく撫でてくれていた。それでも僕達はなかなか泣き止めずにいた。
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