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ノーリス王国編
136 見聞を広げよ
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翌朝、朱王邸にやって来た王宮の使者。
「国王様より皆様にお願いがあるとの事で連絡に参りました。本日九時に国王様の元へ来ては頂けないでしょうか」
普段から国王は忙しいだろうし、会いに行くのも別に問題はない。
しかし国王からのお願い?
聖剣はすでに改造したしなんだろう。
まだ予定もないし特に断る理由もないので了承した。
王宮、国王の執務室にて。
ヴィンセント、エレクトラ王女とワイアットもノーリス国王の側に立つ。
「実は頼みというのは娘の事だ。エレクトラも王宮の仕来りに沿って毎日稽古や習い事を続けていたんだが、ずっと王宮の中にいる為世界を知らんのだ。見聞を広げる為其方らに預けてみたいと思ってな」
「え? 王女様をうちのパーティーに入れるって事?」
「うむ。其方ら程の実力者であれば安心して任せられるというもの。頼めんか?」
「リーダー、どうする?」
「え? 私ですか!? エレクトラさんがパーティーに入ってくれるのは嬉しいですが王女様ですよ!? いいんですかね!?」
「王女としてではなく一人の冒険者、エレクトラとして同行させて欲しいのです」
「まぁ邸の部屋も空いてるから私は構わないけどね」
「私も別に構わないわよ」
「仲間になる以上は甘やかさないけどな」
「蒼真さん…… あまり厳しくしてはいけませんよ?」
とりあえずエレクトラのパーティー入りは問題ないようだ。
嬉しそうにミリーの元へ駆け寄るエレクトラだった。
エレクトラのパーティー入りが確定し、続いてヴィンセントからも話があるようだ。
「朱王殿。聖騎士であるワイアットに関しても私から提案があるのだ。聖騎士でありながら刀を使うこの者に私の剣術を仕込みたいのだが構わぬか?」
「えーと、それは聖騎士ではなくなるという事ですか?」
「聖騎士ではなくなるが、立場上聖騎士と同等以上の権利は与えるというのではどうだろう。まだ荒々しいワイアットの剣術だが光るものがある。聖騎士と訓練するよりも私の元で鍛えればその才能も開花するかもしれん」
「ワイアットはどうしたい?」
「是非ともヴィンセント様の元で稽古を付けて頂きたいと思っております!」
「じゃあヴィンセントさん。ワイアットをよろしくお願いします」
すでにワイアットにも新しい装備が届いており、ヴィンセント同様サムライスタイルとなっている。
ヴィンセントと並んで立つワイアットは見たまんまに弟子のように見えるが。
ワイアットがヴィンセントの元で修行するとなれば、相当な実力者となる事が予想される。
今のうちに妖刀を与えておくのも悪くないだろう。
千尋達が冒険に出ている間にでも作ろうと考える朱王だった。
あと、抜けた聖騎士の一人は誰が埋めるのかは知らないが、今後決まり次第武器の強化をする事にしよう。
王宮を出ようとしたが、エレクトラの荷物が多過ぎた為最小限の荷物に留めてもらった。
大きな部屋を一室埋め尽くすほどの荷物を使用人達が順に運び出そうとし、それでは冒険できないからとほぼ全ての荷物を置いて行ってもらう事にした。
僅かな着替えと下着類。
あとは装備を持っていればそれだけで充分だ。
着の身着のままに来てもらう事にした。
急な出来事だった為着替えを置きに朱王邸へと戻り、ムルシエに王女がパーティー入りをした事を告げると驚かれた。
今後は王女の世話をしなくてはならなくなったムルシエだが、他のメンバーと同じく一人の冒険者として、一人の客人として接してもらいたい。
朱王に説明されてムルシエも納得してくれたが、失礼があっては国王に顔向けができないのも事実。
普段通りでも失礼に当たる事はないとは思うが、いつも以上に気を使うようになったムルシエだった。
「皆さん。冒険者のエレクトラです。よろしくお願いしますね」
「「よろしくー」」
と挨拶をしつつアイリから提案が。
「蒼真さん。以前のようにエレクトラさんにも勉強を教えてはくれませんか? 私も復習しながらまた新しく知識をつけたいんです」
「勉強ですか? わたくしも識字や古代文字、歴史に数理など一通り学んでおりますが……」
「いや、オレが教えるのは異世界での科学的な知識だ。精霊や魔法陣なしでも全ての魔法が使えるようになるからな」
「なるほど! 是非とも教えて頂きたいです!」
本当は遊び倒す予定だったのだが、蒼真もアイリも勉強は好きだ。
そしてリゼも蒼真の授業は受けたい。
この日はとりあえず基礎知識の勉強として蒼真先生が教鞭をとる事にした。
勉強したくない千尋とミリー。
朱王も勉強は必要ない。
朱王とミリーはワイアットの分の刀作りをする事にし、千尋はムルシエに頼んでリゼの鞘の改造を始めた。
朱王とミリーの刀作り。
ミスリル板から魔力の溜め込める素材を選び出し、ミスリル工具で一気に加工を始める。
刀身を切り出して整形し、刃付けと鏡面仕上げまでを午前中に終わらせた。
すでに刀作りも三振り目ともなれば慣れたもので、刀身だけなら半日もあれば完成するようだ。
続いて拵え作りだが、今回も全て魔力の溜め込める部分で作る。
刀身だけではやはり魔力量が低く、拵え込みで魔力量3,000ガルドを狙って作る。
目貫や鍔には獅子の模様を装飾し、柄巻はミスリル帯を黒と緑色で着色ブラストして巻く。
鞘も魔力を溜め込めるミスリルで作る。
薄く切り出したミスリル板に、刀の収まる部分を彫り込んで魔力の流れない素材を貼り付ける。
二枚対になるよう作って貼り合わせ、鞘の形状に削って整形し、栗型と鐺を作って接着して鞘としては完成だ。
鏡面仕上げにして黒と緑のラップ塗装ならぬラップ着色。
鞘口と鞘尻に金の装飾パーツを接着して、黒い下緒を取り付けて派手さはないが緑と金の美しい刀が完成した。
千尋はムルシエに手伝ってもらい、リゼの鞘を改造する。
ミスリル製の鞘を作る事も可能だが、剣より重い巨大な鞘などはっきり言って要らないだろう。
鞘の持ち手から石突部分まで繋がるようにミスリルの魔力が溜め込める素材を配し、リゼのルシファーでも抜刀ができるように改造する。
必要魔力量は1,500ガルドと大きい為、鞘はどうしても重くなる。
石突側にはミスリルを少なめにし、腰の鞘口付近、手の添える部分に多くのミスリルを配した。
せっかくのミスリルパーツとなるので装飾を加え、元々の黒い鞘にピンク色の鏡面仕上げの装飾パーツが追加される形となった。
その分重さは増えたものの、神速の剣尖を放てるようになったルシファーは尋常ならざる性能を発揮してくれるだろう。
作り込みには時間が掛かったものの、刀を作り終えた朱王が仕上げを手伝ってくれたおかげもあってその日のうちに完成した。
蒼真先生の授業では、まず基本的な火についての勉強だった。
以前も蒼真から習って覚えたリゼやアイリだったが、復習する事でまた新たな発見や魔力の使い方の工夫などがあって楽しそう。
エレクトラも蒼真の授業はこれまで知らなかった事ばかりの為、その言葉一つ一つに驚き、学べる事の楽しさを噛み締めていた。
思い切って父である国王に進言して良かったと心から思えるエレクトラだった。
一度は反対されたものの、ヴィンセントが自分も世界を知らない、エレクトラには世界を見て来てほしいという後押しもあって国王も折れてくれた。
たった一日でさえ得られるものがあったのだ。
今後しばらくの間彼等と時を共にすれば、これまでにない程に自分を高めてくれるだろう。
そして何よりも王宮には存在しなかった仲間ができた。
エレクトラにとっては仲間の存在が何よりも嬉しかった。
これまで自分を敬う使用人達、貴族達に囲まれ、対等な立場の人間などいなかったエレクトラは友人という存在に憧れていた。
ミリーと友人になれた事が嬉しく、毎日の通話が楽しくて仕方がない程だ。
そして友人であるミリーのパーティーに入った今、リゼやアイリ、蒼真も良くしてくれる。
今まで生きてきた中でも一番楽しいと思える時間を過ごしているエレクトラだった。
大浴場での入浴もエレクトラは驚いた。
王宮にも大浴場はあるが、こんな全面ガラス張りの絶景を楽しめる大浴場など想像もつかなかった。
ただ王宮のように使用人が体を洗ってくれる事はないが、魔法の洗剤で体を洗うとまた驚いた。
全身から全ての汚れが落ちたのではないかと思えるような感覚と、艶々の潤いある肌へと変わる瞬間を味わえたのだ。
元々綺麗だった肌でさえ感じるこの洗われた感覚と潤った感覚。
一度この洗い心地を感じてしまうと他の洗剤では物足りなくなってしまうだろう。
湯船に浸かりながら夕焼け空を見つめながら酒を飲み、普段感じる事のない贅沢を堪能する。
王宮では風呂で酒を飲んだりしないのもあるが。
湯船に浸かっていると、ルシェ達幹部も仕事から帰って風呂に入ってきたのだが、エレクトラ王女を見て叫ぶ程驚いていた。
まぁ王女が来てたら驚きもするだろう。
事情を説明してお互い挨拶しながら打ち解けてもらった。
ただよく考えるとすごい事だ。
王女であるエレクトラと、元は奴隷であるルシェ達幹部が同じ湯船に浸かっているのだ。
奴隷制度が撤廃されているとはいえ雲の上の存在である王女が目の前にいる。
そう考えると目が回りそうになる幹部達だった。
風呂上がりには腰に手を当てて、コーヒー牛乳を一気飲み。
もう毎日の日課なので、女性陣は風呂で飲む酒よりも気に入っている。
お風呂を上がったら千尋や蒼真、朱王によるブロー魔法。
魔法のヘアオイルが七人の髪を甘くてふわふわサラサラに仕上げていく。
エレクトラの髪はこの日朱王がブローした。
千尋と蒼真でエレクトラのイメージに合ったヘアオイルを選んで朱王がブロー魔法。
普段のストレートヘアではなく、毛先にカールを持たせたふんわりエアリーな髪型に仕上げた。
そして女性陣に合わせて貴族用ドロップには煌めきの魔石を追加。
ピンク色のふんわりエアリーヘアに獣耳。
煌めき効果がエレクトラの美しさをさらに際立てる。
「完っっっ璧ですね!」
ミリーも大絶賛のキラキラエレクトラが完成した。
続いて夕食の時間だ。
エレクトラを交えての初の夕食に乾杯し、メルヴィンの新作料理に舌鼓を打つ。
今日からエレクトラ王女が泊まる事もあって、メルヴィンもノーリス王国の料理は作らず、朱王の魔石からインスピレーションを得て作った新作料理を出してきた。
何料理とも言い難い料理の数々だが、盛り付けも美しく、どこか懐かしい味付けの料理がとても美味しい。
デザートには大量に買ってあるゼスのお土産をみんなで食べた。
そしていつもの映画鑑賞会。
蒼真と朱雀でポップコーン作りだが、今夜の味付けはコンソメ風味。
とても美味しそうな香りが立ち込め、次々と容器に詰め込んでいく。
ジュース作りの千尋とリゼ、アイリ。
面白そうだとエレクトラもジュース作りに参加していた。
朱王とミリーはちょっとしたお菓子を全員分小分けにする。
ポップコーンとジュースだけでは物足りないと思い、先日から付け加えるようにしている。
エレクトラも王宮で映画を観ているはずだが、朱王邸の映画部屋のモニターは王宮よりも一回り大きい。
ミリーの隣の席に座って映画を楽しんだ。
映画を観ながらもポップコーンを一度口にすると止まらない。
無意識で口に運びながら映画を観終わるまでには全部食べ尽くしていた。
少し気恥ずかしさを覚えるエレクトラだったが、ミリーも同じくポップコーンを完食。
楽しそうに笑い合う二人だった。
「国王様より皆様にお願いがあるとの事で連絡に参りました。本日九時に国王様の元へ来ては頂けないでしょうか」
普段から国王は忙しいだろうし、会いに行くのも別に問題はない。
しかし国王からのお願い?
聖剣はすでに改造したしなんだろう。
まだ予定もないし特に断る理由もないので了承した。
王宮、国王の執務室にて。
ヴィンセント、エレクトラ王女とワイアットもノーリス国王の側に立つ。
「実は頼みというのは娘の事だ。エレクトラも王宮の仕来りに沿って毎日稽古や習い事を続けていたんだが、ずっと王宮の中にいる為世界を知らんのだ。見聞を広げる為其方らに預けてみたいと思ってな」
「え? 王女様をうちのパーティーに入れるって事?」
「うむ。其方ら程の実力者であれば安心して任せられるというもの。頼めんか?」
「リーダー、どうする?」
「え? 私ですか!? エレクトラさんがパーティーに入ってくれるのは嬉しいですが王女様ですよ!? いいんですかね!?」
「王女としてではなく一人の冒険者、エレクトラとして同行させて欲しいのです」
「まぁ邸の部屋も空いてるから私は構わないけどね」
「私も別に構わないわよ」
「仲間になる以上は甘やかさないけどな」
「蒼真さん…… あまり厳しくしてはいけませんよ?」
とりあえずエレクトラのパーティー入りは問題ないようだ。
嬉しそうにミリーの元へ駆け寄るエレクトラだった。
エレクトラのパーティー入りが確定し、続いてヴィンセントからも話があるようだ。
「朱王殿。聖騎士であるワイアットに関しても私から提案があるのだ。聖騎士でありながら刀を使うこの者に私の剣術を仕込みたいのだが構わぬか?」
「えーと、それは聖騎士ではなくなるという事ですか?」
「聖騎士ではなくなるが、立場上聖騎士と同等以上の権利は与えるというのではどうだろう。まだ荒々しいワイアットの剣術だが光るものがある。聖騎士と訓練するよりも私の元で鍛えればその才能も開花するかもしれん」
「ワイアットはどうしたい?」
「是非ともヴィンセント様の元で稽古を付けて頂きたいと思っております!」
「じゃあヴィンセントさん。ワイアットをよろしくお願いします」
すでにワイアットにも新しい装備が届いており、ヴィンセント同様サムライスタイルとなっている。
ヴィンセントと並んで立つワイアットは見たまんまに弟子のように見えるが。
ワイアットがヴィンセントの元で修行するとなれば、相当な実力者となる事が予想される。
今のうちに妖刀を与えておくのも悪くないだろう。
千尋達が冒険に出ている間にでも作ろうと考える朱王だった。
あと、抜けた聖騎士の一人は誰が埋めるのかは知らないが、今後決まり次第武器の強化をする事にしよう。
王宮を出ようとしたが、エレクトラの荷物が多過ぎた為最小限の荷物に留めてもらった。
大きな部屋を一室埋め尽くすほどの荷物を使用人達が順に運び出そうとし、それでは冒険できないからとほぼ全ての荷物を置いて行ってもらう事にした。
僅かな着替えと下着類。
あとは装備を持っていればそれだけで充分だ。
着の身着のままに来てもらう事にした。
急な出来事だった為着替えを置きに朱王邸へと戻り、ムルシエに王女がパーティー入りをした事を告げると驚かれた。
今後は王女の世話をしなくてはならなくなったムルシエだが、他のメンバーと同じく一人の冒険者として、一人の客人として接してもらいたい。
朱王に説明されてムルシエも納得してくれたが、失礼があっては国王に顔向けができないのも事実。
普段通りでも失礼に当たる事はないとは思うが、いつも以上に気を使うようになったムルシエだった。
「皆さん。冒険者のエレクトラです。よろしくお願いしますね」
「「よろしくー」」
と挨拶をしつつアイリから提案が。
「蒼真さん。以前のようにエレクトラさんにも勉強を教えてはくれませんか? 私も復習しながらまた新しく知識をつけたいんです」
「勉強ですか? わたくしも識字や古代文字、歴史に数理など一通り学んでおりますが……」
「いや、オレが教えるのは異世界での科学的な知識だ。精霊や魔法陣なしでも全ての魔法が使えるようになるからな」
「なるほど! 是非とも教えて頂きたいです!」
本当は遊び倒す予定だったのだが、蒼真もアイリも勉強は好きだ。
そしてリゼも蒼真の授業は受けたい。
この日はとりあえず基礎知識の勉強として蒼真先生が教鞭をとる事にした。
勉強したくない千尋とミリー。
朱王も勉強は必要ない。
朱王とミリーはワイアットの分の刀作りをする事にし、千尋はムルシエに頼んでリゼの鞘の改造を始めた。
朱王とミリーの刀作り。
ミスリル板から魔力の溜め込める素材を選び出し、ミスリル工具で一気に加工を始める。
刀身を切り出して整形し、刃付けと鏡面仕上げまでを午前中に終わらせた。
すでに刀作りも三振り目ともなれば慣れたもので、刀身だけなら半日もあれば完成するようだ。
続いて拵え作りだが、今回も全て魔力の溜め込める部分で作る。
刀身だけではやはり魔力量が低く、拵え込みで魔力量3,000ガルドを狙って作る。
目貫や鍔には獅子の模様を装飾し、柄巻はミスリル帯を黒と緑色で着色ブラストして巻く。
鞘も魔力を溜め込めるミスリルで作る。
薄く切り出したミスリル板に、刀の収まる部分を彫り込んで魔力の流れない素材を貼り付ける。
二枚対になるよう作って貼り合わせ、鞘の形状に削って整形し、栗型と鐺を作って接着して鞘としては完成だ。
鏡面仕上げにして黒と緑のラップ塗装ならぬラップ着色。
鞘口と鞘尻に金の装飾パーツを接着して、黒い下緒を取り付けて派手さはないが緑と金の美しい刀が完成した。
千尋はムルシエに手伝ってもらい、リゼの鞘を改造する。
ミスリル製の鞘を作る事も可能だが、剣より重い巨大な鞘などはっきり言って要らないだろう。
鞘の持ち手から石突部分まで繋がるようにミスリルの魔力が溜め込める素材を配し、リゼのルシファーでも抜刀ができるように改造する。
必要魔力量は1,500ガルドと大きい為、鞘はどうしても重くなる。
石突側にはミスリルを少なめにし、腰の鞘口付近、手の添える部分に多くのミスリルを配した。
せっかくのミスリルパーツとなるので装飾を加え、元々の黒い鞘にピンク色の鏡面仕上げの装飾パーツが追加される形となった。
その分重さは増えたものの、神速の剣尖を放てるようになったルシファーは尋常ならざる性能を発揮してくれるだろう。
作り込みには時間が掛かったものの、刀を作り終えた朱王が仕上げを手伝ってくれたおかげもあってその日のうちに完成した。
蒼真先生の授業では、まず基本的な火についての勉強だった。
以前も蒼真から習って覚えたリゼやアイリだったが、復習する事でまた新たな発見や魔力の使い方の工夫などがあって楽しそう。
エレクトラも蒼真の授業はこれまで知らなかった事ばかりの為、その言葉一つ一つに驚き、学べる事の楽しさを噛み締めていた。
思い切って父である国王に進言して良かったと心から思えるエレクトラだった。
一度は反対されたものの、ヴィンセントが自分も世界を知らない、エレクトラには世界を見て来てほしいという後押しもあって国王も折れてくれた。
たった一日でさえ得られるものがあったのだ。
今後しばらくの間彼等と時を共にすれば、これまでにない程に自分を高めてくれるだろう。
そして何よりも王宮には存在しなかった仲間ができた。
エレクトラにとっては仲間の存在が何よりも嬉しかった。
これまで自分を敬う使用人達、貴族達に囲まれ、対等な立場の人間などいなかったエレクトラは友人という存在に憧れていた。
ミリーと友人になれた事が嬉しく、毎日の通話が楽しくて仕方がない程だ。
そして友人であるミリーのパーティーに入った今、リゼやアイリ、蒼真も良くしてくれる。
今まで生きてきた中でも一番楽しいと思える時間を過ごしているエレクトラだった。
大浴場での入浴もエレクトラは驚いた。
王宮にも大浴場はあるが、こんな全面ガラス張りの絶景を楽しめる大浴場など想像もつかなかった。
ただ王宮のように使用人が体を洗ってくれる事はないが、魔法の洗剤で体を洗うとまた驚いた。
全身から全ての汚れが落ちたのではないかと思えるような感覚と、艶々の潤いある肌へと変わる瞬間を味わえたのだ。
元々綺麗だった肌でさえ感じるこの洗われた感覚と潤った感覚。
一度この洗い心地を感じてしまうと他の洗剤では物足りなくなってしまうだろう。
湯船に浸かりながら夕焼け空を見つめながら酒を飲み、普段感じる事のない贅沢を堪能する。
王宮では風呂で酒を飲んだりしないのもあるが。
湯船に浸かっていると、ルシェ達幹部も仕事から帰って風呂に入ってきたのだが、エレクトラ王女を見て叫ぶ程驚いていた。
まぁ王女が来てたら驚きもするだろう。
事情を説明してお互い挨拶しながら打ち解けてもらった。
ただよく考えるとすごい事だ。
王女であるエレクトラと、元は奴隷であるルシェ達幹部が同じ湯船に浸かっているのだ。
奴隷制度が撤廃されているとはいえ雲の上の存在である王女が目の前にいる。
そう考えると目が回りそうになる幹部達だった。
風呂上がりには腰に手を当てて、コーヒー牛乳を一気飲み。
もう毎日の日課なので、女性陣は風呂で飲む酒よりも気に入っている。
お風呂を上がったら千尋や蒼真、朱王によるブロー魔法。
魔法のヘアオイルが七人の髪を甘くてふわふわサラサラに仕上げていく。
エレクトラの髪はこの日朱王がブローした。
千尋と蒼真でエレクトラのイメージに合ったヘアオイルを選んで朱王がブロー魔法。
普段のストレートヘアではなく、毛先にカールを持たせたふんわりエアリーな髪型に仕上げた。
そして女性陣に合わせて貴族用ドロップには煌めきの魔石を追加。
ピンク色のふんわりエアリーヘアに獣耳。
煌めき効果がエレクトラの美しさをさらに際立てる。
「完っっっ璧ですね!」
ミリーも大絶賛のキラキラエレクトラが完成した。
続いて夕食の時間だ。
エレクトラを交えての初の夕食に乾杯し、メルヴィンの新作料理に舌鼓を打つ。
今日からエレクトラ王女が泊まる事もあって、メルヴィンもノーリス王国の料理は作らず、朱王の魔石からインスピレーションを得て作った新作料理を出してきた。
何料理とも言い難い料理の数々だが、盛り付けも美しく、どこか懐かしい味付けの料理がとても美味しい。
デザートには大量に買ってあるゼスのお土産をみんなで食べた。
そしていつもの映画鑑賞会。
蒼真と朱雀でポップコーン作りだが、今夜の味付けはコンソメ風味。
とても美味しそうな香りが立ち込め、次々と容器に詰め込んでいく。
ジュース作りの千尋とリゼ、アイリ。
面白そうだとエレクトラもジュース作りに参加していた。
朱王とミリーはちょっとしたお菓子を全員分小分けにする。
ポップコーンとジュースだけでは物足りないと思い、先日から付け加えるようにしている。
エレクトラも王宮で映画を観ているはずだが、朱王邸の映画部屋のモニターは王宮よりも一回り大きい。
ミリーの隣の席に座って映画を楽しんだ。
映画を観ながらもポップコーンを一度口にすると止まらない。
無意識で口に運びながら映画を観終わるまでには全部食べ尽くしていた。
少し気恥ずかしさを覚えるエレクトラだったが、ミリーも同じくポップコーンを完食。
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