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「ねぇレン、魔法ってどう思う?」
「魔法ですか?ユーマ様は恋愛小説ではなくファンタジー小説も読み始めるんですか?日常では起こらないような話なので普段は感じることのないワクワクを感じると思いますよ」
「図書館でね気になる本を見つけたんだ」
僕の就寝の準備をしていたレンに魔法のことを聞いてみたけどレンは何も知らないみたいだし、最初の僕と同じように話の中だけの存在だと思っている。
ゲームの制作に関わっていた僕も知らないことだしもしかして続編から語られることなのかな。
「では次回行った時に借りてみてはどうですか?ユーマ様就寝の準備ができましたよ。ではおやすみなさいませ、また明日」
「おやすみ」
僕は綺麗に整えられたベッドの中に入り部屋から出て行くレンの後ろ姿を見送った。
その日はいつもよりはっきりした夢を見た。その夢は僕の部屋から出たレンの前にカイトが現れ物影で抱き合う、という夢だった。
その夢は次の日起きてもはっきりと覚えていた。いつもの夢ならぼんやりとしか覚えていないのに数日経っても細部まで覚えていた。
「こんにちは」
1週間後図書館に行くと先週もいた5階の奥にあの子はいた。
「こんにちは、君が聞いた人は魔法のこと信じてなかったでしょ」
会ってすぐ僕が約束を破ったことを見破られた。
「約束破ってごめん。どうして誰かに言ったことが分かったの?」
「魔法を使ったから、って言いたいけど君見てたらバレバレだよ。僕を見た時からおどおどして落ち着きなかったし。これは魔法を使ったんだけど図書館に入ってからの君の鼓動は凄く早かったよ。今もほら、こんなに早い」
目を閉じて僕の胸に手を当ててくる。
「誰に言ったの?」
「えっ、えっと、いつも一緒にいるメイドだけど、本の話だと思われたんだ」
僕の胸に手を当てたまま顔を覗き込んでくる。近い、けど少し長めの前髪の間から輝いている凄く綺麗な澄んだ青い目が見えた。
「魔力も魔法もかなり大昔に忘れ去られたものだからね。知ってるとしたら王族ぐらいじゃないかな」
「王族しか知らないことをなんで君が知ってるの?」
今日もレンとカイトの2人にはおやつを買いに行ってもらっていてこの場には2人しかいないのに僕は声を潜めていた。
「僕の家にね古代語で書かれていた本があったんだ。何十代も前に城で働いていた人の本らしいんだけどね。そこに読めない本があると読みたくなるじゃないか。だからね、必死に研究したよ。そしたら魔法っていう力があると分かって、そこからは魔法って言葉が書いてある本を探しては読んで。最後にこの場所で魔力を手に入れる呪文が書かれてある本を見つけたんだよ」
簡単そうに言うがまず古代語を解読するのが難しいと思うんだけど。
そこを聞くと古代語が段々と変化して現代語ができたはずだから逆に年代を遡って文字を追っていったらしい。文字だけでなく発音も変化していくし、消えた文字や新しく作られた文字もあったはずなのに解読していくなんて天才だ。
僕が褒めるとその子は笑う。
「君は変わってるね。僕の家族は物心ついた頃から普通の子供が興味を持たないようなものばかりに興味を持つ僕のことを避けてたし、古代語の研究をしだしてからは気味の悪いものでも見るような目で見てたのに」
僕は何も言えなくなる。
「ほんと君の感情は分かりやすいね。僕は大丈夫だよ。悲しくなんかなかった。好きなことが思う存分できてたから干渉されなくて逆によかったぐらいだよ。だから君がそんな悲しそうな顔をしないで」
僕の暗い顔とは反対にその子の笑顔は明るかった。
「魔力はこの間感じたと思うけどあれから何か変わったことあった?」
話は変わった。そのことに僕はちょっとだけホッとしてしまった。
暗い話は苦手だ。前世も今も気の利いた言葉なんてすぐに思いつかない。
「変わったことなんて無かったと思うけど、あっ、君に会った日の夜に妙にリアルな夢を見たかな。いつもの夢ならすぐ忘れるのにその夢は何日経っても細部まで覚えていたんだ」
「すごいよ、それ魔法だよ。何も知らないのに使えてるなんて本当にすごい。夢じゃなくて君が見たのは実際に起こったことだと思うよ。多分意識だけ飛ばして見たんじゃないかな。それを見た時何を考えてた?」
僕はあの日のことを思い出してみた。
寝る前にレンの後ろ姿を見ながらカイトとのデートはどうだったんだろうと考えていた。
「夢に出てきた人たちのことを考えてた」
「魔力は自分の本来持っている力を増幅させたり、こうしたいという思いや創造を魔法という形で実現させる。君は強い思いの持ち主なんだね。ただ単に思っただけでは魔法にはならないはずなんだ。僕は1週間練習してこんな感じかな」
そう言うとその子の差し出した右手の手の平に小さな竜巻が生まれた。それは動くし、大きさも変わる。
「すごい」
僕も手を広げて竜巻を考える。
「できた!」
さっきの竜巻とは違って安定してなくて今にも消えそうだし自在にも動かせないけどちゃんとした竜巻がそこにはあった。
「本当にすごい。君の想像力はすごいね。君の、んっ?君の名前聞いてなかったね。僕の名前はケイン」
やっとここで自己紹介みたいだ。
「僕の名前はユーマ」
「ユーマ、古代語で『美しい人』君にぴったりの名前だね」
「魔法ですか?ユーマ様は恋愛小説ではなくファンタジー小説も読み始めるんですか?日常では起こらないような話なので普段は感じることのないワクワクを感じると思いますよ」
「図書館でね気になる本を見つけたんだ」
僕の就寝の準備をしていたレンに魔法のことを聞いてみたけどレンは何も知らないみたいだし、最初の僕と同じように話の中だけの存在だと思っている。
ゲームの制作に関わっていた僕も知らないことだしもしかして続編から語られることなのかな。
「では次回行った時に借りてみてはどうですか?ユーマ様就寝の準備ができましたよ。ではおやすみなさいませ、また明日」
「おやすみ」
僕は綺麗に整えられたベッドの中に入り部屋から出て行くレンの後ろ姿を見送った。
その日はいつもよりはっきりした夢を見た。その夢は僕の部屋から出たレンの前にカイトが現れ物影で抱き合う、という夢だった。
その夢は次の日起きてもはっきりと覚えていた。いつもの夢ならぼんやりとしか覚えていないのに数日経っても細部まで覚えていた。
「こんにちは」
1週間後図書館に行くと先週もいた5階の奥にあの子はいた。
「こんにちは、君が聞いた人は魔法のこと信じてなかったでしょ」
会ってすぐ僕が約束を破ったことを見破られた。
「約束破ってごめん。どうして誰かに言ったことが分かったの?」
「魔法を使ったから、って言いたいけど君見てたらバレバレだよ。僕を見た時からおどおどして落ち着きなかったし。これは魔法を使ったんだけど図書館に入ってからの君の鼓動は凄く早かったよ。今もほら、こんなに早い」
目を閉じて僕の胸に手を当ててくる。
「誰に言ったの?」
「えっ、えっと、いつも一緒にいるメイドだけど、本の話だと思われたんだ」
僕の胸に手を当てたまま顔を覗き込んでくる。近い、けど少し長めの前髪の間から輝いている凄く綺麗な澄んだ青い目が見えた。
「魔力も魔法もかなり大昔に忘れ去られたものだからね。知ってるとしたら王族ぐらいじゃないかな」
「王族しか知らないことをなんで君が知ってるの?」
今日もレンとカイトの2人にはおやつを買いに行ってもらっていてこの場には2人しかいないのに僕は声を潜めていた。
「僕の家にね古代語で書かれていた本があったんだ。何十代も前に城で働いていた人の本らしいんだけどね。そこに読めない本があると読みたくなるじゃないか。だからね、必死に研究したよ。そしたら魔法っていう力があると分かって、そこからは魔法って言葉が書いてある本を探しては読んで。最後にこの場所で魔力を手に入れる呪文が書かれてある本を見つけたんだよ」
簡単そうに言うがまず古代語を解読するのが難しいと思うんだけど。
そこを聞くと古代語が段々と変化して現代語ができたはずだから逆に年代を遡って文字を追っていったらしい。文字だけでなく発音も変化していくし、消えた文字や新しく作られた文字もあったはずなのに解読していくなんて天才だ。
僕が褒めるとその子は笑う。
「君は変わってるね。僕の家族は物心ついた頃から普通の子供が興味を持たないようなものばかりに興味を持つ僕のことを避けてたし、古代語の研究をしだしてからは気味の悪いものでも見るような目で見てたのに」
僕は何も言えなくなる。
「ほんと君の感情は分かりやすいね。僕は大丈夫だよ。悲しくなんかなかった。好きなことが思う存分できてたから干渉されなくて逆によかったぐらいだよ。だから君がそんな悲しそうな顔をしないで」
僕の暗い顔とは反対にその子の笑顔は明るかった。
「魔力はこの間感じたと思うけどあれから何か変わったことあった?」
話は変わった。そのことに僕はちょっとだけホッとしてしまった。
暗い話は苦手だ。前世も今も気の利いた言葉なんてすぐに思いつかない。
「変わったことなんて無かったと思うけど、あっ、君に会った日の夜に妙にリアルな夢を見たかな。いつもの夢ならすぐ忘れるのにその夢は何日経っても細部まで覚えていたんだ」
「すごいよ、それ魔法だよ。何も知らないのに使えてるなんて本当にすごい。夢じゃなくて君が見たのは実際に起こったことだと思うよ。多分意識だけ飛ばして見たんじゃないかな。それを見た時何を考えてた?」
僕はあの日のことを思い出してみた。
寝る前にレンの後ろ姿を見ながらカイトとのデートはどうだったんだろうと考えていた。
「夢に出てきた人たちのことを考えてた」
「魔力は自分の本来持っている力を増幅させたり、こうしたいという思いや創造を魔法という形で実現させる。君は強い思いの持ち主なんだね。ただ単に思っただけでは魔法にはならないはずなんだ。僕は1週間練習してこんな感じかな」
そう言うとその子の差し出した右手の手の平に小さな竜巻が生まれた。それは動くし、大きさも変わる。
「すごい」
僕も手を広げて竜巻を考える。
「できた!」
さっきの竜巻とは違って安定してなくて今にも消えそうだし自在にも動かせないけどちゃんとした竜巻がそこにはあった。
「本当にすごい。君の想像力はすごいね。君の、んっ?君の名前聞いてなかったね。僕の名前はケイン」
やっとここで自己紹介みたいだ。
「僕の名前はユーマ」
「ユーマ、古代語で『美しい人』君にぴったりの名前だね」
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