転生腐男子BLゲームの世界でビッチにならずに夢を叶えたい

めぐもふ

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 次の日からも朝は剣術、武術の訓練。午後は自由時間といつも通りの日々を過ごしていたはずだった。
 だがたまにいつも通りでないことがおこる。
 いつもは嫌いなものは少な目に料理に入っていたのに最近やたらと嫌いなものがもりもり入っていたりする。
 訓練の時間がいつもより遅くなったと伝えられのんびりしていると、いつも通りの時間に来ない僕を心配した先生が呼びに来たことで遅くなったというのが嘘だということが分かったこともあった。
 嬉しいことにさぼることなく真面目に訓練に通っていた僕の言い分を先生は信じてくれた。

 「ユーマ最近ついてないこと多いよな。この間も着ようと思ってた服が濡れてたり本に落書きされてたりしたんだろ。誰のイタズラだよ、まったく。ユーマはご主人様の御子息なんだぞ。小さな事でもイタズラなんかしたら駄目だろ」

 そう言って話かけてきたのは剣、武術の先生の息子のジェイドだ。僕の二つ年上で今は2人で素振りをしている。
 歳上ということもあり剣の腕は僕より上手いし筋肉もしっかり付いている。
 でも人懐っこい笑顔はまだ幼いしその性格は一緒にいて楽しく安心する。
 
 「僕あんなことされる覚えないし、この屋敷の誰もそんなことしないって思ってたんだけどな」
 「そうだよな、ユーマが誰かにイタズラされるってそんなの考えられないよな。でも一つ一つは小さいけどイタズラされてるしな」
 「こら、お前たち手が止まっているぞ。真面目に練習しないと上手くならないぞ」

 今までいなかったジェイドの父で僕の剣、武術の先生が現れて怒られた。
 2人とも話に夢中になっていて素振りをしていた手が止まっていた。

 「ごめんなさい」

 2人揃って素直に謝る。

 「ジェイド、ユーマ様のことを呼び捨てとはなんだ。ユーマ様は私達の雇い主だし爵位も上なんだぞ」
 「先生、ジェイドとは友達なんだからいいんですよ。なんでも気軽に話せる仲になりたいから堅苦しいのは嫌なんです」
 「ですがやはり身分を考えると」

 ジェイドの代わりに僕が言い訳をするが先生はまだ納得していない様子だった。
 前世で会社員だった僕だから雇い主に対して敬語を使うのは納得できる。だが身分によって差が出るということには理解はできても納得はできていなかった。
 僕の家は侯爵家というやつで王族、公爵に次ぐ3番目の地位だ。
 その地位が大切な場があることは知っている。だけど僕はなるべくその地位に頼りたくないし、大切な友達は身分関係なく作りたい。

 「おやじ、ユーマがこう言ってるんだからいいじゃないか。俺だってこう見えて色々考えてるんだぜ。ユーマをユーマって呼んでいい時と場所だって弁えてるつもりだぜ。男爵家だからユーマとは対等じゃないかもしれないけど、少しでも剣の腕を上げて将来はユーマの隣に立っても文句言われないぐらいの剣士になりたいって考えてるし」

 ジェイドは顔を赤くしながら自分の思いを語った。
 ジェイドの父は初めて聞いた息子の将来の夢に笑顔を見せた。

 「そうか、だったらもっと厳しくしないとな」
 「えー」

 ジェイドは文句を言いながらも嬉しそうだ。
 僕はといえばジェイドの夢を聞き、僕なんかよりしっかりと考えていることにびっくりし、また僕もしっかりしなきゃと身が引き締まる思いだった。
 剣の訓練に戻り今度は2人で打ち合う。
 最初の頃はジェイドと打ち合っていても僕はすぐ疲れてしまっていたが最近は体力がついてきたからか前ほど疲れなくなってきていた。その成長が僕は嬉しかった。
 何度も打ち合っていた時にそれは起こった。

 「わっ、痛!」
 「ジェイド!大丈夫、ねぇ大丈夫。どこが痛いの?」

 僕が持っていた木刀がいきなり折れてジェイドの腕に当たったのだ。
 ジェイドは右腕を押さえ座り込んだ。
 その腕を見ると赤くなって大きく腫れてきていた。

 「ジェイド、先生がくるまでこれで冷やしておきなさい。しかしなんで木刀は折れたんだ。あれは昨日新しくしたばかりのやつなのに」

 ジェイドの父はジェイドの腕を冷やしながら折れた木刀を見ていた。僕は医師が来るまでジェイドの傍でおろおろとしていることしか出来なかった。
 
 「僕にジェイドのお世話をさせて下さい」

 すぐにやってきた医師の診断によると打撲で骨は折れていないだろうということだった。けれど1、2週間は痛みがあり利き腕ということもあり生活が不便だと思うから無理はしないよう、1ヶ月は剣の訓練も休むよう言われていた。

 「そんな、ユーマ様にそんなことさせられませんよ。ユーマ様が悪いわけではありません。あれは誰も悪いわけではない事故です」
 「でも僕の木刀が折れてジェイドの腕に当たって怪我をしたわけだから」
 「そうだよユーマが悪いわけじゃないから気にするな。この腕でもなんとかなるし。っ痛」

 僕に頭を下げられた2人は慌てている。
 2人は僕は悪くないと言ってくれているが僕は罪悪感を抱いていた。
 僕が使っていた木刀が折れたのはただの事故かもしれないが訓練の前にしっかりと確認していればと後悔することは多い。

 「駄目だよジェイド、腕痛いんだから動かしちゃ駄目だ」

 僕に大丈夫な所を見せようとジェイドは腕を動かすがすぐ痛がった。
 それからしばらく3人で話し合ったがとうとうジェイドの父親が折れた。

 「では明日からよろしくお願いします。でもユーマ様のご予定を変更することだけはしないと約束して下さいよ」
 「分かった約束する」

 次の日から僕はジェイドのお世話をすることになった。
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