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ウェストラル王国編
185 謀反
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ストラク王子が待機する門の前。
ノーラン王子と聖騎士四人、武装した貴族が十五人と千人を超えるであろう私兵達が王宮へと向かって進軍してくる。
貴族街に配した諜報部隊から連絡を受け、ストラク側の私兵達にも緊張が走る。
「本…… 当に兄上が…… 何故謀反など……」
「ノーラン王子は次期国王がストラク王子であると考え、聖剣の無き今国王様を倒して王座に就こうとしたのでしょう」
「だがデュワーズよ。それならば私を切れば…… いや、それでは罪に問われるだけか……」
「そうです。国王様を殺して政変を起こし、ノーラン王子は力による支配をするつもりでしょう。あの方の性格からすればおわかり頂けますかな?」
「あの優しかった兄上が……」
ストラク王子とノーラン王子はここ数年それ程会う機会が無いものの、ストラク王子が幼い頃はよく遊んでくれる優しい兄だった。
しかし十五歳を過ぎて大人として政務に就くようになり、会う機会も少なくなるが、会う度お互いに労い言葉をかけ、以前の優しい兄は今も健在と思っていた。
しかし周りから聞こえてくる兄の噂話はストラク王子の知るノーラン王子ではない。
怒りのままに部下である貴族を殴りつけ、投獄まで命じる事があるとの事。
信じられなかったストラク王子もその件を調べさせ、事実である事も確認済みだ。
そんな事がこれまで何度もあった。
デュワーズがノーラン王子の性格からすればと言うのはその為だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
王宮の門の前にストラク王子側の派閥の者達、聖騎士が四人と私兵がおよそ五百人。
そして王国騎士が王宮を包囲していると、ノーラン王子側の諜報員から情報が入る。
「ちっ…… ストラクめ……」
「ノーラン様。おそらくストラク王子は貴方様のお命を奪いに来るでしょう。御身を守る為にもストラク王子を切るべきです」
「黙れ!! ストラクは生かして捕らえる!!」
「ノーラン王子よぉ。あっち側に付いた聖騎士達はどうするんだ?」
「精霊魔導を振るわれたら私兵共など数の内に入らんからな」
「聖騎士達は同じ聖騎士で当たれ! その後は状況を見て指示する!」
苛立ちを見せるノーラン王子だが、まずはストラクと話し合うべきと考えている。
何故国王様の命を狙うのかと問わなければいけない。
ここで国王様の命を狙わなくても次期国王の座はストラク王子のものとノーラン王子も考える。
ノーラン王子が諜報員から聞いた内容は、ストラク王子派閥が私兵を集めて王宮を包囲。
そのうえ王国騎士達もストラク王子の息が掛かっているとの噂もある。
私兵を率いて王宮へと向かうノーラン王子も、ストラク王子を止めようと考えているのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ストラク王子側とノーラン王子側が闇の中で見え始めた頃。
「ぐあぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ぎゃぁぁぁぁあ!!」
「ふぐっ……」
とノーラン王子側の私兵が矢に射られて倒れ出す。
「気をつけろ!! まずは弓兵を潰せ!!」
暗闇の中から真っ黒な服を着た弓兵を探すのは困難を極め、その間にも矢に射られる私兵の数は増え続ける。
混乱の中で、サラが発動した突風により邸や建物の上から弓矢を構えた兵が落下。
そこに私兵達がとどめを刺す。
「闇の中固まっていては狙い撃ちにされるぞ!! 奴等を巻き込めば矢は射れん!! 攻め入るのだ!!」
「「「「「おおぉぉぉぉお!!」」」」」
闇の中の襲撃では危険すぎると、ノーラン王子の指揮ではなく貴族の一人からの指示で私兵達が走り出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ノーラン王子側と同じようにストラク王子側でも弓兵に射られて倒れ出す私兵達。
ストラク王子や聖騎士達も矢で狙われ、精霊魔法でその矢を弾く。
一気に緊張が高まり騒然とする王宮前、そして騎士達も敵兵に警戒を強める。
弓兵がいるであろう位置にイーサンが精霊魔法で水を撒き散らし、クインがその水に雷撃を放つ。
悲鳴と共に倒れ伏す弓兵達。
ここまで矢に射られた私兵達も少なくない。
怒りと混乱から、私兵達はノーラン側へと向かって走り出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
程なくして私兵達ぶつかり合い、私兵達を掻い潜って王宮へと向かうノーラン王子と聖騎士達。
貴族達もそれに続いて私兵を切りながら向かう。
貴族達ももちろん戦う術を持っている。
幼い頃より訓練した者、かつて聖騎士達だった者もいるのだ。
弱いはずはない。
ノーラン王子側の私兵はストラク王子側の私兵の二倍となり、数多くの私兵達がノーラン王子に続いて王宮へと向かう。
王宮を包囲していた騎士達と私兵達がぶつかり合い、王宮前でも壮絶な戦いが繰り広げられる。
そんな中でノーラン王子側の聖騎士四人とストラク王子側の聖騎士四人が剣を構えて向かい合う。
精霊魔導を発動しての戦闘が始まり、一切手加減のない超威力の魔法が王宮前で繰り広げられる。
ノーラン王子とストラク王子もお互いに向かい合う。
「ストラク! お前何を考えているんだ!? 考え直せ!!」
「兄上こそ何を考えている!! 私兵を率いて王宮を襲うとはどういう事だ!!」
会話を交わそうという二人にも私兵は襲い掛かり、その私兵を斬りながらノーラン王子とストラク王子も剣を重ね合う。
この混乱する戦場の中で立ち止まるなど危険極まりない。
お互いに剣を交えながら周囲を警戒して牽制する。
シルヴィアは王宮に入ろうとする私兵を雷撃によって一瞬で制圧。
ノーラン王子側の私兵を制圧するつもりでも、何故かストラク王子側の私兵や騎士達もが王宮へと向かって攻め入ってくる。
シルヴィアはどちらかではなく、王宮に入ろうとする全てを敵と見なして排除する事とした。
上空から王宮を見下ろすハリー。
ナイトスコープ機能で両派閥の行動、私兵達、騎士達の動きを見ていると、騎士達の中にもおかしな行動を始める者達が多くいる。
王宮の門へと向かう騎士達、王宮の包囲して待機する者達、そして王宮へ忍び込もうとする者達。
即シルヴィアと王宮内の聖騎士達に連絡を取り、シルヴィアは忍び込んだ騎士達の排除に向かうよう指示を出す。
マーカーと向かい合うのはサラ。
聖騎士達も属性の相性を考えると同属性と戦うべきとしてそれぞれ相手を選んでいる。
実力的にはそれ程差がなく、飛行装備で空中戦を繰り広げる。
オリバーはイーサンを一撃の下に斬り伏せる。
同じ水属性で相殺し合うも、威力で勝るオリバーの一撃はイーサンの水の防御を容易く斬り裂いた。
フィンリーとクインの戦いも圧倒的なものとなる。
フィンリーの精霊魔導による雷撃はクインの雷撃を上回り、熱と電流による痺れ、麻痺がその体に与えられる。
クインの上級魔法陣を発動しての雷撃も、実力で上回るフィンリーの雷撃の前には意味を成さない。
そしてオリバーとイーサンの水の拡散による地面の水分にはフィンリーとクインの雷撃が流れ、大量の私兵が黒焦げになって地面に倒れていく。
イザヤとマーヴェリックは火属性と地属性。
属性としてはどちらにも優位性がないにしろ、実力としては拮抗している為、攻撃に勝る火属性のイザヤが攻勢に回りマーヴェリックが防御に徹する。
しかしマーヴェリックは剣と盾を持つ為、イザヤの攻撃の合間に反撃する事も可能だ。
ノーラン王子とストラク王子がお互いの会話が噛み合わない事に疑問を持ちつつも剣を重ね合う。
双方が国王の命を守ろうと言うのだ。
息を切らしながらも精霊魔導を発動しての剣戟を重ね合い、互いに言葉を投げかける。
「ストラクはこんな事をせずとも国王になれたはずだ! 何故その時を待たないのだ!!」
「私は王座など狙ってはいません!! 兄上こそ国王になりたいが為に謀反を起こすなど!! 国王様が、父上が悲しみます!!」
「私とて王座など…… 謀反を起こしたのはストラクであろう!!」
「何故私が謀反など起こしましょう!! そのような事考えた事もありません!!」
「だが今こうして王宮に武装して集まっ……」
「ぐあぁっ!!」
「ノーラン王子、助太刀するぞ」
聖騎士イーサンを倒したオリバーがストラク王子を斬りつけた。
背後から斬り付けられたストラク王子だが、ノーランが言葉を区切ったのと同時に視線が上に向いた事で、咄嗟に前方に飛び退いている。
傷はそれ程深くはないものの、背中に焼かれるような痛みを感じるストラク王子。
「オリバー!! ストラクの相手は私がする! 手を出すな!!」
「そうはいかん。ノーラン王子に何かあってはこちらとしても困るのでな」
「では他の者が邪魔をしないように排除してくれ。ストラクとは私が決着を付けねばならん」
初めての大きな傷に、大量の脂汗を流すストラク王子。
精霊フラウの氷魔法で止血をして、再びノーラン王子に向かって剣を構える。
「やめろフィンリー!!」
ストラクの背後から雷を纏った巨剣が振り下ろされ、剣を振り上げながら右に回避するストラク王子。
巨剣を流しつつ対峙しようとしたところで、横薙ぎにもう一方の巨剣が振るわれて弾き飛ばされた。
地面を転がりながら立ち上がろうとするストラク王子だが、体が思うように動かない。
雷撃が水を伝ってストラクの両手を熱し、両手に痺れと全身に麻痺を残す。
「二人共手を出すな!!」
「そうはいきませんよノーラン王子。ストラク王子はここで始末するべきです」
「殺さぬ!! 捕らえるだけでいい!!」
オリバーとフィンリーに警戒しつつもストラク王子に向かうノーラン王子。
ストラク王子は痺れる体に耐えながら、ゆっくりと立ち上がる。
血と汗を流し、手には火傷を負いながらも左にもう一振りの両手直剣を抜き、双剣として構えをとる。
精霊ウィンディーネ、精霊フラウを顕現して三人を相手にどこまで戦えるか。
息を整えてノーラン王子の出方を見る。
ノーラン王子がストラク王子に向かって駆け出し、剣を向けたところでオリバーも後を追う。
ノーラン王子とストラク王子の剣が交錯した瞬間、オリバーが振り下ろした剣がノーラン王子を襲う。
「オ…… オリバー…… 貴、様……」
「む? 浅かったか」
オリバーの刃はノーラン王子の背中を斬り裂き、背後からの攻撃を予想していなかったノーラン王子はその場に崩れ伏す。
「おのれ!! よくも兄上を!!」
突然オリバーに斬り倒された兄を見て、怒りのままに斬り掛かるストラク王子。
しかしその剣はオリバーに届く事はなく、フィンリーの雷撃を纏った刃にストラク王子は突き刺された。
そのまま体内に雷撃を放たれ、地面を転がるストラク王子。
体内を焼かれ、体表から煙をあげながら痙攣するストラク王子。
ノーラン王子にとどめを刺そうと剣を振り上げるオリバー。
ノーラン王子と聖騎士四人、武装した貴族が十五人と千人を超えるであろう私兵達が王宮へと向かって進軍してくる。
貴族街に配した諜報部隊から連絡を受け、ストラク側の私兵達にも緊張が走る。
「本…… 当に兄上が…… 何故謀反など……」
「ノーラン王子は次期国王がストラク王子であると考え、聖剣の無き今国王様を倒して王座に就こうとしたのでしょう」
「だがデュワーズよ。それならば私を切れば…… いや、それでは罪に問われるだけか……」
「そうです。国王様を殺して政変を起こし、ノーラン王子は力による支配をするつもりでしょう。あの方の性格からすればおわかり頂けますかな?」
「あの優しかった兄上が……」
ストラク王子とノーラン王子はここ数年それ程会う機会が無いものの、ストラク王子が幼い頃はよく遊んでくれる優しい兄だった。
しかし十五歳を過ぎて大人として政務に就くようになり、会う機会も少なくなるが、会う度お互いに労い言葉をかけ、以前の優しい兄は今も健在と思っていた。
しかし周りから聞こえてくる兄の噂話はストラク王子の知るノーラン王子ではない。
怒りのままに部下である貴族を殴りつけ、投獄まで命じる事があるとの事。
信じられなかったストラク王子もその件を調べさせ、事実である事も確認済みだ。
そんな事がこれまで何度もあった。
デュワーズがノーラン王子の性格からすればと言うのはその為だ。
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王宮の門の前にストラク王子側の派閥の者達、聖騎士が四人と私兵がおよそ五百人。
そして王国騎士が王宮を包囲していると、ノーラン王子側の諜報員から情報が入る。
「ちっ…… ストラクめ……」
「ノーラン様。おそらくストラク王子は貴方様のお命を奪いに来るでしょう。御身を守る為にもストラク王子を切るべきです」
「黙れ!! ストラクは生かして捕らえる!!」
「ノーラン王子よぉ。あっち側に付いた聖騎士達はどうするんだ?」
「精霊魔導を振るわれたら私兵共など数の内に入らんからな」
「聖騎士達は同じ聖騎士で当たれ! その後は状況を見て指示する!」
苛立ちを見せるノーラン王子だが、まずはストラクと話し合うべきと考えている。
何故国王様の命を狙うのかと問わなければいけない。
ここで国王様の命を狙わなくても次期国王の座はストラク王子のものとノーラン王子も考える。
ノーラン王子が諜報員から聞いた内容は、ストラク王子派閥が私兵を集めて王宮を包囲。
そのうえ王国騎士達もストラク王子の息が掛かっているとの噂もある。
私兵を率いて王宮へと向かうノーラン王子も、ストラク王子を止めようと考えているのだ。
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ストラク王子側とノーラン王子側が闇の中で見え始めた頃。
「ぐあぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ぎゃぁぁぁぁあ!!」
「ふぐっ……」
とノーラン王子側の私兵が矢に射られて倒れ出す。
「気をつけろ!! まずは弓兵を潰せ!!」
暗闇の中から真っ黒な服を着た弓兵を探すのは困難を極め、その間にも矢に射られる私兵の数は増え続ける。
混乱の中で、サラが発動した突風により邸や建物の上から弓矢を構えた兵が落下。
そこに私兵達がとどめを刺す。
「闇の中固まっていては狙い撃ちにされるぞ!! 奴等を巻き込めば矢は射れん!! 攻め入るのだ!!」
「「「「「おおぉぉぉぉお!!」」」」」
闇の中の襲撃では危険すぎると、ノーラン王子の指揮ではなく貴族の一人からの指示で私兵達が走り出す。
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ノーラン王子側と同じようにストラク王子側でも弓兵に射られて倒れ出す私兵達。
ストラク王子や聖騎士達も矢で狙われ、精霊魔法でその矢を弾く。
一気に緊張が高まり騒然とする王宮前、そして騎士達も敵兵に警戒を強める。
弓兵がいるであろう位置にイーサンが精霊魔法で水を撒き散らし、クインがその水に雷撃を放つ。
悲鳴と共に倒れ伏す弓兵達。
ここまで矢に射られた私兵達も少なくない。
怒りと混乱から、私兵達はノーラン側へと向かって走り出す。
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程なくして私兵達ぶつかり合い、私兵達を掻い潜って王宮へと向かうノーラン王子と聖騎士達。
貴族達もそれに続いて私兵を切りながら向かう。
貴族達ももちろん戦う術を持っている。
幼い頃より訓練した者、かつて聖騎士達だった者もいるのだ。
弱いはずはない。
ノーラン王子側の私兵はストラク王子側の私兵の二倍となり、数多くの私兵達がノーラン王子に続いて王宮へと向かう。
王宮を包囲していた騎士達と私兵達がぶつかり合い、王宮前でも壮絶な戦いが繰り広げられる。
そんな中でノーラン王子側の聖騎士四人とストラク王子側の聖騎士四人が剣を構えて向かい合う。
精霊魔導を発動しての戦闘が始まり、一切手加減のない超威力の魔法が王宮前で繰り広げられる。
ノーラン王子とストラク王子もお互いに向かい合う。
「ストラク! お前何を考えているんだ!? 考え直せ!!」
「兄上こそ何を考えている!! 私兵を率いて王宮を襲うとはどういう事だ!!」
会話を交わそうという二人にも私兵は襲い掛かり、その私兵を斬りながらノーラン王子とストラク王子も剣を重ね合う。
この混乱する戦場の中で立ち止まるなど危険極まりない。
お互いに剣を交えながら周囲を警戒して牽制する。
シルヴィアは王宮に入ろうとする私兵を雷撃によって一瞬で制圧。
ノーラン王子側の私兵を制圧するつもりでも、何故かストラク王子側の私兵や騎士達もが王宮へと向かって攻め入ってくる。
シルヴィアはどちらかではなく、王宮に入ろうとする全てを敵と見なして排除する事とした。
上空から王宮を見下ろすハリー。
ナイトスコープ機能で両派閥の行動、私兵達、騎士達の動きを見ていると、騎士達の中にもおかしな行動を始める者達が多くいる。
王宮の門へと向かう騎士達、王宮の包囲して待機する者達、そして王宮へ忍び込もうとする者達。
即シルヴィアと王宮内の聖騎士達に連絡を取り、シルヴィアは忍び込んだ騎士達の排除に向かうよう指示を出す。
マーカーと向かい合うのはサラ。
聖騎士達も属性の相性を考えると同属性と戦うべきとしてそれぞれ相手を選んでいる。
実力的にはそれ程差がなく、飛行装備で空中戦を繰り広げる。
オリバーはイーサンを一撃の下に斬り伏せる。
同じ水属性で相殺し合うも、威力で勝るオリバーの一撃はイーサンの水の防御を容易く斬り裂いた。
フィンリーとクインの戦いも圧倒的なものとなる。
フィンリーの精霊魔導による雷撃はクインの雷撃を上回り、熱と電流による痺れ、麻痺がその体に与えられる。
クインの上級魔法陣を発動しての雷撃も、実力で上回るフィンリーの雷撃の前には意味を成さない。
そしてオリバーとイーサンの水の拡散による地面の水分にはフィンリーとクインの雷撃が流れ、大量の私兵が黒焦げになって地面に倒れていく。
イザヤとマーヴェリックは火属性と地属性。
属性としてはどちらにも優位性がないにしろ、実力としては拮抗している為、攻撃に勝る火属性のイザヤが攻勢に回りマーヴェリックが防御に徹する。
しかしマーヴェリックは剣と盾を持つ為、イザヤの攻撃の合間に反撃する事も可能だ。
ノーラン王子とストラク王子がお互いの会話が噛み合わない事に疑問を持ちつつも剣を重ね合う。
双方が国王の命を守ろうと言うのだ。
息を切らしながらも精霊魔導を発動しての剣戟を重ね合い、互いに言葉を投げかける。
「ストラクはこんな事をせずとも国王になれたはずだ! 何故その時を待たないのだ!!」
「私は王座など狙ってはいません!! 兄上こそ国王になりたいが為に謀反を起こすなど!! 国王様が、父上が悲しみます!!」
「私とて王座など…… 謀反を起こしたのはストラクであろう!!」
「何故私が謀反など起こしましょう!! そのような事考えた事もありません!!」
「だが今こうして王宮に武装して集まっ……」
「ぐあぁっ!!」
「ノーラン王子、助太刀するぞ」
聖騎士イーサンを倒したオリバーがストラク王子を斬りつけた。
背後から斬り付けられたストラク王子だが、ノーランが言葉を区切ったのと同時に視線が上に向いた事で、咄嗟に前方に飛び退いている。
傷はそれ程深くはないものの、背中に焼かれるような痛みを感じるストラク王子。
「オリバー!! ストラクの相手は私がする! 手を出すな!!」
「そうはいかん。ノーラン王子に何かあってはこちらとしても困るのでな」
「では他の者が邪魔をしないように排除してくれ。ストラクとは私が決着を付けねばならん」
初めての大きな傷に、大量の脂汗を流すストラク王子。
精霊フラウの氷魔法で止血をして、再びノーラン王子に向かって剣を構える。
「やめろフィンリー!!」
ストラクの背後から雷を纏った巨剣が振り下ろされ、剣を振り上げながら右に回避するストラク王子。
巨剣を流しつつ対峙しようとしたところで、横薙ぎにもう一方の巨剣が振るわれて弾き飛ばされた。
地面を転がりながら立ち上がろうとするストラク王子だが、体が思うように動かない。
雷撃が水を伝ってストラクの両手を熱し、両手に痺れと全身に麻痺を残す。
「二人共手を出すな!!」
「そうはいきませんよノーラン王子。ストラク王子はここで始末するべきです」
「殺さぬ!! 捕らえるだけでいい!!」
オリバーとフィンリーに警戒しつつもストラク王子に向かうノーラン王子。
ストラク王子は痺れる体に耐えながら、ゆっくりと立ち上がる。
血と汗を流し、手には火傷を負いながらも左にもう一振りの両手直剣を抜き、双剣として構えをとる。
精霊ウィンディーネ、精霊フラウを顕現して三人を相手にどこまで戦えるか。
息を整えてノーラン王子の出方を見る。
ノーラン王子がストラク王子に向かって駆け出し、剣を向けたところでオリバーも後を追う。
ノーラン王子とストラク王子の剣が交錯した瞬間、オリバーが振り下ろした剣がノーラン王子を襲う。
「オ…… オリバー…… 貴、様……」
「む? 浅かったか」
オリバーの刃はノーラン王子の背中を斬り裂き、背後からの攻撃を予想していなかったノーラン王子はその場に崩れ伏す。
「おのれ!! よくも兄上を!!」
突然オリバーに斬り倒された兄を見て、怒りのままに斬り掛かるストラク王子。
しかしその剣はオリバーに届く事はなく、フィンリーの雷撃を纏った刃にストラク王子は突き刺された。
そのまま体内に雷撃を放たれ、地面を転がるストラク王子。
体内を焼かれ、体表から煙をあげながら痙攣するストラク王子。
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