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ゼス王国編
108 アルビノ種
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防具屋へと向かったリゼ達五人。
貴族街の防具屋はやはり品揃え、品質ともに市民街などとは一線を画す。
リゼやミリーの防具も質が悪いわけではないが、やはり最大の王国の貴族街にある防具屋の装備には見劣りしてしまう。
新調したいなとも思うがここはぐっと我慢する。
「ではまずガネットさんのから決めましょうか! 皆さんガネットさんに似合いそうなのを選んで持ち寄りましょう!」
以前アイリの装備を決めた時のように、全員でガネットの装備をコーディネートするようだ。
ガネットは赤と黒を基調とした…… というか赤黒しかないのだが、それぞれ選んで集まった。
全員分を集めて決まったのが黒と赤のノースリーブタイプのミスリルウェアに、肩の部分に黒いパフスリーブの付いたものを選択。
黒い部分には白い紐が交差するように付いており、赤黒のミスリルウォーマーも付属する。
下半身は真っ黒なショートパンツ、黒のニーソックスに真紅のブーツを履く。
全体的に赤と黒だけだが、ミスリルウェアに白い紐が入る事でいいアクセントになっている。
飛行装備との相性も良いが、ここまでくると槍も色味を調整したいと思うのはわがままだろうか。
続いてデイジーの装備も全員で選ぶ。
黄色と白を基調とした装備はあまりなく、種類が少ないながらもなんとかなった。
ガネット同様ミスリルウェアを選択し、白と黄色のノースリーブに紐は橙色。
白いパフスリーブと、白と黄色のミスリルウォーマーが付属する。
このミスリルウェアはシリーズものらしく各色揃っていた為、紐の色を変更する事でオリジナリティを出せるようだ。
下は橙色のスカートでフリル付き、白いニーソックスをも購入。
真っ白なブーツを購入し、靴紐を橙色に交換する事で全体のバランスをとった。
この後朱王邸に帰ってから千尋に「プリ◯ュ◯みたいだね……」と言われたが意味はわからない。
ガネットとデイジーは購入した装備を着て店を出た。
すでに時間も十八時に差し掛かっている為、寄り道をせずに朱王邸、改め朱王城へと歩き出す。
飛行装備があるが、初めて見る街並みを歩きながら帰る事にした。
朱王城の門を通ったところで背後から声をかけられる。
若そうな女性の声。
「こんにちは。そしてはじめまして。私はクリムゾン暗部のハクアと申します。どうぞお見知り置きを」
振り返るとそこには病的な程に色白な肌に、黒髪黒目の少女が立っていた。
肌の白さに黒髪が不自然に映り、朱王の装備と似た真っ黒な服装をしている。
年の頃は十五~十六歳といったところか。
その表情からは感情が読み取れない。
リゼとミリーは挨拶を返しつつハクアを見つめる。
「貴女がミリー様ですか…… お美しい方ですね。朱王様が決めたお方ですので反対する気はありませんでしたが…… やはり本人を目の前にするとどうしてミリー様なのかと確かめたくなります。ご無礼を承知でお願いします。私と戦っては頂けないでしょうか」
「むっ…… いいでしょう、相手になりますよ!」
ミリーはミルニルを握りしめてハクアの出方を見る。
「ありがとうございます」
ハクアは魔力を練り上げて肉体を強化。
地属性強化のみで挑んでくるようだ。
手には武器を持たず、袖の長い服を着ている事から暗器使い、または両脚の金属製の防具からの蹴り技が主体なのか。
一瞬で間合いを詰めるハクアからの右回し蹴りをバックステップで回避。
続く頭部目掛けた左の回転蹴りをミルニルで受ける。
受けた一撃は軽くはない。
魔法攻撃を受けたかのような衝撃が手に残る。
ミルニルを左に傾ける事で衝撃を受け流し、着地したハクアは屈んだまま足払い。
足元の防御に慣れないミリーは脚を刈られて宙に浮かぶが、回転して体制を立て直そうと左手を地面に付いたところで腹部への蹴り。
それをミルニルで防いで後方に回転しながら着地する。
着地の直後にハクアの追撃がミリーを襲う。
左右の蹴りの連撃を回避と防御で全て捌くが、反撃出来ずに防戦のミリー。
「むぅ……やりづらいですね」
強化と操作のみだというのに尋常ではない速度で攻撃を繰り出すハクア。
「本気を…… 出してください!」
右の強烈な蹴りを放つハクアと、ミルニルで受け止めるミリー。
「ハクアさんは武器を使ってないですからね。本気と言われても躊躇ってしまいますよ?」
「私も武器を使います!」
と言って取り出したのは小さな短刀。
鋼鉄製の普通の冒険者が持つようなものだ。
朱王のクリムゾン部隊の多くがミスリル武器やキメラ武器を使うというのに、クリムゾン暗部のハクアが鋼鉄製武器。
違和感はある。
しかし武器を持って挑んでくるというのであればその気持ちに応えてあげるべきかもしれない。
魔力を放出するミリー。
七色の光のカーテンがミリーを覆う。
「私の魔法は爆裂魔法です。ハクアさん、覚悟はいいですか?」
ゆらりと歩み寄るミリーにハクアは一瞬で間合いを詰めて右蹴りを放つ。
しかしハクアの蹴りはミリーには届かない。
ミリーの範囲魔力が小規模な爆発を起こしてハクアの蹴りを防ぐ。
着地の直後に距離を取り、再びミリーへと向かうハクアだが攻撃が届かない。
蹴りも短刀での攻撃も全て爆裂魔法に阻まれる。
何度挑もうともミリーに届かない攻撃に、ハクアも攻め手がない。
「私は少し前に気付いたんですよ。自分が怪我をすると回復の能力が低下する事に。私は皆さんを癒さないといけませんからね、怪我をするわけにはいかないんですよ」
「でも防御だけでは私を倒せません……」
再びミリーに接近するハクア。
右蹴りに合わせてミルニルを打ち付けると同時に爆破し、弾き飛ばされるハクアに追撃するミリー。
短刀で受け止めるも弾かれ、蹴りで受けるも全て弾き飛ばされる。
勝ち目がない。
爆破の衝撃で痺れる体を強引に起こすハクア。
歩み寄るミリーはハクアが見てきた誰よりも強い存在として映る。
「なん、ですか…… その手は……」
ハクアを見て驚愕の表情を浮かべるミリー。
その視線は自分の右手へと向けられている事に気付き、ハクアはスッと袖で右手を隠す。
「これは…… 奴隷だった頃に受けた傷です。お見苦しいものをお見せして申し訳ありません」
ハクアの右手は中指から小指にかけて切り落とされたかのように欠損していた。
「どうしてそんな傷を負ったんですか!?」
ミリーは問い詰めようとハクアの肩を掴む。
「私は…… 朱王様のおかげでこのように黒髪にしていますが、実は不吉の象徴と呼ばれる【アルビノ種】です。当時は迫害を受けても仕方なかったんです」
「奴隷だから…… ? アルビノ種だから…… ? それでなんで迫害を受けなくちゃいけないんですか!?」
「この国では数年前まではスラムに住む者達というのは、人として認められてはいませんでした。スラムに住んでいる者の多くは仕事もなく、盗みや犯罪に手を染める事で金銭などを得ていたので、罪人は人として認めないというのが当たり前の考えだったのでしょう。そして奴隷は十五歳を過ぎれば奴隷ではなくなります。奴隷から解放されても仕事がない為、行き着く先はスラム街。いずれは犯罪を犯してしまうという認識から、奴隷も人間として認められるものではなく、壊れたら買い換える、物や道具と同じ扱いだったというわけです」
「でも同じ人間じゃないですか!! 罪を犯す者が裁かれるのはわかります! でも裁かれこそすれ人間である事に変わりはありません! それに奴隷は罪を犯したわけではないじゃないですか! その奴隷を人間ではないと傷付けるその者達こそ罪人です!!」
感情が高ぶるミリーの体から魔力が放出されている。
七色の美しい魔力だというのに、怒りの為かビリビリとした魔力だ。
「ミ、ミリー様!? もう傷は塞がっていますし大丈夫ですから! 不快な思いをさせて申し訳ありません。なるべく皆様の前には姿を現しませんのでお怒りをお沈め下さい」
「何を言ってるんですか? ハクアさんを不快になんて思いませんよ。私が怒っているのはそこではありません! 少し朱王と話しをしてきます」
ミリーは朱王の元へと歩いて行く。
「わ、私はなんていう事を…… ミリー様を怒らせてしまいました……」
項垂れるハクアにガネットとデイジー、アイリが寄り添う。
クリムゾンは組織でありながら家族。誰もが家族の事を心配し合うのであろう。
「ハクア。ミリーは朱王さんを怒りに行ったわけじゃないわよ? ああ見えてミリーは朱王さんが抱えているものを全て受け入れる覚悟でこの旅をしているの。だから皆んなの為に自分がどうあるべきか考えながら行動してると思うわよ? まぁ…… 多少ボケてるところがあるけどね……」
「ミリーさん行ってしまいましたけど朱王さんの居場所はわかるんでしょうか?」
「少し心配だし私達も行くわよ」
リゼとアイリはハクアを連れて朱王の元へと向かう。
「朱王! ハクアさんのあの手はどういう事ですか!! …… むぅ、いませんねぇ。どこに行ったんでしょう……」
怒りのままに朱王の部屋へと怒鳴り込んだミリーだが、朱王は部屋にはいない。
朱王の部屋を出て廊下を歩いているとボルドロフとすれ違う。
「ボルドロフさん! 朱王はどこですか!?」
「はて? 朱王様は作業部屋ではないでしょうか。リルフォンで聞いてみてはいかがでしょう」
そう、最初から通話して向かえばよかったのだが。
「ぐぅ…… そ、そうですね。連絡してみます」
朱王に連絡を取るとやはり作業部屋にいるようだ。
足早に作業部屋へと向かう。
「朱王! ハクアさんのあの手はどういう事ですか!!」
作業部屋へと怒鳴り込んだミリー。
すでに作業部屋へと着いていたリゼ達に驚きながらも朱王に歩み寄る。
リゼとアイリが呆れ顔なのはとりあえず無視する。
「朱王! 答えてください!」
「そうだね…… 以前、この国の腐った貴族によってハクアが連れ去られてしまってね…… 私の無力さが彼女を傷付ける結果となってしまったんだ。あの時もっと早く気付いていればと今でも思い出す度後悔するよ」
「朱王様のせいではありません! 捕まってしまった私のせいなんです!!」
「朱王。それじゃあわからないんですよ。その時の記憶を見せてください」
朱王に手を差し出すミリー。
「ミリー。その記憶は朱王の感情が強く込められているから見ると痛みがあるぞー」
朱雀が出て来て忠告する。
話しの流れから嫌な予感を感じとって出てきたようだ。
「構いません。見せてください」
朱王は魔石を取り出してその時の記憶を保存する。
できる事なら形に残すような事はしたくない記憶なのだが。
貴族街の防具屋はやはり品揃え、品質ともに市民街などとは一線を画す。
リゼやミリーの防具も質が悪いわけではないが、やはり最大の王国の貴族街にある防具屋の装備には見劣りしてしまう。
新調したいなとも思うがここはぐっと我慢する。
「ではまずガネットさんのから決めましょうか! 皆さんガネットさんに似合いそうなのを選んで持ち寄りましょう!」
以前アイリの装備を決めた時のように、全員でガネットの装備をコーディネートするようだ。
ガネットは赤と黒を基調とした…… というか赤黒しかないのだが、それぞれ選んで集まった。
全員分を集めて決まったのが黒と赤のノースリーブタイプのミスリルウェアに、肩の部分に黒いパフスリーブの付いたものを選択。
黒い部分には白い紐が交差するように付いており、赤黒のミスリルウォーマーも付属する。
下半身は真っ黒なショートパンツ、黒のニーソックスに真紅のブーツを履く。
全体的に赤と黒だけだが、ミスリルウェアに白い紐が入る事でいいアクセントになっている。
飛行装備との相性も良いが、ここまでくると槍も色味を調整したいと思うのはわがままだろうか。
続いてデイジーの装備も全員で選ぶ。
黄色と白を基調とした装備はあまりなく、種類が少ないながらもなんとかなった。
ガネット同様ミスリルウェアを選択し、白と黄色のノースリーブに紐は橙色。
白いパフスリーブと、白と黄色のミスリルウォーマーが付属する。
このミスリルウェアはシリーズものらしく各色揃っていた為、紐の色を変更する事でオリジナリティを出せるようだ。
下は橙色のスカートでフリル付き、白いニーソックスをも購入。
真っ白なブーツを購入し、靴紐を橙色に交換する事で全体のバランスをとった。
この後朱王邸に帰ってから千尋に「プリ◯ュ◯みたいだね……」と言われたが意味はわからない。
ガネットとデイジーは購入した装備を着て店を出た。
すでに時間も十八時に差し掛かっている為、寄り道をせずに朱王邸、改め朱王城へと歩き出す。
飛行装備があるが、初めて見る街並みを歩きながら帰る事にした。
朱王城の門を通ったところで背後から声をかけられる。
若そうな女性の声。
「こんにちは。そしてはじめまして。私はクリムゾン暗部のハクアと申します。どうぞお見知り置きを」
振り返るとそこには病的な程に色白な肌に、黒髪黒目の少女が立っていた。
肌の白さに黒髪が不自然に映り、朱王の装備と似た真っ黒な服装をしている。
年の頃は十五~十六歳といったところか。
その表情からは感情が読み取れない。
リゼとミリーは挨拶を返しつつハクアを見つめる。
「貴女がミリー様ですか…… お美しい方ですね。朱王様が決めたお方ですので反対する気はありませんでしたが…… やはり本人を目の前にするとどうしてミリー様なのかと確かめたくなります。ご無礼を承知でお願いします。私と戦っては頂けないでしょうか」
「むっ…… いいでしょう、相手になりますよ!」
ミリーはミルニルを握りしめてハクアの出方を見る。
「ありがとうございます」
ハクアは魔力を練り上げて肉体を強化。
地属性強化のみで挑んでくるようだ。
手には武器を持たず、袖の長い服を着ている事から暗器使い、または両脚の金属製の防具からの蹴り技が主体なのか。
一瞬で間合いを詰めるハクアからの右回し蹴りをバックステップで回避。
続く頭部目掛けた左の回転蹴りをミルニルで受ける。
受けた一撃は軽くはない。
魔法攻撃を受けたかのような衝撃が手に残る。
ミルニルを左に傾ける事で衝撃を受け流し、着地したハクアは屈んだまま足払い。
足元の防御に慣れないミリーは脚を刈られて宙に浮かぶが、回転して体制を立て直そうと左手を地面に付いたところで腹部への蹴り。
それをミルニルで防いで後方に回転しながら着地する。
着地の直後にハクアの追撃がミリーを襲う。
左右の蹴りの連撃を回避と防御で全て捌くが、反撃出来ずに防戦のミリー。
「むぅ……やりづらいですね」
強化と操作のみだというのに尋常ではない速度で攻撃を繰り出すハクア。
「本気を…… 出してください!」
右の強烈な蹴りを放つハクアと、ミルニルで受け止めるミリー。
「ハクアさんは武器を使ってないですからね。本気と言われても躊躇ってしまいますよ?」
「私も武器を使います!」
と言って取り出したのは小さな短刀。
鋼鉄製の普通の冒険者が持つようなものだ。
朱王のクリムゾン部隊の多くがミスリル武器やキメラ武器を使うというのに、クリムゾン暗部のハクアが鋼鉄製武器。
違和感はある。
しかし武器を持って挑んでくるというのであればその気持ちに応えてあげるべきかもしれない。
魔力を放出するミリー。
七色の光のカーテンがミリーを覆う。
「私の魔法は爆裂魔法です。ハクアさん、覚悟はいいですか?」
ゆらりと歩み寄るミリーにハクアは一瞬で間合いを詰めて右蹴りを放つ。
しかしハクアの蹴りはミリーには届かない。
ミリーの範囲魔力が小規模な爆発を起こしてハクアの蹴りを防ぐ。
着地の直後に距離を取り、再びミリーへと向かうハクアだが攻撃が届かない。
蹴りも短刀での攻撃も全て爆裂魔法に阻まれる。
何度挑もうともミリーに届かない攻撃に、ハクアも攻め手がない。
「私は少し前に気付いたんですよ。自分が怪我をすると回復の能力が低下する事に。私は皆さんを癒さないといけませんからね、怪我をするわけにはいかないんですよ」
「でも防御だけでは私を倒せません……」
再びミリーに接近するハクア。
右蹴りに合わせてミルニルを打ち付けると同時に爆破し、弾き飛ばされるハクアに追撃するミリー。
短刀で受け止めるも弾かれ、蹴りで受けるも全て弾き飛ばされる。
勝ち目がない。
爆破の衝撃で痺れる体を強引に起こすハクア。
歩み寄るミリーはハクアが見てきた誰よりも強い存在として映る。
「なん、ですか…… その手は……」
ハクアを見て驚愕の表情を浮かべるミリー。
その視線は自分の右手へと向けられている事に気付き、ハクアはスッと袖で右手を隠す。
「これは…… 奴隷だった頃に受けた傷です。お見苦しいものをお見せして申し訳ありません」
ハクアの右手は中指から小指にかけて切り落とされたかのように欠損していた。
「どうしてそんな傷を負ったんですか!?」
ミリーは問い詰めようとハクアの肩を掴む。
「私は…… 朱王様のおかげでこのように黒髪にしていますが、実は不吉の象徴と呼ばれる【アルビノ種】です。当時は迫害を受けても仕方なかったんです」
「奴隷だから…… ? アルビノ種だから…… ? それでなんで迫害を受けなくちゃいけないんですか!?」
「この国では数年前まではスラムに住む者達というのは、人として認められてはいませんでした。スラムに住んでいる者の多くは仕事もなく、盗みや犯罪に手を染める事で金銭などを得ていたので、罪人は人として認めないというのが当たり前の考えだったのでしょう。そして奴隷は十五歳を過ぎれば奴隷ではなくなります。奴隷から解放されても仕事がない為、行き着く先はスラム街。いずれは犯罪を犯してしまうという認識から、奴隷も人間として認められるものではなく、壊れたら買い換える、物や道具と同じ扱いだったというわけです」
「でも同じ人間じゃないですか!! 罪を犯す者が裁かれるのはわかります! でも裁かれこそすれ人間である事に変わりはありません! それに奴隷は罪を犯したわけではないじゃないですか! その奴隷を人間ではないと傷付けるその者達こそ罪人です!!」
感情が高ぶるミリーの体から魔力が放出されている。
七色の美しい魔力だというのに、怒りの為かビリビリとした魔力だ。
「ミ、ミリー様!? もう傷は塞がっていますし大丈夫ですから! 不快な思いをさせて申し訳ありません。なるべく皆様の前には姿を現しませんのでお怒りをお沈め下さい」
「何を言ってるんですか? ハクアさんを不快になんて思いませんよ。私が怒っているのはそこではありません! 少し朱王と話しをしてきます」
ミリーは朱王の元へと歩いて行く。
「わ、私はなんていう事を…… ミリー様を怒らせてしまいました……」
項垂れるハクアにガネットとデイジー、アイリが寄り添う。
クリムゾンは組織でありながら家族。誰もが家族の事を心配し合うのであろう。
「ハクア。ミリーは朱王さんを怒りに行ったわけじゃないわよ? ああ見えてミリーは朱王さんが抱えているものを全て受け入れる覚悟でこの旅をしているの。だから皆んなの為に自分がどうあるべきか考えながら行動してると思うわよ? まぁ…… 多少ボケてるところがあるけどね……」
「ミリーさん行ってしまいましたけど朱王さんの居場所はわかるんでしょうか?」
「少し心配だし私達も行くわよ」
リゼとアイリはハクアを連れて朱王の元へと向かう。
「朱王! ハクアさんのあの手はどういう事ですか!! …… むぅ、いませんねぇ。どこに行ったんでしょう……」
怒りのままに朱王の部屋へと怒鳴り込んだミリーだが、朱王は部屋にはいない。
朱王の部屋を出て廊下を歩いているとボルドロフとすれ違う。
「ボルドロフさん! 朱王はどこですか!?」
「はて? 朱王様は作業部屋ではないでしょうか。リルフォンで聞いてみてはいかがでしょう」
そう、最初から通話して向かえばよかったのだが。
「ぐぅ…… そ、そうですね。連絡してみます」
朱王に連絡を取るとやはり作業部屋にいるようだ。
足早に作業部屋へと向かう。
「朱王! ハクアさんのあの手はどういう事ですか!!」
作業部屋へと怒鳴り込んだミリー。
すでに作業部屋へと着いていたリゼ達に驚きながらも朱王に歩み寄る。
リゼとアイリが呆れ顔なのはとりあえず無視する。
「朱王! 答えてください!」
「そうだね…… 以前、この国の腐った貴族によってハクアが連れ去られてしまってね…… 私の無力さが彼女を傷付ける結果となってしまったんだ。あの時もっと早く気付いていればと今でも思い出す度後悔するよ」
「朱王様のせいではありません! 捕まってしまった私のせいなんです!!」
「朱王。それじゃあわからないんですよ。その時の記憶を見せてください」
朱王に手を差し出すミリー。
「ミリー。その記憶は朱王の感情が強く込められているから見ると痛みがあるぞー」
朱雀が出て来て忠告する。
話しの流れから嫌な予感を感じとって出てきたようだ。
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