4 / 72
4
しおりを挟む
次の日からも朝は剣術、武術の訓練。午後は自由時間といつも通りの日々を過ごしていたはずだった。
だがたまにいつも通りでないことがおこる。
いつもは嫌いなものは少な目に料理に入っていたのに最近やたらと嫌いなものがもりもり入っていたりする。
訓練の時間がいつもより遅くなったと伝えられのんびりしていると、いつも通りの時間に来ない僕を心配した先生が呼びに来たことで遅くなったというのが嘘だということが分かったこともあった。
嬉しいことにさぼることなく真面目に訓練に通っていた僕の言い分を先生は信じてくれた。
「ユーマ最近ついてないこと多いよな。この間も着ようと思ってた服が濡れてたり本に落書きされてたりしたんだろ。誰のイタズラだよ、まったく。ユーマはご主人様の御子息なんだぞ。小さな事でもイタズラなんかしたら駄目だろ」
そう言って話かけてきたのは剣、武術の先生の息子のジェイドだ。僕の二つ年上で今は2人で素振りをしている。
歳上ということもあり剣の腕は僕より上手いし筋肉もしっかり付いている。
でも人懐っこい笑顔はまだ幼いしその性格は一緒にいて楽しく安心する。
「僕あんなことされる覚えないし、この屋敷の誰もそんなことしないって思ってたんだけどな」
「そうだよな、ユーマが誰かにイタズラされるってそんなの考えられないよな。でも一つ一つは小さいけどイタズラされてるしな」
「こら、お前たち手が止まっているぞ。真面目に練習しないと上手くならないぞ」
今までいなかったジェイドの父で僕の剣、武術の先生が現れて怒られた。
2人とも話に夢中になっていて素振りをしていた手が止まっていた。
「ごめんなさい」
2人揃って素直に謝る。
「ジェイド、ユーマ様のことを呼び捨てとはなんだ。ユーマ様は私達の雇い主だし爵位も上なんだぞ」
「先生、ジェイドとは友達なんだからいいんですよ。なんでも気軽に話せる仲になりたいから堅苦しいのは嫌なんです」
「ですがやはり身分を考えると」
ジェイドの代わりに僕が言い訳をするが先生はまだ納得していない様子だった。
前世で会社員だった僕だから雇い主に対して敬語を使うのは納得できる。だが身分によって差が出るということには理解はできても納得はできていなかった。
僕の家は侯爵家というやつで王族、公爵に次ぐ3番目の地位だ。
その地位が大切な場があることは知っている。だけど僕はなるべくその地位に頼りたくないし、大切な友達は身分関係なく作りたい。
「おやじ、ユーマがこう言ってるんだからいいじゃないか。俺だってこう見えて色々考えてるんだぜ。ユーマをユーマって呼んでいい時と場所だって弁えてるつもりだぜ。男爵家だからユーマとは対等じゃないかもしれないけど、少しでも剣の腕を上げて将来はユーマの隣に立っても文句言われないぐらいの剣士になりたいって考えてるし」
ジェイドは顔を赤くしながら自分の思いを語った。
ジェイドの父は初めて聞いた息子の将来の夢に笑顔を見せた。
「そうか、だったらもっと厳しくしないとな」
「えー」
ジェイドは文句を言いながらも嬉しそうだ。
僕はといえばジェイドの夢を聞き、僕なんかよりしっかりと考えていることにびっくりし、また僕もしっかりしなきゃと身が引き締まる思いだった。
剣の訓練に戻り今度は2人で打ち合う。
最初の頃はジェイドと打ち合っていても僕はすぐ疲れてしまっていたが最近は体力がついてきたからか前ほど疲れなくなってきていた。その成長が僕は嬉しかった。
何度も打ち合っていた時にそれは起こった。
「わっ、痛!」
「ジェイド!大丈夫、ねぇ大丈夫。どこが痛いの?」
僕が持っていた木刀がいきなり折れてジェイドの腕に当たったのだ。
ジェイドは右腕を押さえ座り込んだ。
その腕を見ると赤くなって大きく腫れてきていた。
「ジェイド、先生がくるまでこれで冷やしておきなさい。しかしなんで木刀は折れたんだ。あれは昨日新しくしたばかりのやつなのに」
ジェイドの父はジェイドの腕を冷やしながら折れた木刀を見ていた。僕は医師が来るまでジェイドの傍でおろおろとしていることしか出来なかった。
「僕にジェイドのお世話をさせて下さい」
すぐにやってきた医師の診断によると打撲で骨は折れていないだろうということだった。けれど1、2週間は痛みがあり利き腕ということもあり生活が不便だと思うから無理はしないよう、1ヶ月は剣の訓練も休むよう言われていた。
「そんな、ユーマ様にそんなことさせられませんよ。ユーマ様が悪いわけではありません。あれは誰も悪いわけではない事故です」
「でも僕の木刀が折れてジェイドの腕に当たって怪我をしたわけだから」
「そうだよユーマが悪いわけじゃないから気にするな。この腕でもなんとかなるし。っ痛」
僕に頭を下げられた2人は慌てている。
2人は僕は悪くないと言ってくれているが僕は罪悪感を抱いていた。
僕が使っていた木刀が折れたのはただの事故かもしれないが訓練の前にしっかりと確認していればと後悔することは多い。
「駄目だよジェイド、腕痛いんだから動かしちゃ駄目だ」
僕に大丈夫な所を見せようとジェイドは腕を動かすがすぐ痛がった。
それからしばらく3人で話し合ったがとうとうジェイドの父親が折れた。
「では明日からよろしくお願いします。でもユーマ様のご予定を変更することだけはしないと約束して下さいよ」
「分かった約束する」
次の日から僕はジェイドのお世話をすることになった。
だがたまにいつも通りでないことがおこる。
いつもは嫌いなものは少な目に料理に入っていたのに最近やたらと嫌いなものがもりもり入っていたりする。
訓練の時間がいつもより遅くなったと伝えられのんびりしていると、いつも通りの時間に来ない僕を心配した先生が呼びに来たことで遅くなったというのが嘘だということが分かったこともあった。
嬉しいことにさぼることなく真面目に訓練に通っていた僕の言い分を先生は信じてくれた。
「ユーマ最近ついてないこと多いよな。この間も着ようと思ってた服が濡れてたり本に落書きされてたりしたんだろ。誰のイタズラだよ、まったく。ユーマはご主人様の御子息なんだぞ。小さな事でもイタズラなんかしたら駄目だろ」
そう言って話かけてきたのは剣、武術の先生の息子のジェイドだ。僕の二つ年上で今は2人で素振りをしている。
歳上ということもあり剣の腕は僕より上手いし筋肉もしっかり付いている。
でも人懐っこい笑顔はまだ幼いしその性格は一緒にいて楽しく安心する。
「僕あんなことされる覚えないし、この屋敷の誰もそんなことしないって思ってたんだけどな」
「そうだよな、ユーマが誰かにイタズラされるってそんなの考えられないよな。でも一つ一つは小さいけどイタズラされてるしな」
「こら、お前たち手が止まっているぞ。真面目に練習しないと上手くならないぞ」
今までいなかったジェイドの父で僕の剣、武術の先生が現れて怒られた。
2人とも話に夢中になっていて素振りをしていた手が止まっていた。
「ごめんなさい」
2人揃って素直に謝る。
「ジェイド、ユーマ様のことを呼び捨てとはなんだ。ユーマ様は私達の雇い主だし爵位も上なんだぞ」
「先生、ジェイドとは友達なんだからいいんですよ。なんでも気軽に話せる仲になりたいから堅苦しいのは嫌なんです」
「ですがやはり身分を考えると」
ジェイドの代わりに僕が言い訳をするが先生はまだ納得していない様子だった。
前世で会社員だった僕だから雇い主に対して敬語を使うのは納得できる。だが身分によって差が出るということには理解はできても納得はできていなかった。
僕の家は侯爵家というやつで王族、公爵に次ぐ3番目の地位だ。
その地位が大切な場があることは知っている。だけど僕はなるべくその地位に頼りたくないし、大切な友達は身分関係なく作りたい。
「おやじ、ユーマがこう言ってるんだからいいじゃないか。俺だってこう見えて色々考えてるんだぜ。ユーマをユーマって呼んでいい時と場所だって弁えてるつもりだぜ。男爵家だからユーマとは対等じゃないかもしれないけど、少しでも剣の腕を上げて将来はユーマの隣に立っても文句言われないぐらいの剣士になりたいって考えてるし」
ジェイドは顔を赤くしながら自分の思いを語った。
ジェイドの父は初めて聞いた息子の将来の夢に笑顔を見せた。
「そうか、だったらもっと厳しくしないとな」
「えー」
ジェイドは文句を言いながらも嬉しそうだ。
僕はといえばジェイドの夢を聞き、僕なんかよりしっかりと考えていることにびっくりし、また僕もしっかりしなきゃと身が引き締まる思いだった。
剣の訓練に戻り今度は2人で打ち合う。
最初の頃はジェイドと打ち合っていても僕はすぐ疲れてしまっていたが最近は体力がついてきたからか前ほど疲れなくなってきていた。その成長が僕は嬉しかった。
何度も打ち合っていた時にそれは起こった。
「わっ、痛!」
「ジェイド!大丈夫、ねぇ大丈夫。どこが痛いの?」
僕が持っていた木刀がいきなり折れてジェイドの腕に当たったのだ。
ジェイドは右腕を押さえ座り込んだ。
その腕を見ると赤くなって大きく腫れてきていた。
「ジェイド、先生がくるまでこれで冷やしておきなさい。しかしなんで木刀は折れたんだ。あれは昨日新しくしたばかりのやつなのに」
ジェイドの父はジェイドの腕を冷やしながら折れた木刀を見ていた。僕は医師が来るまでジェイドの傍でおろおろとしていることしか出来なかった。
「僕にジェイドのお世話をさせて下さい」
すぐにやってきた医師の診断によると打撲で骨は折れていないだろうということだった。けれど1、2週間は痛みがあり利き腕ということもあり生活が不便だと思うから無理はしないよう、1ヶ月は剣の訓練も休むよう言われていた。
「そんな、ユーマ様にそんなことさせられませんよ。ユーマ様が悪いわけではありません。あれは誰も悪いわけではない事故です」
「でも僕の木刀が折れてジェイドの腕に当たって怪我をしたわけだから」
「そうだよユーマが悪いわけじゃないから気にするな。この腕でもなんとかなるし。っ痛」
僕に頭を下げられた2人は慌てている。
2人は僕は悪くないと言ってくれているが僕は罪悪感を抱いていた。
僕が使っていた木刀が折れたのはただの事故かもしれないが訓練の前にしっかりと確認していればと後悔することは多い。
「駄目だよジェイド、腕痛いんだから動かしちゃ駄目だ」
僕に大丈夫な所を見せようとジェイドは腕を動かすがすぐ痛がった。
それからしばらく3人で話し合ったがとうとうジェイドの父親が折れた。
「では明日からよろしくお願いします。でもユーマ様のご予定を変更することだけはしないと約束して下さいよ」
「分かった約束する」
次の日から僕はジェイドのお世話をすることになった。
14
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる