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クイースト王国編
093 カミン
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私は歓喜しました。
朱王様から手紙が届いたのです。
手紙の内容には、来月にはクイースト王国へ来ると書いてありました。
嬉しかったんですよ。
久しぶりに朱王様に会う事ができますからね。
前回あったのは半年前のゼス王国の邸でした。
あの時もお優しい言葉をかけて頂き、嬉しく思ったものです。
来月にはお会いできるだけではない、朱王様のお世話ができるのです。
その事を私は嬉しく思い、毎日の邸の手入れにも気合いが入るというものです。
気合いが入りすぎて少し庭木を切り過ぎてしまった事は秘密にしておきましょう。
お会いできる日を楽しみにしておりますよ、朱王様。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朱王様がクイースト王国にやって来たのは今から半月程前。
久しぶりにお会いする朱王様は相も変わらず素晴らしいお方でした。
お土産も美味しく頂きました。
マーリンやメイサは二年ぶりにお会いした朱王様を見て感激のあまり影で泣いていましたね。
朱王様はお気付きだったのでしょうか。
その日のうちに頭を撫でられたと喜んでいましたねぇ。
私も撫でて欲しいんですが男なので我慢しましょう。
もう私も二十七歳ですしね。
しかし懐かしいですね。
朱王様と出会ったのは王国の会議室でしたか。
当時私は二十三歳で聖騎士長でした。
若くして聖騎士長に登り詰めた私は、自分が最も強いなどと勘違いしてましたからね。
朱王様は元奴隷の少年とともに王国の会議室に立っていました。
奴隷制度の撤廃と子供を預かる施設を作る事を要求していました。
今では本当に奴隷制度を無くしてしまいましたし、子供達の施設も完璧に管理なされている様子。
そして魔族についても語られておりました。
今のままでは人間族が危険だと、そして人間族同士が争うような事はあってはならないと。
そうです、人間族は戦争を始めようとしていました。
強い魔獣の多いここクイースト王国では資源が乏しく、農業もそれほど盛んではない。
魔法の国とは呼ばれていますが、単純に遠距離魔法を得意とする者が多かっただけ。
潤沢な大国、ゼス王国に戦争を仕掛けようという意見が貴族の中では上がっておりました。
しかし魔族という脅威を目の前に、人間族同士が争っていては滅びに向かうのだと。
そしてその魔族は人間族よりも遥かに強いのだと訴えておりました。
ある一人の貴族、そうですね、戦争を仕掛けようと言っていた貴族の一人です。
彼が私に命じました。
朱王様を摘み出せと。
そして朱王様と共にいた子供が言いました。
朱王様を侮辱するのであればお前は敵だと。
貴族の代わりに私も答えました。
国王様の御前で剣を抜く事がどういう事かわかっているかと。
私は国王様を、国を守ると言い放ちました。
しかしその子供の答えはこうでした。
国王様を守るのが国を守ると同義であるならば、朱王様を守るのは世界を守るのと同義だと。
朱王様を世界だと言う。
この時点で負けた気がしましたよ。
朱王様が語った話、提案自体は素晴らしいと思いましたし、まだ小さな子供が自分の信念を持ってここに立つその覚悟。
元奴隷である彼がどれ程朱王様を信頼しているのかがはっきりとわかりました。
シダー国王の采配で私と朱王様は決闘する事になりましたが、手も足も出ませんでしたね。
そして見せつけられました。
朱王様の魔力を、実力を、格の違いを。
そのうえ朱王様の理想の話を聞かされましたね。
なんと甘いお考えなのだろうと思いましたし、なんとお優しい方なんだろうと感じました。
魔族という脅威が近づいていると言った彼が、魔族とも戦争をしたくないと言う。
それどころか共存を望むなどとは、子供の考えた絵空事のような甘い考えとしか言いようがありません。
ですが彼の表情を見ると、何故か否定できない気持ちになりました。
私は朱王様に興味を持ち、邸に呼んで一緒に酒を呑む事にしました。
酒を呑んで語り合えばもっと彼の事を知る事ができるかもしれない。
ただあの時は友人になりたかっただけかもしれません。
朱王様の話を聞いて、私は彼を尊敬しました。
彼の力になりたいと思いました。
自分がどうあるべきか考えさせられました。
そして翌日には国を守るよりも世界を守ろうと決心しました。
国王に挨拶をし、次期聖騎士長を任命してその座を降りました。
私一人が朱王様の部下となるはずだったんですがね。
私を慕ってくれた二人が一緒について来てしまいました。
それかマーリンとメイサです。
二人とも才能があり、まだまだ強くなると期待してたんですがね。
困った子達です。
朱王様は国王様からこの邸を頂きました。
そしてこの邸の管理を私とマーリン、メイサに託し、クイースト王国での調査員として私達は活動を始めました。
朱王様はお忙しい方ですから邸に帰ってくるのは遅い時間でしたね。
それでも暇をみつけては訓練する私共を時々稽古をつけてくださいました。
お忙しいながらもマーリン、メイサとも仲良くしてくださる朱王様はいつも笑顔を絶やしませんでした。
施設や学校の建設に携わりながらも子供達の教育、訓練、そして他国の部下達への指示。
寝る間もなく働き詰めでした。
程なくして私とメイサ、マーリンが交代で子供達の教育をする事にしました。
私達も一通り教育は受けていますので、子供達に教えるくらいはできました。
学校と施設が完成してしっかりと運用が始まると、程なくして朱王様は他の国へと行ってしまいましたが。
しかし私達の仕事はこれからが本番なのです。
特に語る事はないのですが、クイースト王国の周りにある街の状況の調査や、魔族がどの程度人間族側に近づいて来ているかなどの調査です。
安全を確認するのが最大の目的なので、特に語る事はないのです。
もし語る事があるとすれば、魔族の襲撃にあった街が滅びたと言う事になります。
ですので安全を確認できたというのが私達の最も良い成果なのです。
朱王様に報告した内容は魔族がどの辺まで確認出来たかであり、被害があったという報告はありません。
これは大変喜ばしいことで、朱王様も嬉しそうにしておりました。
王国内、しかも貴族の邸に住まう魔族を確認した事を報告しましたが、朱王様はそのままでいいとの事。
危険だとは思いましたが朱王様の言葉は絶対です。
魔族がいても問題はないのでしょう。
また、クイースト王国からさらに東、デンゼルよりも100キロ以上も先に行けば魔族が数体確認できた事も伝えてあります。
この報告を終えた後に朱王様から剣を差し出されました。
鞘に収められた一振りの片手直剣。
受け取らずに問うと私用にと朱王様がお作りになった魔剣との事。
魔剣とはよくわかりませんでしたが、聖剣よりも優れていると聞いては受け取る事ができませんでした。
朱王様は元々武器などはお作りにならなかったのですが、一緒に来られた千尋様。
彼から作り方を教わったとの事でした。
そのうえ朱王様の持つカタナをも千尋様が作ったとの事。
あのような可愛らしい方が朱王様の武器を作ったなどとは俄かには信じ難いですが…… 男と言うのも信じ難いですね。
可愛らしいと言えば、女性の方々は皆様可愛らしくとてもお美しいですね。
千尋様の恋人のリゼ様。
可愛らしい方ですが少し変わった思考をお持ちのようです。
千尋様の事に関しては少し言動が怪しいかと……
アイリさんはゼス本部のマネージャーですね。
いつ見てもお美しい方です。
私もゼスではいつもお世話になっておりますから、クイーストでは是非ともアイリさんにも楽しんでいって欲しいですね。
そして女性の中でも我々が最も注目すべきはミリー様です。
朱王様の恋人であるミリー様。
確かに可愛らしく、美しさも兼ね備えておられますが、それ以上に一緒にいて楽しい方だと私は感じましたね。
報告では朱王様と対等に戦える程の強さだとありましたが本当でしょうか。
信じ難い事ですが、皆様異常な程にお強いですからね。
信じざるを得ないでしょう。
おっと、話が逸れてしまいました。
私は魔剣を受け取れずにいましたが、朱王様はマーリンとメイサの武器を強化してくださると言う。
彼女らの武器は朱王様からもらった一級品の武器です。
今でも二人の宝物のようです。
この武器がどちらも聖剣以上の性能となってしまった事に驚きました。
そして精霊と魔方陣の追加でいつの間にか精霊魔導師となった事にも驚きましたね。
私も魔剣を受け取りました。
何故か後日朱王様から【特撮モノ】? という魔石をたくさん渡されました。
変装した人が走ったり車やバイクが走ったりする足元でよく爆発が起こります。
何故そこが爆発するんだろうと不思議に思いましたが、物語は面白く観させて頂きました。
しかしその特撮モノの映像を見せた理由が今日わかりました……
朱王様が魔剣ティルヴィングに付与してくださった能力は爆水。
水属性の水質変化を得意とした私の為に付与してくださった能力です。
市民街を出て山に入ると魔獣がいますからね。
性能を試すには丁度いいと、一体の魔獣に爆水で攻撃しました。
朱王様の説明では【ニトログリセリン】というものをイメージした能力だとは聞いていましたが、初めて聞く言葉でよくわかりませんでした。
それが一体の魔獣のおかげでよくわかりました。
水魔法を纏った斬撃は、大爆発を起こして魔獣をバラバラにしてしまいました。
恐るべき威力でした。
まさか斬撃で跡形もなく魔獣が散るなどとは思いもよりませんでしたから……
しかし加減がとても難しい武器となりましたが、朱王様が作ってくださった武器です。
大切にしていこうと思います。
ここ最近では朱王様の精霊である朱雀様が私と剣の相手をしてくださいます。
小さな朱王様といった様相ですので少し緊張しますね。
しかしとてもお強い。
朱王様の体を模したとの事ですがそれだけであれ程強くなるとは考えにくいものですが。
マーリンやメイサも朱雀様に稽古をつけて頂いています。
最初は朱雀様の稽古という事で始めたのですが、いつの間にか立場が逆転しておりました。
私もうかうかしていられませんね。
朱雀様の相手に訓練する事は私の力も同様に高めてくれます。
私の剣を学んで強くなっていくので、私も自分の剣を見直しながら新たな気付きを得られます。
どうやら朱雀様も私共との訓練を楽しんで頂けているようですし、今しばらくお付き合い願いたいところです。
そうそう、強い方といえば蒼真さんでしょうか。
現聖騎士長であるヴォッヂが圧倒されておりました。
少し私も手合わせして頂きましたが全く勝てる気はしませんでしたね。
朱王様をも思わせる強さでしたので本当に驚きました。
やはり朱王様は素晴らしいお方です。
先日は魔族のフィディックを部下に迎え入れました。
私の直属の部下となりますのでマーリンやメイサと同じ扱いとなりますね。
二人とも面白くないかもしれませんが…… と思っていたら杞憂に終わりました。
思いの外打ち解けるのが早く、仲良くやれてるようです。
フィディックは思った以上に真面目な性格で、マーリンとメイサも気に入ってくれた様子。
一番良かったのは二人の武器を褒めた事でしょうか。
メイド服を着た二人は背中側に回していますが、腰に剣を下げています。
どちらも朱王様からもらった一級品武器。
それを朱王様が魔剣として改造したものです。
キラキラと輝く魔剣は宝飾品のよう。
フィディックはその輝く剣を素晴らしい、美しい、そして剣を持つ二人に似合っていると言ったのが決め手でしょうか。
確かに二人ともイメージに合った剣となって似合っていますが。
そうそう、フィディックには稽古をつけるようにも言われています。
魔族を強化すれば脅威になるのではとも思いましたが、朱王様はフィディックを信用しているご様子。
それでは私も信用しましょう。
しかし私は剣しか教える事ができませんからね。
あとでフィディックにもミスリル製の武器でも買ってあげましょうか。
今日私は魔剣の性能を試して来たわけですが、朱王様方は飛行装備をお作りに研究所へと向かいました。
国王様にお願いして見学と使用の許可を頂いたのですが大丈夫でしょうか。
朱王様が以前から空を飛べる事は知っていましたが、もっと性能を良くする為だとの事ですからすごいですね。
私もお一つ欲しいくらいです。
おっと、そろそろ皆様が帰って来る頃ですね。
それでは出迎えの準備に参ります。
失礼致します。
朱王様から手紙が届いたのです。
手紙の内容には、来月にはクイースト王国へ来ると書いてありました。
嬉しかったんですよ。
久しぶりに朱王様に会う事ができますからね。
前回あったのは半年前のゼス王国の邸でした。
あの時もお優しい言葉をかけて頂き、嬉しく思ったものです。
来月にはお会いできるだけではない、朱王様のお世話ができるのです。
その事を私は嬉しく思い、毎日の邸の手入れにも気合いが入るというものです。
気合いが入りすぎて少し庭木を切り過ぎてしまった事は秘密にしておきましょう。
お会いできる日を楽しみにしておりますよ、朱王様。
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朱王様がクイースト王国にやって来たのは今から半月程前。
久しぶりにお会いする朱王様は相も変わらず素晴らしいお方でした。
お土産も美味しく頂きました。
マーリンやメイサは二年ぶりにお会いした朱王様を見て感激のあまり影で泣いていましたね。
朱王様はお気付きだったのでしょうか。
その日のうちに頭を撫でられたと喜んでいましたねぇ。
私も撫でて欲しいんですが男なので我慢しましょう。
もう私も二十七歳ですしね。
しかし懐かしいですね。
朱王様と出会ったのは王国の会議室でしたか。
当時私は二十三歳で聖騎士長でした。
若くして聖騎士長に登り詰めた私は、自分が最も強いなどと勘違いしてましたからね。
朱王様は元奴隷の少年とともに王国の会議室に立っていました。
奴隷制度の撤廃と子供を預かる施設を作る事を要求していました。
今では本当に奴隷制度を無くしてしまいましたし、子供達の施設も完璧に管理なされている様子。
そして魔族についても語られておりました。
今のままでは人間族が危険だと、そして人間族同士が争うような事はあってはならないと。
そうです、人間族は戦争を始めようとしていました。
強い魔獣の多いここクイースト王国では資源が乏しく、農業もそれほど盛んではない。
魔法の国とは呼ばれていますが、単純に遠距離魔法を得意とする者が多かっただけ。
潤沢な大国、ゼス王国に戦争を仕掛けようという意見が貴族の中では上がっておりました。
しかし魔族という脅威を目の前に、人間族同士が争っていては滅びに向かうのだと。
そしてその魔族は人間族よりも遥かに強いのだと訴えておりました。
ある一人の貴族、そうですね、戦争を仕掛けようと言っていた貴族の一人です。
彼が私に命じました。
朱王様を摘み出せと。
そして朱王様と共にいた子供が言いました。
朱王様を侮辱するのであればお前は敵だと。
貴族の代わりに私も答えました。
国王様の御前で剣を抜く事がどういう事かわかっているかと。
私は国王様を、国を守ると言い放ちました。
しかしその子供の答えはこうでした。
国王様を守るのが国を守ると同義であるならば、朱王様を守るのは世界を守るのと同義だと。
朱王様を世界だと言う。
この時点で負けた気がしましたよ。
朱王様が語った話、提案自体は素晴らしいと思いましたし、まだ小さな子供が自分の信念を持ってここに立つその覚悟。
元奴隷である彼がどれ程朱王様を信頼しているのかがはっきりとわかりました。
シダー国王の采配で私と朱王様は決闘する事になりましたが、手も足も出ませんでしたね。
そして見せつけられました。
朱王様の魔力を、実力を、格の違いを。
そのうえ朱王様の理想の話を聞かされましたね。
なんと甘いお考えなのだろうと思いましたし、なんとお優しい方なんだろうと感じました。
魔族という脅威が近づいていると言った彼が、魔族とも戦争をしたくないと言う。
それどころか共存を望むなどとは、子供の考えた絵空事のような甘い考えとしか言いようがありません。
ですが彼の表情を見ると、何故か否定できない気持ちになりました。
私は朱王様に興味を持ち、邸に呼んで一緒に酒を呑む事にしました。
酒を呑んで語り合えばもっと彼の事を知る事ができるかもしれない。
ただあの時は友人になりたかっただけかもしれません。
朱王様の話を聞いて、私は彼を尊敬しました。
彼の力になりたいと思いました。
自分がどうあるべきか考えさせられました。
そして翌日には国を守るよりも世界を守ろうと決心しました。
国王に挨拶をし、次期聖騎士長を任命してその座を降りました。
私一人が朱王様の部下となるはずだったんですがね。
私を慕ってくれた二人が一緒について来てしまいました。
それかマーリンとメイサです。
二人とも才能があり、まだまだ強くなると期待してたんですがね。
困った子達です。
朱王様は国王様からこの邸を頂きました。
そしてこの邸の管理を私とマーリン、メイサに託し、クイースト王国での調査員として私達は活動を始めました。
朱王様はお忙しい方ですから邸に帰ってくるのは遅い時間でしたね。
それでも暇をみつけては訓練する私共を時々稽古をつけてくださいました。
お忙しいながらもマーリン、メイサとも仲良くしてくださる朱王様はいつも笑顔を絶やしませんでした。
施設や学校の建設に携わりながらも子供達の教育、訓練、そして他国の部下達への指示。
寝る間もなく働き詰めでした。
程なくして私とメイサ、マーリンが交代で子供達の教育をする事にしました。
私達も一通り教育は受けていますので、子供達に教えるくらいはできました。
学校と施設が完成してしっかりと運用が始まると、程なくして朱王様は他の国へと行ってしまいましたが。
しかし私達の仕事はこれからが本番なのです。
特に語る事はないのですが、クイースト王国の周りにある街の状況の調査や、魔族がどの程度人間族側に近づいて来ているかなどの調査です。
安全を確認するのが最大の目的なので、特に語る事はないのです。
もし語る事があるとすれば、魔族の襲撃にあった街が滅びたと言う事になります。
ですので安全を確認できたというのが私達の最も良い成果なのです。
朱王様に報告した内容は魔族がどの辺まで確認出来たかであり、被害があったという報告はありません。
これは大変喜ばしいことで、朱王様も嬉しそうにしておりました。
王国内、しかも貴族の邸に住まう魔族を確認した事を報告しましたが、朱王様はそのままでいいとの事。
危険だとは思いましたが朱王様の言葉は絶対です。
魔族がいても問題はないのでしょう。
また、クイースト王国からさらに東、デンゼルよりも100キロ以上も先に行けば魔族が数体確認できた事も伝えてあります。
この報告を終えた後に朱王様から剣を差し出されました。
鞘に収められた一振りの片手直剣。
受け取らずに問うと私用にと朱王様がお作りになった魔剣との事。
魔剣とはよくわかりませんでしたが、聖剣よりも優れていると聞いては受け取る事ができませんでした。
朱王様は元々武器などはお作りにならなかったのですが、一緒に来られた千尋様。
彼から作り方を教わったとの事でした。
そのうえ朱王様の持つカタナをも千尋様が作ったとの事。
あのような可愛らしい方が朱王様の武器を作ったなどとは俄かには信じ難いですが…… 男と言うのも信じ難いですね。
可愛らしいと言えば、女性の方々は皆様可愛らしくとてもお美しいですね。
千尋様の恋人のリゼ様。
可愛らしい方ですが少し変わった思考をお持ちのようです。
千尋様の事に関しては少し言動が怪しいかと……
アイリさんはゼス本部のマネージャーですね。
いつ見てもお美しい方です。
私もゼスではいつもお世話になっておりますから、クイーストでは是非ともアイリさんにも楽しんでいって欲しいですね。
そして女性の中でも我々が最も注目すべきはミリー様です。
朱王様の恋人であるミリー様。
確かに可愛らしく、美しさも兼ね備えておられますが、それ以上に一緒にいて楽しい方だと私は感じましたね。
報告では朱王様と対等に戦える程の強さだとありましたが本当でしょうか。
信じ難い事ですが、皆様異常な程にお強いですからね。
信じざるを得ないでしょう。
おっと、話が逸れてしまいました。
私は魔剣を受け取れずにいましたが、朱王様はマーリンとメイサの武器を強化してくださると言う。
彼女らの武器は朱王様からもらった一級品の武器です。
今でも二人の宝物のようです。
この武器がどちらも聖剣以上の性能となってしまった事に驚きました。
そして精霊と魔方陣の追加でいつの間にか精霊魔導師となった事にも驚きましたね。
私も魔剣を受け取りました。
何故か後日朱王様から【特撮モノ】? という魔石をたくさん渡されました。
変装した人が走ったり車やバイクが走ったりする足元でよく爆発が起こります。
何故そこが爆発するんだろうと不思議に思いましたが、物語は面白く観させて頂きました。
しかしその特撮モノの映像を見せた理由が今日わかりました……
朱王様が魔剣ティルヴィングに付与してくださった能力は爆水。
水属性の水質変化を得意とした私の為に付与してくださった能力です。
市民街を出て山に入ると魔獣がいますからね。
性能を試すには丁度いいと、一体の魔獣に爆水で攻撃しました。
朱王様の説明では【ニトログリセリン】というものをイメージした能力だとは聞いていましたが、初めて聞く言葉でよくわかりませんでした。
それが一体の魔獣のおかげでよくわかりました。
水魔法を纏った斬撃は、大爆発を起こして魔獣をバラバラにしてしまいました。
恐るべき威力でした。
まさか斬撃で跡形もなく魔獣が散るなどとは思いもよりませんでしたから……
しかし加減がとても難しい武器となりましたが、朱王様が作ってくださった武器です。
大切にしていこうと思います。
ここ最近では朱王様の精霊である朱雀様が私と剣の相手をしてくださいます。
小さな朱王様といった様相ですので少し緊張しますね。
しかしとてもお強い。
朱王様の体を模したとの事ですがそれだけであれ程強くなるとは考えにくいものですが。
マーリンやメイサも朱雀様に稽古をつけて頂いています。
最初は朱雀様の稽古という事で始めたのですが、いつの間にか立場が逆転しておりました。
私もうかうかしていられませんね。
朱雀様の相手に訓練する事は私の力も同様に高めてくれます。
私の剣を学んで強くなっていくので、私も自分の剣を見直しながら新たな気付きを得られます。
どうやら朱雀様も私共との訓練を楽しんで頂けているようですし、今しばらくお付き合い願いたいところです。
そうそう、強い方といえば蒼真さんでしょうか。
現聖騎士長であるヴォッヂが圧倒されておりました。
少し私も手合わせして頂きましたが全く勝てる気はしませんでしたね。
朱王様をも思わせる強さでしたので本当に驚きました。
やはり朱王様は素晴らしいお方です。
先日は魔族のフィディックを部下に迎え入れました。
私の直属の部下となりますのでマーリンやメイサと同じ扱いとなりますね。
二人とも面白くないかもしれませんが…… と思っていたら杞憂に終わりました。
思いの外打ち解けるのが早く、仲良くやれてるようです。
フィディックは思った以上に真面目な性格で、マーリンとメイサも気に入ってくれた様子。
一番良かったのは二人の武器を褒めた事でしょうか。
メイド服を着た二人は背中側に回していますが、腰に剣を下げています。
どちらも朱王様からもらった一級品武器。
それを朱王様が魔剣として改造したものです。
キラキラと輝く魔剣は宝飾品のよう。
フィディックはその輝く剣を素晴らしい、美しい、そして剣を持つ二人に似合っていると言ったのが決め手でしょうか。
確かに二人ともイメージに合った剣となって似合っていますが。
そうそう、フィディックには稽古をつけるようにも言われています。
魔族を強化すれば脅威になるのではとも思いましたが、朱王様はフィディックを信用しているご様子。
それでは私も信用しましょう。
しかし私は剣しか教える事ができませんからね。
あとでフィディックにもミスリル製の武器でも買ってあげましょうか。
今日私は魔剣の性能を試して来たわけですが、朱王様方は飛行装備をお作りに研究所へと向かいました。
国王様にお願いして見学と使用の許可を頂いたのですが大丈夫でしょうか。
朱王様が以前から空を飛べる事は知っていましたが、もっと性能を良くする為だとの事ですからすごいですね。
私もお一つ欲しいくらいです。
おっと、そろそろ皆様が帰って来る頃ですね。
それでは出迎えの準備に参ります。
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