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クイースト王国編
088 デンゼルへ
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クイースト王国から東に位置する街デンゼル。
この街に最強と噂される冒険者パーティーが存在する。
「なんか王宮が魔族に襲撃されたって情報が流れてきましたよ! それを聖騎士長様と国王様、聖騎士様達と大魔導師様達に一人の冒険者が加わって、二十体もの魔族を倒したそうです!」
役所の待合テーブルでくつろぐパーティーに一人の受付の女性が駆け込んだ。
「なぁサーシャ。魔族ってなんだ?」
頬杖をつきながら問いかける青年。
「この国で確認されたのは初めての事ですが、人間よりも遥かに強い力を持つとされてるんです! 何百年も前の伝記には魔族の存在が記されてますが、数ヶ月前にザウス王国でも襲撃があったそうです!」
「ふーん。ちょっと戦ってみたかったなー」
コップに入ったアイスコーヒーをストローで啜る青年。
「勇飛さんならそういうと思ってましたけどね! それとクイースト王国で発注されていた難易度10のクエストがですねぇ、たった四日で二つも達成されたそうなんです!」
「ほう。そのパーティー気になるな。会ってみたい」
ナスカは腕を組み、サーシャの話を興味深そうに聞いていた。
「ナスカはちょっと戦ってみたいんでしょ。最近は喧嘩売ってくる冒険者もいないしね」
弓矢を肩にかけた青年も嬉しそうに言う。
「カインもエレナも会ってみたいだろう? 難易度10など私達でも余程準備をしないと挑まないクエストだぞ?」
「そうよね。どれくらい強いか確かめてみたいわ」
勇飛をリーダーとした四人組のパーティー。
デンゼルを中心に活動する冒険者達だ。
クイースト王国に現れた冒険者に興味を持ちつつも、この日のクエストを終えていた勇飛達は宿へと戻って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔族の襲撃から二日後。
「じゃあ今日はデンゼルに行こうか!」
という事で車に乗ってデンゼルに向かう事にした朱王と千尋達。
もちろん目的は強いと噂の冒険者。
ただ会いに行くだけだがお土産を持って行こう。
車を店の前に停めてマカルォンとマシュマルォを購入。
店員さんも驚愕して叫んでいた。
市民街を抜け、デンゼルへと車を軽快に走らせる。
デンゼルまでは三十分ほどで着く。
街の地理はわからないが、役所は大体街の中央付近にあるので、街の中をゆっくりと進む。
誰もが驚愕の表情で見つめる中、役所の前に車を停めて降りる。
ドロロロロロロロロロというエンジン音を聞いて役所からも複数の冒険者達が出て来る。
最近では目立つ事にも慣れてきた一行は、冒険者達を掻き分けて役所へと入って行く。
ミリーを先頭に千尋と蒼真、リゼとアイリが続き、朱王と朱雀もついて行く。
「こんにちは。冒険者のミリーと言いますが、こちらにゴールドランクの冒険者さんはいらっしゃいますか?」
「はい、そちらに座っている勇飛さん達がデンゼルでは唯一のゴールドランクパーティーとなりますけど……」
振り返ると待合席に座る四人組のパーティーがいる。
四人ともこちらの様子を伺っているようだ。
お礼を言って勇飛達の方へ歩み寄る。
「ってなんで私が先頭なんですか!? 千尋さんか蒼真さんがお願いしますよ!」
「だってリーダーはミリーじゃん」
「リーダー早く声をかけるんだ」
結局ミリーが話しかける事になった。
「こんにちは。私は何故かこのパーティーのリーダーをやらされているミリーです。デンゼルの街には強い冒険者さんがいると聞いて皆さんに会いに来ました」
「ふむ。オレはこのパーティーのリーダーで勇飛だ。鈴谷勇飛、迷い人だ」
「おぉ! やっぱ地球の人なんだね! オレは姫野千尋。同じく迷い人だよ!」
「オレは高宮蒼真。迷い人だ」
「リゼ・フィオレンティーノよ。私も迷い人なの」
「同じく迷い人の緋咲朱王だ。よろしくね」
ここにきて全員の苗字が明らかになった。
全員自己紹介をして場所を移す。
役所の職員には車を停めておく許可をもらい、近くの酒場へと移動する。
代表して千尋と蒼真、勇飛とナスカで話をする。
「勇飛、さんかな? 歳上に見えるし。いつアースガルドに来たの?」
「オレは三年前の十七歳の時にここデンゼルの街に転移してきた。千尋と蒼真は?」
「だいたい半年くらい前にザウス王国のアルテリアという街に転移してきた。オレ達は理科室の魔法陣が光り出したと思ったら転移されたんだが、勇飛さんはどんな感じだったんだ?」
「ん? オレは魔法陣なんてなかったぞ? 自転車乗ってて気付いたら草原で寝てたし」
「私はお客さんの髪をブローしてたら魔王の城の側に転移してたよ!」
朱王が隣のテーブルから声をあげる。
リゼは森に転移、千尋と蒼真は研究所、勇飛は草原。
誰もがこの人悲惨だなと思ってしまった。
朱王は魔王と出会えて良かったと思っているのだが。
「っつか魔王てなんだ? 最近魔族が王国を襲ったって話は聞いたけど魔王は初めて聞いたな」
勇飛も迷い人でありゴールド冒険者だ。
相当な強さを持つ事を予想する。
千尋と蒼真で魔族や魔王について説明し、朱王やアイリはウンウンと頷いている。
そんな二人に気付いたミリーも、わかったふりをしながらウンウンと頷いていた。
一通り説明を終える。
「なるほどな。先代魔王すげーじゃん。で、今後は魔族が人間の国を襲う可能性があるって事だよな。けどオレ達はこの辺じゃ最強とか呼ばれてるけど、難易度10のクエストだと結構苦戦するんだよな。魔族相手だとキツいかもしれねーなぁ」
勇飛は自分達の戦力を考えて結論づける。
「先日クイースト王国の役所で難易度10のクエストを複数達成したのは貴方達か?」
ナスカが気になっていた事を聞いてみる。
「蒼真とアイリとミリーの三人だよね? オレと朱王さんが魔剣作りしてる間でしょ?」
「ああ。どの魔獣も数が多かったからなかなか良かった」
「我も一回行ったんじゃがのぉ」
朱雀もグレンデル討伐クエストについて行き、蒼真に少し剣の稽古もつけてもらった。
「んー、めっちゃ似てるけど朱王さんの子か?」
「私の契約している精霊だよ。元の姿だと大き過ぎるから人型をしてもらってるんだ」
「朱王さん精霊魔術師か! 刀持ってるのに精霊魔術師とかなれるんだな」
「全員精霊魔導師だけどねー」
「「「「全員!?」」」」
自分達の事かと出てくる精霊達。
ランだけは最初から兼元の柄に座っていたが。
「朱王さん、勇飛さん達に魔族の話しちゃったけど……」
「そうだね。彼らにも精霊魔導師になってもらおうか」
「そしてオレと少し戦ってくれると嬉しい」
千尋と朱王は人間側の戦力強化をと思う中、蒼真は遊び相手を求めている。
勇飛達の装備を確認する。
ナスカは左右にミスリルダガー。
エレナはミスリルの両手直剣。
カインはミスリルと魔木を組み合わせた弓。
そして勇飛は防具のみ。
「あ、あー、オレのこのガントレットは武器なんだ。両手足で戦うモンクなんだよ」
「しかもヒーラーのな」
驚くだろうと思って言ったナスカだったが、千尋達に反応はない。
唯一ミリーだけが驚愕の表情をしている。
「あれ? 普通ヒーラーで冒険者って言ったら驚くだろ?」
「なんでミリーが驚いてるんだ? このミリーもヒーラーで爆裂系の魔法を使うんだ。だからそんな驚かないな」
「おお! ヒーラーの冒険者に初めて会った! なんか知らないけど嬉しいな!」
「私もですよ! 勇飛さんも爆裂魔法ですか!?」
勇飛とミリーのテンションがあがる。
同じヒーラー同士というのが堪らなく嬉しいようだ。
「ぬぅ。こっちも驚かせてやりたい…… そうだ! この勇飛はレベル10で魔力量14万ガルドを超えているぞ!」
精霊魔導師という言葉に驚かされたナスカは、千尋達の事も驚かせたいらしい。
「すごい! オレも早くレベル10なりたいなー!」
「最近レベル上がらないからな。難易度10相手でも上がらないって事はもう超級の魔獣と戦うしかないな」
「それかまた朱王さんに稽古つけてもらうかだね!」
残念ながら千尋達が驚いたのは一瞬だった。
それどころか難易度10を易々と討伐し、レベルが10に届いていないこのパーティーにまた驚かされたナスカ。
うちのリーダーを自慢したのにと、その表情は悔しそうだ。
ちなみにアイリとミリー、リゼは朱王の魔力量を知っている。
以前クリムゾンで健康診断と称して行った魔力量測定。
そこに記されたのはレベル5にして魔力量18万ガルドという驚異の数値。
クリムゾンという組織において、崇拝するのに充分すぎる程となる数値だった。
アイリを交えた女子会で、秘密ですよと公開された数値だ。
それはともかくとして擬似魔剣化と精霊契約、魔法陣の組み込みをしよう。
まずは勇飛達に武器を出してもらい、魔力量2,000ガルドを溜め込む仕様にエンチャントしていく。
次に魔法陣の組み込みだ。
得意魔法と精霊を何体契約するかを相談して魔法陣もエンチャント。
精霊契約は魔法陣を使用する為、街の外で行う事にする。
デンゼルの東門付近。
ここは勇飛達が訓練で使う、魔獣があまり寄ってこない場所だ。
擬似魔剣化したダガーで魔法陣を描くナスカ。
ナスカは両方のダガーにヴォルトを契約。
以前は火属性魔法を得意としていたが、勇飛から教えてもらった雷属性を訓練して発動できるようになった。
今では火属性魔法よりも高い威力を持つまでになっている。
次にエレナも擬似魔剣で魔法陣を描く。
精霊はシルフと契約し、可愛らしい精霊にエレナも嬉しそうだ。
カインはすでにサラマンダーと契約をしている。
魔木を組み合わせたミスリル弓は精霊を宿す事が可能だった。
そこに魔力量2,000ガルドをエンチャントしたミスリル魔弓は、精霊への魔力供給量を増やし出力を増加した。
最後に勇飛。
両手のガントレットにはサラマンダーを契約。
右手では簡単に描けた魔法陣も、左手ではものすごく描きにくかった。
精霊魔導師としての装備。
ナスカは左右のダガーにヴォルトと下級魔方陣サンダーを組み込み、ミスリルの胸当てには上級魔方陣ボルテクス。
エレナはミスリル両手直剣にシルフと下級魔方陣ウィンド、胸当てに上級魔方陣エアリアルとした。
カインはミスリル魔弓にサラマンダーと下級魔方陣ファイア、腰に装備するミスリルダガーに上級魔方陣インフェルノを組み込んだ。
勇飛は左右のガントレットにサラマンダーと下級魔方陣ファイア。
レガースの右にインフェルノ、左にはエクスプロージョンを組み込んだ。
各々その性能を確認し、精霊魔導師の強さを実感しつつも加減の難しさを知る事となった。
この街に最強と噂される冒険者パーティーが存在する。
「なんか王宮が魔族に襲撃されたって情報が流れてきましたよ! それを聖騎士長様と国王様、聖騎士様達と大魔導師様達に一人の冒険者が加わって、二十体もの魔族を倒したそうです!」
役所の待合テーブルでくつろぐパーティーに一人の受付の女性が駆け込んだ。
「なぁサーシャ。魔族ってなんだ?」
頬杖をつきながら問いかける青年。
「この国で確認されたのは初めての事ですが、人間よりも遥かに強い力を持つとされてるんです! 何百年も前の伝記には魔族の存在が記されてますが、数ヶ月前にザウス王国でも襲撃があったそうです!」
「ふーん。ちょっと戦ってみたかったなー」
コップに入ったアイスコーヒーをストローで啜る青年。
「勇飛さんならそういうと思ってましたけどね! それとクイースト王国で発注されていた難易度10のクエストがですねぇ、たった四日で二つも達成されたそうなんです!」
「ほう。そのパーティー気になるな。会ってみたい」
ナスカは腕を組み、サーシャの話を興味深そうに聞いていた。
「ナスカはちょっと戦ってみたいんでしょ。最近は喧嘩売ってくる冒険者もいないしね」
弓矢を肩にかけた青年も嬉しそうに言う。
「カインもエレナも会ってみたいだろう? 難易度10など私達でも余程準備をしないと挑まないクエストだぞ?」
「そうよね。どれくらい強いか確かめてみたいわ」
勇飛をリーダーとした四人組のパーティー。
デンゼルを中心に活動する冒険者達だ。
クイースト王国に現れた冒険者に興味を持ちつつも、この日のクエストを終えていた勇飛達は宿へと戻って行った。
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魔族の襲撃から二日後。
「じゃあ今日はデンゼルに行こうか!」
という事で車に乗ってデンゼルに向かう事にした朱王と千尋達。
もちろん目的は強いと噂の冒険者。
ただ会いに行くだけだがお土産を持って行こう。
車を店の前に停めてマカルォンとマシュマルォを購入。
店員さんも驚愕して叫んでいた。
市民街を抜け、デンゼルへと車を軽快に走らせる。
デンゼルまでは三十分ほどで着く。
街の地理はわからないが、役所は大体街の中央付近にあるので、街の中をゆっくりと進む。
誰もが驚愕の表情で見つめる中、役所の前に車を停めて降りる。
ドロロロロロロロロロというエンジン音を聞いて役所からも複数の冒険者達が出て来る。
最近では目立つ事にも慣れてきた一行は、冒険者達を掻き分けて役所へと入って行く。
ミリーを先頭に千尋と蒼真、リゼとアイリが続き、朱王と朱雀もついて行く。
「こんにちは。冒険者のミリーと言いますが、こちらにゴールドランクの冒険者さんはいらっしゃいますか?」
「はい、そちらに座っている勇飛さん達がデンゼルでは唯一のゴールドランクパーティーとなりますけど……」
振り返ると待合席に座る四人組のパーティーがいる。
四人ともこちらの様子を伺っているようだ。
お礼を言って勇飛達の方へ歩み寄る。
「ってなんで私が先頭なんですか!? 千尋さんか蒼真さんがお願いしますよ!」
「だってリーダーはミリーじゃん」
「リーダー早く声をかけるんだ」
結局ミリーが話しかける事になった。
「こんにちは。私は何故かこのパーティーのリーダーをやらされているミリーです。デンゼルの街には強い冒険者さんがいると聞いて皆さんに会いに来ました」
「ふむ。オレはこのパーティーのリーダーで勇飛だ。鈴谷勇飛、迷い人だ」
「おぉ! やっぱ地球の人なんだね! オレは姫野千尋。同じく迷い人だよ!」
「オレは高宮蒼真。迷い人だ」
「リゼ・フィオレンティーノよ。私も迷い人なの」
「同じく迷い人の緋咲朱王だ。よろしくね」
ここにきて全員の苗字が明らかになった。
全員自己紹介をして場所を移す。
役所の職員には車を停めておく許可をもらい、近くの酒場へと移動する。
代表して千尋と蒼真、勇飛とナスカで話をする。
「勇飛、さんかな? 歳上に見えるし。いつアースガルドに来たの?」
「オレは三年前の十七歳の時にここデンゼルの街に転移してきた。千尋と蒼真は?」
「だいたい半年くらい前にザウス王国のアルテリアという街に転移してきた。オレ達は理科室の魔法陣が光り出したと思ったら転移されたんだが、勇飛さんはどんな感じだったんだ?」
「ん? オレは魔法陣なんてなかったぞ? 自転車乗ってて気付いたら草原で寝てたし」
「私はお客さんの髪をブローしてたら魔王の城の側に転移してたよ!」
朱王が隣のテーブルから声をあげる。
リゼは森に転移、千尋と蒼真は研究所、勇飛は草原。
誰もがこの人悲惨だなと思ってしまった。
朱王は魔王と出会えて良かったと思っているのだが。
「っつか魔王てなんだ? 最近魔族が王国を襲ったって話は聞いたけど魔王は初めて聞いたな」
勇飛も迷い人でありゴールド冒険者だ。
相当な強さを持つ事を予想する。
千尋と蒼真で魔族や魔王について説明し、朱王やアイリはウンウンと頷いている。
そんな二人に気付いたミリーも、わかったふりをしながらウンウンと頷いていた。
一通り説明を終える。
「なるほどな。先代魔王すげーじゃん。で、今後は魔族が人間の国を襲う可能性があるって事だよな。けどオレ達はこの辺じゃ最強とか呼ばれてるけど、難易度10のクエストだと結構苦戦するんだよな。魔族相手だとキツいかもしれねーなぁ」
勇飛は自分達の戦力を考えて結論づける。
「先日クイースト王国の役所で難易度10のクエストを複数達成したのは貴方達か?」
ナスカが気になっていた事を聞いてみる。
「蒼真とアイリとミリーの三人だよね? オレと朱王さんが魔剣作りしてる間でしょ?」
「ああ。どの魔獣も数が多かったからなかなか良かった」
「我も一回行ったんじゃがのぉ」
朱雀もグレンデル討伐クエストについて行き、蒼真に少し剣の稽古もつけてもらった。
「んー、めっちゃ似てるけど朱王さんの子か?」
「私の契約している精霊だよ。元の姿だと大き過ぎるから人型をしてもらってるんだ」
「朱王さん精霊魔術師か! 刀持ってるのに精霊魔術師とかなれるんだな」
「全員精霊魔導師だけどねー」
「「「「全員!?」」」」
自分達の事かと出てくる精霊達。
ランだけは最初から兼元の柄に座っていたが。
「朱王さん、勇飛さん達に魔族の話しちゃったけど……」
「そうだね。彼らにも精霊魔導師になってもらおうか」
「そしてオレと少し戦ってくれると嬉しい」
千尋と朱王は人間側の戦力強化をと思う中、蒼真は遊び相手を求めている。
勇飛達の装備を確認する。
ナスカは左右にミスリルダガー。
エレナはミスリルの両手直剣。
カインはミスリルと魔木を組み合わせた弓。
そして勇飛は防具のみ。
「あ、あー、オレのこのガントレットは武器なんだ。両手足で戦うモンクなんだよ」
「しかもヒーラーのな」
驚くだろうと思って言ったナスカだったが、千尋達に反応はない。
唯一ミリーだけが驚愕の表情をしている。
「あれ? 普通ヒーラーで冒険者って言ったら驚くだろ?」
「なんでミリーが驚いてるんだ? このミリーもヒーラーで爆裂系の魔法を使うんだ。だからそんな驚かないな」
「おお! ヒーラーの冒険者に初めて会った! なんか知らないけど嬉しいな!」
「私もですよ! 勇飛さんも爆裂魔法ですか!?」
勇飛とミリーのテンションがあがる。
同じヒーラー同士というのが堪らなく嬉しいようだ。
「ぬぅ。こっちも驚かせてやりたい…… そうだ! この勇飛はレベル10で魔力量14万ガルドを超えているぞ!」
精霊魔導師という言葉に驚かされたナスカは、千尋達の事も驚かせたいらしい。
「すごい! オレも早くレベル10なりたいなー!」
「最近レベル上がらないからな。難易度10相手でも上がらないって事はもう超級の魔獣と戦うしかないな」
「それかまた朱王さんに稽古つけてもらうかだね!」
残念ながら千尋達が驚いたのは一瞬だった。
それどころか難易度10を易々と討伐し、レベルが10に届いていないこのパーティーにまた驚かされたナスカ。
うちのリーダーを自慢したのにと、その表情は悔しそうだ。
ちなみにアイリとミリー、リゼは朱王の魔力量を知っている。
以前クリムゾンで健康診断と称して行った魔力量測定。
そこに記されたのはレベル5にして魔力量18万ガルドという驚異の数値。
クリムゾンという組織において、崇拝するのに充分すぎる程となる数値だった。
アイリを交えた女子会で、秘密ですよと公開された数値だ。
それはともかくとして擬似魔剣化と精霊契約、魔法陣の組み込みをしよう。
まずは勇飛達に武器を出してもらい、魔力量2,000ガルドを溜め込む仕様にエンチャントしていく。
次に魔法陣の組み込みだ。
得意魔法と精霊を何体契約するかを相談して魔法陣もエンチャント。
精霊契約は魔法陣を使用する為、街の外で行う事にする。
デンゼルの東門付近。
ここは勇飛達が訓練で使う、魔獣があまり寄ってこない場所だ。
擬似魔剣化したダガーで魔法陣を描くナスカ。
ナスカは両方のダガーにヴォルトを契約。
以前は火属性魔法を得意としていたが、勇飛から教えてもらった雷属性を訓練して発動できるようになった。
今では火属性魔法よりも高い威力を持つまでになっている。
次にエレナも擬似魔剣で魔法陣を描く。
精霊はシルフと契約し、可愛らしい精霊にエレナも嬉しそうだ。
カインはすでにサラマンダーと契約をしている。
魔木を組み合わせたミスリル弓は精霊を宿す事が可能だった。
そこに魔力量2,000ガルドをエンチャントしたミスリル魔弓は、精霊への魔力供給量を増やし出力を増加した。
最後に勇飛。
両手のガントレットにはサラマンダーを契約。
右手では簡単に描けた魔法陣も、左手ではものすごく描きにくかった。
精霊魔導師としての装備。
ナスカは左右のダガーにヴォルトと下級魔方陣サンダーを組み込み、ミスリルの胸当てには上級魔方陣ボルテクス。
エレナはミスリル両手直剣にシルフと下級魔方陣ウィンド、胸当てに上級魔方陣エアリアルとした。
カインはミスリル魔弓にサラマンダーと下級魔方陣ファイア、腰に装備するミスリルダガーに上級魔方陣インフェルノを組み込んだ。
勇飛は左右のガントレットにサラマンダーと下級魔方陣ファイア。
レガースの右にインフェルノ、左にはエクスプロージョンを組み込んだ。
各々その性能を確認し、精霊魔導師の強さを実感しつつも加減の難しさを知る事となった。
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