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ウェストラル王国編
195 メルビレイ討伐
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メルビレイの口内に入った千尋とリゼだが、ここは深海である為好き勝手に動く事も出来ない。
泳いでいる事もあって口内からさらに体内へと引き込まれていく千尋とリゼ。
口内も全て海水で満たされてている為、リゼのこの水球を解除すれば水圧により一瞬で意識を失う事となるだろう。
水を操るシズクが下級魔法陣によって強化されている事でなんとかこの水圧にも耐えられる。
しかし水を限定して防いでいる為、メルビレイからの直接攻撃には耐えられる防壁ではないのだが。
そのおかげもあって千尋も水球内に入る事もできるし、内部からの攻撃も可能だ。
ルシファーを引き寄せて、切っ先の突き刺さった場所へと向かってメルビレイの体内を移動する。
ここはメルビレイのどの辺の位置かは不明だが、飲み込まれてから随分と中へと引き込まれた気もする。
ただ今この場でルシファーを抜いてしまっては、メルビレイの更に奥へと引き込まれてしまう可能性がある。
海上に浮上するタイミングを待つべきだろう。
しかしせっかく体内に入った事だし、一度体内でダメージを与えておくのもいいかもしれない。
水球内から攻撃する事も可能なのだし、リゼのベルトと千尋のベルトを交差させて外れないようにしてから千尋がメルビレイを攻撃する。
この位置は喉の奥の方だと思われるが、周囲を見回せば上下の違いくらいはわからなくもない。
下側、腹側と思われる方向に一度の斬撃で四角に斬り、中央から斬り分ける事で肉を削ぎ落とす。
分厚い脂肪のような体表とは違い、やはり体内では血が噴き出す。
四角く切り落としながら深く掘り進んでいく。
メルビレイも痛みはあるのだろう飲み込む水量が減り、吐き出そうと喉の奥から水が戻ろうとする。
苦しむメルビレイを気にせずその後も体内の採掘作業を進める千尋だった。
メルビレイの次の浮上を待ち構える蒼真とアイリ。
「すみません、蒼真さん。私また迷惑を掛けてしまって……」
「いや、オレの方こそすまない…… その緊急だったからやむを得ず……」
蒼真は人口呼吸をした事を詫びたつもりだが、アイリはまだその事を知らない。
少し気まずさを覚えつつもメルビレイを待つ。
なかなか地響きを起こさないメルビレイを不思議に思いつつも、しばらく待つとゆっくりと浮上してくるメルビレイ。
海上に顔を出すと腹を向けるよう、仰け反るようにしてまた海面に倒れ込む。
そしてまた海中に潜り、どうやら暴れているように見える。
蒼真[そっちは無事か?]
千尋[うん! 体内を掘り進んでるとこー]
蒼真のメールに軽い感じで返信があった。
「なるほどな。千尋がメルビレイの体内から攻撃してるみたいだ。オレ達はまた浮上したところを攻撃しよう」
「はい、今度はやられません!」
魔剣を構えてその瞬間を待つアイリ。
千尋とリゼは海面に浮上した感覚はあったので、今いるのが深海ではない事を知る。
掘り進んだ肉の壁を戻りながら左右の壁を斬りつけながら戻り、またルシファーが刺さっている位置まで戻る。深く刺さっている可能性もあるが、今度はルシファーの切っ先を掘り起こす為に切り込んでいく。
10メートル以上も掘り込んだところで切っ先までたどり着き、ルシファーを払って血肉を落とす。
この切り進んだ肉の洞窟内であれば喉の奥へと飲み込まれる事はない。
あとはタイミングを見計らって海上へと脱出しよう。
また深海へと戻る事がないように周囲の肉を抉り、切り取りながらその時を待つ。
飛行装備を展開してもお互いに邪魔にならないようにと交差させたベルトを外し、手を繋いだ状態で肉壁を斬り付ける。
上体が傾き、浮上して行く感覚に合わせて肉の壁を駆け上がる。喉の中にも海水がない事を確認し、飛行装備を展開して口内から脱出した。
千尋とリゼがメルビレイの口内から脱出した直後、蒼真とアイリが左右から目を目掛けて挟み撃ち。
風渦の突きと雷撃を直線的に放つ雷貫がその目を襲う。
蒼真の風渦は目の表面の幕を破壊し、目玉をミキサーのようにかき混ぜながら更にその奥へと突き刺さっていく。
反対側のアイリの雷貫は目玉をを表面を貫き、目玉も貫いて熱を放つ。
文字通り目玉焼きとなり、白濁りした目は光を失う事ととなった。
大気震わす咆哮をあげるメルビレイ。
もしかすると逃げられるかもしれない。
リゼは上級魔法陣ブリザードを発動し、海中へとルシファーを潜らせてメルビレイの胴体を海ごと凍りつかせる。
アイリも空へと舞い上がり、上級魔法陣ボルテクスを発動して巨大化した雷狼を左右に顕現。
回り込むように降下して先程の目へと向かって右の雷貫と左を逆手に雷刃を放つ。
メルビレイの左目から飛び込み、イザナギとイザナミから爆発的な雷を発しながら内部を貫く。
右目から飛び出したアイリはそのまま上空へと舞い上がる。
千尋は四本全ての剣をガクとエンに持たせ、ガクとエンは千尋から後方四十五度、百三十五度の上空へと向かって飛び立つ。
リゼの氷結とアイリの雷貫を確認して上級魔法陣グラビトン、インプロージョンを発動。
ベルゼブブを抜いてメルビレイの鼻先に照準を合わせて発砲。
銃声とともに撃ち出されるのはミスリル弾。
およそ5キロも上空へと舞い上がったガクとエンはエンヴィとインヴィを手放して空中に浮かせてある。
そして千尋の発砲とともにミスリル弾を追う四本の剣と二精霊。
グラビトンによる剣の重量はおよそ200キロ。
通常時の重さが2キロ前後の為、100倍の重量まで上昇させている。
そしてミスリル弾の速度は秒速約1000メートル。
剣の速度は重力加速度も加えられる事で秒速50キロメートルを優に超える。
200キロもの重さ、そして秒速50キロメートルもの速度の剣はメルビレイの体を貫き、鼻先から尾の後方まで余裕で突き抜けた。
インプロージョンで強化された四剣は圧縮の能力を込めたエンの闇魔導。
四剣を中心におよそ2メートル程の範囲が圧縮により抉り取られる事となった。
蒼真は下級魔法陣ウィンドを発動。
100センチ程の大きさだったランが120センチ程まで成長する。
そして乱嵐に飛び込むと風刃が圧空刃へとその密度を変え、およそ乱嵐の刀身の二倍の長さ、160センチ程まで青い凝縮された風の刃が錬成された。
千尋のベルゼブブが発砲されてすぐに上空へと舞い上がり、メルビレイの顎方向から唐竹に精霊刀を振り下ろす。
圧空刃の凝縮された風の刃を解放し、通常の風刃の圧力として放つ事により超巨大な風刃が放たれた。
その風刃はメルビレイの頭を斬り、氷をも斬り裂いておよそ80メートル程の範囲を両断する。
声もなく動かなくなったメルビレイがゆっくりと頭を沈めていき、今度は横向きになって浮かび上がった。
超巨大魔獣の全貌が明らかになり、リルフォンでその大きさを計測。
その長さ238メートル、背鰭の高さで133メートルの化け物だった。
重さにしたら何トンになるのか想像がつかない。
「皆さんお疲れ様です! すっごい大きいですね!」
「これは食えるのかのぉ」
とミリーと朱雀、朱王とエレクトラが近付いててくる。
怪我はしていないようだが体力は使っているだろうと範囲の回復魔法を展開するミリー。
「ところでこんな大きな魔獣は魔石に還せるのか?」
「そこは千尋君に頑張ってもらうよ」
「うえぇえ!? オレだってこんな大きいの無理だよ!?」
「じゃあみんなの連結魔法で出力上げればいいよ。全員地属性魔法は使えるからね」
「む? 私の回復ブーストみたいですね」
「そそ、あれと同じだね。王国の魔術師団は強い魔獣相手によく使ってるよ」
「…… いいね! それやってみたい!!」
千尋も連結魔法を試してみたいようだ。
メルビレイの腹の上に降り立って早速試してみよう。
朱雀は地属性魔法を使えない為待機するが。
飛行装備を展開しつつ二手に分かれて手を繋ぎ、千尋の肩に手を置いて地属性魔力を放出する。
手を伝って流れ込む地属性に錬成された魔力を、千尋は下級魔法陣を発動し、ガクに流し込む事で再錬成。
およそ8万ガルドともなる地属性魔力でガクは巨大化し、8メートル程の巨体となった。
『おお。怒りの魔力がなくともここまで強化できるとはな。今の我であれば敵はおらんぞ』
「うん、でも今回はこの魔獣の魔石化だからよろしくねー」
『残念だが仕方がない……』
ガクは右手をアルビレイに触れて一気に魔力を流し込む。
するとアルビレイの体が光を放って急速に収縮し、最後に魔石へとその姿を変える。
直径2メートルを超える超巨大魔石だ。
全員飛行装備で空中浮揚しつつ、朱王が持っていた網を広げて魔石を受け取る。
千尋のガクが浮かせていたので海に沈む事はなかったのだ。
手が離れた事で連結は解除され、地属性魔法をアルビレイに使用した事でその大きさも1メートル程まで縮めたガク。
しかしこの大きさの魔石であれば、全員で運ぶとしても飛行に支障が出るだろうとガクの地属性魔法は展開したままにする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
役所の前へと到着した千尋達。
ミリーが役所へと入り受付の女性に声を掛け、所長と一緒に魔石を確認してもらう。
連れてこられた二人は腰を抜かすのではないかという程に驚いていたが、所内に運んでくれとの事でまた網を持ち上げて運び込む。
所内にいた冒険者達も叫びながらこの巨大魔石を見つめ、テーブルを寄せながら役所の奥まで運んだ。
「こ、この魔石の大きさですと…… メルビレイの大きさは100メートルどころではなかったのでは…… ?」
「うん。測定したら238メートルあったよー」
「そ、そうですか…… それですと超級魔獣と認定されますので、報酬は王国から直接という事になりますがよろしいでしょうか」
「やはり超級に届くのか。あれなら納得だな」
蒼真はなんだか嬉しそう。
王国からの報酬でも問題ない為、クエストは完了という事で邸に帰る。
メルビレイを探すのに時間が掛かった為、帰って来たのが十七時を過ぎたところ。
この日はハリーとミューランも邸に来ており、聖騎士の仕事の方もとりあえずは落ち着いたようだ。
王国転覆を図ったあの事件からハリーとミューラン、シルヴィアはひたすら仕事に追われていた為帰ってくる事はなかった。
それもそのはず、私兵だけでなく騎士達にもジェイソンの手の者が多くいたのだ。
この謀反を起こし、王宮内にジェイソンを引き入れた者もいる為徹底的に調査してある。
まだ疑いのある者もいるが、その者達は今後も調査を続ける予定だ。
ハリーとミューランに労いの言葉を掛けつつ、まずは全員風呂に入る事にする。
シルヴィアも疲れているだろうと、リルフォンで邸に泊まりに来るよう声を掛けておいた。
その十五分後には仕事を切り上げて邸にやってきた。
この日も男性陣は露天風呂、女性陣は洞窟温泉となる。
どうやら女性達は肌にいい洞窟温泉がお好みのようだ。
露天風呂ではまたいつものように酒を飲みつつ、ハリーの仕事の話を聞いてみた。
ハリーは訓練どころか聴取の毎日を過ごしているとの事。
ミューランのように訓練がしたいとボヤいていた。
また朝に蒼真が訓練しようというと嬉しそうに頷くハリーだった。
女性達の入る洞窟温泉はというと。
ウルハとエイミーはもう当然のように一緒に入っているがまあいいだろう。
シルヴィアもすぐに来たので一緒に入っている。
「私、今日また蒼真さんに迷惑をかけてしまいました…… 頑張って訓練しているつもりですが自信を失いそうです」
すごく落ち込むアイリは、この日戦闘中に気を失った事を気にしているのだろう。
「いえいえ、アイリさん。これはこれでアリだったかもしれませんよ!!」
「そうですね。良いものを見せてもらいました」
何故か嬉しそうなミリーとエレクトラ。
不思議そうに見つめるのはウルハ達だけではない、リゼも一緒だ。
「戦闘中に気を失ったんですよ!? 私、全然だめじゃないですか!」
「ふっふっふ。そんなアイリさんにはこんな写真を送ってあげますよ」
「わたくしも送ってみます」
ミリーとエレクトラからアイリのリルフォンに写真が送信され、受信するとともにアイリの顔が真っ赤に染まる。
「ななななんですかこれ!? どうやってこんな写真を作ったんですか!?」
「私も見たいわ! ミリー、エレクトラ! 私にも送信して!!」
「ミリーさん、動画の方がいいかもしれませんね。グループにして動画を共有しましょう!」
「私とエレクトラさんの動画を合わせれば角度を変えて見れますね! そうしましょう!」
「あわわわわわわっ」と動揺するアイリに構わずグループ通話にして視界を共有。
ミリーとエレクトラの保存した動画を再生する。
そこには意識を失ったアイリに唇を重ねる蒼真の姿があった。
しかし人口呼吸である為に少し女性陣の求める構図ではない。
そこはミリーとエレクトラの視界角度からいい角度を再生する事でその映像を楽しむ。
わずか二分程度の映像だったのだが、この恋愛話の楽しい女性陣にとっては充分な映像だ。
そして話の流れからシルヴィアが察して言葉を発する。
「アイリさんは蒼真先生を好きなのですね! 先生は素晴らしい男性だ。私もその気持ちはよく理解できますよ!」
シルヴィアはアイリのあの公開処刑(気持ちの告白)の時にはまだ邸に来ていなかったので知らなかったのだ。
そしてこの動画を見せられた後に、はっきりと言われたアイリはさらに恥ずかしくなり泣き出してしまった。
そんなアイリをリゼが抱き留めて慰める。
少し泣いて落ち着いたアイリ。
「ぐすっ…… ミリーさん、エレクトラさん。先程の映像を編集なしで私にください。毎日寝る前に見ますから」
アイリのお宝映像となったらしい。
泳いでいる事もあって口内からさらに体内へと引き込まれていく千尋とリゼ。
口内も全て海水で満たされてている為、リゼのこの水球を解除すれば水圧により一瞬で意識を失う事となるだろう。
水を操るシズクが下級魔法陣によって強化されている事でなんとかこの水圧にも耐えられる。
しかし水を限定して防いでいる為、メルビレイからの直接攻撃には耐えられる防壁ではないのだが。
そのおかげもあって千尋も水球内に入る事もできるし、内部からの攻撃も可能だ。
ルシファーを引き寄せて、切っ先の突き刺さった場所へと向かってメルビレイの体内を移動する。
ここはメルビレイのどの辺の位置かは不明だが、飲み込まれてから随分と中へと引き込まれた気もする。
ただ今この場でルシファーを抜いてしまっては、メルビレイの更に奥へと引き込まれてしまう可能性がある。
海上に浮上するタイミングを待つべきだろう。
しかしせっかく体内に入った事だし、一度体内でダメージを与えておくのもいいかもしれない。
水球内から攻撃する事も可能なのだし、リゼのベルトと千尋のベルトを交差させて外れないようにしてから千尋がメルビレイを攻撃する。
この位置は喉の奥の方だと思われるが、周囲を見回せば上下の違いくらいはわからなくもない。
下側、腹側と思われる方向に一度の斬撃で四角に斬り、中央から斬り分ける事で肉を削ぎ落とす。
分厚い脂肪のような体表とは違い、やはり体内では血が噴き出す。
四角く切り落としながら深く掘り進んでいく。
メルビレイも痛みはあるのだろう飲み込む水量が減り、吐き出そうと喉の奥から水が戻ろうとする。
苦しむメルビレイを気にせずその後も体内の採掘作業を進める千尋だった。
メルビレイの次の浮上を待ち構える蒼真とアイリ。
「すみません、蒼真さん。私また迷惑を掛けてしまって……」
「いや、オレの方こそすまない…… その緊急だったからやむを得ず……」
蒼真は人口呼吸をした事を詫びたつもりだが、アイリはまだその事を知らない。
少し気まずさを覚えつつもメルビレイを待つ。
なかなか地響きを起こさないメルビレイを不思議に思いつつも、しばらく待つとゆっくりと浮上してくるメルビレイ。
海上に顔を出すと腹を向けるよう、仰け反るようにしてまた海面に倒れ込む。
そしてまた海中に潜り、どうやら暴れているように見える。
蒼真[そっちは無事か?]
千尋[うん! 体内を掘り進んでるとこー]
蒼真のメールに軽い感じで返信があった。
「なるほどな。千尋がメルビレイの体内から攻撃してるみたいだ。オレ達はまた浮上したところを攻撃しよう」
「はい、今度はやられません!」
魔剣を構えてその瞬間を待つアイリ。
千尋とリゼは海面に浮上した感覚はあったので、今いるのが深海ではない事を知る。
掘り進んだ肉の壁を戻りながら左右の壁を斬りつけながら戻り、またルシファーが刺さっている位置まで戻る。深く刺さっている可能性もあるが、今度はルシファーの切っ先を掘り起こす為に切り込んでいく。
10メートル以上も掘り込んだところで切っ先までたどり着き、ルシファーを払って血肉を落とす。
この切り進んだ肉の洞窟内であれば喉の奥へと飲み込まれる事はない。
あとはタイミングを見計らって海上へと脱出しよう。
また深海へと戻る事がないように周囲の肉を抉り、切り取りながらその時を待つ。
飛行装備を展開してもお互いに邪魔にならないようにと交差させたベルトを外し、手を繋いだ状態で肉壁を斬り付ける。
上体が傾き、浮上して行く感覚に合わせて肉の壁を駆け上がる。喉の中にも海水がない事を確認し、飛行装備を展開して口内から脱出した。
千尋とリゼがメルビレイの口内から脱出した直後、蒼真とアイリが左右から目を目掛けて挟み撃ち。
風渦の突きと雷撃を直線的に放つ雷貫がその目を襲う。
蒼真の風渦は目の表面の幕を破壊し、目玉をミキサーのようにかき混ぜながら更にその奥へと突き刺さっていく。
反対側のアイリの雷貫は目玉をを表面を貫き、目玉も貫いて熱を放つ。
文字通り目玉焼きとなり、白濁りした目は光を失う事ととなった。
大気震わす咆哮をあげるメルビレイ。
もしかすると逃げられるかもしれない。
リゼは上級魔法陣ブリザードを発動し、海中へとルシファーを潜らせてメルビレイの胴体を海ごと凍りつかせる。
アイリも空へと舞い上がり、上級魔法陣ボルテクスを発動して巨大化した雷狼を左右に顕現。
回り込むように降下して先程の目へと向かって右の雷貫と左を逆手に雷刃を放つ。
メルビレイの左目から飛び込み、イザナギとイザナミから爆発的な雷を発しながら内部を貫く。
右目から飛び出したアイリはそのまま上空へと舞い上がる。
千尋は四本全ての剣をガクとエンに持たせ、ガクとエンは千尋から後方四十五度、百三十五度の上空へと向かって飛び立つ。
リゼの氷結とアイリの雷貫を確認して上級魔法陣グラビトン、インプロージョンを発動。
ベルゼブブを抜いてメルビレイの鼻先に照準を合わせて発砲。
銃声とともに撃ち出されるのはミスリル弾。
およそ5キロも上空へと舞い上がったガクとエンはエンヴィとインヴィを手放して空中に浮かせてある。
そして千尋の発砲とともにミスリル弾を追う四本の剣と二精霊。
グラビトンによる剣の重量はおよそ200キロ。
通常時の重さが2キロ前後の為、100倍の重量まで上昇させている。
そしてミスリル弾の速度は秒速約1000メートル。
剣の速度は重力加速度も加えられる事で秒速50キロメートルを優に超える。
200キロもの重さ、そして秒速50キロメートルもの速度の剣はメルビレイの体を貫き、鼻先から尾の後方まで余裕で突き抜けた。
インプロージョンで強化された四剣は圧縮の能力を込めたエンの闇魔導。
四剣を中心におよそ2メートル程の範囲が圧縮により抉り取られる事となった。
蒼真は下級魔法陣ウィンドを発動。
100センチ程の大きさだったランが120センチ程まで成長する。
そして乱嵐に飛び込むと風刃が圧空刃へとその密度を変え、およそ乱嵐の刀身の二倍の長さ、160センチ程まで青い凝縮された風の刃が錬成された。
千尋のベルゼブブが発砲されてすぐに上空へと舞い上がり、メルビレイの顎方向から唐竹に精霊刀を振り下ろす。
圧空刃の凝縮された風の刃を解放し、通常の風刃の圧力として放つ事により超巨大な風刃が放たれた。
その風刃はメルビレイの頭を斬り、氷をも斬り裂いておよそ80メートル程の範囲を両断する。
声もなく動かなくなったメルビレイがゆっくりと頭を沈めていき、今度は横向きになって浮かび上がった。
超巨大魔獣の全貌が明らかになり、リルフォンでその大きさを計測。
その長さ238メートル、背鰭の高さで133メートルの化け物だった。
重さにしたら何トンになるのか想像がつかない。
「皆さんお疲れ様です! すっごい大きいですね!」
「これは食えるのかのぉ」
とミリーと朱雀、朱王とエレクトラが近付いててくる。
怪我はしていないようだが体力は使っているだろうと範囲の回復魔法を展開するミリー。
「ところでこんな大きな魔獣は魔石に還せるのか?」
「そこは千尋君に頑張ってもらうよ」
「うえぇえ!? オレだってこんな大きいの無理だよ!?」
「じゃあみんなの連結魔法で出力上げればいいよ。全員地属性魔法は使えるからね」
「む? 私の回復ブーストみたいですね」
「そそ、あれと同じだね。王国の魔術師団は強い魔獣相手によく使ってるよ」
「…… いいね! それやってみたい!!」
千尋も連結魔法を試してみたいようだ。
メルビレイの腹の上に降り立って早速試してみよう。
朱雀は地属性魔法を使えない為待機するが。
飛行装備を展開しつつ二手に分かれて手を繋ぎ、千尋の肩に手を置いて地属性魔力を放出する。
手を伝って流れ込む地属性に錬成された魔力を、千尋は下級魔法陣を発動し、ガクに流し込む事で再錬成。
およそ8万ガルドともなる地属性魔力でガクは巨大化し、8メートル程の巨体となった。
『おお。怒りの魔力がなくともここまで強化できるとはな。今の我であれば敵はおらんぞ』
「うん、でも今回はこの魔獣の魔石化だからよろしくねー」
『残念だが仕方がない……』
ガクは右手をアルビレイに触れて一気に魔力を流し込む。
するとアルビレイの体が光を放って急速に収縮し、最後に魔石へとその姿を変える。
直径2メートルを超える超巨大魔石だ。
全員飛行装備で空中浮揚しつつ、朱王が持っていた網を広げて魔石を受け取る。
千尋のガクが浮かせていたので海に沈む事はなかったのだ。
手が離れた事で連結は解除され、地属性魔法をアルビレイに使用した事でその大きさも1メートル程まで縮めたガク。
しかしこの大きさの魔石であれば、全員で運ぶとしても飛行に支障が出るだろうとガクの地属性魔法は展開したままにする。
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役所の前へと到着した千尋達。
ミリーが役所へと入り受付の女性に声を掛け、所長と一緒に魔石を確認してもらう。
連れてこられた二人は腰を抜かすのではないかという程に驚いていたが、所内に運んでくれとの事でまた網を持ち上げて運び込む。
所内にいた冒険者達も叫びながらこの巨大魔石を見つめ、テーブルを寄せながら役所の奥まで運んだ。
「こ、この魔石の大きさですと…… メルビレイの大きさは100メートルどころではなかったのでは…… ?」
「うん。測定したら238メートルあったよー」
「そ、そうですか…… それですと超級魔獣と認定されますので、報酬は王国から直接という事になりますがよろしいでしょうか」
「やはり超級に届くのか。あれなら納得だな」
蒼真はなんだか嬉しそう。
王国からの報酬でも問題ない為、クエストは完了という事で邸に帰る。
メルビレイを探すのに時間が掛かった為、帰って来たのが十七時を過ぎたところ。
この日はハリーとミューランも邸に来ており、聖騎士の仕事の方もとりあえずは落ち着いたようだ。
王国転覆を図ったあの事件からハリーとミューラン、シルヴィアはひたすら仕事に追われていた為帰ってくる事はなかった。
それもそのはず、私兵だけでなく騎士達にもジェイソンの手の者が多くいたのだ。
この謀反を起こし、王宮内にジェイソンを引き入れた者もいる為徹底的に調査してある。
まだ疑いのある者もいるが、その者達は今後も調査を続ける予定だ。
ハリーとミューランに労いの言葉を掛けつつ、まずは全員風呂に入る事にする。
シルヴィアも疲れているだろうと、リルフォンで邸に泊まりに来るよう声を掛けておいた。
その十五分後には仕事を切り上げて邸にやってきた。
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どうやら女性達は肌にいい洞窟温泉がお好みのようだ。
露天風呂ではまたいつものように酒を飲みつつ、ハリーの仕事の話を聞いてみた。
ハリーは訓練どころか聴取の毎日を過ごしているとの事。
ミューランのように訓練がしたいとボヤいていた。
また朝に蒼真が訓練しようというと嬉しそうに頷くハリーだった。
女性達の入る洞窟温泉はというと。
ウルハとエイミーはもう当然のように一緒に入っているがまあいいだろう。
シルヴィアもすぐに来たので一緒に入っている。
「私、今日また蒼真さんに迷惑をかけてしまいました…… 頑張って訓練しているつもりですが自信を失いそうです」
すごく落ち込むアイリは、この日戦闘中に気を失った事を気にしているのだろう。
「いえいえ、アイリさん。これはこれでアリだったかもしれませんよ!!」
「そうですね。良いものを見せてもらいました」
何故か嬉しそうなミリーとエレクトラ。
不思議そうに見つめるのはウルハ達だけではない、リゼも一緒だ。
「戦闘中に気を失ったんですよ!? 私、全然だめじゃないですか!」
「ふっふっふ。そんなアイリさんにはこんな写真を送ってあげますよ」
「わたくしも送ってみます」
ミリーとエレクトラからアイリのリルフォンに写真が送信され、受信するとともにアイリの顔が真っ赤に染まる。
「ななななんですかこれ!? どうやってこんな写真を作ったんですか!?」
「私も見たいわ! ミリー、エレクトラ! 私にも送信して!!」
「ミリーさん、動画の方がいいかもしれませんね。グループにして動画を共有しましょう!」
「私とエレクトラさんの動画を合わせれば角度を変えて見れますね! そうしましょう!」
「あわわわわわわっ」と動揺するアイリに構わずグループ通話にして視界を共有。
ミリーとエレクトラの保存した動画を再生する。
そこには意識を失ったアイリに唇を重ねる蒼真の姿があった。
しかし人口呼吸である為に少し女性陣の求める構図ではない。
そこはミリーとエレクトラの視界角度からいい角度を再生する事でその映像を楽しむ。
わずか二分程度の映像だったのだが、この恋愛話の楽しい女性陣にとっては充分な映像だ。
そして話の流れからシルヴィアが察して言葉を発する。
「アイリさんは蒼真先生を好きなのですね! 先生は素晴らしい男性だ。私もその気持ちはよく理解できますよ!」
シルヴィアはアイリのあの公開処刑(気持ちの告白)の時にはまだ邸に来ていなかったので知らなかったのだ。
そしてこの動画を見せられた後に、はっきりと言われたアイリはさらに恥ずかしくなり泣き出してしまった。
そんなアイリをリゼが抱き留めて慰める。
少し泣いて落ち着いたアイリ。
「ぐすっ…… ミリーさん、エレクトラさん。先程の映像を編集なしで私にください。毎日寝る前に見ますから」
アイリのお宝映像となったらしい。
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巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
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