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旅の終わり編
204 リルフォン会談とその後
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魔人領北の国と人間領のリルフォン会談は、途中無駄話を挟みつつもお互い良好な関係を築けるだろうと思わせる内容で終わりを迎えた。
内容を簡単に説明する。
まずはカミン達とアリス王女達は魔人領東の国へと向かう事。
これは朱王の車で向かう事とし、手土産にと魔法具を複数と、ゼス王からはモニター用のミスリル板。
通り掛かるついでにクイースト王国からは家庭用の魔石を大量に譲ってもらえるとの事。
他の王国からは今後東の国にも支援する事になるだろうと、今後準備して魔人領から近いクイースト王国へと集める事としてある。
また、技術的な支援に関しては、専門的な知識を持った者を複数名魔人領へと派遣する事とし、その者達への報奨として相応の対価と飛行装備、リルフォンを贈呈する事とした。
ただし、西の国領の上空を通過する事や危険な魔獣が飛び交う事から、人間領からはクリムゾンの幹部を、魔人領北の国からは魔貴族の者を護衛として就ける事とした。
魔人領からは金銭などのやり取りができない為、当面の間は魔人領で採れる物資や宝石、魔石などで支払うのだが、価値については調査してからとなる。
そして最後にあった会話。
「ディミトリアス大王。ゼルバードの亡骸はどうなったか知っているか?」
『うむ。他の国の大王達も含めてゼルバード様の死を確認してある。我々としてはゼルバード様を丁重に葬るべきだと訴えたのだがな…… 西と南がそれを良しとはしなかったのだ』
西と南の国の言い分は魔族としては当然の事なのかもしれない。
人間への接触を禁じたのは魔王なのだから。
「では今もまだ打ち捨てられたままという事か……」
リルフォン越しでも感じられる朱王の怒りと悲しみ。
表情や態度には出さなくとも、感じとれる魔力の質が違う。
同じ場所にいる、朱王をよく知らないアリスとセシールは全身が震える程の恐怖を覚える程だ。
誰も口を開こうとはしない。
「皆んなにはすまないが…… 私も魔人領に行くよ。ゼルバードをそのままにはしておけない」
『わかった…… 私が案内しよう』
「ありがとう、感謝する」
怒りを抑えて頭を下げる朱王。
本当であればもっと早くに行きたかったのだろう。
しばらくして落ち着いた朱王は笑顔で皆んなに謝罪した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食事とリルフォン会談を終えた千尋達は、朱王城へと戻って一休み。
「ねぇ、朱王さんが魔人領行くってなったら今後の予定どうするの?」
「勝手に決めちゃってゴメンね。そうだな。君達にはこのまま車を完成させてもらってもいいかな? 仕事押し付ける事になって悪いんだけどさぁ」
「んー、これまでいろいろと経験させてもらってるし、これくらい全然良いけどね。ねぇ蒼真?」
「ああ。朱王さんは気にせず、早いとこゼルバードさんに会いに行ってやるといい」
「朱王。私は……」
「ゴメンねミリー。私一人で行かせてくれないか」
「むぅ…… じゃあ寄り道しないで早く帰って来てくださいね!」
拗ねるミリーだが、朱王の気持ちを察してかわがままを言う事はない。
その後全員で話し合い、今後の予定を決めていった。
朱王を交えたカミン達は二日後には出発する事にし、出発までの間はアリス王女達に観光を楽しんでもらう。
千尋達は新たな車を完成させ次第、ゼス王国の観光して半月程したらアルテリアへと向かう。
それからまた半月もすれば竜族やエルフ族の住むヴァイス=エマへと行く予定もある。
これはエルフ族の赤ちゃんにヒーラーの魔力を与える為だが、ノーリスにいる回復術師に依頼する事もできるとは言え、頼まれたのがミリーである為本人が約束は果たすべきだろう。
蒼真はそのついでに竜族の剣術の上達の確認をしたいと今からすでに乗り気でいる。
今後もしばらく冒険者としての日常に戻る事ができないが、余程驚異の魔獣でも現れない限りは千尋達の力は必要ないはずだ。
すでに各王国には精霊魔導師となった聖騎士達が複数いるのだから。
それから二日。
あっという間に時間は過ぎ、魔人領へ出発する日がやってきた。
これまで乗っていた車【バリウス】には旅の荷物と大量のお土産を積み込み、ルーフにミスリル板とモニター用機材を乗せて準備は万端。
運転席にはフィディック、助手席右側にはカミン、後部座席にはアリス、セシール、朱雀が乗り込む。
車用ゲート前にはゼス王国にいるクリムゾンの全てのメンバーが見送りに集まっている。
「ダンテ、イアン、ガネット、デイジーには苦労をかけるがクリムゾンを頼んだよ」
「「「「はっ! お任せ下さい!」」」」
「新しい車の方は千尋君がいるから大丈夫だよね。あとはお願いね」
「うんっ、最高の一台に仕上げるよ!」
「じゃあ行ってくる。ミリーこっちへ」
拗ねた表情のミリーを抱き締める朱王。
「むぅ。ちゃんと毎日連絡して下さいね!」
「わかった。朝と夜に必ずするね」
名残惜しそうに朱王から離れ、目元に涙を溜めながら手を振るミリー。
朱王は車の助手席へと乗り込み、カミンが魔力球を放ってゲートを起動させる。
「行ってらっしゃい!!」
「「「「「行ってらっしゃいませ! 道中お気をつけて!」」」」」
ミリーが声を張り上げ、それに続いてその場にいた全員が見送りの言葉を送る。
バリウスが見えなくなり、ゲートの底からエンジン音が聞こえなくなるまでその場に立ち続けるクリムゾンメンバー。
朱王が出発した事により組織の雰囲気が少し重いものとなるが、ミリーも涙を流してはいられない。
「さぁ皆さん! 朱王が留守にする間、私達は自分のやるべき事をやるだけです! 今日も一日頑張りましょう!」
涙を拭って盛り上げるミリー。
「よーっし、やるよ!!」
「早いとこ完成させてドライブに行こう」
「そうだな。我々も負けていられない。緋咲各店舗は徹底した接客を! テレビ局もこれまで以上の面白い作品作りを! クリムゾンは更なる高みを目指して頑張ろう!」
「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」
各々志気を上げて仕事へと向かって行くのだった。
千尋達はこれまでの続き、車作りにまた取り掛かる。
外装やエンジンその他は既に完成しており、現在は内装作りをしている段階だ。
シート作りをする蒼真とアイリ。
整形された内装のパネルに皮を張るミリーとエレクトラ。
千尋とリゼはバリウスにも装備されていた不思議な仕掛け作りを手掛けている。
このまま続ければ数日以内には完成する事だろう。
クリムゾンのメンバーはというと、ダンテがこれまで朱王がしていた仕事の大半を引き継ぐ事になったのだが、一人でこなすには到底不可能な仕事量となり、そこでダンテを緋咲の取締役とし、秘書を二人配する事として仕事を分担している。
また、ダンテの替わりに新たに社長と副社長も設けてゼス王国での生産から販売までの指揮をとってもらう事にした。
新たに配されたこの四人は知識や勉学に特化しており、戦闘には向いていないという事で装備の強化はしていない。
ただダンテがしていた仕事量だけでもどう考えても一人でこなせるものではなく、ダンテの能力の高さに新たに役職を与えられた四人は舌を巻く事となった。
元々はダンテ一人でなんとかしようと考えたものの、仕事が滞ってしまえばクリムゾン緋咲全てに迷惑をかけてしまうだけでなく、自分を信頼してくれた朱王にもまた仕事をさせてしまう事になる。
それだけは絶対に避けなければならないと、ダンテは自分の仕事を手伝ってくれるよう四人に頼み込んだ。
そして朱王の許可を得る際には今後大きく育っていく子供達の受け入れ先として事業の拡大も必要だとして、自分の考えや想いを全て語ったダンテ。
朱王はそんなダンテの意見や思想に喜び、選ばれた四人それぞれに役職を与える事としたのだ。
新たな四人の幹部と元いた幹部を含めてクリムゾン緋咲はまた新たに動き出している。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
車が完成したのはそれから六日後だ。
真紅のボディに黒い複数のパーツが組み込まれたオフロード車。
バリウスよりも一回り大きく、エンジン性能も高いこの一台には【ヘリオス】と名付けた。
車の製作に携わったパーティーが自分達【アマテラス】であり、天照とは太陽神。
他の太陽神をと考えた場合にアポロンとヘリオスの二つの名前があがり、五人での多数決でヘリオスに決まったのだ。
完成してドライブに出かけた時には、誰しもがその乗り心地に満足…… はしなかった。
これまで乗っていたバリウスに比べるとやはりその完成度には遠く及ばず、まだまだ微調整が必要なようではあるが、乗れない程でもない為この自動車作りはここで終了とした。
今後朱王が帰ってきてからまた調整を習いながら煮詰めていく事になるだろう。
千尋達は翌日からはゼス王国の観光を楽しむ。
東西南北へと広がるゼス王国は、その各地に様々な観光地があり、多くの街や貴族領には名物料理などもあるため、飛行装備でその旅程を短縮して毎日遊び回っていた。
ミリーも朱王が出発してから少し落ち込んではいたものの、観光地巡りではエレクトラが行動を共にし、日々の新たな発見や朱王との毎日の通話もあって元気を取り戻している。
そしてアイリとダンテはというと、以前と変わらないよう接しているようだ。
それはもちろん蒼真も変わらず、その時がくればダンテが何かしら行動に出るのかもしれないが、今のところ特に変わった様子もない。
むしろ蒼真とダンテは仲がいいのではないかと思われる。
ダンテは日頃からゼス国王と訓練しており、それを聞きつけた蒼真もイアンを誘って一緒に訓練しに向かっている。
聖剣を持つ国王と妖刀を持つダンテ、精霊刀を持つ蒼真と一緒に訓練するとなれば擬似魔剣しか持たないイアンが訓練とはいえやや不利だ。
そこで蒼真がイアンの分の魔剣を作ってくれるよう千尋とリゼに頼んである。
空いた時間に手掛けるだけなのですぐにはできないが、ゼス王国を離れる前までには完成するだろうと千尋とリゼは快く了承してくれた。
観光だけでなくまた仕事をする事になってしまう二人だが、物作りが好きな千尋と、その真剣な表情を見るだけでも幸せを感じるリゼなので魔剣作りも楽しんでできるようだ。
内容を簡単に説明する。
まずはカミン達とアリス王女達は魔人領東の国へと向かう事。
これは朱王の車で向かう事とし、手土産にと魔法具を複数と、ゼス王からはモニター用のミスリル板。
通り掛かるついでにクイースト王国からは家庭用の魔石を大量に譲ってもらえるとの事。
他の王国からは今後東の国にも支援する事になるだろうと、今後準備して魔人領から近いクイースト王国へと集める事としてある。
また、技術的な支援に関しては、専門的な知識を持った者を複数名魔人領へと派遣する事とし、その者達への報奨として相応の対価と飛行装備、リルフォンを贈呈する事とした。
ただし、西の国領の上空を通過する事や危険な魔獣が飛び交う事から、人間領からはクリムゾンの幹部を、魔人領北の国からは魔貴族の者を護衛として就ける事とした。
魔人領からは金銭などのやり取りができない為、当面の間は魔人領で採れる物資や宝石、魔石などで支払うのだが、価値については調査してからとなる。
そして最後にあった会話。
「ディミトリアス大王。ゼルバードの亡骸はどうなったか知っているか?」
『うむ。他の国の大王達も含めてゼルバード様の死を確認してある。我々としてはゼルバード様を丁重に葬るべきだと訴えたのだがな…… 西と南がそれを良しとはしなかったのだ』
西と南の国の言い分は魔族としては当然の事なのかもしれない。
人間への接触を禁じたのは魔王なのだから。
「では今もまだ打ち捨てられたままという事か……」
リルフォン越しでも感じられる朱王の怒りと悲しみ。
表情や態度には出さなくとも、感じとれる魔力の質が違う。
同じ場所にいる、朱王をよく知らないアリスとセシールは全身が震える程の恐怖を覚える程だ。
誰も口を開こうとはしない。
「皆んなにはすまないが…… 私も魔人領に行くよ。ゼルバードをそのままにはしておけない」
『わかった…… 私が案内しよう』
「ありがとう、感謝する」
怒りを抑えて頭を下げる朱王。
本当であればもっと早くに行きたかったのだろう。
しばらくして落ち着いた朱王は笑顔で皆んなに謝罪した。
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食事とリルフォン会談を終えた千尋達は、朱王城へと戻って一休み。
「ねぇ、朱王さんが魔人領行くってなったら今後の予定どうするの?」
「勝手に決めちゃってゴメンね。そうだな。君達にはこのまま車を完成させてもらってもいいかな? 仕事押し付ける事になって悪いんだけどさぁ」
「んー、これまでいろいろと経験させてもらってるし、これくらい全然良いけどね。ねぇ蒼真?」
「ああ。朱王さんは気にせず、早いとこゼルバードさんに会いに行ってやるといい」
「朱王。私は……」
「ゴメンねミリー。私一人で行かせてくれないか」
「むぅ…… じゃあ寄り道しないで早く帰って来てくださいね!」
拗ねるミリーだが、朱王の気持ちを察してかわがままを言う事はない。
その後全員で話し合い、今後の予定を決めていった。
朱王を交えたカミン達は二日後には出発する事にし、出発までの間はアリス王女達に観光を楽しんでもらう。
千尋達は新たな車を完成させ次第、ゼス王国の観光して半月程したらアルテリアへと向かう。
それからまた半月もすれば竜族やエルフ族の住むヴァイス=エマへと行く予定もある。
これはエルフ族の赤ちゃんにヒーラーの魔力を与える為だが、ノーリスにいる回復術師に依頼する事もできるとは言え、頼まれたのがミリーである為本人が約束は果たすべきだろう。
蒼真はそのついでに竜族の剣術の上達の確認をしたいと今からすでに乗り気でいる。
今後もしばらく冒険者としての日常に戻る事ができないが、余程驚異の魔獣でも現れない限りは千尋達の力は必要ないはずだ。
すでに各王国には精霊魔導師となった聖騎士達が複数いるのだから。
それから二日。
あっという間に時間は過ぎ、魔人領へ出発する日がやってきた。
これまで乗っていた車【バリウス】には旅の荷物と大量のお土産を積み込み、ルーフにミスリル板とモニター用機材を乗せて準備は万端。
運転席にはフィディック、助手席右側にはカミン、後部座席にはアリス、セシール、朱雀が乗り込む。
車用ゲート前にはゼス王国にいるクリムゾンの全てのメンバーが見送りに集まっている。
「ダンテ、イアン、ガネット、デイジーには苦労をかけるがクリムゾンを頼んだよ」
「「「「はっ! お任せ下さい!」」」」
「新しい車の方は千尋君がいるから大丈夫だよね。あとはお願いね」
「うんっ、最高の一台に仕上げるよ!」
「じゃあ行ってくる。ミリーこっちへ」
拗ねた表情のミリーを抱き締める朱王。
「むぅ。ちゃんと毎日連絡して下さいね!」
「わかった。朝と夜に必ずするね」
名残惜しそうに朱王から離れ、目元に涙を溜めながら手を振るミリー。
朱王は車の助手席へと乗り込み、カミンが魔力球を放ってゲートを起動させる。
「行ってらっしゃい!!」
「「「「「行ってらっしゃいませ! 道中お気をつけて!」」」」」
ミリーが声を張り上げ、それに続いてその場にいた全員が見送りの言葉を送る。
バリウスが見えなくなり、ゲートの底からエンジン音が聞こえなくなるまでその場に立ち続けるクリムゾンメンバー。
朱王が出発した事により組織の雰囲気が少し重いものとなるが、ミリーも涙を流してはいられない。
「さぁ皆さん! 朱王が留守にする間、私達は自分のやるべき事をやるだけです! 今日も一日頑張りましょう!」
涙を拭って盛り上げるミリー。
「よーっし、やるよ!!」
「早いとこ完成させてドライブに行こう」
「そうだな。我々も負けていられない。緋咲各店舗は徹底した接客を! テレビ局もこれまで以上の面白い作品作りを! クリムゾンは更なる高みを目指して頑張ろう!」
「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」
各々志気を上げて仕事へと向かって行くのだった。
千尋達はこれまでの続き、車作りにまた取り掛かる。
外装やエンジンその他は既に完成しており、現在は内装作りをしている段階だ。
シート作りをする蒼真とアイリ。
整形された内装のパネルに皮を張るミリーとエレクトラ。
千尋とリゼはバリウスにも装備されていた不思議な仕掛け作りを手掛けている。
このまま続ければ数日以内には完成する事だろう。
クリムゾンのメンバーはというと、ダンテがこれまで朱王がしていた仕事の大半を引き継ぐ事になったのだが、一人でこなすには到底不可能な仕事量となり、そこでダンテを緋咲の取締役とし、秘書を二人配する事として仕事を分担している。
また、ダンテの替わりに新たに社長と副社長も設けてゼス王国での生産から販売までの指揮をとってもらう事にした。
新たに配されたこの四人は知識や勉学に特化しており、戦闘には向いていないという事で装備の強化はしていない。
ただダンテがしていた仕事量だけでもどう考えても一人でこなせるものではなく、ダンテの能力の高さに新たに役職を与えられた四人は舌を巻く事となった。
元々はダンテ一人でなんとかしようと考えたものの、仕事が滞ってしまえばクリムゾン緋咲全てに迷惑をかけてしまうだけでなく、自分を信頼してくれた朱王にもまた仕事をさせてしまう事になる。
それだけは絶対に避けなければならないと、ダンテは自分の仕事を手伝ってくれるよう四人に頼み込んだ。
そして朱王の許可を得る際には今後大きく育っていく子供達の受け入れ先として事業の拡大も必要だとして、自分の考えや想いを全て語ったダンテ。
朱王はそんなダンテの意見や思想に喜び、選ばれた四人それぞれに役職を与える事としたのだ。
新たな四人の幹部と元いた幹部を含めてクリムゾン緋咲はまた新たに動き出している。
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車が完成したのはそれから六日後だ。
真紅のボディに黒い複数のパーツが組み込まれたオフロード車。
バリウスよりも一回り大きく、エンジン性能も高いこの一台には【ヘリオス】と名付けた。
車の製作に携わったパーティーが自分達【アマテラス】であり、天照とは太陽神。
他の太陽神をと考えた場合にアポロンとヘリオスの二つの名前があがり、五人での多数決でヘリオスに決まったのだ。
完成してドライブに出かけた時には、誰しもがその乗り心地に満足…… はしなかった。
これまで乗っていたバリウスに比べるとやはりその完成度には遠く及ばず、まだまだ微調整が必要なようではあるが、乗れない程でもない為この自動車作りはここで終了とした。
今後朱王が帰ってきてからまた調整を習いながら煮詰めていく事になるだろう。
千尋達は翌日からはゼス王国の観光を楽しむ。
東西南北へと広がるゼス王国は、その各地に様々な観光地があり、多くの街や貴族領には名物料理などもあるため、飛行装備でその旅程を短縮して毎日遊び回っていた。
ミリーも朱王が出発してから少し落ち込んではいたものの、観光地巡りではエレクトラが行動を共にし、日々の新たな発見や朱王との毎日の通話もあって元気を取り戻している。
そしてアイリとダンテはというと、以前と変わらないよう接しているようだ。
それはもちろん蒼真も変わらず、その時がくればダンテが何かしら行動に出るのかもしれないが、今のところ特に変わった様子もない。
むしろ蒼真とダンテは仲がいいのではないかと思われる。
ダンテは日頃からゼス国王と訓練しており、それを聞きつけた蒼真もイアンを誘って一緒に訓練しに向かっている。
聖剣を持つ国王と妖刀を持つダンテ、精霊刀を持つ蒼真と一緒に訓練するとなれば擬似魔剣しか持たないイアンが訓練とはいえやや不利だ。
そこで蒼真がイアンの分の魔剣を作ってくれるよう千尋とリゼに頼んである。
空いた時間に手掛けるだけなのですぐにはできないが、ゼス王国を離れる前までには完成するだろうと千尋とリゼは快く了承してくれた。
観光だけでなくまた仕事をする事になってしまう二人だが、物作りが好きな千尋と、その真剣な表情を見るだけでも幸せを感じるリゼなので魔剣作りも楽しんでできるようだ。
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