281 / 297
人間領vs魔人領
261 千尋が行く
しおりを挟む
ミリーが要塞に到着した事は本人を直接見なくともわかるのは、広範囲に渡って七色の粉塵魔力が広がり、触れた者の体力が回復されていく為だ。
戦闘時の放出する魔力を本来の回復魔力として使用するミリーは、他の回復魔術師と比べて別格の能力を持っている。
疲れ切っていた回復術師達もこの体力の回復に助けられ、少しだけ顔に血色が戻る。
「コール…… ユユラさん、回復医の方々に魔力回復薬の供給をお願いします。それと王国への怪我人の移送を急いでほしいので一般の運搬業者さんにも依頼して下さい」
クリムゾンのザウス王国幹部であるユユラへと指示を出し、範囲の回復魔法を展開しながら治療室へと到着する。
そこには多くの怪我人や今にも命尽きそうな戦士達が溢れ返っていた。
リゼもその中の一人であり、多くの血を失った事により死人のように青白い。
「ミリー頼む!! リゼを助けて!!」
「千尋さんは少し落ち着いて。今から復元魔法を掛けますから強化を解除してください。回復医の方々は重症患者のみ回復魔法をお願いします」
千尋がリゼの強化を解くと抑えられていた血が一気に溢れ出すが、そこにミリーの復元魔法が開始され、目に見えて傷が癒されていくのがわかる。
今のミリーには普段の軽い雰囲気が一切なく、真剣な表情で治療にあたっている。
リゼの手を握り締めたままミリーの回復を見守る千尋だが。
「心配なのはわかりますが千尋さんはこの部屋から出て行ってもらえませんか?」
「でも!」
「でもじゃないんですよ。今千尋さんはやるべき事があるでしょう? リゼさんは私が必ず治してみせますから千尋さんは自分の仕事をしてきて下さい」
今ここに千尋を置くべきではないと判断したミリー。
千尋の怒りと殺意により放出する魔力が鋭く、傷を負った者達の体に負担をかけている。
ミリーの厳しい態度に自分が治療に悪影響を与えていると察した千尋は立ち上がり、拳を握り締めて歩き出す。
千尋がリゼを連れてきてからも治療室に運び込まれる戦士は増えており、回復医の手が回らなくなるのは目に見えている。
「ミリー。魔力はもつ?」
「このまま重傷者が増えればいずれは尽きます」
「オレは何をすればいい?」
「千尋さんはそろそろ全力を出していいと思いますよ。今ここは戦場なんですからね。全部壊しちゃっても大丈夫です!」
「わかった。ここは任せるね」
千尋は治療室を出て走り出す。
地上で戦う連合軍の戦況は悪く、前線が崩れている為魔獣群の流れを分散できずに聖騎士団への負担となって押し寄せている。
聖騎士団も全てを抑える事は難しく、その背後からも止め処なく押し寄せる魔獣群、そして巨大な超級の姿も見え始め、絶望を覚えながらも戦っている事だろう。
多くの魔獣を後方に流してしまうと騎士団、領兵団が魔獣を討伐できずに多くの怪我人が出てしまい、さらに戦況が厳しくなっていく。
魔術師団が集まる要塞の前面へとたどり着いた千尋は指揮を執っているであろうマールを探す。
マールの声は拡声器によって魔術師団に指示を出している為声のする方へと向かえばいい。
「マールさん! 頼みがあるんだ!」
「千尋君!? 君の頼みなら構わないが何をすれば良いんだ?」
「魔術師団全員で連結魔法! オレに地属性魔力を集めてほしいんだ!」
「全員だと暴発するかもしれな…… 千尋君ならそうでもないかな。指示を出そう」
マールは拡声器を使用して全員に通達し、魔術師団がその指示に従って手を繋いでいく。
「ありがとう! ガク、やるよ!」
『うむ。充分に怒りを食ったし我に任せるといい』
魔剣カラドボルグを握り締めて上級魔法陣アースを発動し、2メートルともなる精神体のガクが前方に向けて両手をかざす。
千尋からガクに注いだ魔力はおよそ半分。
この魔力を核としてガクは魔術師団の魔力を再錬成する事になる。
千尋の右肩にはマールが、左肩にはアルテリアの研究所から応援に来ているコーザが手を置き、一万を超える魔術師団が一定量で地属性の魔力を千尋に向けて流し込む。
あまりにも膨大な魔力が流れ込んだ為吐きそうになりながらもガクへと魔力を注ぎ込み、ガクは千尋の魔力核を中心にして大地から大量の土や石を集めてゴーレムを作り出していく。
注ぎ込まれた膨大な魔力は500万ガルドを超え、ガクの再錬成により高さ20メートルを超える巨大なゴーレムを生み出した。
その姿は小型のガクを凶悪なまでに膨れ上がらせた巨獣ベヒモスであり、内包される魔力が500万ガルドを超えるとなれば超級魔獣をも遥かに上回る。
魔力の再錬成で高出力を可能とする事は魔術師団、研究所でもわかっていたが、その注ぎ込まれた魔力を全て再錬成し尽くして巨大なゴーレムを作り出すとは思ってもいなかった。
使用された素材は要塞の一部も使われているが、この超級ゴーレムを錬成されては言葉も出ない。
ゴーレム内へと飛び込んだガクはゴーレムとなって地上へと着地。
大地を踏み鳴らして咆哮をあげる。
わずかに屈伸して駆け出すと、地面を大きく抉り取って魔獣群へと突っ込んだ。
魔獣の中腹へと向けて駆け込んだガクは大地を踏み砕き、足元の魔獣を全て一撃で粉砕。
左右の拳を大地に打ち付けて地上を真っ赤に染め上げていく。
人間にとっては大きな魔獣も巨獣ベヒモスの前には小さなもの。
大地の怒りが魔獣群を蹂躙する。
ベヒモスが魔獣群を叩き潰す様を見つめる千尋。
膨大すぎる魔力を再錬成した事により気分は悪い。
そして千尋だけで作り出したゴーレムとは違い、ベヒモスの強化が千尋の体に影響を与える事はないようだ。
集められた膨大な地属性魔力は、千尋の魔力ではない為距離が離れると拡散する。
ガクの強化はそれを防ぐ為に使われているのだろう。
千尋の位置からは見えないが、ベヒモスの体は少しずつ崩れている。
ただし500万ガルドを超える魔力ともなれば、魔獣群五万を相手に充分な魔力量と思える。
「マールさん、コーザもありがとね」
「「……」」
口をパクパクとさせながらベヒモスを見つめる二人は言葉も出ないらしい。
エルフ部隊もこの千尋の再錬成を見守っていたが、今は化け物を見るような目を千尋に向けている。
「じゃあオレは行くからここはお願いね」
千尋は飛行装備を展開してリゼと戦った老魔人の元へと向かう。
誰かが挑んでいなければ間違いなくあの場に留まっているはずだ。
魔獣群の中で暴れ回るベヒモスを見下ろす老魔人の元へとやって来た千尋。
やはり移動する事なく千尋を待っていたようだ。
「あれはなんだ? 其方は魔獣を作り出せるのか?」
「魔獣じゃなくてゴーレムね。中身はオレの契約する精霊だよ」
「さきの者も精霊を使役しておったが人間は精霊を取り込まず利用できるという事か…… ふむ、興味深いな」
「利用じゃないよ。仲間として契約するんだ。精霊も自我をもってるんだし友達みたいなものかなー」
『違…… いや、そうなのか?』
エンとしては違うと答えるのが普通だろう。
精霊は人間に召喚される際に姿形を創造される事で自我をもち、与えられた魔力に事象、精霊魔法を起こすという対価を支払うのが本来の在り方だ。
そして器を与えられ契約した精霊は自我を一定に保たれ、魔力を食糧として必要な時に契約者に力を貸すのが精霊契約となる。
しかし魔剣への精霊契約は自我をさらに強くもたせ、感情豊かな精霊となる為、常に一緒にいる以上友達と言われれば間違いではないのかもしれない。
「其方には精霊がもう一体。どのような力を持つのか気になるな。手合わせ願いたいがどうだろうか」
「言っとくけどリゼを傷つけた事は許さないよ。手加減しないから死んでも文句は言わないでね」
「ほっほ。望むところよ。このトラビス、命を賭けて相手をしよう」
「姫野千尋。お前を倒す男の名前だ!」
「男……」
首を傾げながら全身を強化して精霊剣を構える老魔人。
千尋は下級魔法陣グランドで身体強化をしつつ、エンの深淵魔導でトラビスに挑む。
千尋が把握している深淵魔法による事象とは質量変化であり、重力魔法とはまた違った性質を持つ。
上級魔法陣グラビトンの効果は薄く、インプロージョンは絶大な効果となる。
互いに距離を詰めようと翼を羽ばたかせると、千尋はトラビスの背後に配置した対外魔力で空間そのものの質量を変化させ、前に進めないトラビスと急加速する千尋。
右のエンヴィで斬り結ぶと三刀流による乱撃でトラビスを圧倒し、その複雑かつ捉えようのない斬撃に複数の傷を負わせながら攻勢に回る。
その強度から深い傷を負わせる事はできないものの、後方に引かれるトラビスの剣は千尋の威力に耐えきれない。
押し退けられるも質量魔法が解ければトラビスも反撃に出る事が可能となり、千尋の剣を打ち払って攻勢に出ようと前に出る。
出力で勝るトラビスの斬撃だが、千尋の強化も魔導のみとはいえ相当な出力を持つ。
トラビスの斬撃を受け止め、左右の斬撃とエンの質量魔魔導を乗せた斬撃とでトラビスを翻弄する。
思うように戦えないトラビスは全身から血を流しながらも千尋の攻撃に耐え続け、精霊化しようと考えるもこの止め処ない攻撃の嵐にその余裕はない。
エンに殺意を食われた千尋は冷静であり、トラビスをどこまでも追い込んでいく。
リゼを傷つけられた事による怒りはまだ湧き上がるものの、冷静さを欠けば自身の隙を生む事になり、この大王に届くかもしれない実力者であるトラビスには隙を見せるわけにはいかない。
トラビスを追い込み、冷静さを失わせてから全力の戦闘に持ち込もうと千尋はこの攻撃の手を緩めるつもりはない。
左右、そしてエンからの質量魔導はそう簡単に逃れる事はできないだろう。
戦闘時の放出する魔力を本来の回復魔力として使用するミリーは、他の回復魔術師と比べて別格の能力を持っている。
疲れ切っていた回復術師達もこの体力の回復に助けられ、少しだけ顔に血色が戻る。
「コール…… ユユラさん、回復医の方々に魔力回復薬の供給をお願いします。それと王国への怪我人の移送を急いでほしいので一般の運搬業者さんにも依頼して下さい」
クリムゾンのザウス王国幹部であるユユラへと指示を出し、範囲の回復魔法を展開しながら治療室へと到着する。
そこには多くの怪我人や今にも命尽きそうな戦士達が溢れ返っていた。
リゼもその中の一人であり、多くの血を失った事により死人のように青白い。
「ミリー頼む!! リゼを助けて!!」
「千尋さんは少し落ち着いて。今から復元魔法を掛けますから強化を解除してください。回復医の方々は重症患者のみ回復魔法をお願いします」
千尋がリゼの強化を解くと抑えられていた血が一気に溢れ出すが、そこにミリーの復元魔法が開始され、目に見えて傷が癒されていくのがわかる。
今のミリーには普段の軽い雰囲気が一切なく、真剣な表情で治療にあたっている。
リゼの手を握り締めたままミリーの回復を見守る千尋だが。
「心配なのはわかりますが千尋さんはこの部屋から出て行ってもらえませんか?」
「でも!」
「でもじゃないんですよ。今千尋さんはやるべき事があるでしょう? リゼさんは私が必ず治してみせますから千尋さんは自分の仕事をしてきて下さい」
今ここに千尋を置くべきではないと判断したミリー。
千尋の怒りと殺意により放出する魔力が鋭く、傷を負った者達の体に負担をかけている。
ミリーの厳しい態度に自分が治療に悪影響を与えていると察した千尋は立ち上がり、拳を握り締めて歩き出す。
千尋がリゼを連れてきてからも治療室に運び込まれる戦士は増えており、回復医の手が回らなくなるのは目に見えている。
「ミリー。魔力はもつ?」
「このまま重傷者が増えればいずれは尽きます」
「オレは何をすればいい?」
「千尋さんはそろそろ全力を出していいと思いますよ。今ここは戦場なんですからね。全部壊しちゃっても大丈夫です!」
「わかった。ここは任せるね」
千尋は治療室を出て走り出す。
地上で戦う連合軍の戦況は悪く、前線が崩れている為魔獣群の流れを分散できずに聖騎士団への負担となって押し寄せている。
聖騎士団も全てを抑える事は難しく、その背後からも止め処なく押し寄せる魔獣群、そして巨大な超級の姿も見え始め、絶望を覚えながらも戦っている事だろう。
多くの魔獣を後方に流してしまうと騎士団、領兵団が魔獣を討伐できずに多くの怪我人が出てしまい、さらに戦況が厳しくなっていく。
魔術師団が集まる要塞の前面へとたどり着いた千尋は指揮を執っているであろうマールを探す。
マールの声は拡声器によって魔術師団に指示を出している為声のする方へと向かえばいい。
「マールさん! 頼みがあるんだ!」
「千尋君!? 君の頼みなら構わないが何をすれば良いんだ?」
「魔術師団全員で連結魔法! オレに地属性魔力を集めてほしいんだ!」
「全員だと暴発するかもしれな…… 千尋君ならそうでもないかな。指示を出そう」
マールは拡声器を使用して全員に通達し、魔術師団がその指示に従って手を繋いでいく。
「ありがとう! ガク、やるよ!」
『うむ。充分に怒りを食ったし我に任せるといい』
魔剣カラドボルグを握り締めて上級魔法陣アースを発動し、2メートルともなる精神体のガクが前方に向けて両手をかざす。
千尋からガクに注いだ魔力はおよそ半分。
この魔力を核としてガクは魔術師団の魔力を再錬成する事になる。
千尋の右肩にはマールが、左肩にはアルテリアの研究所から応援に来ているコーザが手を置き、一万を超える魔術師団が一定量で地属性の魔力を千尋に向けて流し込む。
あまりにも膨大な魔力が流れ込んだ為吐きそうになりながらもガクへと魔力を注ぎ込み、ガクは千尋の魔力核を中心にして大地から大量の土や石を集めてゴーレムを作り出していく。
注ぎ込まれた膨大な魔力は500万ガルドを超え、ガクの再錬成により高さ20メートルを超える巨大なゴーレムを生み出した。
その姿は小型のガクを凶悪なまでに膨れ上がらせた巨獣ベヒモスであり、内包される魔力が500万ガルドを超えるとなれば超級魔獣をも遥かに上回る。
魔力の再錬成で高出力を可能とする事は魔術師団、研究所でもわかっていたが、その注ぎ込まれた魔力を全て再錬成し尽くして巨大なゴーレムを作り出すとは思ってもいなかった。
使用された素材は要塞の一部も使われているが、この超級ゴーレムを錬成されては言葉も出ない。
ゴーレム内へと飛び込んだガクはゴーレムとなって地上へと着地。
大地を踏み鳴らして咆哮をあげる。
わずかに屈伸して駆け出すと、地面を大きく抉り取って魔獣群へと突っ込んだ。
魔獣の中腹へと向けて駆け込んだガクは大地を踏み砕き、足元の魔獣を全て一撃で粉砕。
左右の拳を大地に打ち付けて地上を真っ赤に染め上げていく。
人間にとっては大きな魔獣も巨獣ベヒモスの前には小さなもの。
大地の怒りが魔獣群を蹂躙する。
ベヒモスが魔獣群を叩き潰す様を見つめる千尋。
膨大すぎる魔力を再錬成した事により気分は悪い。
そして千尋だけで作り出したゴーレムとは違い、ベヒモスの強化が千尋の体に影響を与える事はないようだ。
集められた膨大な地属性魔力は、千尋の魔力ではない為距離が離れると拡散する。
ガクの強化はそれを防ぐ為に使われているのだろう。
千尋の位置からは見えないが、ベヒモスの体は少しずつ崩れている。
ただし500万ガルドを超える魔力ともなれば、魔獣群五万を相手に充分な魔力量と思える。
「マールさん、コーザもありがとね」
「「……」」
口をパクパクとさせながらベヒモスを見つめる二人は言葉も出ないらしい。
エルフ部隊もこの千尋の再錬成を見守っていたが、今は化け物を見るような目を千尋に向けている。
「じゃあオレは行くからここはお願いね」
千尋は飛行装備を展開してリゼと戦った老魔人の元へと向かう。
誰かが挑んでいなければ間違いなくあの場に留まっているはずだ。
魔獣群の中で暴れ回るベヒモスを見下ろす老魔人の元へとやって来た千尋。
やはり移動する事なく千尋を待っていたようだ。
「あれはなんだ? 其方は魔獣を作り出せるのか?」
「魔獣じゃなくてゴーレムね。中身はオレの契約する精霊だよ」
「さきの者も精霊を使役しておったが人間は精霊を取り込まず利用できるという事か…… ふむ、興味深いな」
「利用じゃないよ。仲間として契約するんだ。精霊も自我をもってるんだし友達みたいなものかなー」
『違…… いや、そうなのか?』
エンとしては違うと答えるのが普通だろう。
精霊は人間に召喚される際に姿形を創造される事で自我をもち、与えられた魔力に事象、精霊魔法を起こすという対価を支払うのが本来の在り方だ。
そして器を与えられ契約した精霊は自我を一定に保たれ、魔力を食糧として必要な時に契約者に力を貸すのが精霊契約となる。
しかし魔剣への精霊契約は自我をさらに強くもたせ、感情豊かな精霊となる為、常に一緒にいる以上友達と言われれば間違いではないのかもしれない。
「其方には精霊がもう一体。どのような力を持つのか気になるな。手合わせ願いたいがどうだろうか」
「言っとくけどリゼを傷つけた事は許さないよ。手加減しないから死んでも文句は言わないでね」
「ほっほ。望むところよ。このトラビス、命を賭けて相手をしよう」
「姫野千尋。お前を倒す男の名前だ!」
「男……」
首を傾げながら全身を強化して精霊剣を構える老魔人。
千尋は下級魔法陣グランドで身体強化をしつつ、エンの深淵魔導でトラビスに挑む。
千尋が把握している深淵魔法による事象とは質量変化であり、重力魔法とはまた違った性質を持つ。
上級魔法陣グラビトンの効果は薄く、インプロージョンは絶大な効果となる。
互いに距離を詰めようと翼を羽ばたかせると、千尋はトラビスの背後に配置した対外魔力で空間そのものの質量を変化させ、前に進めないトラビスと急加速する千尋。
右のエンヴィで斬り結ぶと三刀流による乱撃でトラビスを圧倒し、その複雑かつ捉えようのない斬撃に複数の傷を負わせながら攻勢に回る。
その強度から深い傷を負わせる事はできないものの、後方に引かれるトラビスの剣は千尋の威力に耐えきれない。
押し退けられるも質量魔法が解ければトラビスも反撃に出る事が可能となり、千尋の剣を打ち払って攻勢に出ようと前に出る。
出力で勝るトラビスの斬撃だが、千尋の強化も魔導のみとはいえ相当な出力を持つ。
トラビスの斬撃を受け止め、左右の斬撃とエンの質量魔魔導を乗せた斬撃とでトラビスを翻弄する。
思うように戦えないトラビスは全身から血を流しながらも千尋の攻撃に耐え続け、精霊化しようと考えるもこの止め処ない攻撃の嵐にその余裕はない。
エンに殺意を食われた千尋は冷静であり、トラビスをどこまでも追い込んでいく。
リゼを傷つけられた事による怒りはまだ湧き上がるものの、冷静さを欠けば自身の隙を生む事になり、この大王に届くかもしれない実力者であるトラビスには隙を見せるわけにはいかない。
トラビスを追い込み、冷静さを失わせてから全力の戦闘に持ち込もうと千尋はこの攻撃の手を緩めるつもりはない。
左右、そしてエンからの質量魔導はそう簡単に逃れる事はできないだろう。
0
お気に入りに追加
1,028
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした
鈴木竜一
ファンタジー
健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。
しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。
魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ!
【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】
※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる