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異世界での生活
027 アルテリア冒険者
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翌朝、先に目が覚めたのはリゼ。
目を擦りながらあたりを見渡すと、隣のベットには誰かが眠っている。
千尋だ。
こちら側を向いて寝ている。
急に顔が熱くなるリゼだったが、昨日の夜の事を思い返す。
途中で寝てしまのだろうとは思ったが、椅子ではなくベットに寝ていた。
運んでくれたのも千尋だろう。
恥ずかしさで叫びたくなるがぐっと堪える。
とりあえず昨夜は戦闘したにもかかわらずそのまま寝てしまったのでシャワーを浴びることにした。
リゼがシャワーを浴びて出たところで千尋も起きた。
「リゼおはよー。よく寝れた?」
目を擦りながら挨拶をする千尋。
「お、おはよう!」
急に恥ずかしくなり声が裏返ってしまった。
リゼは千尋に昨夜の事を聞くと、リゼが寝てしまったのでベットに運び、その後千尋はごはんを食べて来たとの事。
夕食のメニューと感想も聞かされた。
アルテリアに帰って来て早々に魔族の襲撃もあったため、疲れがとれないという事で今日のクエストは休む事にした。
昨夜話したエンチャントの件があるので午前の予定は埋まっている。
午後からは昨日断った他の冒険者パーティーと話しをしようと思う。
時刻は十時。
ロビーに集まった四人は西の岩場へと向かった。
蒼真は刀のエンチャントを解除した事により格段に使いやすくなる。
風の魔法が弧を描いて剣先から伸びる。
距離こそ3メートルとそれほど伸びないが、中距離の攻撃を可能とする。
ランを通せば遠距離攻撃も可能となる為問題ない。
続いて火属性魔法。
炎を纏った刀は、刀身よりも多少伸びがあるが近距離でしか使えないようだ。
しかし魔法を発動した状態で対象物に刀を当てると火炎が舞い、燃え移る。
水の魔法はというと、格段に水を集められる速度が早まり、大気中のみならず地面からも水分を吸い上げる事となった。
今まで威力を抑え込んでいた事で、出力の上限が上がったかのように感じる。
千尋はミスリル剣の両方に魔力量2,000の魔石でエンチャント。
魔力を溜める量も2,000ガルドとなった。
千尋は剣を手に持たないで使用する。
地属性魔法で剣を操り、手の動きに連動させるように操作するのだ。
魔力を溜める事は出来るが方向性を持たせる事はできない為、魔剣に比べるとやはり性能は劣る。
それでも通常のミスリル剣に比べれば遥かに高い威力を誇る為そこまで問題ではないだろう。
お昼を食べて、午後からは役所へ向かう。
役所に集まる冒険者達と話をする為だ。
役所の待合室に顔を出した四人に気付いた他の冒険者達が駆け寄ってくる。
三組のパーティーが居たようで、十四人もの人数に囲まれてしまった。
役所にいた三組のパーティーは午前中にクエストを終えて報告に来たところだった。
ここしばらくアルテリアは魔獣の襲撃にあっていた為、街を襲いに来なかった周辺の魔獣が異常繁殖しているとの事。
クエストも多く発注されており、近場での魔獣狩りに出ている冒険者も多い。
三組のパーティーだったがそれぞれ話しかけたいと思う人物に集まって話をする。
ミリーが一番人気で男性六人、女性一人に囲まれていた。
蒼真には三人の女性、リゼには三人の男性、千尋には一人の女性という形になった。
ミリーは少し怯えた様子を見せながらもいつもの調子で会話を進める。
なんだかんだで話し上手だ。
男性陣は顔を紅潮させ、なんとなく下心がありそうにも見える。
そんな事は全く気付く様子もなく会話を続けるミリーは、身振り手振りしながらも会話を楽しんでいた。
蒼真はあまり自分からペラペラ喋るようなタイプではないがやはりモテる。
冒険者であって強いうえに、見た目も良いとくればモテないはずもなく。
「彼女はいますか?」「どんな女性が好みですか?」などと、ひたすら女性達に質問責めにあっていた。
リゼを囲むのは男性三人。
異常なほどの強さを見せつけたリゼだったが、そこはやはり美人。
透き通るような白い肌に輝くブロンドヘア。
大きな目は吸い込まれそうなほど美しい碧眼。
均整のとれた顔立ちには幼さも残しており、美しさと可愛らしさを両立している。
お近付きになりたい男性は多いだろう。
三人とも気を引きたいが為に褒めちぎっているようだ。
千尋に話しかけるのは一人の女性。
年齢は二十歳前後ではないだろうか。
水色の髪を腰まで伸ばしたサラサラのストレートに凛とした濃紺の目と整った顔立ち。
嬉しそうに千尋と会話をするこの女性の頬は薄いピンクに染まっている。
それにやたらと千尋と距離が近い。
千尋と女性は楽しそうに話をしているのだが、それだけなら何もなかっただろう。
しばらくすると女性が千尋の手を握った。
その手を睨みつけるリゼだったが、千尋は気付いていないのでそのまま話しを続けている。
しだいに千尋の手から腕、肩に触れ、顔に触れたところでリゼは我慢の限界を超えた。
と、そこで千尋がそっと女性の手を取って顔から離す。
「ゴメンね」と一言告げると察してくれたらしい。
少し恥ずかしそうに身を引いた。
そしてリゼに向き直り、謝るような仕草をしていた。
リゼが睨んでいた事を気付いていたらしい。
リゼは赤面して視線を逸らしたが、それを見た千尋は首を傾げていた。
それぞれ話しも終わり、全員での情報交換を始める。
他の冒険者達はミスリル製の武器は持っておらず、鋼鉄製の武器が主流だという。
鋼鉄製の武器も多少は魔力が流れるようで、武器を介しての魔法の使用は可能だ。
しかし魔力の流れは遅く、手から直接放出した方が強い魔法を放てる。
その為ほとんどの冒険者は魔法を武器からではなく直接手から放っているという。
武器に流す魔力は、強度を上げる為に地属性魔法をかけている程度。
そして強い冒険者になると鋼鉄製の武器にミスリルを組み込まれたキメラ武器を使用するという。
値段も鋼鉄製の直剣が5~100万リラ程度なのに対し、ミスリルを組み込まれたキメラ直剣は安い物でも300万リラを超える。
さすがにブルーランク以上でないとなかなか手に入れる事はできないようだ。
値段の甲斐あってその性能も高く、強度が高いうえに武器を介しての魔法が可能になる。
強度が高いのはただ受けに強いというわけではなく、研ぎに出す回数も減るとの事。
魔力による強化が向上するためである。
千尋達のパーティーは鋼鉄製の武器を使用した事がない。
それだけでも他の冒険者に比べてかなり優位な立場にある。
リゼも以前のパーティーがかなり強い部類に入っていた事でお金に余裕もあり、最初から一級品武器を購入したとの事。
元々魔力が高かった為、武器を持たなくても魔法だけで魔獣を一掃できたので、しばらくお金を貯めて自分で買ったそうだ。
見た目が気に入ったという理由で7,500万リラのスタッフを……
千尋は鋼鉄製の武器にも興味を示す。
冒険者達はそれぞれ違った武器を持ち、性能云々よりもファンタジーな装備の数々に心を奪われる。
基本的に素手で戦う事の多い千尋にとって、武器の性能よりも見た目に興味があるようだ。
他の冒険者達の武器を手に取り、目をキラキラさせながら眺めている千尋は玩具を手にする子供のようだ。
他の冒険者達もやはりミスリル製の武器に興味があるようで、四人の武器に見入っている。
魔力の流れやすさに驚いただけでなく、造りの良さに驚愕していた。
輝く武器には傷一つなく、色付けされているとはいえ鏡面に仕上げてあるため顔が映り込む。
その装備全てを千尋が造ったと聞いた彼等の見る目が変わったのは言うまでもない。
時間が経つのは早く、気付けば十五時を過ぎていた。
クエストに出ていた冒険者達も複数戻って来て話が盛り上がっている。
そこへ役所の待合室に千尋達が集まっている事を聞いた所長アブドルが挨拶がてら顔を出す。
そこで一つ提案されたのが、アブドルの奢りで今夜は宴会をしようという事だ。
他の冒険者との交流もはかれるし、これまで団結して街を護ってくれた事への労いの意味も込めてだ。
自衛騎士団も交えて今夜は宴会だ! とこの場は解散する事となった。
解散したあとに所長室に呼ばれた四人。
昨夜の魔族の話をし、今後の街の戦力の増強が急務であると判断したアブドル。
しかし戦力の増強と言ってもいったい何をすれば良いのか…… と、ここで千尋がエンチャントを提案する。
何を言っているのかわからないアブドルだったが、千尋の説明を聞いて驚いた。
実は蒼真やリゼ、ミリーの防具は魔力を流れやすいようにエンチャントしてある。
鋼鉄製でも魔力が多少流れる事は知っていたが、通常の魔石は反応しない。
千尋が魔石でエンチャントできたらなと時間をかけて試したところ反応があった。
ミスリルのようにすぐに付属されるわけではなかったが、時間をかける事でエンチャントが完了する。
ミスリルに比べれば魔力の流れは劣るものの、充分な魔力流量となり、地属性魔法で強化すればその性能は跳ね上がる。
所長に蒼真の手甲を渡して確認してもらうと、その魔力の流れに驚いていた。
千尋は現在魔力量300の魔石を200個以上持っている。
練習のつもりで大量に作ったが、魔力量300ともなればなかなか使い道がない事に気付いて作るのをやめていた。
普段銃の弾丸用の魔石で魔力量100ガルドほど。
ミスリル弾はエンチャントに魔力量2,000と発射用に300ガルドを一個ずつ。
他に魔力量300ガルドのを使っているのはリゼのルシファーや全員の防具類のみ。
在庫として大量にあるのでこれを街の戦力の増強に使おうと提案する。
この街を守りたいと思う気持ちは誰よりも強いと自負するアブドルだ。
千尋の提案はとても魅力的で、是非とも首を縦に振りたい。
しかし彼の言葉に甘えるだけで良いのか?
この襲撃にも終止符を打ったのは彼等なのに、さらに甘えてしまってもいいのか?
そう考えれば首を縦に振るわけにはいかなかった。
千尋や蒼真にとってこの世界では初めての街であり、生きていくための力を得た場所。
自分達の知り合いもこの街にはたくさんいる。
冒険者や自衛騎士団はそれら全てを守る為に戦っていた。
それに対して自分達のお礼の気持ちもあるので受け取って欲しいと告げるが、複雑な顔をしながら悩むアブドル。
「オレはこの街が好きだよ!」
千尋のこの言葉を聞き、アブドルも私もだ! と答えて千尋の提案を快く受け取る事にした。
目を擦りながらあたりを見渡すと、隣のベットには誰かが眠っている。
千尋だ。
こちら側を向いて寝ている。
急に顔が熱くなるリゼだったが、昨日の夜の事を思い返す。
途中で寝てしまのだろうとは思ったが、椅子ではなくベットに寝ていた。
運んでくれたのも千尋だろう。
恥ずかしさで叫びたくなるがぐっと堪える。
とりあえず昨夜は戦闘したにもかかわらずそのまま寝てしまったのでシャワーを浴びることにした。
リゼがシャワーを浴びて出たところで千尋も起きた。
「リゼおはよー。よく寝れた?」
目を擦りながら挨拶をする千尋。
「お、おはよう!」
急に恥ずかしくなり声が裏返ってしまった。
リゼは千尋に昨夜の事を聞くと、リゼが寝てしまったのでベットに運び、その後千尋はごはんを食べて来たとの事。
夕食のメニューと感想も聞かされた。
アルテリアに帰って来て早々に魔族の襲撃もあったため、疲れがとれないという事で今日のクエストは休む事にした。
昨夜話したエンチャントの件があるので午前の予定は埋まっている。
午後からは昨日断った他の冒険者パーティーと話しをしようと思う。
時刻は十時。
ロビーに集まった四人は西の岩場へと向かった。
蒼真は刀のエンチャントを解除した事により格段に使いやすくなる。
風の魔法が弧を描いて剣先から伸びる。
距離こそ3メートルとそれほど伸びないが、中距離の攻撃を可能とする。
ランを通せば遠距離攻撃も可能となる為問題ない。
続いて火属性魔法。
炎を纏った刀は、刀身よりも多少伸びがあるが近距離でしか使えないようだ。
しかし魔法を発動した状態で対象物に刀を当てると火炎が舞い、燃え移る。
水の魔法はというと、格段に水を集められる速度が早まり、大気中のみならず地面からも水分を吸い上げる事となった。
今まで威力を抑え込んでいた事で、出力の上限が上がったかのように感じる。
千尋はミスリル剣の両方に魔力量2,000の魔石でエンチャント。
魔力を溜める量も2,000ガルドとなった。
千尋は剣を手に持たないで使用する。
地属性魔法で剣を操り、手の動きに連動させるように操作するのだ。
魔力を溜める事は出来るが方向性を持たせる事はできない為、魔剣に比べるとやはり性能は劣る。
それでも通常のミスリル剣に比べれば遥かに高い威力を誇る為そこまで問題ではないだろう。
お昼を食べて、午後からは役所へ向かう。
役所に集まる冒険者達と話をする為だ。
役所の待合室に顔を出した四人に気付いた他の冒険者達が駆け寄ってくる。
三組のパーティーが居たようで、十四人もの人数に囲まれてしまった。
役所にいた三組のパーティーは午前中にクエストを終えて報告に来たところだった。
ここしばらくアルテリアは魔獣の襲撃にあっていた為、街を襲いに来なかった周辺の魔獣が異常繁殖しているとの事。
クエストも多く発注されており、近場での魔獣狩りに出ている冒険者も多い。
三組のパーティーだったがそれぞれ話しかけたいと思う人物に集まって話をする。
ミリーが一番人気で男性六人、女性一人に囲まれていた。
蒼真には三人の女性、リゼには三人の男性、千尋には一人の女性という形になった。
ミリーは少し怯えた様子を見せながらもいつもの調子で会話を進める。
なんだかんだで話し上手だ。
男性陣は顔を紅潮させ、なんとなく下心がありそうにも見える。
そんな事は全く気付く様子もなく会話を続けるミリーは、身振り手振りしながらも会話を楽しんでいた。
蒼真はあまり自分からペラペラ喋るようなタイプではないがやはりモテる。
冒険者であって強いうえに、見た目も良いとくればモテないはずもなく。
「彼女はいますか?」「どんな女性が好みですか?」などと、ひたすら女性達に質問責めにあっていた。
リゼを囲むのは男性三人。
異常なほどの強さを見せつけたリゼだったが、そこはやはり美人。
透き通るような白い肌に輝くブロンドヘア。
大きな目は吸い込まれそうなほど美しい碧眼。
均整のとれた顔立ちには幼さも残しており、美しさと可愛らしさを両立している。
お近付きになりたい男性は多いだろう。
三人とも気を引きたいが為に褒めちぎっているようだ。
千尋に話しかけるのは一人の女性。
年齢は二十歳前後ではないだろうか。
水色の髪を腰まで伸ばしたサラサラのストレートに凛とした濃紺の目と整った顔立ち。
嬉しそうに千尋と会話をするこの女性の頬は薄いピンクに染まっている。
それにやたらと千尋と距離が近い。
千尋と女性は楽しそうに話をしているのだが、それだけなら何もなかっただろう。
しばらくすると女性が千尋の手を握った。
その手を睨みつけるリゼだったが、千尋は気付いていないのでそのまま話しを続けている。
しだいに千尋の手から腕、肩に触れ、顔に触れたところでリゼは我慢の限界を超えた。
と、そこで千尋がそっと女性の手を取って顔から離す。
「ゴメンね」と一言告げると察してくれたらしい。
少し恥ずかしそうに身を引いた。
そしてリゼに向き直り、謝るような仕草をしていた。
リゼが睨んでいた事を気付いていたらしい。
リゼは赤面して視線を逸らしたが、それを見た千尋は首を傾げていた。
それぞれ話しも終わり、全員での情報交換を始める。
他の冒険者達はミスリル製の武器は持っておらず、鋼鉄製の武器が主流だという。
鋼鉄製の武器も多少は魔力が流れるようで、武器を介しての魔法の使用は可能だ。
しかし魔力の流れは遅く、手から直接放出した方が強い魔法を放てる。
その為ほとんどの冒険者は魔法を武器からではなく直接手から放っているという。
武器に流す魔力は、強度を上げる為に地属性魔法をかけている程度。
そして強い冒険者になると鋼鉄製の武器にミスリルを組み込まれたキメラ武器を使用するという。
値段も鋼鉄製の直剣が5~100万リラ程度なのに対し、ミスリルを組み込まれたキメラ直剣は安い物でも300万リラを超える。
さすがにブルーランク以上でないとなかなか手に入れる事はできないようだ。
値段の甲斐あってその性能も高く、強度が高いうえに武器を介しての魔法が可能になる。
強度が高いのはただ受けに強いというわけではなく、研ぎに出す回数も減るとの事。
魔力による強化が向上するためである。
千尋達のパーティーは鋼鉄製の武器を使用した事がない。
それだけでも他の冒険者に比べてかなり優位な立場にある。
リゼも以前のパーティーがかなり強い部類に入っていた事でお金に余裕もあり、最初から一級品武器を購入したとの事。
元々魔力が高かった為、武器を持たなくても魔法だけで魔獣を一掃できたので、しばらくお金を貯めて自分で買ったそうだ。
見た目が気に入ったという理由で7,500万リラのスタッフを……
千尋は鋼鉄製の武器にも興味を示す。
冒険者達はそれぞれ違った武器を持ち、性能云々よりもファンタジーな装備の数々に心を奪われる。
基本的に素手で戦う事の多い千尋にとって、武器の性能よりも見た目に興味があるようだ。
他の冒険者達の武器を手に取り、目をキラキラさせながら眺めている千尋は玩具を手にする子供のようだ。
他の冒険者達もやはりミスリル製の武器に興味があるようで、四人の武器に見入っている。
魔力の流れやすさに驚いただけでなく、造りの良さに驚愕していた。
輝く武器には傷一つなく、色付けされているとはいえ鏡面に仕上げてあるため顔が映り込む。
その装備全てを千尋が造ったと聞いた彼等の見る目が変わったのは言うまでもない。
時間が経つのは早く、気付けば十五時を過ぎていた。
クエストに出ていた冒険者達も複数戻って来て話が盛り上がっている。
そこへ役所の待合室に千尋達が集まっている事を聞いた所長アブドルが挨拶がてら顔を出す。
そこで一つ提案されたのが、アブドルの奢りで今夜は宴会をしようという事だ。
他の冒険者との交流もはかれるし、これまで団結して街を護ってくれた事への労いの意味も込めてだ。
自衛騎士団も交えて今夜は宴会だ! とこの場は解散する事となった。
解散したあとに所長室に呼ばれた四人。
昨夜の魔族の話をし、今後の街の戦力の増強が急務であると判断したアブドル。
しかし戦力の増強と言ってもいったい何をすれば良いのか…… と、ここで千尋がエンチャントを提案する。
何を言っているのかわからないアブドルだったが、千尋の説明を聞いて驚いた。
実は蒼真やリゼ、ミリーの防具は魔力を流れやすいようにエンチャントしてある。
鋼鉄製でも魔力が多少流れる事は知っていたが、通常の魔石は反応しない。
千尋が魔石でエンチャントできたらなと時間をかけて試したところ反応があった。
ミスリルのようにすぐに付属されるわけではなかったが、時間をかける事でエンチャントが完了する。
ミスリルに比べれば魔力の流れは劣るものの、充分な魔力流量となり、地属性魔法で強化すればその性能は跳ね上がる。
所長に蒼真の手甲を渡して確認してもらうと、その魔力の流れに驚いていた。
千尋は現在魔力量300の魔石を200個以上持っている。
練習のつもりで大量に作ったが、魔力量300ともなればなかなか使い道がない事に気付いて作るのをやめていた。
普段銃の弾丸用の魔石で魔力量100ガルドほど。
ミスリル弾はエンチャントに魔力量2,000と発射用に300ガルドを一個ずつ。
他に魔力量300ガルドのを使っているのはリゼのルシファーや全員の防具類のみ。
在庫として大量にあるのでこれを街の戦力の増強に使おうと提案する。
この街を守りたいと思う気持ちは誰よりも強いと自負するアブドルだ。
千尋の提案はとても魅力的で、是非とも首を縦に振りたい。
しかし彼の言葉に甘えるだけで良いのか?
この襲撃にも終止符を打ったのは彼等なのに、さらに甘えてしまってもいいのか?
そう考えれば首を縦に振るわけにはいかなかった。
千尋や蒼真にとってこの世界では初めての街であり、生きていくための力を得た場所。
自分達の知り合いもこの街にはたくさんいる。
冒険者や自衛騎士団はそれら全てを守る為に戦っていた。
それに対して自分達のお礼の気持ちもあるので受け取って欲しいと告げるが、複雑な顔をしながら悩むアブドル。
「オレはこの街が好きだよ!」
千尋のこの言葉を聞き、アブドルも私もだ! と答えて千尋の提案を快く受け取る事にした。
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