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ノーリス王国編
161 その後のヴァイス・エマで
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竜族の谷に来て八日。
九日目の朝、この日ヴァイス・エマ国を発つ事にした。
ノーリス王国の滞在日数をこれ以上増やすとウェストラル王国での観光を楽しむ日も少なくなる。
そもそもここヴァイス・エマでも仕事と訓練しかしてないんじゃないだろうか。
蒼真は毎日楽しそうに竜人の訓練に付き合っているし、竜人達の剣術やそれぞれの武器の扱いも相当に上達しているのでいいのだが…… この旅の目的が違う。
この地での訓練では竜人達の実力も向上しているが、アイリやエレクトラが目に見えてわかるほどに上達している。
アイリは魔法による補助が無くとも剣術の腕が高まり、超高速戦闘からの返し技を身につけた。
エレクトラは剣術に精霊魔導を乗せての制御が格段に上手くなり、テオとの戦闘でもいい勝負ができる程まで上達している。
リゼは懲りずに防御を捨てた攻撃特化として訓練を続けていたが、それ程上達したとは言えないのが現状だ。
しかし完全なる特化型も、壁を一つ乗り越えれば化ける可能性もある為蒼真は何も言う事はなかった。
蒼真は対人戦を諦めて成長したランの能力制御を中心に自主練を続けていた。
魔法陣を発動しての訓練の為、下手に王国では発動できない威力での訓練を中心にしていたが。
ミリーはアリーだけとの訓練ではなく、剣術に上達して自惚れかけた竜人達を叩きのめして見せた。
アリーとの戦闘では魔法威力による訓練と思っていたらしく、技による圧倒をする事なく力に力で対抗するという手段を取っていただけだった。
千尋は朱王と一緒に武器作りに専念していたが、残りの三日程は自由時間をもらってエンの精霊魔法の研究を行っていた。
時々何かを呟きながら暗い表情をして帰って来る千尋を心配したが、話しかけるとすぐにいつもの笑顔に戻るのでエンの魔法について考え事をしていたのだろうとリゼも安心した。
朱王は呼び寄せたクリムゾンメンバーと共にエルフ達の教育の状況を見て回り、ラルスとレオニーと相談しながらクラウディア以下部下達と共に施設の建設や城の整備について話し合いを進めていた。
小さいながらもヴァイス・エマ国として建国したのであれば今までのようにはいかない。
しっかりと地盤を固めながら他国との貿易を進めてもらいたいと思う朱王。
すでにゼス王国からも数十名クリムゾンメンバーの派遣を依頼済みで、建設に携わる知識を持つ者を優先して手配してもらった。
今後はラルスやレオニーと共にこの国を住みよい国にしてほしい。
わずけ八日だけの滞在だったが、千尋達のおかげでエルフ達の暮らしは随分と変わった。
映画の日もさる事ながら、強力な武器を手に入れた事で食事情も様変わり。
野菜中心の料理を食べていたというエルフ達だったのだが、獲物を狩るのが容易になる事で肉の入手量が数倍に増えた。
それと大量に持って来てもらった調味料のおかげで味の幅も広がった。
朱王の食の魔石を渡しても良かったのだが、料理について煮る、焼く程度の事しかしてこなかったエルフ族には再現する事は不可能だろう。
今後人間領に入れるようになったら料理修行に出ればいいし、もしヴァイス・エマに客を迎える機会があれば、ここの美味しい野菜と肉のステーキでも出しておけば充分だ。
綺麗な皿も欲しいところだが、鉄板焼きならぬ石板焼きにすれば、その豪快な食事に貴族や金持ちなんかは喜びそうだ。
ヴァイス・エマに来てから五日目の夜にはノーリス王国の映画が配信され、エルフ達もその映画を楽しむ事が出来た。
今後ある程度国として成り立つようになった際には、ノーリス王国の映画上映前にクラウディアやエリオッツ達にも挨拶をさせる予定だ。
竜人とエルフ族の国、ヴァイス・エマ。
まずはエルフ達の安全を確保する為にも精霊魔導に慣れてもらう事が先決だろう。
朱王としてはこの国にヒーラーを派遣したかったのだが、ノーリス王国のクリムゾンメンバーにヒーラーはいない。
それ以前にヒーラーという特殊な魔力を持つ者自体が極端に少ない為、この国にヒーラーを配するのは今後しばらく掛かるだろう。
三ヶ月後に産まれる予定のエルフの子にはヒーラーになってもらうようだが、魔法医として回復魔法を人並みに扱えるようになるまでは十数年は要する。
クリムゾンでも数少ないヒーラーのうち、ザウス王国から一人派遣しようと考えている。
今すぐ必要とするわけでもないので三ヶ月後の出産時期に合わせて連れて来ればいいだろう。
もしそれまでに何かあった場合はノーリス王国に対応してもらうよう手配する。
そして六日目の朝にはカミンから重要な連絡を受けている。
大王領に到着し、アイザックに連れられて領内を見て回るという。
そしてアイザックとフィディックが大王の城へと向かい、ディミトリアス大王との謁見を申し込むとの事。
カミンとマーリン達だけの定時連絡なのだが、大王領に入る前にアイザックも朱王と是非とも話したいとの事で映し出されている。
「朱王殿! カミン卿と一緒に行動してから驚きの連続だ! レイヒム殿の料理の美味さは私の心を鷲掴みにしたぞ! それになんだ、映画! 私もこれまで生きてきてあれ程素晴らしい物があるとは思いもよらなかった! 感動で目から止め処なく涙が流れたぞ!」
やはり涙を流したらしい。
リルフォンこそ渡してないがアイザック付きの部下も感動して涙を流していたと言っていた。
レイヒムの料理は当然のように喜んでくれているらしい。
おっとりした魔人のアイザックが興奮しながら言葉を捲し立てていた。
その日の夕方には再びカミンから着信があり、ディミトリアス大王との謁見が叶い、翌日の朝に城へ来るようにとの事。
時間の指定は何もなかったそうだ。
時計がないこの国では朝と言えば朝らしい。
アイザックはリルフォンによって時間を見る事が出来るが、大王の食事が終わった頃を見計らって十時に向かう事にした。
その日の宿泊はアイザックも大王領にきた際に寝泊まりする宿を案内されている。
翌朝も定時連絡を受け、昼過ぎにはまた着信があった。
ディミトリアス大王はリルフォンに大層驚き、大王領に住む魔貴族、上位魔人八人にもリルフォンを配ったとの事。
残り一つはディミトリアス大王の娘に渡したそうだ。
気を良くしたディミトリアス大王はリルフォンでしばらく魔貴族達との通話やその機能を堪能し、もう一つのお土産であるモニターにも興味を示してまずはその映画を見せてみろと言われて再生。
少し見せてから話しを聞いてもらおうと思ったが、まずはこの映画について見極めなければ話しを聞かないとの事。
それ程大きくないモニターに十人の魔人が食い入るように見つめていたそうだ。
映画を一本観終われば、次はシリーズ物を見始める。
見極めなければ話しは聞かないとの事なのでそのまま観せているそうだ。
翌朝も、そして今朝の定時連絡でもまだ見極めていないからと話しを聞いてもらえていないそうだ。
どハマりしてるなーと思いながら、危険もなさそうなのでカミン達には様子見してもらっている。
エリオッツ達やクラウディア達、クリムゾンメンバーとエルフ達。
この国の全員が集まる中、車に乗り込む千尋達。
蒼真が運転して帰る事にする。
「じゃあ皆んな、この国が良くなるのも悪くなるのも君達次第だ。しっかり教育していい国にしてくれ」
「はい朱王様。ご期待に添えるよう努めます」
「レオニー、はい、これ。クリムゾンメンバーの分のリルフォン。何かあったら連絡してねー」
竜人や女王達にリルフォンを配った為、数える程しか手元になかったので今まで渡していなかった。
飛行装備も渡したいところだが魔石の残りが少ない事と素材が手元にないので今回は見送る事に。
次回また三ヶ月後には来る予定なのでその時に持って来ればいいだろう。
多くの人に見送られてヴァイス・エマを後にする。
元来た洞窟内に車を走らせ、朱王に言われるままに魔力登録をする。
魔力登録を済ませてあれば魔法陣を発動し、その場にいる魔法陣内の生物を転移するよう作られているそうだ。
転移の魔法陣の出口は縦穴の途中ではなく、縦穴のそのすぐ横になっていた。
今までエルフ達を拐われないようにする為に縦穴の途中にしていたのだが、今後出入りするだろうと魔法陣の位置を守護者達に変更してもらったのだ。
また後部座席では映画を観ながらお菓子を貪り、前席では音楽を楽しみながら雲の中に突入。
雲を掻き分けながら進んで天空の王国、ノーリス王国へと登っていく。
雲の上の城を横目に走り進み、昼過ぎには朱王邸に到着した。
あと二日滞在する事とし、昼食を食べた後にはスカイダイビングからのスノーボードを楽しんだ。
残念ながら朱王だけは溜まっていた仕事の処理をしに部屋へと戻って行ったが。
九日目の朝、この日ヴァイス・エマ国を発つ事にした。
ノーリス王国の滞在日数をこれ以上増やすとウェストラル王国での観光を楽しむ日も少なくなる。
そもそもここヴァイス・エマでも仕事と訓練しかしてないんじゃないだろうか。
蒼真は毎日楽しそうに竜人の訓練に付き合っているし、竜人達の剣術やそれぞれの武器の扱いも相当に上達しているのでいいのだが…… この旅の目的が違う。
この地での訓練では竜人達の実力も向上しているが、アイリやエレクトラが目に見えてわかるほどに上達している。
アイリは魔法による補助が無くとも剣術の腕が高まり、超高速戦闘からの返し技を身につけた。
エレクトラは剣術に精霊魔導を乗せての制御が格段に上手くなり、テオとの戦闘でもいい勝負ができる程まで上達している。
リゼは懲りずに防御を捨てた攻撃特化として訓練を続けていたが、それ程上達したとは言えないのが現状だ。
しかし完全なる特化型も、壁を一つ乗り越えれば化ける可能性もある為蒼真は何も言う事はなかった。
蒼真は対人戦を諦めて成長したランの能力制御を中心に自主練を続けていた。
魔法陣を発動しての訓練の為、下手に王国では発動できない威力での訓練を中心にしていたが。
ミリーはアリーだけとの訓練ではなく、剣術に上達して自惚れかけた竜人達を叩きのめして見せた。
アリーとの戦闘では魔法威力による訓練と思っていたらしく、技による圧倒をする事なく力に力で対抗するという手段を取っていただけだった。
千尋は朱王と一緒に武器作りに専念していたが、残りの三日程は自由時間をもらってエンの精霊魔法の研究を行っていた。
時々何かを呟きながら暗い表情をして帰って来る千尋を心配したが、話しかけるとすぐにいつもの笑顔に戻るのでエンの魔法について考え事をしていたのだろうとリゼも安心した。
朱王は呼び寄せたクリムゾンメンバーと共にエルフ達の教育の状況を見て回り、ラルスとレオニーと相談しながらクラウディア以下部下達と共に施設の建設や城の整備について話し合いを進めていた。
小さいながらもヴァイス・エマ国として建国したのであれば今までのようにはいかない。
しっかりと地盤を固めながら他国との貿易を進めてもらいたいと思う朱王。
すでにゼス王国からも数十名クリムゾンメンバーの派遣を依頼済みで、建設に携わる知識を持つ者を優先して手配してもらった。
今後はラルスやレオニーと共にこの国を住みよい国にしてほしい。
わずけ八日だけの滞在だったが、千尋達のおかげでエルフ達の暮らしは随分と変わった。
映画の日もさる事ながら、強力な武器を手に入れた事で食事情も様変わり。
野菜中心の料理を食べていたというエルフ達だったのだが、獲物を狩るのが容易になる事で肉の入手量が数倍に増えた。
それと大量に持って来てもらった調味料のおかげで味の幅も広がった。
朱王の食の魔石を渡しても良かったのだが、料理について煮る、焼く程度の事しかしてこなかったエルフ族には再現する事は不可能だろう。
今後人間領に入れるようになったら料理修行に出ればいいし、もしヴァイス・エマに客を迎える機会があれば、ここの美味しい野菜と肉のステーキでも出しておけば充分だ。
綺麗な皿も欲しいところだが、鉄板焼きならぬ石板焼きにすれば、その豪快な食事に貴族や金持ちなんかは喜びそうだ。
ヴァイス・エマに来てから五日目の夜にはノーリス王国の映画が配信され、エルフ達もその映画を楽しむ事が出来た。
今後ある程度国として成り立つようになった際には、ノーリス王国の映画上映前にクラウディアやエリオッツ達にも挨拶をさせる予定だ。
竜人とエルフ族の国、ヴァイス・エマ。
まずはエルフ達の安全を確保する為にも精霊魔導に慣れてもらう事が先決だろう。
朱王としてはこの国にヒーラーを派遣したかったのだが、ノーリス王国のクリムゾンメンバーにヒーラーはいない。
それ以前にヒーラーという特殊な魔力を持つ者自体が極端に少ない為、この国にヒーラーを配するのは今後しばらく掛かるだろう。
三ヶ月後に産まれる予定のエルフの子にはヒーラーになってもらうようだが、魔法医として回復魔法を人並みに扱えるようになるまでは十数年は要する。
クリムゾンでも数少ないヒーラーのうち、ザウス王国から一人派遣しようと考えている。
今すぐ必要とするわけでもないので三ヶ月後の出産時期に合わせて連れて来ればいいだろう。
もしそれまでに何かあった場合はノーリス王国に対応してもらうよう手配する。
そして六日目の朝にはカミンから重要な連絡を受けている。
大王領に到着し、アイザックに連れられて領内を見て回るという。
そしてアイザックとフィディックが大王の城へと向かい、ディミトリアス大王との謁見を申し込むとの事。
カミンとマーリン達だけの定時連絡なのだが、大王領に入る前にアイザックも朱王と是非とも話したいとの事で映し出されている。
「朱王殿! カミン卿と一緒に行動してから驚きの連続だ! レイヒム殿の料理の美味さは私の心を鷲掴みにしたぞ! それになんだ、映画! 私もこれまで生きてきてあれ程素晴らしい物があるとは思いもよらなかった! 感動で目から止め処なく涙が流れたぞ!」
やはり涙を流したらしい。
リルフォンこそ渡してないがアイザック付きの部下も感動して涙を流していたと言っていた。
レイヒムの料理は当然のように喜んでくれているらしい。
おっとりした魔人のアイザックが興奮しながら言葉を捲し立てていた。
その日の夕方には再びカミンから着信があり、ディミトリアス大王との謁見が叶い、翌日の朝に城へ来るようにとの事。
時間の指定は何もなかったそうだ。
時計がないこの国では朝と言えば朝らしい。
アイザックはリルフォンによって時間を見る事が出来るが、大王の食事が終わった頃を見計らって十時に向かう事にした。
その日の宿泊はアイザックも大王領にきた際に寝泊まりする宿を案内されている。
翌朝も定時連絡を受け、昼過ぎにはまた着信があった。
ディミトリアス大王はリルフォンに大層驚き、大王領に住む魔貴族、上位魔人八人にもリルフォンを配ったとの事。
残り一つはディミトリアス大王の娘に渡したそうだ。
気を良くしたディミトリアス大王はリルフォンでしばらく魔貴族達との通話やその機能を堪能し、もう一つのお土産であるモニターにも興味を示してまずはその映画を見せてみろと言われて再生。
少し見せてから話しを聞いてもらおうと思ったが、まずはこの映画について見極めなければ話しを聞かないとの事。
それ程大きくないモニターに十人の魔人が食い入るように見つめていたそうだ。
映画を一本観終われば、次はシリーズ物を見始める。
見極めなければ話しは聞かないとの事なのでそのまま観せているそうだ。
翌朝も、そして今朝の定時連絡でもまだ見極めていないからと話しを聞いてもらえていないそうだ。
どハマりしてるなーと思いながら、危険もなさそうなのでカミン達には様子見してもらっている。
エリオッツ達やクラウディア達、クリムゾンメンバーとエルフ達。
この国の全員が集まる中、車に乗り込む千尋達。
蒼真が運転して帰る事にする。
「じゃあ皆んな、この国が良くなるのも悪くなるのも君達次第だ。しっかり教育していい国にしてくれ」
「はい朱王様。ご期待に添えるよう努めます」
「レオニー、はい、これ。クリムゾンメンバーの分のリルフォン。何かあったら連絡してねー」
竜人や女王達にリルフォンを配った為、数える程しか手元になかったので今まで渡していなかった。
飛行装備も渡したいところだが魔石の残りが少ない事と素材が手元にないので今回は見送る事に。
次回また三ヶ月後には来る予定なのでその時に持って来ればいいだろう。
多くの人に見送られてヴァイス・エマを後にする。
元来た洞窟内に車を走らせ、朱王に言われるままに魔力登録をする。
魔力登録を済ませてあれば魔法陣を発動し、その場にいる魔法陣内の生物を転移するよう作られているそうだ。
転移の魔法陣の出口は縦穴の途中ではなく、縦穴のそのすぐ横になっていた。
今までエルフ達を拐われないようにする為に縦穴の途中にしていたのだが、今後出入りするだろうと魔法陣の位置を守護者達に変更してもらったのだ。
また後部座席では映画を観ながらお菓子を貪り、前席では音楽を楽しみながら雲の中に突入。
雲を掻き分けながら進んで天空の王国、ノーリス王国へと登っていく。
雲の上の城を横目に走り進み、昼過ぎには朱王邸に到着した。
あと二日滞在する事とし、昼食を食べた後にはスカイダイビングからのスノーボードを楽しんだ。
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