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「おめでとうユーマ」
平和な日が続いていて今日は僕の10歳の誕生日だ。夕食の席にはいつもより豪華な食事が並んでいる。
「これはお母様からのプレゼントだ。しっかり訓練に励むんだぞ」
「これはお父様からのプレゼントですよ」
お母様からは刃を潰した訓練用の剣が渡された。剣の柄に綺麗な宝石が邪魔にならないよう埋め込まれている。
お父様からはとても珍しい鳥の羽を使った栞を贈られた。
どちらもとても高価そうな品物だ。
「2人ともありがとうございます。大切に使わさせていただきます」
「次はお兄様からのプレゼントだよ。アオイ持ってきて」
「かしこまりました」
兄に言われて部屋の外からメイドが持ってきたのはとても大きなクマのぬいぐるみだった。まるで兄が中に楽々入れるくらいの大きさだ。
「ありがとうございますお兄様」
僕はその大きさの意味を深く考えることは止め笑顔でお礼を言った。
「ユーマが抱いて寝るのにぴったりだと思うんだ。後でお兄様がユーマのベッドまで運んでおくから一度引き取るね」
兄の言葉にひやっとしたものを感じ僕は慌てて側に控えていたレンを呼んだ。
「お兄様にそんな面倒はかけれませんよ。レン、あのぬいぐるみを部屋まで運んでおいてくれない」
「かしこまりました」
レンは大きなクマのぬいぐるみをアオイから受け取ると近くにいた別のメイドと協力して運んで行った。
「可愛いぬいぐるみをありがとうございます。大切に飾っておきますね」
兄がまだ何か言いたそうにしていたが笑顔で黙らせておく。
「クロードのプレゼントはぬいぐるみなんだな、幼いような気もするが可愛いユーマにはぴったりだな」
兄のプレゼントを見てお母様は豪快に笑っている。
「私達はただユーマにプレゼントしたいものを渡しただけだけどユーマは何か望みはないのかい?」
僕はお父様のその言葉を待っていた。
ぬいぐるみは別として剣も栞も嬉しい。けれど僕が今1番欲しいものは別にあった。
「お父様、僕自由に街へ行きたいです。街の図書館や本屋などへ行きたいしもっと色々なものが見たいんです」
僕は今まで一度も自分の意思で外に出たことがなかった。外へ出るのも他の貴族の家へ馬車で真っ直ぐ向かうだけ。街をぶらぶらなんてしたことがない。
貴族の子供ならそれが普通なんだろうけど僕には前世の記憶があるからか窮屈に感じていた。それに自分で選んだBL本が読みたいんだ!
最近レンが持ってる本も読みきりBL本に飢えているのが大きな理由だけど。
「貴族の子供が街へねぇ。うーん、貴族ってだけじゃなくてユーマは可愛いから悪い奴に攫われそうだよな。いくらユーマが強いっていっても10歳だからな」
予想通り2人とも難しい顔をしている。
「レンも一緒に行きますから」
事前に約束を取り付けていたレンの名前を出す。
「レンはメイドですからねぇ」
「お願いします」
目を潤ませて2人を上目遣いで見る。
「あぁ、もう。分かりました。ただし騎士を1人連れて行くこと。一度でも危ないことがあったらもう2度と行ってはいけませんからね。騎士は明日決めるので明後日にはユーマの所に行かせます」
「ありがとうございます。お父様、お母様大好き」
とうとう両親が折れた。
騎士が護衛に着くのは予想していた。誰になるんだろう。僕は毎日の訓練で会って仲良くなった人達の顔を思い出していた。
それから2日後。昼食を食べ終わった頃にその人はお母様に連れられてやってきた。
「ユーマ、このカイトがこれからユーマが出かける時に護衛に着くことになる。ユーマも知ってると思うがこの家で働いている騎士の中では1番の新人だ。だが実力は十分ある。だから私達も安心して任せることにしたんだ。だけど約束は忘れるんじゃないぞ」
「分かっています。絶対危ない事はしないと約束します。カイトさんこれからよろしくお願いします」
「絶対にお守りしますので安心して下さい」
挨拶が終わると2人は帰っていった。
「カイトさんか」
カイトは半年前から働いている人でお母様が言っていた通りこの屋敷で1番新人の騎士だ。
ある貴族の家で訓練していた姿を見てその実力に惚れたお母様が引き抜いてきたのだ。
その貴族もお母様には恩があったし、格上の貴族の家で働けるカイトの出世を思って快く送り出してくれた。というわけでこの家では新人でもお母様が惚れるほどの実力があるのだから僕の護衛には十分過ぎる人物だ。
「あんまり話したことないんだよね」
訓練の休憩時間に話しかけようとしてもすぐどこかに行かれるのだ。避けられているような気がずっとしていた。そんな人がなんで僕の護衛をすることになったんだろう。次の日の訓練の時他の騎士に聞いてみることにした。
「カイトのやつユーマ様の護衛の話が出た時真っ先にやりたいって名乗り出ていましたよ。あいつユーマ様のメイドのレンのことが好きみたいで、それでユーマ様の護衛になればレンとも仲良くなれると思ったんじゃないですか。普段の休憩時間にユーマ様が近寄ってくると一緒にレンも寄ってくるから恥ずかしいって、逃げてるのに大丈夫なんでしょうかね」
なんて答えが返ってきた。
確かにレンは僕の訓練している時も近くにいる。避けられていると思っていた謎が解けた。
カイトはレンが好きなのか。
「これから楽しくなりそうだな」
僕には街に行く以外の楽しみが増えた。
平和な日が続いていて今日は僕の10歳の誕生日だ。夕食の席にはいつもより豪華な食事が並んでいる。
「これはお母様からのプレゼントだ。しっかり訓練に励むんだぞ」
「これはお父様からのプレゼントですよ」
お母様からは刃を潰した訓練用の剣が渡された。剣の柄に綺麗な宝石が邪魔にならないよう埋め込まれている。
お父様からはとても珍しい鳥の羽を使った栞を贈られた。
どちらもとても高価そうな品物だ。
「2人ともありがとうございます。大切に使わさせていただきます」
「次はお兄様からのプレゼントだよ。アオイ持ってきて」
「かしこまりました」
兄に言われて部屋の外からメイドが持ってきたのはとても大きなクマのぬいぐるみだった。まるで兄が中に楽々入れるくらいの大きさだ。
「ありがとうございますお兄様」
僕はその大きさの意味を深く考えることは止め笑顔でお礼を言った。
「ユーマが抱いて寝るのにぴったりだと思うんだ。後でお兄様がユーマのベッドまで運んでおくから一度引き取るね」
兄の言葉にひやっとしたものを感じ僕は慌てて側に控えていたレンを呼んだ。
「お兄様にそんな面倒はかけれませんよ。レン、あのぬいぐるみを部屋まで運んでおいてくれない」
「かしこまりました」
レンは大きなクマのぬいぐるみをアオイから受け取ると近くにいた別のメイドと協力して運んで行った。
「可愛いぬいぐるみをありがとうございます。大切に飾っておきますね」
兄がまだ何か言いたそうにしていたが笑顔で黙らせておく。
「クロードのプレゼントはぬいぐるみなんだな、幼いような気もするが可愛いユーマにはぴったりだな」
兄のプレゼントを見てお母様は豪快に笑っている。
「私達はただユーマにプレゼントしたいものを渡しただけだけどユーマは何か望みはないのかい?」
僕はお父様のその言葉を待っていた。
ぬいぐるみは別として剣も栞も嬉しい。けれど僕が今1番欲しいものは別にあった。
「お父様、僕自由に街へ行きたいです。街の図書館や本屋などへ行きたいしもっと色々なものが見たいんです」
僕は今まで一度も自分の意思で外に出たことがなかった。外へ出るのも他の貴族の家へ馬車で真っ直ぐ向かうだけ。街をぶらぶらなんてしたことがない。
貴族の子供ならそれが普通なんだろうけど僕には前世の記憶があるからか窮屈に感じていた。それに自分で選んだBL本が読みたいんだ!
最近レンが持ってる本も読みきりBL本に飢えているのが大きな理由だけど。
「貴族の子供が街へねぇ。うーん、貴族ってだけじゃなくてユーマは可愛いから悪い奴に攫われそうだよな。いくらユーマが強いっていっても10歳だからな」
予想通り2人とも難しい顔をしている。
「レンも一緒に行きますから」
事前に約束を取り付けていたレンの名前を出す。
「レンはメイドですからねぇ」
「お願いします」
目を潤ませて2人を上目遣いで見る。
「あぁ、もう。分かりました。ただし騎士を1人連れて行くこと。一度でも危ないことがあったらもう2度と行ってはいけませんからね。騎士は明日決めるので明後日にはユーマの所に行かせます」
「ありがとうございます。お父様、お母様大好き」
とうとう両親が折れた。
騎士が護衛に着くのは予想していた。誰になるんだろう。僕は毎日の訓練で会って仲良くなった人達の顔を思い出していた。
それから2日後。昼食を食べ終わった頃にその人はお母様に連れられてやってきた。
「ユーマ、このカイトがこれからユーマが出かける時に護衛に着くことになる。ユーマも知ってると思うがこの家で働いている騎士の中では1番の新人だ。だが実力は十分ある。だから私達も安心して任せることにしたんだ。だけど約束は忘れるんじゃないぞ」
「分かっています。絶対危ない事はしないと約束します。カイトさんこれからよろしくお願いします」
「絶対にお守りしますので安心して下さい」
挨拶が終わると2人は帰っていった。
「カイトさんか」
カイトは半年前から働いている人でお母様が言っていた通りこの屋敷で1番新人の騎士だ。
ある貴族の家で訓練していた姿を見てその実力に惚れたお母様が引き抜いてきたのだ。
その貴族もお母様には恩があったし、格上の貴族の家で働けるカイトの出世を思って快く送り出してくれた。というわけでこの家では新人でもお母様が惚れるほどの実力があるのだから僕の護衛には十分過ぎる人物だ。
「あんまり話したことないんだよね」
訓練の休憩時間に話しかけようとしてもすぐどこかに行かれるのだ。避けられているような気がずっとしていた。そんな人がなんで僕の護衛をすることになったんだろう。次の日の訓練の時他の騎士に聞いてみることにした。
「カイトのやつユーマ様の護衛の話が出た時真っ先にやりたいって名乗り出ていましたよ。あいつユーマ様のメイドのレンのことが好きみたいで、それでユーマ様の護衛になればレンとも仲良くなれると思ったんじゃないですか。普段の休憩時間にユーマ様が近寄ってくると一緒にレンも寄ってくるから恥ずかしいって、逃げてるのに大丈夫なんでしょうかね」
なんて答えが返ってきた。
確かにレンは僕の訓練している時も近くにいる。避けられていると思っていた謎が解けた。
カイトはレンが好きなのか。
「これから楽しくなりそうだな」
僕には街に行く以外の楽しみが増えた。
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