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異世界での生活
024 襲撃と暴走
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ザウス王国の観光をして三日間過ごし、アルテリアに帰る事になった四人。
荷物をまとめ終わり客室に向かう。
ロナウドとエリザ、レオナルドとレミリアが待っており、お世話になった挨拶をする。
「私達の結婚式には是非来て下さいね!」
快く了承する。
レオナルドは騎士である以前に子爵家の息子。
身分違いのレミリアとの結婚となるのであればそれなりの準備が要るという。
一年後の結婚式を予定とし、楽しみに待つことになった。
王国を出る前に一度ミリーの自宅を訪れて挨拶をしてきた。
この日はミリーの母、メイリアもいた。
ミリーに似ていてとても綺麗な女性だ。
今日はミリーがアルテリアに戻ると言うので、休暇をもらったらしい。
役所に届け出をし、アルテリアに戻る際もドラグバードで送ってもらう事ができた。
「さっき役所で妙な事を言われました。アルテリアが今大変なので冒険者さん頑張って下さい! だそうです」
「魔獣が街に来たとかかな?」
「それなら他の冒険者達が倒してるだろう」
「少し嫌な予感がするわね……」
「エドワードさんなにか聞いてないですか?」
御者としてまた送ってくれているエドワードに話しかける。
「さっき話していたように魔獣が襲って来たらしい。それだけなら冒険者達に駆除されて終わりなのだが…… 毎晩のように襲って来るらしい」
「毎晩?」
「以前は街に魔獣が現れる事はなかったが、毎日のように現れるようになったとか。あー、あとは亜種も来たと聞いたな」
「まさかサイクロプス!?」
「いや、そんな強い魔獣は来ていないらしいが、リザードマンの亜種やゴブリンの亜種がいたとの事だ」
「まぁ行ってみればわかるか」
「そうですね。皆さん無事だと良いですが」
少し不安を覚えながら竜車に揺られる一行。
夕方にはアルテリアの屯所に到着し、エドワードにお礼と別れを告げた。
「街が静かね」
「空いてないかもしれませんが役所に行ってみませんか?」
「そうね、行きましょう!」
役所に近づくと冒険者がそこら中に立っており、冒険者だけでなく自衛騎士団も集まっている。
何かを待っているようだ。
店は閉まり、街の人達は家に入っているのだろう。
街人は見当たらず閑散としている。
役所の扉も閉じられており、中に入る事は出来ない。
「私、レイラや研究所の皆んなが気になるからそっちに行きたいけど……」
「じゃあオレはリゼと行くよ!」
「千尋とリゼにはそっち任せてオレとミリーはここで情報集める。千尋達は確認取れたらまたここに戻って来てくれ」
走り出したリゼと千尋。
ミリーと蒼真は冒険者のパーティーに声をかける。
「すみません、私冒険者のミリーといいます。こちらは蒼真さんです。久しぶりにアルテリアに戻って来たところなんですが何かあったんですか?」
「ああ、オレはハウザーだ。このパーティーのリーダーをしている。あんた達は…… シルバーランクか、助かるぜ。ここ最近夕方から夜にかけて魔獣が襲って来てな。店は早めに閉めてもらってオレ達冒険者は魔獣を狩るわけだが、時々強い奴がいるから戦力が欲しかったんだ」
ハウザーという冒険者。
オレンジ色の髪を逆立てており、軽装備ながら周りの冒険者パーティーよりも良質な装備を着ている。
おそらくこの街でも上位の冒険者ではないかと予想される。
ミリーは見た目が派手だという理由だけでハウザーに話しかけたのだが。
「怪我人とかは大丈夫ですか?」
「魔法医に診てもらってるから今のところ死人は出ていない。だがうちのパーティーメンバーも昨日怪我をしちまってな。魔法医に診てもらいたいが重症者を優先してるから断られちまったんだよ……」
見ると顔色が悪い女性冒険者がいる。
装備の腹部に血の跡が見え、軽傷とは思えないが他のパーティーにも怪我人は多くいるだろう。
魔法医も手が回らないというのであれば相当な人数が予想される。
ミリーは女性冒険者に近づいて回復魔法をかける。
一分程で全快し、驚いたような表情をしながらお礼を言う女性。
「ミリーはヒーラーなのか!? ありがとう! っつかあの怪我がもう治ったのか!?」
「ふん、ミリーの回復は凄いだろう。並みの回復速度じゃないぞ」
「ハッ!? ついに蒼真さんが私の自慢を!?」
「確かに凄い回復速度だ…… 魔法医に診せても数時間はかかると思っていたからな」
「…… ハウザーさんも怪我してますね」
パーティーメンバーが範囲内にいる事を確認して全員を回復する。
「ミリーは凄いな。街の魔法医じゃ比べ物にならないほどだ。できれば他の冒険者達も回復してやってほしいが……」
「そうですね。大きな怪我を負った人をまずは集めましょう! 皆さん他の冒険者さん達に声をかけてもらっていいですか?」
頷いてハウザーのパーティーは各冒険者パーティーに怪我人がいないか聞いて回る。
「そろそろ魔獣が出始めるんだよな? オレが狩るからミリーは怪我人を診てやってくれ」
「はい! お願いします!」
ぞろぞろとミリーの下へ十七人もの怪我人が集まった。
重症な者は魔法医の元で治療を受けているらしい。
彼らは軽症というが、腕が折れている者や深めの切り傷がある者など様々だ。
ダメージとしてはかなり大きいだろう。
傷を負って何日も経っている為、回復には時間がかかりそうだ。
自衛騎士団の下へエドワードがやって来る。
騎士団からミリーが怪我人の回復していると聞き、エドワードは蒼真に話しかける。
「屯所に行って事情を聞いて来たんだ。毎日魔獣の軍勢に攻め込まれているとね…… ミリー君には悪いが怪我人の手当てを頼むよ。そして蒼真君は我々と共に戦ってくれ」
「戦うのは構わないが皆んな疲弊しきっているな。できれば全員…… せめて騎士団だけでもミリーや怪我人の防衛に当ててくれないか?」
「まさか君一人でやる気か?」
「オレが討ちもらしたのだけ任せる」
「んん、まあ蒼真君の強さなら大丈夫だとは思うが……」
騎士団に怪我人の防衛を任せ、他の冒険者達は南を、エドワードは北を、東を蒼真が守る。
西は千尋とリゼがいるからと放置する。
ミリーが回復を始めて数分後。
警鐘が鳴り響き、街の東側から魔獣が駆け込んでくる。
リザードマンやワーウルフ、イビルビーストなど種類は様々だ。
数はおよそ三十体。
「ラン。行くぞ」
腕を突き上げてやる気を見せるラン。
風を纏って駆け出す蒼真。
横薙ぎに風刃を飛ばし、魔獣の群へと飛び込む。
吹き荒れる暴風のような蒼真。
完全な無双状態で数十秒で魔獣の群れを殲滅、魔石に還して回収する。
それを見た騎士団や冒険者達は唖然とする。
戻って来た蒼真はエドワードの横に立つ。
「全て任せても良さそうだね……」
苦笑いするエドワード。
すると西側から爆発音と共に乱れ狂う刃が見える。
リゼだろうとすぐにわかった。
上空のインプも全て叩き切られている。
さすが化け物と思いつつも西側の通路を見ると千尋が歩いて来た。
「千尋! あっちはいいのか?」
「うん。リゼが西側は受け持つからこっちよろしくだって」
「ここにいるみんな疲弊しているんだ。南を頼めるか?」
「いいよー!」
軽く返事をする千尋は武器すら持たない女性のように見える。
冒険者達は不安を覚えつつも千尋を見ている。
千尋は冒険者達を一人一人見つめながら考え込む。
「やっぱり皆んなのそういう防具カッコいいよねー。オレもそういうのが欲しいなぁ」
能天気にそんな事を言っている千尋に、ますます心配になる冒険者達だった。
南と北からほぼ同時に魔獣の群れが襲って来た。
南からはサンドリザードマンの群れ。
サンドスパイダーも数匹いるようだ。
総数三十体ほど。
北からはおよそ二十体ほどのリザードマンとワーウルフ、ミノタウロスも三体現れた。
「千尋! 街を壊すなよ!?」
忠告されたのでミスリル弾が使いづらくなった。
蒼真は魔力を練り、周囲に冷気を放つ。
リザードマンの動きが鈍くなり、蒼真に襲いかかるワーウルフを風刃で切り裂く。
動かなくなったリザードマンをサクサクと斬り倒し、ミノタウロスと向かい合う。
千尋も魔力を練りあげ、石を浮かせて魔獣の群れに殴り込む。
右の掌底で爆破させ、サンドリザードマンの腹から破壊する。
また、炸裂弾を二十個ほど作り出して上空から叩き込む。
掌底での爆破は火属性魔法と風属性魔法を圧縮した合成魔法。
それを遠距離魔法として使用するのを炸裂弾と名付けた。
頭大程の爆発しかしないもののその威力は高く、急所を狙えばミノタウロスすら一撃で倒す。
爆破の連鎖に千尋の掌底と蹴り、浮かせた石での追い討ちで次々と崩れ落ちていく魔獣の群れ。
三十体の魔獣は抗う事なく全滅していた。
ミノタウロスに向かう蒼真は全て一撃で叩き伏せ、石斧ごと身体を斬り裂かれて無抵抗に転がっていく。
千尋と蒼真は魔石を回収しミリーの元へ集まる。
少しして西からの戦闘音も聞こえなくなった。
程なくしてリゼも中央広場に戻って来る。
「こっちは終わったの?」
「うん、さっき終わったとこー!」
「西はリゼにしては時間かかったな。魔獣が多かったのか?」
「五十体程度よ? あと亜種もいたわね。ストーンゴーレムの色違いが八体。なかなか倒せなくて時間かかっちゃった!」
「亜種を八体も相手にして平気なんだな」
「うん、亜種いたんだけどね…… リゼがこっち心配だって言うから来たのにー」
呆れる蒼真と不満を漏らす千尋。
「ミリーは怪我人の回復?」
「はい、そろそろ全員終わりそうです!」
「あの…… もう痛くないですよ?」
顔に大きな切り傷を負っていた女性が言う。
「ダメです! 女性なんですから顔の傷はしっかり消さないと!」
他の冒険者達がミリーを女神と呼び始めた。
「ミリーは魔力まだ大丈夫か?」
「まだ半分以上は残ってますよ」
「じゃあ魔法医のとこ行こう。たぶん重症患者もまだ回復終わってないだろうからな。千尋とリゼにここ任せるぞ」
「わかったー」
蒼真とミリーは魔法医院に向かう。
千尋とリゼは冒険者や騎士から話を聞き、今日の襲撃は終わったと判断する。
念のため千尋とリゼがこの中央広場に待機し、冒険者や騎士達にはゆっくりと休んでもらう事にした。
ベンチがあるので二人は腰掛ける。
「リゼも宿屋に戻っていいよ?」
「ダメよ! 千尋は寝ちゃうでしょう!?」
「うん、寝るかも」
「じゃあまたお話しをしましょう!」
蒼真が途中で戻って来て、魔法医院で泊まりがけで回復すると報告して行った。
蒼真もミリーに付いて応急処置の勉強をするという。
話をしながら時間を潰すがお腹は空く。
そこへハウザーのパーティーが気を効かせてくれて宿のご飯を持って来てくれた。
夕食だけでなく夜食も持って来てくれたのはありがたい。
それから少ししてミリーが顔の傷を消した女性が来て、お茶やコーヒーのセットと毛布を持って来てくれた。
彼女はアウラと名乗り、顔の傷を治してくれたミリーには本当に感謝していると涙ながらに言っていた。
夜の街は灯りが少ない。
以前買ってあった光の魔石で灯りにする。
いくら話をしていても眠いものは眠い。
三時を過ぎた頃、千尋の肩にリゼが寄りかかってきた。
どうやら寝てしまったようだ。
リゼに毛布をかけ直し、千尋は目を擦りながらも朝を待った。
夜が明け、太陽の眩しさを感じて目を開くリゼ。
すぐ横に千尋の顔があり、ボッと顔が熱を帯びる。
「おはようリゼ。朝まで魔獣来なかったよ」
「わ、私寝ちゃってた。ゴメンなさい……」
「んん、いいよー」
魔石でポットを温めてコーヒーを淹れる千尋。
コーヒーを渡して一息つく。
「今日は午前中は寝てようねー」
「そうね、今夜も魔獣が来るかもしれないものね」
そこへ朝早くから訪れたのは役所の所長。
「千尋君と君は…… リゼ君か。昨夜は君達が魔獣を退治してくれたと話を聞いてね。ここにいると思って来てみたんだ」
「アブドルさんおはよー。あとただいまっ!」
「もしかしてお邪魔だったかな?」
「いえいえ! 大丈夫ですよ!?」
焦りながら答えるリゼ。
「いやぁすまないね。一昨日あまりにも怪我人が出てしまってね、王国へ魔法医の応援を依頼して来たんだよ」
「それでいなかったんだねー」
「何とか三人程頼む事ができてね、夜通し走って魔法医院に案内したところだよ」
「それならミリーも休めるね!」
「ああ、ミリー君がさっきまで回復魔法をかけていてくれてね。本当に助かった。このお礼は後日でいいかな? 今日は宿に戻ってくれて構わないよ」
「もう少しここにいるわ。ハウザー達が持って来てくれた物を返さないと」
「そうか、では私は行くところがあるからこれで失礼するよ」
アブドルは東側へ向かって行ったところを見ると騎士団の元へ向かったのだろう。
七時を過ぎた頃にハウザーと、昨日怪我をしていた女性リンゼが来た。
少し話をしているとアウラも来た。
千尋とリゼが眠そうな顔をしているのを見て、早く宿へ戻るよう言われた。
夕方また襲撃があるかもしれない。
念のため十四時に冒険者は役所に集まる事にした。
他の冒険者達にはハウザーやアウラが声をかけてくれるそうなので、千尋とリゼは魔法医院に向かう。
魔法医院に着いたが、ミリーも蒼真も寝ていた。
五時まで起きて回復していたとの事で、起こすのは可哀想と寝かせておくことにする。
十四時に役所に行くようにと伝言を頼んで魔法医院をあとにする。
とりあえず宿に戻って受付のレイラに話しかける。
「あら、リゼおはよう。昨夜はどこに行ってたの?」
「魔獣を倒し終わってから中央広場で見張りをしていたのよ…… もう眠くて部屋を借りたいんだけど」
「二人部屋一つでいいわね? はい、契約書」
差し出される契約書にサインをし、千尋もサインする。
普段以上に手際の良いレイラに気付く事なく部屋へと案内される二人。
「じゃあ二人の部屋はここになるから自由に使ってね!」
千尋は眠さのあまりベットに突っ伏して寝てしまった。
そしてリゼは寝ぼけているので気付かなかったが、ベットに横になってから気がつく。
振り向くとやはり向こうのベットに千尋が寝ている。
悶絶するリゼ。
とりあえず部屋を変えてもらおうと受付に駆け込む。
「ねぇレイラ! 私を一人部屋に変えてくれない!?」
「リゼ。一人に二部屋は貸さない決まりよ? それに二人部屋は一人には貸さない決まりにもなっているの。その辺はわかってくれないと」
笑顔の裏には悪い顔をしているのだろう。
「そこを何とかお願いよー!」
「リゼ。ルールを破ってはお客様の信用に関わるの。いくらリゼの頼みとあってもそれだけはできないわ」
「だって千尋が寝てるのよ!?」
「チャン…… 千尋さんは寝てるだけなんだから気にせずもう一つのベットに寝たらいいんじゃない?」
「で、でもー……」
顔を真っ赤にして涙目のリゼ。
「リゼは一体何を考えているのかな?」
笑顔で問いかけるレイラ。
「レイラのいじわる……」
部屋に戻って行くリゼを笑顔で見送るレイラだった。
リゼは仕方なく部屋に戻り、ベットに横になって眠りにつ…………………………
…………………
…………
……
「つけるかーーー!!!」
叫ぶリゼだったが千尋は起きない。
起きるかと思ったのに起きない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(リゼの心の声)
どうしよう。
ほんっとどうしよう。
私はここじゃ眠れない。
もう目が冴えちゃって眠れない。
同じ部屋に千尋が寝てるだけなのになんで眠れないの!?
もうなんだか泣きたいわよ!
でもなんで泣くのかしら……
泣いたってなにも始まらないわ……
ってなにが始まるのよ!?
なんかパニックになってるわ!
まずは落ち着こう。
落ち着く事を考えよう。
そうだ千尋を見れば安心できる!
落ち着けるはず!!
(目を開き千尋を見る)
っっっきゃーーー!!
寝返り打ってこっち向いてる!
なに!?
なんでこっち向いてるのよ!!
私だって魔がさす事だってあるのよ!?
このままじゃ危険なのよー!!
…… あ、頬を掻いた。
…… んん?
あ、肩当てが顔に当たって気になるのね!?
寝辛そうだからちょっと退けてあげ……
ダメーーー!!!
触れちゃったら我慢ができなくなる!
あぁ、でも肩当てすごく邪魔そうね……
でもダメよーーー!!!
はっ!
見てるから気になるのかもっ!
目を瞑って見ないようにしよう!
「うう…… ん……」
ゴソゴソ。
え? なに?
千尋どうしたのかしら……
少し気になるわね。
(目を開くリゼ)
ええ!?
なんであっち向いてるの!?
こっち向いてよぉ……
顔が見たいのに……
あっち側に行ったら見えるけど……
それはおかしいから出来ないわね……
もうこうなったら!
(千尋のベットを魔法で傾ける)
やった!
こっち向いたわ!
これで心置きなく見れ……
じゃないわね、寝ないといけないんだった。
ああ…… でも千尋可愛いわね。
武器を作る時の真剣でカッコいい千尋も良いけど、寝顔は本当に可愛い。
…… あ、髪が顔にかかってる。
邪魔そうね、髪を退けて……
ってダメよーーー!!!
リゼの暴走は続く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
十二時半。
部屋をノックする音が聞こえる。
リゼはバッと起き上がり、部屋のドアを開けた。
部屋の前にはミリーとレイラ、蒼真が立っている。
何故かミリーとレイラは顔を赤くしてニヤニヤとリゼを見ていたが、すぐにツマラなそうな表情に変化する。
「な…… 何か言いたいの!?」
訝しげに問うリゼ。
「何か言いたいのて…… せっかくのチャンスに何なんですかーその顔は!?」
「リゼって意外と度胸がないわよねぇ……」
ミリーとレイラに残念そうに言われる。
「何でわた……」
「ミリーさんに聞いたわよ?」
間髪入れずにレイラが言う。
赤面するリゼに今夜またお話ししましょうかとレイラが耳打ちし、私も参加します! とミリー。
とりあえずシャワーを浴びるようリゼに言い、千尋を起こす蒼真。
リゼの後に千尋もシャワーを浴び、レイラが作ってきてくれたサンドイッチを頬張る。
「あれ? なんで蒼真とミリーいるんだ?」
「昼前まで寝てたんだがな、十四時に役所と聞いたから起こしに来た」
「私達も一人部屋借りてシャワー浴びて来たところですよ!」
「なるほどねー」
「千尋さんとリゼさんが二人部屋借りたと聞いてテンション上がりましたよー!」
「あー、眠くてとりあえずサインしちゃったねー。リゼごめんね」
「わ、わ、私も気付かなくてサインしちゃったから仕方ないわよ!」
赤面しながら答えるリゼ。
「あれ、リゼの目の下にクマが……」
「あ、明るいとなかなか眠れないのよね!」
誤魔化すリゼを相変わらずツマラなそうに見ているミリーだったが。
「契約書は一泊になってるからそこのところ忘れずにね!」
嬉しそうにレイラが言い、ミリーは笑顔でレイラにハイタッチ。
サンドイッチを頬張る千尋と蒼真。
赤面して俯くリゼ。
笑顔でリゼを見るレイラとミリー。
「リゼ! なんかわからないけどサンドイッチ食べなよ!美味しいから!」
「そろそろ行かないとな。早く食え」
言われてヤケになってサンドイッチを頬張るリゼだった。
荷物をまとめ終わり客室に向かう。
ロナウドとエリザ、レオナルドとレミリアが待っており、お世話になった挨拶をする。
「私達の結婚式には是非来て下さいね!」
快く了承する。
レオナルドは騎士である以前に子爵家の息子。
身分違いのレミリアとの結婚となるのであればそれなりの準備が要るという。
一年後の結婚式を予定とし、楽しみに待つことになった。
王国を出る前に一度ミリーの自宅を訪れて挨拶をしてきた。
この日はミリーの母、メイリアもいた。
ミリーに似ていてとても綺麗な女性だ。
今日はミリーがアルテリアに戻ると言うので、休暇をもらったらしい。
役所に届け出をし、アルテリアに戻る際もドラグバードで送ってもらう事ができた。
「さっき役所で妙な事を言われました。アルテリアが今大変なので冒険者さん頑張って下さい! だそうです」
「魔獣が街に来たとかかな?」
「それなら他の冒険者達が倒してるだろう」
「少し嫌な予感がするわね……」
「エドワードさんなにか聞いてないですか?」
御者としてまた送ってくれているエドワードに話しかける。
「さっき話していたように魔獣が襲って来たらしい。それだけなら冒険者達に駆除されて終わりなのだが…… 毎晩のように襲って来るらしい」
「毎晩?」
「以前は街に魔獣が現れる事はなかったが、毎日のように現れるようになったとか。あー、あとは亜種も来たと聞いたな」
「まさかサイクロプス!?」
「いや、そんな強い魔獣は来ていないらしいが、リザードマンの亜種やゴブリンの亜種がいたとの事だ」
「まぁ行ってみればわかるか」
「そうですね。皆さん無事だと良いですが」
少し不安を覚えながら竜車に揺られる一行。
夕方にはアルテリアの屯所に到着し、エドワードにお礼と別れを告げた。
「街が静かね」
「空いてないかもしれませんが役所に行ってみませんか?」
「そうね、行きましょう!」
役所に近づくと冒険者がそこら中に立っており、冒険者だけでなく自衛騎士団も集まっている。
何かを待っているようだ。
店は閉まり、街の人達は家に入っているのだろう。
街人は見当たらず閑散としている。
役所の扉も閉じられており、中に入る事は出来ない。
「私、レイラや研究所の皆んなが気になるからそっちに行きたいけど……」
「じゃあオレはリゼと行くよ!」
「千尋とリゼにはそっち任せてオレとミリーはここで情報集める。千尋達は確認取れたらまたここに戻って来てくれ」
走り出したリゼと千尋。
ミリーと蒼真は冒険者のパーティーに声をかける。
「すみません、私冒険者のミリーといいます。こちらは蒼真さんです。久しぶりにアルテリアに戻って来たところなんですが何かあったんですか?」
「ああ、オレはハウザーだ。このパーティーのリーダーをしている。あんた達は…… シルバーランクか、助かるぜ。ここ最近夕方から夜にかけて魔獣が襲って来てな。店は早めに閉めてもらってオレ達冒険者は魔獣を狩るわけだが、時々強い奴がいるから戦力が欲しかったんだ」
ハウザーという冒険者。
オレンジ色の髪を逆立てており、軽装備ながら周りの冒険者パーティーよりも良質な装備を着ている。
おそらくこの街でも上位の冒険者ではないかと予想される。
ミリーは見た目が派手だという理由だけでハウザーに話しかけたのだが。
「怪我人とかは大丈夫ですか?」
「魔法医に診てもらってるから今のところ死人は出ていない。だがうちのパーティーメンバーも昨日怪我をしちまってな。魔法医に診てもらいたいが重症者を優先してるから断られちまったんだよ……」
見ると顔色が悪い女性冒険者がいる。
装備の腹部に血の跡が見え、軽傷とは思えないが他のパーティーにも怪我人は多くいるだろう。
魔法医も手が回らないというのであれば相当な人数が予想される。
ミリーは女性冒険者に近づいて回復魔法をかける。
一分程で全快し、驚いたような表情をしながらお礼を言う女性。
「ミリーはヒーラーなのか!? ありがとう! っつかあの怪我がもう治ったのか!?」
「ふん、ミリーの回復は凄いだろう。並みの回復速度じゃないぞ」
「ハッ!? ついに蒼真さんが私の自慢を!?」
「確かに凄い回復速度だ…… 魔法医に診せても数時間はかかると思っていたからな」
「…… ハウザーさんも怪我してますね」
パーティーメンバーが範囲内にいる事を確認して全員を回復する。
「ミリーは凄いな。街の魔法医じゃ比べ物にならないほどだ。できれば他の冒険者達も回復してやってほしいが……」
「そうですね。大きな怪我を負った人をまずは集めましょう! 皆さん他の冒険者さん達に声をかけてもらっていいですか?」
頷いてハウザーのパーティーは各冒険者パーティーに怪我人がいないか聞いて回る。
「そろそろ魔獣が出始めるんだよな? オレが狩るからミリーは怪我人を診てやってくれ」
「はい! お願いします!」
ぞろぞろとミリーの下へ十七人もの怪我人が集まった。
重症な者は魔法医の元で治療を受けているらしい。
彼らは軽症というが、腕が折れている者や深めの切り傷がある者など様々だ。
ダメージとしてはかなり大きいだろう。
傷を負って何日も経っている為、回復には時間がかかりそうだ。
自衛騎士団の下へエドワードがやって来る。
騎士団からミリーが怪我人の回復していると聞き、エドワードは蒼真に話しかける。
「屯所に行って事情を聞いて来たんだ。毎日魔獣の軍勢に攻め込まれているとね…… ミリー君には悪いが怪我人の手当てを頼むよ。そして蒼真君は我々と共に戦ってくれ」
「戦うのは構わないが皆んな疲弊しきっているな。できれば全員…… せめて騎士団だけでもミリーや怪我人の防衛に当ててくれないか?」
「まさか君一人でやる気か?」
「オレが討ちもらしたのだけ任せる」
「んん、まあ蒼真君の強さなら大丈夫だとは思うが……」
騎士団に怪我人の防衛を任せ、他の冒険者達は南を、エドワードは北を、東を蒼真が守る。
西は千尋とリゼがいるからと放置する。
ミリーが回復を始めて数分後。
警鐘が鳴り響き、街の東側から魔獣が駆け込んでくる。
リザードマンやワーウルフ、イビルビーストなど種類は様々だ。
数はおよそ三十体。
「ラン。行くぞ」
腕を突き上げてやる気を見せるラン。
風を纏って駆け出す蒼真。
横薙ぎに風刃を飛ばし、魔獣の群へと飛び込む。
吹き荒れる暴風のような蒼真。
完全な無双状態で数十秒で魔獣の群れを殲滅、魔石に還して回収する。
それを見た騎士団や冒険者達は唖然とする。
戻って来た蒼真はエドワードの横に立つ。
「全て任せても良さそうだね……」
苦笑いするエドワード。
すると西側から爆発音と共に乱れ狂う刃が見える。
リゼだろうとすぐにわかった。
上空のインプも全て叩き切られている。
さすが化け物と思いつつも西側の通路を見ると千尋が歩いて来た。
「千尋! あっちはいいのか?」
「うん。リゼが西側は受け持つからこっちよろしくだって」
「ここにいるみんな疲弊しているんだ。南を頼めるか?」
「いいよー!」
軽く返事をする千尋は武器すら持たない女性のように見える。
冒険者達は不安を覚えつつも千尋を見ている。
千尋は冒険者達を一人一人見つめながら考え込む。
「やっぱり皆んなのそういう防具カッコいいよねー。オレもそういうのが欲しいなぁ」
能天気にそんな事を言っている千尋に、ますます心配になる冒険者達だった。
南と北からほぼ同時に魔獣の群れが襲って来た。
南からはサンドリザードマンの群れ。
サンドスパイダーも数匹いるようだ。
総数三十体ほど。
北からはおよそ二十体ほどのリザードマンとワーウルフ、ミノタウロスも三体現れた。
「千尋! 街を壊すなよ!?」
忠告されたのでミスリル弾が使いづらくなった。
蒼真は魔力を練り、周囲に冷気を放つ。
リザードマンの動きが鈍くなり、蒼真に襲いかかるワーウルフを風刃で切り裂く。
動かなくなったリザードマンをサクサクと斬り倒し、ミノタウロスと向かい合う。
千尋も魔力を練りあげ、石を浮かせて魔獣の群れに殴り込む。
右の掌底で爆破させ、サンドリザードマンの腹から破壊する。
また、炸裂弾を二十個ほど作り出して上空から叩き込む。
掌底での爆破は火属性魔法と風属性魔法を圧縮した合成魔法。
それを遠距離魔法として使用するのを炸裂弾と名付けた。
頭大程の爆発しかしないもののその威力は高く、急所を狙えばミノタウロスすら一撃で倒す。
爆破の連鎖に千尋の掌底と蹴り、浮かせた石での追い討ちで次々と崩れ落ちていく魔獣の群れ。
三十体の魔獣は抗う事なく全滅していた。
ミノタウロスに向かう蒼真は全て一撃で叩き伏せ、石斧ごと身体を斬り裂かれて無抵抗に転がっていく。
千尋と蒼真は魔石を回収しミリーの元へ集まる。
少しして西からの戦闘音も聞こえなくなった。
程なくしてリゼも中央広場に戻って来る。
「こっちは終わったの?」
「うん、さっき終わったとこー!」
「西はリゼにしては時間かかったな。魔獣が多かったのか?」
「五十体程度よ? あと亜種もいたわね。ストーンゴーレムの色違いが八体。なかなか倒せなくて時間かかっちゃった!」
「亜種を八体も相手にして平気なんだな」
「うん、亜種いたんだけどね…… リゼがこっち心配だって言うから来たのにー」
呆れる蒼真と不満を漏らす千尋。
「ミリーは怪我人の回復?」
「はい、そろそろ全員終わりそうです!」
「あの…… もう痛くないですよ?」
顔に大きな切り傷を負っていた女性が言う。
「ダメです! 女性なんですから顔の傷はしっかり消さないと!」
他の冒険者達がミリーを女神と呼び始めた。
「ミリーは魔力まだ大丈夫か?」
「まだ半分以上は残ってますよ」
「じゃあ魔法医のとこ行こう。たぶん重症患者もまだ回復終わってないだろうからな。千尋とリゼにここ任せるぞ」
「わかったー」
蒼真とミリーは魔法医院に向かう。
千尋とリゼは冒険者や騎士から話を聞き、今日の襲撃は終わったと判断する。
念のため千尋とリゼがこの中央広場に待機し、冒険者や騎士達にはゆっくりと休んでもらう事にした。
ベンチがあるので二人は腰掛ける。
「リゼも宿屋に戻っていいよ?」
「ダメよ! 千尋は寝ちゃうでしょう!?」
「うん、寝るかも」
「じゃあまたお話しをしましょう!」
蒼真が途中で戻って来て、魔法医院で泊まりがけで回復すると報告して行った。
蒼真もミリーに付いて応急処置の勉強をするという。
話をしながら時間を潰すがお腹は空く。
そこへハウザーのパーティーが気を効かせてくれて宿のご飯を持って来てくれた。
夕食だけでなく夜食も持って来てくれたのはありがたい。
それから少ししてミリーが顔の傷を消した女性が来て、お茶やコーヒーのセットと毛布を持って来てくれた。
彼女はアウラと名乗り、顔の傷を治してくれたミリーには本当に感謝していると涙ながらに言っていた。
夜の街は灯りが少ない。
以前買ってあった光の魔石で灯りにする。
いくら話をしていても眠いものは眠い。
三時を過ぎた頃、千尋の肩にリゼが寄りかかってきた。
どうやら寝てしまったようだ。
リゼに毛布をかけ直し、千尋は目を擦りながらも朝を待った。
夜が明け、太陽の眩しさを感じて目を開くリゼ。
すぐ横に千尋の顔があり、ボッと顔が熱を帯びる。
「おはようリゼ。朝まで魔獣来なかったよ」
「わ、私寝ちゃってた。ゴメンなさい……」
「んん、いいよー」
魔石でポットを温めてコーヒーを淹れる千尋。
コーヒーを渡して一息つく。
「今日は午前中は寝てようねー」
「そうね、今夜も魔獣が来るかもしれないものね」
そこへ朝早くから訪れたのは役所の所長。
「千尋君と君は…… リゼ君か。昨夜は君達が魔獣を退治してくれたと話を聞いてね。ここにいると思って来てみたんだ」
「アブドルさんおはよー。あとただいまっ!」
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「ああ、ミリー君がさっきまで回復魔法をかけていてくれてね。本当に助かった。このお礼は後日でいいかな? 今日は宿に戻ってくれて構わないよ」
「もう少しここにいるわ。ハウザー達が持って来てくれた物を返さないと」
「そうか、では私は行くところがあるからこれで失礼するよ」
アブドルは東側へ向かって行ったところを見ると騎士団の元へ向かったのだろう。
七時を過ぎた頃にハウザーと、昨日怪我をしていた女性リンゼが来た。
少し話をしているとアウラも来た。
千尋とリゼが眠そうな顔をしているのを見て、早く宿へ戻るよう言われた。
夕方また襲撃があるかもしれない。
念のため十四時に冒険者は役所に集まる事にした。
他の冒険者達にはハウザーやアウラが声をかけてくれるそうなので、千尋とリゼは魔法医院に向かう。
魔法医院に着いたが、ミリーも蒼真も寝ていた。
五時まで起きて回復していたとの事で、起こすのは可哀想と寝かせておくことにする。
十四時に役所に行くようにと伝言を頼んで魔法医院をあとにする。
とりあえず宿に戻って受付のレイラに話しかける。
「あら、リゼおはよう。昨夜はどこに行ってたの?」
「魔獣を倒し終わってから中央広場で見張りをしていたのよ…… もう眠くて部屋を借りたいんだけど」
「二人部屋一つでいいわね? はい、契約書」
差し出される契約書にサインをし、千尋もサインする。
普段以上に手際の良いレイラに気付く事なく部屋へと案内される二人。
「じゃあ二人の部屋はここになるから自由に使ってね!」
千尋は眠さのあまりベットに突っ伏して寝てしまった。
そしてリゼは寝ぼけているので気付かなかったが、ベットに横になってから気がつく。
振り向くとやはり向こうのベットに千尋が寝ている。
悶絶するリゼ。
とりあえず部屋を変えてもらおうと受付に駆け込む。
「ねぇレイラ! 私を一人部屋に変えてくれない!?」
「リゼ。一人に二部屋は貸さない決まりよ? それに二人部屋は一人には貸さない決まりにもなっているの。その辺はわかってくれないと」
笑顔の裏には悪い顔をしているのだろう。
「そこを何とかお願いよー!」
「リゼ。ルールを破ってはお客様の信用に関わるの。いくらリゼの頼みとあってもそれだけはできないわ」
「だって千尋が寝てるのよ!?」
「チャン…… 千尋さんは寝てるだけなんだから気にせずもう一つのベットに寝たらいいんじゃない?」
「で、でもー……」
顔を真っ赤にして涙目のリゼ。
「リゼは一体何を考えているのかな?」
笑顔で問いかけるレイラ。
「レイラのいじわる……」
部屋に戻って行くリゼを笑顔で見送るレイラだった。
リゼは仕方なく部屋に戻り、ベットに横になって眠りにつ…………………………
…………………
…………
……
「つけるかーーー!!!」
叫ぶリゼだったが千尋は起きない。
起きるかと思ったのに起きない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(リゼの心の声)
どうしよう。
ほんっとどうしよう。
私はここじゃ眠れない。
もう目が冴えちゃって眠れない。
同じ部屋に千尋が寝てるだけなのになんで眠れないの!?
もうなんだか泣きたいわよ!
でもなんで泣くのかしら……
泣いたってなにも始まらないわ……
ってなにが始まるのよ!?
なんかパニックになってるわ!
まずは落ち着こう。
落ち着く事を考えよう。
そうだ千尋を見れば安心できる!
落ち着けるはず!!
(目を開き千尋を見る)
っっっきゃーーー!!
寝返り打ってこっち向いてる!
なに!?
なんでこっち向いてるのよ!!
私だって魔がさす事だってあるのよ!?
このままじゃ危険なのよー!!
…… あ、頬を掻いた。
…… んん?
あ、肩当てが顔に当たって気になるのね!?
寝辛そうだからちょっと退けてあげ……
ダメーーー!!!
触れちゃったら我慢ができなくなる!
あぁ、でも肩当てすごく邪魔そうね……
でもダメよーーー!!!
はっ!
見てるから気になるのかもっ!
目を瞑って見ないようにしよう!
「うう…… ん……」
ゴソゴソ。
え? なに?
千尋どうしたのかしら……
少し気になるわね。
(目を開くリゼ)
ええ!?
なんであっち向いてるの!?
こっち向いてよぉ……
顔が見たいのに……
あっち側に行ったら見えるけど……
それはおかしいから出来ないわね……
もうこうなったら!
(千尋のベットを魔法で傾ける)
やった!
こっち向いたわ!
これで心置きなく見れ……
じゃないわね、寝ないといけないんだった。
ああ…… でも千尋可愛いわね。
武器を作る時の真剣でカッコいい千尋も良いけど、寝顔は本当に可愛い。
…… あ、髪が顔にかかってる。
邪魔そうね、髪を退けて……
ってダメよーーー!!!
リゼの暴走は続く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
十二時半。
部屋をノックする音が聞こえる。
リゼはバッと起き上がり、部屋のドアを開けた。
部屋の前にはミリーとレイラ、蒼真が立っている。
何故かミリーとレイラは顔を赤くしてニヤニヤとリゼを見ていたが、すぐにツマラなそうな表情に変化する。
「な…… 何か言いたいの!?」
訝しげに問うリゼ。
「何か言いたいのて…… せっかくのチャンスに何なんですかーその顔は!?」
「リゼって意外と度胸がないわよねぇ……」
ミリーとレイラに残念そうに言われる。
「何でわた……」
「ミリーさんに聞いたわよ?」
間髪入れずにレイラが言う。
赤面するリゼに今夜またお話ししましょうかとレイラが耳打ちし、私も参加します! とミリー。
とりあえずシャワーを浴びるようリゼに言い、千尋を起こす蒼真。
リゼの後に千尋もシャワーを浴び、レイラが作ってきてくれたサンドイッチを頬張る。
「あれ? なんで蒼真とミリーいるんだ?」
「昼前まで寝てたんだがな、十四時に役所と聞いたから起こしに来た」
「私達も一人部屋借りてシャワー浴びて来たところですよ!」
「なるほどねー」
「千尋さんとリゼさんが二人部屋借りたと聞いてテンション上がりましたよー!」
「あー、眠くてとりあえずサインしちゃったねー。リゼごめんね」
「わ、わ、私も気付かなくてサインしちゃったから仕方ないわよ!」
赤面しながら答えるリゼ。
「あれ、リゼの目の下にクマが……」
「あ、明るいとなかなか眠れないのよね!」
誤魔化すリゼを相変わらずツマラなそうに見ているミリーだったが。
「契約書は一泊になってるからそこのところ忘れずにね!」
嬉しそうにレイラが言い、ミリーは笑顔でレイラにハイタッチ。
サンドイッチを頬張る千尋と蒼真。
赤面して俯くリゼ。
笑顔でリゼを見るレイラとミリー。
「リゼ! なんかわからないけどサンドイッチ食べなよ!美味しいから!」
「そろそろ行かないとな。早く食え」
言われてヤケになってサンドイッチを頬張るリゼだった。
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