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ウェストラル王国編
165 綺麗な街なのに
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翌朝も夜明けの入江の風景と朝食を楽しみ、シェルベンス二日目は観光する事にして街を見て回る。
昨日も歩いた道だが、主に商店の食べ歩きをするだけだったので今日はまた違った見え方をする。
白い壁に赤茶色の河原のような屋根の家が建ち並び、統一された色の建物が空の青に映えて街を美しく輝かせる。
屋根に似た赤茶色の石畳や深緑の街路樹として植えられた木々もまた美しい。
空気の澄んだ冬の青空はどこまでも続き、日の光が暖かさを感じさせて気持ちがいい。
「この街は綺麗ね!」
「うんっ! こんなとこに住むのもいいよねー!」
先頭を歩くリゼと千尋が嬉しそうに辺りを見回している。
白と赤の千尋と、しろとピンクのリゼ。
白い装備を着た二人はやはり恋人同士というよりは、仲のいい女友達に見えてしまう。
「ミリー、あの木の実の中のジュースは美味しいんだよ」
「本当ですか!? 飲んでみたいです!!」
街路樹の木の実を指差して言う朱王と嬉しそうに見上げるミリー。
千尋達とは対照的に、黒い装備の朱王と黒地に赤のミリーはやはり恋人同士に見える。
コロコロと表情を変えながら話す二人は本当に仲が良さそうで羨ましく映る。
朱雀は両手に串焼きを持って食べているが、二人の子供に見えなくもない。
少し親が若過ぎる気もするが……
その後方で四人を見ながら街を歩く蒼真とアイリ、エレクトラ。
濃紺の装備を着た蒼真は、暖かい日の光を浴びて少し眠そうだ。
やはり早起きしたのが原因かもしれない。
青紫と薄紫の装備を着るアイリは、眠そうな蒼真の顔を覗き込んでくすりと笑う。
以前は赤地に金の装飾が入る装備だったエレクトラだが、ノーリス王国を出る前に装備を少し変更している。
まずはインナーであるミスリルウェアを白に変更。
少し短めのスカートは黒字に金のラインが入り、右が黒、左が白のニーソックスを履いて遊び心を追加。
上着と飛行装備下の腰布は以前と同じ赤に金の装飾だが。
ピンク色のふんわりとした長い髪に、獣耳が可愛らしい。
目立つ彼らが街を歩けば誰もが目を向けるが、注目を浴びる事にも慣れた八人は気にせず景観を楽しむ。
ところどころで冒険者がこちらを見ているが、やはり見慣れない武器を持つパーティーが気になるのだろう。
朱雀が新しい串焼きを買って戻って来る。
「なにやらこの街のゴールドランクは評判が悪いようじゃのぉ」
「どういう事?」
「ガラが悪いらしいぞー。余所者の冒険者、女の多いパーティーなら気をつけよとの事じゃ。逆らえば殴られたり斬られたりすると言っておったぞ。冒険者ではなく犯罪者ではないかのぉ」
「それはそのゴールドランクをぶっころ…… ぶちのめしてやらないといけないわね!」
拳を握りしめてぶっ殺すと言いそうになるリゼ。
「まあ美人揃いだからな。仕方ない、千尋が囮になれ」
「なにが仕方ないの!? 男が囮になれるわけないじゃん!!」
「千尋…… 私、怖いわ」
リゼは握りしめた拳を緩め、両手を口元に当てて怯えた表情を作る。
目を潤ませて何度も瞬きを繰り返す。
「…… リゼさんの方がよほど怖いですけどね」
「なんですってぇ!?」
賑やかなパーティーは気をつけろと言われたはずなのにも関わらず盛り上がる。
勇飛から聞いた喧嘩を売ってくる冒険者に会えると思えば期待も高まると言うものだ。
期待しないのが普通の女の子だと思うが。
その後も綺麗な建物、美味しい魚介を楽しみながら街を歩き、しばらくすると背後に複数の冒険者達が集まりだしたが気にせず観光を楽しむ。
街の広場に面する喫茶店に入り、コーヒーと甘味を注文してテラスでそれぞれ席に着く。
そこへ近付いて来た冒険者が四人。
その仲間の冒険者十人程が少し離れた位置でこちらを見ている。
「よう姉ちゃん達。オレ達はゴールドランクパーティー【クラーク】だ。武器を下げてるって事は冒険者、それに余所者だろ? オレ達がこの街案内してやるからよぉ。一緒に来いよ」
顎を突き出して見下ろすように言ってくる微妙な男。
「嫌ですよ。うちもパーティーですしね」
リーダーらしくミリーが答える。
「パーティーねぇ。そんな弱そうな男共よりこっちの方が絶対にいいぜ? ゴールドランクのオレ達が誘って…… お前らもゴールドか……」
「はっ。オレらに勝てるゴールドがいるかよ。いいから黙ってついて来いよ」
ミリーの冒険者カードに気付いた男を退けて後ろの男がミリーの腕を掴む。
腕を引き寄せようと力を入れた男だが、ミリーの腕はピクリとも動かない。
「あなた方はいつもこんな事をしてるんですか? まさか乱暴な事をしているとかではないですよね?」
「あー、うるせえ。力づくで連れてくぞ」
四人が待機中の仲間を呼び寄せてミリーの座るテーブルを囲みこむ。
ミリーの隣には朱王がいるのにも関わらず。
「美人揃いじゃねーか! オレはこの獣耳の女がいーな」
「じゃあオレはこっちの紫の髪の女もーらいっ」
「オレはこの銀髪にするか」
「じゃあオレはこの金髪の姉ちゃんかな」
「生意気なお前はオレがもらってやる」
男達の中でもミスリル製の武器を持った五人が主力のメンバーなのか、ミリー達を見て選び始める。
しかしミリーだけでなく全員が怯える事なく相手の出方を見ているようだ。
「ちょっと待て! オレは男だっ!!」
腕を掴まれた千尋がイラっとしてぶん殴る。
その隣のリゼの腕を掴んだ男の顔面を蹴り飛ばす。
仲間を殴られて怒る男達は武器を抜いて声を荒げる。
「テメー! ぶっ殺されてーのか!!」
「はぁ…… この綺麗な街のゴールドがこんなクズしかいないとはガッカリだ」
「酷い目にあった女性達もたくさんいるのかな……」
精霊刀を抜く蒼真と立ち上がる朱王。
二人の魔力に殺気が帯びる。
殺気に飲まれた八人の武器が根元から一瞬で斬り落とされ、そのまま膝から崩れるように倒れ込む。
不快そうな表情の朱王は倒れた男の頭に触れて記憶を漁る。
蒼真も朱王の肩に手を置いて男共の記憶を確認。
「うん。クズだね。警備騎士に犯罪者として投獄してもらおうか」
「こいつらには拷問の一つも必要なんじゃないか?」
「そうだね。騎士達の許可をもらってから実行しよう」
勝手に話を進める朱王と蒼真。
殺気が膨れ上がっている事から余程酷い記憶を見つけたのだろう。
仲間が一瞬で八人も倒された事に理解が追いつかない残りの四人。
「ねぇ、蒼真。手加減は必要?」
「死なない程度ならこいつらに手加減は要らない。叩き潰していいぞ」
薄く綺麗に微笑んだ千尋が目の前の男に前蹴りを食らわせる。
ミスリルの鎧を破壊する程の前蹴りだ。
内臓が破裂してもおかしくない威力だが、ミスリルの鎧の下にも着た上等な装備のおかげで千尋の一撃でも死ぬ事はない。
ただ強烈な痛みと尋常ではない苦しさがしばらくは続くだろう。
嘔吐しながら狂ったように苦しみ転がる。
膨大な魔力で打ち込まれた蹴りは強化していた装備や体内の魔力を押し出た。
武器を手にしない千尋に向かって剣を振り下ろす冒険者。
振り下ろされたキメラ直剣を素手で受け止めた千尋は、そのまま掴んだ刃を握り潰す程の強化だ。
並みの冒険者では千尋が無抵抗だとしても傷つける事は難しいだろう。
少し離れた位置にいる残りの二人は、千尋のあまりの強さに近づいて来る事はない。
徐ろに右足を上げた千尋が地面を踏み込むと同時に魔法を発動。
地面を伝った激震が二人の冒険者の体を突き抜ける。
『フッハッハッ! 雑魚共が千尋を怒らせるからそうなるのだ!』
「やっぱ怒ると強化も強くなるねー」
千尋の怒りはそのまま上級精霊ベヒモスの力となって精霊魔法が強化される。
そんな千尋を見て他のメンバーも怒らせないようにしようと心に誓う。
念の為他のクラークメンバーの記憶も漁り、その粗暴さと凶悪さを朱王と蒼真、千尋で確認して、犯罪者として警備騎士に引き渡す事にする。
その後はクラークのメンバー十二人を転がしたままコーヒーと甘味を楽しみ、足を掴んで引き摺りながらまずは役所まで運ぶ。
その光景を見た街人や冒険者の中には、涙を流し石を投げつける者が多くいる。
被害者本人か、それともその身内かはわからない。
石を投げて来る人々に近付く朱王と千尋と蒼真。
「みんなあいつらの被害者なの?」
千尋の質問に答える事はできない街の人々。
そうだと言ってしまえば多くの人々の前で自分が被害に、暴行にあった事を口外してしまう。
「被害にあった女性を救う事はできないけど…… もし忘れたい記憶であれば私が消してあげるよ? その時の事を思い出してもらう必要はあるけど、ね」
朱王の記憶の魔石を使えば記憶を消去する事すら可能らしい。
「あいつらのあの粗暴さを考えれば街で様々な問題を起こしていたはずだ。女性被害だけじゃない、街で暴力を振るわれた、売り物を駄目にされた、店の物を壊されたなど何でもいい。被害届けを役所に提出してくれ。そうすればあいつらの罪が重くなるぞ」
「そうだね。その被害届けを提出に来た時に言ってくれれば記憶も消去するよ。出入り口を別けるから安心して来て欲しい」
「みんなで街全部に広めてくれる? クラークからの復讐はあり得ないから安心していいよー」
クラークメンバーの記憶には決して許されない行為があった。
暴行や暴力だけでなく、抗った者に対して刃を向け、傷付け、そして命を奪う。
ゴールドランク冒険者どころかただの凶悪な犯罪者でしかない。
これを朱王が許すはずもなく、国王をも動かしてでも裁きを与えるだろう。
昨日も歩いた道だが、主に商店の食べ歩きをするだけだったので今日はまた違った見え方をする。
白い壁に赤茶色の河原のような屋根の家が建ち並び、統一された色の建物が空の青に映えて街を美しく輝かせる。
屋根に似た赤茶色の石畳や深緑の街路樹として植えられた木々もまた美しい。
空気の澄んだ冬の青空はどこまでも続き、日の光が暖かさを感じさせて気持ちがいい。
「この街は綺麗ね!」
「うんっ! こんなとこに住むのもいいよねー!」
先頭を歩くリゼと千尋が嬉しそうに辺りを見回している。
白と赤の千尋と、しろとピンクのリゼ。
白い装備を着た二人はやはり恋人同士というよりは、仲のいい女友達に見えてしまう。
「ミリー、あの木の実の中のジュースは美味しいんだよ」
「本当ですか!? 飲んでみたいです!!」
街路樹の木の実を指差して言う朱王と嬉しそうに見上げるミリー。
千尋達とは対照的に、黒い装備の朱王と黒地に赤のミリーはやはり恋人同士に見える。
コロコロと表情を変えながら話す二人は本当に仲が良さそうで羨ましく映る。
朱雀は両手に串焼きを持って食べているが、二人の子供に見えなくもない。
少し親が若過ぎる気もするが……
その後方で四人を見ながら街を歩く蒼真とアイリ、エレクトラ。
濃紺の装備を着た蒼真は、暖かい日の光を浴びて少し眠そうだ。
やはり早起きしたのが原因かもしれない。
青紫と薄紫の装備を着るアイリは、眠そうな蒼真の顔を覗き込んでくすりと笑う。
以前は赤地に金の装飾が入る装備だったエレクトラだが、ノーリス王国を出る前に装備を少し変更している。
まずはインナーであるミスリルウェアを白に変更。
少し短めのスカートは黒字に金のラインが入り、右が黒、左が白のニーソックスを履いて遊び心を追加。
上着と飛行装備下の腰布は以前と同じ赤に金の装飾だが。
ピンク色のふんわりとした長い髪に、獣耳が可愛らしい。
目立つ彼らが街を歩けば誰もが目を向けるが、注目を浴びる事にも慣れた八人は気にせず景観を楽しむ。
ところどころで冒険者がこちらを見ているが、やはり見慣れない武器を持つパーティーが気になるのだろう。
朱雀が新しい串焼きを買って戻って来る。
「なにやらこの街のゴールドランクは評判が悪いようじゃのぉ」
「どういう事?」
「ガラが悪いらしいぞー。余所者の冒険者、女の多いパーティーなら気をつけよとの事じゃ。逆らえば殴られたり斬られたりすると言っておったぞ。冒険者ではなく犯罪者ではないかのぉ」
「それはそのゴールドランクをぶっころ…… ぶちのめしてやらないといけないわね!」
拳を握りしめてぶっ殺すと言いそうになるリゼ。
「まあ美人揃いだからな。仕方ない、千尋が囮になれ」
「なにが仕方ないの!? 男が囮になれるわけないじゃん!!」
「千尋…… 私、怖いわ」
リゼは握りしめた拳を緩め、両手を口元に当てて怯えた表情を作る。
目を潤ませて何度も瞬きを繰り返す。
「…… リゼさんの方がよほど怖いですけどね」
「なんですってぇ!?」
賑やかなパーティーは気をつけろと言われたはずなのにも関わらず盛り上がる。
勇飛から聞いた喧嘩を売ってくる冒険者に会えると思えば期待も高まると言うものだ。
期待しないのが普通の女の子だと思うが。
その後も綺麗な建物、美味しい魚介を楽しみながら街を歩き、しばらくすると背後に複数の冒険者達が集まりだしたが気にせず観光を楽しむ。
街の広場に面する喫茶店に入り、コーヒーと甘味を注文してテラスでそれぞれ席に着く。
そこへ近付いて来た冒険者が四人。
その仲間の冒険者十人程が少し離れた位置でこちらを見ている。
「よう姉ちゃん達。オレ達はゴールドランクパーティー【クラーク】だ。武器を下げてるって事は冒険者、それに余所者だろ? オレ達がこの街案内してやるからよぉ。一緒に来いよ」
顎を突き出して見下ろすように言ってくる微妙な男。
「嫌ですよ。うちもパーティーですしね」
リーダーらしくミリーが答える。
「パーティーねぇ。そんな弱そうな男共よりこっちの方が絶対にいいぜ? ゴールドランクのオレ達が誘って…… お前らもゴールドか……」
「はっ。オレらに勝てるゴールドがいるかよ。いいから黙ってついて来いよ」
ミリーの冒険者カードに気付いた男を退けて後ろの男がミリーの腕を掴む。
腕を引き寄せようと力を入れた男だが、ミリーの腕はピクリとも動かない。
「あなた方はいつもこんな事をしてるんですか? まさか乱暴な事をしているとかではないですよね?」
「あー、うるせえ。力づくで連れてくぞ」
四人が待機中の仲間を呼び寄せてミリーの座るテーブルを囲みこむ。
ミリーの隣には朱王がいるのにも関わらず。
「美人揃いじゃねーか! オレはこの獣耳の女がいーな」
「じゃあオレはこっちの紫の髪の女もーらいっ」
「オレはこの銀髪にするか」
「じゃあオレはこの金髪の姉ちゃんかな」
「生意気なお前はオレがもらってやる」
男達の中でもミスリル製の武器を持った五人が主力のメンバーなのか、ミリー達を見て選び始める。
しかしミリーだけでなく全員が怯える事なく相手の出方を見ているようだ。
「ちょっと待て! オレは男だっ!!」
腕を掴まれた千尋がイラっとしてぶん殴る。
その隣のリゼの腕を掴んだ男の顔面を蹴り飛ばす。
仲間を殴られて怒る男達は武器を抜いて声を荒げる。
「テメー! ぶっ殺されてーのか!!」
「はぁ…… この綺麗な街のゴールドがこんなクズしかいないとはガッカリだ」
「酷い目にあった女性達もたくさんいるのかな……」
精霊刀を抜く蒼真と立ち上がる朱王。
二人の魔力に殺気が帯びる。
殺気に飲まれた八人の武器が根元から一瞬で斬り落とされ、そのまま膝から崩れるように倒れ込む。
不快そうな表情の朱王は倒れた男の頭に触れて記憶を漁る。
蒼真も朱王の肩に手を置いて男共の記憶を確認。
「うん。クズだね。警備騎士に犯罪者として投獄してもらおうか」
「こいつらには拷問の一つも必要なんじゃないか?」
「そうだね。騎士達の許可をもらってから実行しよう」
勝手に話を進める朱王と蒼真。
殺気が膨れ上がっている事から余程酷い記憶を見つけたのだろう。
仲間が一瞬で八人も倒された事に理解が追いつかない残りの四人。
「ねぇ、蒼真。手加減は必要?」
「死なない程度ならこいつらに手加減は要らない。叩き潰していいぞ」
薄く綺麗に微笑んだ千尋が目の前の男に前蹴りを食らわせる。
ミスリルの鎧を破壊する程の前蹴りだ。
内臓が破裂してもおかしくない威力だが、ミスリルの鎧の下にも着た上等な装備のおかげで千尋の一撃でも死ぬ事はない。
ただ強烈な痛みと尋常ではない苦しさがしばらくは続くだろう。
嘔吐しながら狂ったように苦しみ転がる。
膨大な魔力で打ち込まれた蹴りは強化していた装備や体内の魔力を押し出た。
武器を手にしない千尋に向かって剣を振り下ろす冒険者。
振り下ろされたキメラ直剣を素手で受け止めた千尋は、そのまま掴んだ刃を握り潰す程の強化だ。
並みの冒険者では千尋が無抵抗だとしても傷つける事は難しいだろう。
少し離れた位置にいる残りの二人は、千尋のあまりの強さに近づいて来る事はない。
徐ろに右足を上げた千尋が地面を踏み込むと同時に魔法を発動。
地面を伝った激震が二人の冒険者の体を突き抜ける。
『フッハッハッ! 雑魚共が千尋を怒らせるからそうなるのだ!』
「やっぱ怒ると強化も強くなるねー」
千尋の怒りはそのまま上級精霊ベヒモスの力となって精霊魔法が強化される。
そんな千尋を見て他のメンバーも怒らせないようにしようと心に誓う。
念の為他のクラークメンバーの記憶も漁り、その粗暴さと凶悪さを朱王と蒼真、千尋で確認して、犯罪者として警備騎士に引き渡す事にする。
その後はクラークのメンバー十二人を転がしたままコーヒーと甘味を楽しみ、足を掴んで引き摺りながらまずは役所まで運ぶ。
その光景を見た街人や冒険者の中には、涙を流し石を投げつける者が多くいる。
被害者本人か、それともその身内かはわからない。
石を投げて来る人々に近付く朱王と千尋と蒼真。
「みんなあいつらの被害者なの?」
千尋の質問に答える事はできない街の人々。
そうだと言ってしまえば多くの人々の前で自分が被害に、暴行にあった事を口外してしまう。
「被害にあった女性を救う事はできないけど…… もし忘れたい記憶であれば私が消してあげるよ? その時の事を思い出してもらう必要はあるけど、ね」
朱王の記憶の魔石を使えば記憶を消去する事すら可能らしい。
「あいつらのあの粗暴さを考えれば街で様々な問題を起こしていたはずだ。女性被害だけじゃない、街で暴力を振るわれた、売り物を駄目にされた、店の物を壊されたなど何でもいい。被害届けを役所に提出してくれ。そうすればあいつらの罪が重くなるぞ」
「そうだね。その被害届けを提出に来た時に言ってくれれば記憶も消去するよ。出入り口を別けるから安心して来て欲しい」
「みんなで街全部に広めてくれる? クラークからの復讐はあり得ないから安心していいよー」
クラークメンバーの記憶には決して許されない行為があった。
暴行や暴力だけでなく、抗った者に対して刃を向け、傷付け、そして命を奪う。
ゴールドランク冒険者どころかただの凶悪な犯罪者でしかない。
これを朱王が許すはずもなく、国王をも動かしてでも裁きを与えるだろう。
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