154 / 297
ノーリス王国編
146 スノーボード
しおりを挟む
ヴィンセント達を送り出して、リゼの飛行装備を作り終えたところで時刻は十一時。
もうすぐ昼だがこの日はどうしよう。
「今日はスノーボードでも買いに行く? サミュエル伯爵の領地で売ってるんだけど飛行装備で行けば十分くらいかな。向こうで昼食摂ってそのまま買いにいけばいいしさ」
「行く!! スノーボードやりたいし!!」
「滑るだけならここからいつでも出来るしな」
しかしこの世界でスノーボード。
自分達の知るスノーボードなのだろうか。
魔獣の素材やミスリル素材は身近だが、プラスチック製品などはまず見る事はない。
しかしセラミック素材やゴム素材、樹脂系素材やラップなどのポリ系素材もあるので、それなりの素材で作られたスノーボードもあるのかもしれない。
早速空から向かおうとしたのだが、リゼが飛べないかもしれない事を思い出す。
少し練習するとある程度操作する事が出来るようになったのでそれ程速度を出さずに向かう。
朱王邸から飛行装備で十分となれば、直線距離で10キロもない程度だろうか。
ウィンタースポーツの出来るような領地との事なので、ノーリス王国よりもだいぶ低い位置にあるのだろう。
そうなれば歩きだと相当な距離となるかもしれない。
朱王邸の崖からまた飛び降りて東方向に向かうようだ。
徐々に高度を落としながら断崖を横目に空の旅だ。
雲が見えてきたところで速度を落としつつ、垂直に雲の下へと突入する。
雲の中をどの方向に向かえばいいかわからず飛ぶよりも、真下へと抜けた方が安全と判断した為だ。
雲の下へと抜けるとそこは白銀の世界。
深々と降る雪が肌に触れて冷たさを感じさせる。
全員雲の下へと抜けてきた事を確認して、翼を羽ばたかせて移動を再開する。
また高度を落としながら東へ、南へと向きを変えながら進んでいき、しばらくすると雪に覆われた街が見えてくる。
サミュエル伯爵領だろう、街の中央には大きな邸が建っており、それ程大きな街ではないながらも密集した街並みは住民の多さを物語る。
雪が降っているのにもかかわらず雪山には光が点々と灯っており、とうやらゲレンデとなっているようだ。
耐火耐寒装備の和服に帽子を被っているが、雪が降っている事もあってとんでもない寒さだ。
いや、違うか、耐寒素材によって寒さは防ぐ事は出来ても雪の冷たさが直接肌に触れる事で寒さを感じさせているのだ。
今すぐにでもボードウェアが欲しい、が、お腹も空いた。
伯爵領に着陸してすぐに近場の店に入った。
店内の暖炉に近い席に着こうとしたが、一般の店に七人分のテーブル席などそうそうあるものではない。
四人と三人に分かれて席に着く。
千尋と蒼真の向かいにリゼとアイリが座り、隣のテーブル席には朱王とミリー、エレクトラが座る。
「ここではどんなお料理が出てくるのでしょう!」
と期待するエレクトラは、このような市民の店で食事をするのは初めてだ。
祭りの出店は別としてだが。
「好きなのを食べてね」と言う朱王にメニューを渡されて各々自分の食べたいメニューを注文する。
とりあえずこの土地で定番メニューとなっているものを全員分注文し、それぞれもう一品ずつ料理を頼んだ。
この地の定番メニューとして出されたのはロシアの伝統料理ボルシチに似た真っ赤な煮込みスープだった。
二つずつパンも添えられており、それだけでも量的には充分と思える料理。
メニュー表を見ると使われている肉はホワイトボアと言う魔獣の肉だそうだ。
食べてみると豚肉に似た食感に、サラリとした脂身が喉元を通る感覚が癖になりそう。
やはり色味が赤いだけで辛さはなく、真っ赤な野菜が特徴的な料理だ。
スープの酸味と野菜の甘みが絶妙で、冷えた体を温めながら胃袋をも満足させてくれる。
パンもふんわりとした焼きたてのパンで一緒に添えられたバターを塗って食べるとまた美味しい。
他に注文したボアステーキや腸詰め、サラダなどもまた美味しく、貴族領もいいなと思う一行。
今後暇があれば遊びに行くのもいいかもしれない。
いつも通りにデザートも注文し、焼いた果実にバターが入れられたものが出てきた。
焼きリンゴみたいなものだろう。
酸味のある果実が焼いた事によって甘みが引き出され、バターの濃厚さが酸味と甘みをまとめ上げてなんとも言えない美味しさだ。
最後に暖かい飲み物を注文して体をしっかりと温めてから店を出る事にした。
街の中央へと向かうと広場となっており、広場に面した位置に目的のスポーツ用品店? があった。
正確には武器屋兼防具屋だったが。
店内に入ると剣や槍などの武器と、その奥には防具類、そして一番奥にはスノーボードやスキーが置かれていた。
防具の並ぶ一角にはボードウェアも売られており、手袋や帽子、ゴーグルなども揃っている。
実はスキー自体はこの世界に元々あったのだが、スキーをした事がない朱王がこの領地に来てスノーボードを伝えたとの事。
スキーに金属のエッジを付け加えたり素材を変えたりと、この店の店主と話し合って現在のこのスキーやスノーボードが完成したそうだ。
スノーボードの板やビンディング、ブーツも地球のそれとほとんど違いがない。
ただ種類が少ないのはこの世界ではそれほどメジャーではない為か。
千尋と蒼真は自分達のボードとビンディングを選び、ブーツを自分の足に合うものを探している。
朱王のは店主が新作を用意してくれているとの事で選ぶ必要はない。
女性陣のボード選びを手伝いながら好みのものを選んでもらう。
長さや硬さなど滑りにも影響がある為しっかりと選ぶ。
それ程本格的にやるわけでもないのでビンディングは好みのものを選んでもらった。
ブーツ選びはやはり見た目以上に足に合ったものを選ぶ。
種類もほとんどないので一番しっくりくるものにしてもらった。
あとはボードウェアと手袋とゴーグルか。
手袋は主に白か黒しかないのでサイズだけで決めていいだろう。
ゴーグルはレンズの色と大きさのみ。
ボードウェアは好みで選ぼうか。
千尋は装備では着ることのない紫と白、黒のチェック柄にグレーのパンツのものを選択。
オシャレでちょっとかっこいいとこれを選んだ。
蒼真もあえて普段着ない色を選ぶ。
白地に胸元から下がピンクのウェアに、迷彩柄のパンツ。
蒼真らしくない色合いだが、着てみると意外と似合っているから不思議だ。
朱王は内側の赤い真っ黒なウェアに緋色のパンツ。
いかにも朱王らしいウェアを選択した。
リゼはゼブラ模様のウェアに真っ黒なパンツ。
おとなし目のデザインだがリゼなら何を着ても似合いそうだ。
ミリーは綺麗な水色のウェアに濃紺のパンツを選択。
皆んな普段とは違う色味を選んでいるので自分も負けじと寒色系。
アイリはまた蒼真に相談して選んだようだ。
黒いウェアに黄色のパンツ。
普段とは全く違う装いだが、紫髪のアイリに黄色は似合うのだろうか。
エレクトラのウェアはミリーや朱王と一緒に選んだ。
蒼真と同じデザインの色違い、黒字に白のウェアに白黒のチェック柄のパンツを選択。
その他小物も購入してボードウェアを着込んで帰る事にした。
全て手に持って移動するのは大変だし、ブーツを履いてスノーボードを装着。
ボードウェアの上から飛行装備を巻いて、脱いだ装備を袋に詰めて空へ向かって飛び立った。
雲を突き抜けてからの冷たさが、ボードウェアのおかげもあってそれ程感じることはない。
ボードウェアも耐寒装備で作られており、耐冷素材も使用されているとの事。
代わりに耐火性能はないのだが、この寒さに耐えるよりは全然いい。
雲を真上に向かって突き抜けて、さらに朱王邸に向かって羽ばたく。
雲を抜ければ寒さはあるものの、雪による冷たさはない。
伯爵領へ行くよりもやはり帰りの方が時間がかかり、およそ三十分かけて邸までたどり着いた。
装備類を邸内へと置いてきたら、早速飛行装備を試したい。
全員しっかりとビンディングで足を固定して、とりあえず雪のある崖下まではスカイダイビングしよう。
寒いからとずっと出て来なかった朱雀にもスノーボードとウェア、手袋とゴーグルなどを朱王がイメージから作り出し、黒字に赤のボーダーのウェアと黒のパンツ。
赤いブーツと火の鳥バージョンの朱雀模様のスノーボードを作り出した。
各々自分のタイミングで崖から飛び降り、スノーボードでの風の抵抗を感じながら落下して行く。
千尋や蒼真は余裕があり、スカイサーフィン気分で落下している。
それもまた楽しそうと試そうとするが、ミリーやリゼはボードの抵抗が強くて真っ逆さまのまま体勢を変えることができない。
次のダイブでまた試そうとすぐに諦めた。
雪の斜面に近付くと翼を広げて減速して着地。
スノーボードの滑り方を簡単に説明しつつ朱王から全員に滑り方の記憶を転送する。
この記憶を転送する行為は訓練の時間を大幅に減らす事ができるチートな方法だ。
それもそのはず、転送者の記憶、経験をそのまま相手に転送するのだ。
体を同じように使った事がないとはいえ、転送者の感覚がそのまま記憶にあるという事は、自分の体でその記憶をトレースするだけ。
戦闘の尋常ではない脳内処理とは違って、スノーボードなどの記憶であればすぐに滑れてしまうだろう。
脳内に感覚を植え付けていざ滑り出す。
やはり朱王の記憶とは自分の体の感覚は違うものの、動作自体はトレースするだけなのでバランスも取れるし曲がる事も問題なくできる。
新雪の上に自分のボードのラインを残しながらどんどん下へと滑って行く。
大きな段差や穴などは飛行装備を使って対処しながら山を下って行く。
初めてのスノーボード、雪を滑るという感覚に誰もが楽しそう。
経験のある千尋や蒼真でさえ新雪を滑る事は無かった為かとても楽しそうだ。
山の下り坂が無くなったところでまた飛行装備を使って朱王邸に戻り、再びスカイサーフィンからのスノーボードをひたすら楽しむ。
スノーボード一枚履くだけで二度美味しいこの遊びに皆んな満足だ。
エレクトラはこの国にいながらこれ程楽しい事があったなんてと、すごく感激していた。
いずれは国王にもやって欲しいとも言っているがどうなのだろう。
国王に向かって崖から飛び降りろ…… なかなか言えるものではないだろう。
この日は夕方までひたすらボードを楽しんだ。
翌日からもスノーボードを楽しみ、休憩にはよくスキー場のペンションなどで見られるピザを作ってもらって楽しんだ。
毎日違う味のピザは飽きる事なく食べられる。
新雪は千尋達が滑り続けたせいで圧雪され、ボゴボコとした滑走面となり始めたところでリゼの出番だ。
雪を操作して圧雪していき、平らな滑走面を作り出す。
滑りやすくなった雪の上を今度は朱王がまた変わった滑り方をし始める。
グラウンドトリックだ。
今後キッカーやレールをする前に簡単なトリックの練習にもなっていいだろうとの思いからだ。
朱王の滑り方を見て、再び脳内からグラトリを再現する為のデータを引き出す。
また自分の体と朱王の記憶での感覚の違いを感じつつも新たな技術を身に付けようと練習を始める。
トリッキーな滑り方をあっさりと再現する事が出来るが転ぶ事もある。
だが転んでも楽しいのがスノーボードの良さの一つだろう。
雪にまみれながら笑い合う女性陣。
千尋や蒼真は完璧なトリックを決めながら滑って行くのがまたかっこいい。
朱王はもちろん始めて滑るはずの朱雀も朱王と並ぶテクニック。
負けず嫌いのリゼやミリーにつられてアイリとエレクトラも一斉に滑り出す。
何度も転びながらも着実に技術を身に付けていくのだった。
映画の日の挨拶前に、朱王が編集したスノーボード映像を音楽と共に流してもらった。
サミュエル領のスキー場はお世辞にも人気があるとは言えない。
スキーの映像はないが、スキー場の良さを知ってもらおうとスノーボードの映像を見てもらい、サミュエル領のスキー場を紹介。
他にもノーリス王国にはスキー場を作れる雪山はあるだろう。
スキー場を増やして各国からの観光客も増やそうという狙いだ。
ノーリスのみならず、ゼスや他の国でも挨拶前にスノーボード映像を流してもらい、ノーリス王国の観光の楽しさを伝えられたと思う。
他国においては映画の日の出店の料理なども紹介し、貴族達が美味しそうに新たなグルメを楽しむ様も紹介。
スノーボードという新たな娯楽スポーツに、映画上映前から盛り上がりを見せていた。
もうすぐ昼だがこの日はどうしよう。
「今日はスノーボードでも買いに行く? サミュエル伯爵の領地で売ってるんだけど飛行装備で行けば十分くらいかな。向こうで昼食摂ってそのまま買いにいけばいいしさ」
「行く!! スノーボードやりたいし!!」
「滑るだけならここからいつでも出来るしな」
しかしこの世界でスノーボード。
自分達の知るスノーボードなのだろうか。
魔獣の素材やミスリル素材は身近だが、プラスチック製品などはまず見る事はない。
しかしセラミック素材やゴム素材、樹脂系素材やラップなどのポリ系素材もあるので、それなりの素材で作られたスノーボードもあるのかもしれない。
早速空から向かおうとしたのだが、リゼが飛べないかもしれない事を思い出す。
少し練習するとある程度操作する事が出来るようになったのでそれ程速度を出さずに向かう。
朱王邸から飛行装備で十分となれば、直線距離で10キロもない程度だろうか。
ウィンタースポーツの出来るような領地との事なので、ノーリス王国よりもだいぶ低い位置にあるのだろう。
そうなれば歩きだと相当な距離となるかもしれない。
朱王邸の崖からまた飛び降りて東方向に向かうようだ。
徐々に高度を落としながら断崖を横目に空の旅だ。
雲が見えてきたところで速度を落としつつ、垂直に雲の下へと突入する。
雲の中をどの方向に向かえばいいかわからず飛ぶよりも、真下へと抜けた方が安全と判断した為だ。
雲の下へと抜けるとそこは白銀の世界。
深々と降る雪が肌に触れて冷たさを感じさせる。
全員雲の下へと抜けてきた事を確認して、翼を羽ばたかせて移動を再開する。
また高度を落としながら東へ、南へと向きを変えながら進んでいき、しばらくすると雪に覆われた街が見えてくる。
サミュエル伯爵領だろう、街の中央には大きな邸が建っており、それ程大きな街ではないながらも密集した街並みは住民の多さを物語る。
雪が降っているのにもかかわらず雪山には光が点々と灯っており、とうやらゲレンデとなっているようだ。
耐火耐寒装備の和服に帽子を被っているが、雪が降っている事もあってとんでもない寒さだ。
いや、違うか、耐寒素材によって寒さは防ぐ事は出来ても雪の冷たさが直接肌に触れる事で寒さを感じさせているのだ。
今すぐにでもボードウェアが欲しい、が、お腹も空いた。
伯爵領に着陸してすぐに近場の店に入った。
店内の暖炉に近い席に着こうとしたが、一般の店に七人分のテーブル席などそうそうあるものではない。
四人と三人に分かれて席に着く。
千尋と蒼真の向かいにリゼとアイリが座り、隣のテーブル席には朱王とミリー、エレクトラが座る。
「ここではどんなお料理が出てくるのでしょう!」
と期待するエレクトラは、このような市民の店で食事をするのは初めてだ。
祭りの出店は別としてだが。
「好きなのを食べてね」と言う朱王にメニューを渡されて各々自分の食べたいメニューを注文する。
とりあえずこの土地で定番メニューとなっているものを全員分注文し、それぞれもう一品ずつ料理を頼んだ。
この地の定番メニューとして出されたのはロシアの伝統料理ボルシチに似た真っ赤な煮込みスープだった。
二つずつパンも添えられており、それだけでも量的には充分と思える料理。
メニュー表を見ると使われている肉はホワイトボアと言う魔獣の肉だそうだ。
食べてみると豚肉に似た食感に、サラリとした脂身が喉元を通る感覚が癖になりそう。
やはり色味が赤いだけで辛さはなく、真っ赤な野菜が特徴的な料理だ。
スープの酸味と野菜の甘みが絶妙で、冷えた体を温めながら胃袋をも満足させてくれる。
パンもふんわりとした焼きたてのパンで一緒に添えられたバターを塗って食べるとまた美味しい。
他に注文したボアステーキや腸詰め、サラダなどもまた美味しく、貴族領もいいなと思う一行。
今後暇があれば遊びに行くのもいいかもしれない。
いつも通りにデザートも注文し、焼いた果実にバターが入れられたものが出てきた。
焼きリンゴみたいなものだろう。
酸味のある果実が焼いた事によって甘みが引き出され、バターの濃厚さが酸味と甘みをまとめ上げてなんとも言えない美味しさだ。
最後に暖かい飲み物を注文して体をしっかりと温めてから店を出る事にした。
街の中央へと向かうと広場となっており、広場に面した位置に目的のスポーツ用品店? があった。
正確には武器屋兼防具屋だったが。
店内に入ると剣や槍などの武器と、その奥には防具類、そして一番奥にはスノーボードやスキーが置かれていた。
防具の並ぶ一角にはボードウェアも売られており、手袋や帽子、ゴーグルなども揃っている。
実はスキー自体はこの世界に元々あったのだが、スキーをした事がない朱王がこの領地に来てスノーボードを伝えたとの事。
スキーに金属のエッジを付け加えたり素材を変えたりと、この店の店主と話し合って現在のこのスキーやスノーボードが完成したそうだ。
スノーボードの板やビンディング、ブーツも地球のそれとほとんど違いがない。
ただ種類が少ないのはこの世界ではそれほどメジャーではない為か。
千尋と蒼真は自分達のボードとビンディングを選び、ブーツを自分の足に合うものを探している。
朱王のは店主が新作を用意してくれているとの事で選ぶ必要はない。
女性陣のボード選びを手伝いながら好みのものを選んでもらう。
長さや硬さなど滑りにも影響がある為しっかりと選ぶ。
それ程本格的にやるわけでもないのでビンディングは好みのものを選んでもらった。
ブーツ選びはやはり見た目以上に足に合ったものを選ぶ。
種類もほとんどないので一番しっくりくるものにしてもらった。
あとはボードウェアと手袋とゴーグルか。
手袋は主に白か黒しかないのでサイズだけで決めていいだろう。
ゴーグルはレンズの色と大きさのみ。
ボードウェアは好みで選ぼうか。
千尋は装備では着ることのない紫と白、黒のチェック柄にグレーのパンツのものを選択。
オシャレでちょっとかっこいいとこれを選んだ。
蒼真もあえて普段着ない色を選ぶ。
白地に胸元から下がピンクのウェアに、迷彩柄のパンツ。
蒼真らしくない色合いだが、着てみると意外と似合っているから不思議だ。
朱王は内側の赤い真っ黒なウェアに緋色のパンツ。
いかにも朱王らしいウェアを選択した。
リゼはゼブラ模様のウェアに真っ黒なパンツ。
おとなし目のデザインだがリゼなら何を着ても似合いそうだ。
ミリーは綺麗な水色のウェアに濃紺のパンツを選択。
皆んな普段とは違う色味を選んでいるので自分も負けじと寒色系。
アイリはまた蒼真に相談して選んだようだ。
黒いウェアに黄色のパンツ。
普段とは全く違う装いだが、紫髪のアイリに黄色は似合うのだろうか。
エレクトラのウェアはミリーや朱王と一緒に選んだ。
蒼真と同じデザインの色違い、黒字に白のウェアに白黒のチェック柄のパンツを選択。
その他小物も購入してボードウェアを着込んで帰る事にした。
全て手に持って移動するのは大変だし、ブーツを履いてスノーボードを装着。
ボードウェアの上から飛行装備を巻いて、脱いだ装備を袋に詰めて空へ向かって飛び立った。
雲を突き抜けてからの冷たさが、ボードウェアのおかげもあってそれ程感じることはない。
ボードウェアも耐寒装備で作られており、耐冷素材も使用されているとの事。
代わりに耐火性能はないのだが、この寒さに耐えるよりは全然いい。
雲を真上に向かって突き抜けて、さらに朱王邸に向かって羽ばたく。
雲を抜ければ寒さはあるものの、雪による冷たさはない。
伯爵領へ行くよりもやはり帰りの方が時間がかかり、およそ三十分かけて邸までたどり着いた。
装備類を邸内へと置いてきたら、早速飛行装備を試したい。
全員しっかりとビンディングで足を固定して、とりあえず雪のある崖下まではスカイダイビングしよう。
寒いからとずっと出て来なかった朱雀にもスノーボードとウェア、手袋とゴーグルなどを朱王がイメージから作り出し、黒字に赤のボーダーのウェアと黒のパンツ。
赤いブーツと火の鳥バージョンの朱雀模様のスノーボードを作り出した。
各々自分のタイミングで崖から飛び降り、スノーボードでの風の抵抗を感じながら落下して行く。
千尋や蒼真は余裕があり、スカイサーフィン気分で落下している。
それもまた楽しそうと試そうとするが、ミリーやリゼはボードの抵抗が強くて真っ逆さまのまま体勢を変えることができない。
次のダイブでまた試そうとすぐに諦めた。
雪の斜面に近付くと翼を広げて減速して着地。
スノーボードの滑り方を簡単に説明しつつ朱王から全員に滑り方の記憶を転送する。
この記憶を転送する行為は訓練の時間を大幅に減らす事ができるチートな方法だ。
それもそのはず、転送者の記憶、経験をそのまま相手に転送するのだ。
体を同じように使った事がないとはいえ、転送者の感覚がそのまま記憶にあるという事は、自分の体でその記憶をトレースするだけ。
戦闘の尋常ではない脳内処理とは違って、スノーボードなどの記憶であればすぐに滑れてしまうだろう。
脳内に感覚を植え付けていざ滑り出す。
やはり朱王の記憶とは自分の体の感覚は違うものの、動作自体はトレースするだけなのでバランスも取れるし曲がる事も問題なくできる。
新雪の上に自分のボードのラインを残しながらどんどん下へと滑って行く。
大きな段差や穴などは飛行装備を使って対処しながら山を下って行く。
初めてのスノーボード、雪を滑るという感覚に誰もが楽しそう。
経験のある千尋や蒼真でさえ新雪を滑る事は無かった為かとても楽しそうだ。
山の下り坂が無くなったところでまた飛行装備を使って朱王邸に戻り、再びスカイサーフィンからのスノーボードをひたすら楽しむ。
スノーボード一枚履くだけで二度美味しいこの遊びに皆んな満足だ。
エレクトラはこの国にいながらこれ程楽しい事があったなんてと、すごく感激していた。
いずれは国王にもやって欲しいとも言っているがどうなのだろう。
国王に向かって崖から飛び降りろ…… なかなか言えるものではないだろう。
この日は夕方までひたすらボードを楽しんだ。
翌日からもスノーボードを楽しみ、休憩にはよくスキー場のペンションなどで見られるピザを作ってもらって楽しんだ。
毎日違う味のピザは飽きる事なく食べられる。
新雪は千尋達が滑り続けたせいで圧雪され、ボゴボコとした滑走面となり始めたところでリゼの出番だ。
雪を操作して圧雪していき、平らな滑走面を作り出す。
滑りやすくなった雪の上を今度は朱王がまた変わった滑り方をし始める。
グラウンドトリックだ。
今後キッカーやレールをする前に簡単なトリックの練習にもなっていいだろうとの思いからだ。
朱王の滑り方を見て、再び脳内からグラトリを再現する為のデータを引き出す。
また自分の体と朱王の記憶での感覚の違いを感じつつも新たな技術を身に付けようと練習を始める。
トリッキーな滑り方をあっさりと再現する事が出来るが転ぶ事もある。
だが転んでも楽しいのがスノーボードの良さの一つだろう。
雪にまみれながら笑い合う女性陣。
千尋や蒼真は完璧なトリックを決めながら滑って行くのがまたかっこいい。
朱王はもちろん始めて滑るはずの朱雀も朱王と並ぶテクニック。
負けず嫌いのリゼやミリーにつられてアイリとエレクトラも一斉に滑り出す。
何度も転びながらも着実に技術を身に付けていくのだった。
映画の日の挨拶前に、朱王が編集したスノーボード映像を音楽と共に流してもらった。
サミュエル領のスキー場はお世辞にも人気があるとは言えない。
スキーの映像はないが、スキー場の良さを知ってもらおうとスノーボードの映像を見てもらい、サミュエル領のスキー場を紹介。
他にもノーリス王国にはスキー場を作れる雪山はあるだろう。
スキー場を増やして各国からの観光客も増やそうという狙いだ。
ノーリスのみならず、ゼスや他の国でも挨拶前にスノーボード映像を流してもらい、ノーリス王国の観光の楽しさを伝えられたと思う。
他国においては映画の日の出店の料理なども紹介し、貴族達が美味しそうに新たなグルメを楽しむ様も紹介。
スノーボードという新たな娯楽スポーツに、映画上映前から盛り上がりを見せていた。
0
お気に入りに追加
1,028
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした
鈴木竜一
ファンタジー
健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。
しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。
魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ!
【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】
※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。


クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる