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異世界での生活
017 ザウス王国へ
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やっとレベル7になった三人。
食後、エイルの食堂にて。
「実はロナウド様…… レオナルドの父から手紙が届いていたの。あなた達がレベル7になったら見せるように書かれてあったわ」
手紙を差し出すリゼ。
「ふむ、レベル7になったら自衛騎士団の屯所に行けとの事ですね」
「王国騎士が迎えにきてるんだねー」
「王国までは何で行くんだろうな。歩きか?」
「王国騎士ならドラグバードで来てるかもしれないわ。王国はアルテリア東側に見える山の向こう側にあるから歩きで二日ほど。ドラグバードで五時間くらいかかるわね」
「山? あのかなり遠くに見えるあれか……」
「ドラグバードってどんなの?」
「ドラゴン系の魔獣で背中に羽毛が生えてるの。バードとはいっても飛べないわね。騎士団ではテイムストーンを使って育てたドラグバードを飼い慣らしてるわ」
「魔獣も飼えるんだね」
「テイムストーンは魔獣が小さなうちに与えて育てないと効果がないみたいよ」
この世界の生物は全てが魔力を持っている。
その為、動物という扱いではなく魔獣と呼ばれているそうだ。
家畜など飼われている魔獣も存在するが、全てが小さなうちにテイムストーンを与えられて人間を襲わないように躾けられる。
食用の肉は、家畜として育てられた魔獣の他、野生の魔獣を捕獲している。
地域にもよるがクエストとして発注され、精肉業者同行の元で狩りが行われる。
翌日、とりあえず話を聞く為に、アルテリアの東側にある自衛騎士団屯所に向かう。
屯所内に入ると、奥の方に鎧を着たガタイのいい男が座っている。
髭を蓄えた五十代と思われる男だ。
「こんにちわ。冒険者のミリーと申しますが、こちらに来ている王国騎士の方にお会いしたいんですが」
ミリーが話しかける。
「んん? おお、エドワードが待っていたのは君達か。少し待ってなさい」
待っていると髭の騎士と金髪の騎士が戻って来た。
青く優しそうな目をした男で、歳の頃は三十前後と思われる。
「やあ、私はエドワード。ロナウド様の命令で君達を迎えに来たんだが…… ロナウド様からの手紙を見せてくれるかな?」
リゼは手紙をエドワードに渡す。
「ふむ、君がリゼだね。まずは君達のレベルを測定させてもらおう。ロナウド様からリゼと同じレベルを条件として出されている」
リゼ:レベル7 魔力量72,917ガルド
千尋:レベル7 魔力量18,082ガルド
蒼真:レベル7 魔力量17,815ガルド
ミリー:レベル7 魔力量46,573ガルド
「レベルは確かに同じだが…… 女性二人は我々王国騎士を上回るほどだね」
「どーせオレ達は低いですよーだ」
口を尖らせて文句を言う千尋。
だが千尋や蒼真の魔力量は現時点では低くない。
並みの冒険者のレベル10と同程度まで上昇している。
「魔力量が全てではない。ロナウド様は実力を示せと言っていたからね。君達が強いと証明すればいいだけさ。とりあえずは合格だ。準備ができたら出発する」
「王国までは何で行くんですか?」
「ドラグバードに乗用車を付けてある。十時に出たとして十六時頃には王国に着けると思う」
この日出発する事にし、四人は準備をしてくる事を告げて宿に戻る。
レイラに挨拶して部屋をチェックアウトする。
あとは役所でザウス王国に行く事を告げ、五人分の弁当を買って屯所へ向かう。
一つ多いのはエドワードの弁当だ。
屯所に着いたのが九時半過ぎ。
ドラグバードを初めて見る千尋と蒼真。
恐竜のような姿をし、背中に羽毛、大きくはない羽根もついているが飛べそうにはない。
地を走る魔獣の為か足の筋肉が発達していて力強さを感じさせる。
大きさは頭の高さで2メートル程、頭の先から尻尾の先まで約5メートルとかなり大型のモンスターだ。
身体に革製の留め具を付け、ロープで車を繋いでいる。
車輪は四輪でゴム製のタイヤと金属のホイールが取り付けられている。これも以前この世界に来た者が広めたのだろう。
車内は大人六人がゆっくりと座れるほどの広さがあり快適だ。
御者席にも三人ほど乗れるスペースがある。
エドワードが御者席に座り、千尋達は車内に荷物を持って乗り込む。
「では出発するがいいかい?」
はい! と応えてドラグバードは歩みを進める。
思ったよりも走りは速い。
ゴン! ガタン! ゴゴン! と車内には振動と音が響く。
舗装路ではない上に車輪の接続部にはサスペンションがない為、ゴツゴツとした乗り心地だ。
「千尋。乗り物はいいな」
「うん、速いからいいよねー」
「だがこれは振動が大きいな」
「そうだねー。あまり乗り心地は良くないよね」
「千尋。リゼの冒険の許可が出たらオレ達の乗り物を作ってくれ」
もちろん蒼真は動力の事など考えていない。
この竜車と同じようにドラグバードを買えばいいんじゃないか程度だ。
「えー。そんな簡単に作れって言うけどさぁ、オレにもできる事とできない事があるんだよ? そもそもエンジンを開発するだけでも相当時間がかかるよ!?」
エンジンを開発!?
リゼやミリーだけだなく蒼真も驚いている。
「…… それでもいいから作ってくれ」
千尋ならエンジンも作れるかもしれないと思う蒼真だった。
「リゼをやっと冒険に連れ出せるかもしれないのにそんな時間のかかる物を作れと!?」
「昨日のサイクロプス戦で思ったんだ。弁当も魔石も荷物だし、歩きで多くの荷物を運ぶのは大変だ。大量の荷物を持った状態で魔獣に襲われたらどうする? とても危険だろう?」
「まぁそれはそうなんだけど……」
「今後長旅だった場合は大量の荷物を運ぶわけだろう? 野営の荷物もあるわけだ。それをリゼやミリーが背負っているのを想像してみろ」
「…… 乗り物欲しいかな」
「単純ね……」
「ほんとに作るんでしょうか……」
「ねぇ蒼真。もしかして野営したくないから言ってるんじゃないか?」
「そんなことは無い!」
言いながら蒼真は横を向いた。
時刻は十四時半。
やっとザウス王国城下町までたどり着いた竜車。
城下町から王国の城門までも直線距離でおよそ五キロ程ある。
城下町を見学したいとも思ったが、竜車は真っ直ぐに王国へと向かう。
王国の西側城門。
城門の手前に騎士団の屯所がある。ここは城門警備騎士の屯所だ。
御者席から警備騎士へとロナウドの書状を見せる。
聖騎士長ロナウドからの書状は、この国では絶対的な力を持つ。
千尋達四人は審査一切なく王国内へと入る事ができた。
エドワードは竜車を屯所に預け、歩きで城門を抜ける。
城門からは貴族街となり、建っている建物はどれもが豪邸。
広い敷地に大きな邸宅があり、城に近い程爵位の高い貴族が住んでいるという。
ザウス王国は人口三百万を超える大きな国だ。
城下町を見れなかったし貴族街だけでもと思ったが、どこに寄る事もなく訓練所まで案内される。
少し残念だなと思う千尋達だった。
案内されたのは王城のすぐ近くにある訓練所。
他にも複数の訓練所があるそうだが、聖騎士長ロナウドの待つ訓練所は、最高位の騎士が訓練するこの場所らしい。
聖騎士や騎士団の中でも上位の百二十名、上位騎士が訓練する場所だという。
聖騎士長の下に聖騎士が十二名。
その下に騎士団団長がおり、各訓練所で訓練、または警備や街の治安を守るなどの仕事の指揮をとる。
上位騎士は騎士団の中でも戦闘能力の高い者がそう呼ばれる。
訓練所の中へと案内され、警備の者にエドワードが言伝を頼む。
待合室に通されてしばらく待つ。
紅茶を飲みながら外の景色を眺める千尋。
布で刀を磨く蒼真。勝手に出てくるランは刀の汚れを指差して指示する。
ミリーは椅子に座ってお昼寝。
リゼだけがソワソワしている。
そして十六時。
訓練所内の闘技場へと案内される。
待ち構えるのは聖騎士長ロナウド。
そして聖騎士十二名と上位騎士百二十名。
エドワードはゴクリと唾を飲む。
嬉しそうに騎士を見る千尋と蒼真。
さて、どんな展開になるのか……
食後、エイルの食堂にて。
「実はロナウド様…… レオナルドの父から手紙が届いていたの。あなた達がレベル7になったら見せるように書かれてあったわ」
手紙を差し出すリゼ。
「ふむ、レベル7になったら自衛騎士団の屯所に行けとの事ですね」
「王国騎士が迎えにきてるんだねー」
「王国までは何で行くんだろうな。歩きか?」
「王国騎士ならドラグバードで来てるかもしれないわ。王国はアルテリア東側に見える山の向こう側にあるから歩きで二日ほど。ドラグバードで五時間くらいかかるわね」
「山? あのかなり遠くに見えるあれか……」
「ドラグバードってどんなの?」
「ドラゴン系の魔獣で背中に羽毛が生えてるの。バードとはいっても飛べないわね。騎士団ではテイムストーンを使って育てたドラグバードを飼い慣らしてるわ」
「魔獣も飼えるんだね」
「テイムストーンは魔獣が小さなうちに与えて育てないと効果がないみたいよ」
この世界の生物は全てが魔力を持っている。
その為、動物という扱いではなく魔獣と呼ばれているそうだ。
家畜など飼われている魔獣も存在するが、全てが小さなうちにテイムストーンを与えられて人間を襲わないように躾けられる。
食用の肉は、家畜として育てられた魔獣の他、野生の魔獣を捕獲している。
地域にもよるがクエストとして発注され、精肉業者同行の元で狩りが行われる。
翌日、とりあえず話を聞く為に、アルテリアの東側にある自衛騎士団屯所に向かう。
屯所内に入ると、奥の方に鎧を着たガタイのいい男が座っている。
髭を蓄えた五十代と思われる男だ。
「こんにちわ。冒険者のミリーと申しますが、こちらに来ている王国騎士の方にお会いしたいんですが」
ミリーが話しかける。
「んん? おお、エドワードが待っていたのは君達か。少し待ってなさい」
待っていると髭の騎士と金髪の騎士が戻って来た。
青く優しそうな目をした男で、歳の頃は三十前後と思われる。
「やあ、私はエドワード。ロナウド様の命令で君達を迎えに来たんだが…… ロナウド様からの手紙を見せてくれるかな?」
リゼは手紙をエドワードに渡す。
「ふむ、君がリゼだね。まずは君達のレベルを測定させてもらおう。ロナウド様からリゼと同じレベルを条件として出されている」
リゼ:レベル7 魔力量72,917ガルド
千尋:レベル7 魔力量18,082ガルド
蒼真:レベル7 魔力量17,815ガルド
ミリー:レベル7 魔力量46,573ガルド
「レベルは確かに同じだが…… 女性二人は我々王国騎士を上回るほどだね」
「どーせオレ達は低いですよーだ」
口を尖らせて文句を言う千尋。
だが千尋や蒼真の魔力量は現時点では低くない。
並みの冒険者のレベル10と同程度まで上昇している。
「魔力量が全てではない。ロナウド様は実力を示せと言っていたからね。君達が強いと証明すればいいだけさ。とりあえずは合格だ。準備ができたら出発する」
「王国までは何で行くんですか?」
「ドラグバードに乗用車を付けてある。十時に出たとして十六時頃には王国に着けると思う」
この日出発する事にし、四人は準備をしてくる事を告げて宿に戻る。
レイラに挨拶して部屋をチェックアウトする。
あとは役所でザウス王国に行く事を告げ、五人分の弁当を買って屯所へ向かう。
一つ多いのはエドワードの弁当だ。
屯所に着いたのが九時半過ぎ。
ドラグバードを初めて見る千尋と蒼真。
恐竜のような姿をし、背中に羽毛、大きくはない羽根もついているが飛べそうにはない。
地を走る魔獣の為か足の筋肉が発達していて力強さを感じさせる。
大きさは頭の高さで2メートル程、頭の先から尻尾の先まで約5メートルとかなり大型のモンスターだ。
身体に革製の留め具を付け、ロープで車を繋いでいる。
車輪は四輪でゴム製のタイヤと金属のホイールが取り付けられている。これも以前この世界に来た者が広めたのだろう。
車内は大人六人がゆっくりと座れるほどの広さがあり快適だ。
御者席にも三人ほど乗れるスペースがある。
エドワードが御者席に座り、千尋達は車内に荷物を持って乗り込む。
「では出発するがいいかい?」
はい! と応えてドラグバードは歩みを進める。
思ったよりも走りは速い。
ゴン! ガタン! ゴゴン! と車内には振動と音が響く。
舗装路ではない上に車輪の接続部にはサスペンションがない為、ゴツゴツとした乗り心地だ。
「千尋。乗り物はいいな」
「うん、速いからいいよねー」
「だがこれは振動が大きいな」
「そうだねー。あまり乗り心地は良くないよね」
「千尋。リゼの冒険の許可が出たらオレ達の乗り物を作ってくれ」
もちろん蒼真は動力の事など考えていない。
この竜車と同じようにドラグバードを買えばいいんじゃないか程度だ。
「えー。そんな簡単に作れって言うけどさぁ、オレにもできる事とできない事があるんだよ? そもそもエンジンを開発するだけでも相当時間がかかるよ!?」
エンジンを開発!?
リゼやミリーだけだなく蒼真も驚いている。
「…… それでもいいから作ってくれ」
千尋ならエンジンも作れるかもしれないと思う蒼真だった。
「リゼをやっと冒険に連れ出せるかもしれないのにそんな時間のかかる物を作れと!?」
「昨日のサイクロプス戦で思ったんだ。弁当も魔石も荷物だし、歩きで多くの荷物を運ぶのは大変だ。大量の荷物を持った状態で魔獣に襲われたらどうする? とても危険だろう?」
「まぁそれはそうなんだけど……」
「今後長旅だった場合は大量の荷物を運ぶわけだろう? 野営の荷物もあるわけだ。それをリゼやミリーが背負っているのを想像してみろ」
「…… 乗り物欲しいかな」
「単純ね……」
「ほんとに作るんでしょうか……」
「ねぇ蒼真。もしかして野営したくないから言ってるんじゃないか?」
「そんなことは無い!」
言いながら蒼真は横を向いた。
時刻は十四時半。
やっとザウス王国城下町までたどり着いた竜車。
城下町から王国の城門までも直線距離でおよそ五キロ程ある。
城下町を見学したいとも思ったが、竜車は真っ直ぐに王国へと向かう。
王国の西側城門。
城門の手前に騎士団の屯所がある。ここは城門警備騎士の屯所だ。
御者席から警備騎士へとロナウドの書状を見せる。
聖騎士長ロナウドからの書状は、この国では絶対的な力を持つ。
千尋達四人は審査一切なく王国内へと入る事ができた。
エドワードは竜車を屯所に預け、歩きで城門を抜ける。
城門からは貴族街となり、建っている建物はどれもが豪邸。
広い敷地に大きな邸宅があり、城に近い程爵位の高い貴族が住んでいるという。
ザウス王国は人口三百万を超える大きな国だ。
城下町を見れなかったし貴族街だけでもと思ったが、どこに寄る事もなく訓練所まで案内される。
少し残念だなと思う千尋達だった。
案内されたのは王城のすぐ近くにある訓練所。
他にも複数の訓練所があるそうだが、聖騎士長ロナウドの待つ訓練所は、最高位の騎士が訓練するこの場所らしい。
聖騎士や騎士団の中でも上位の百二十名、上位騎士が訓練する場所だという。
聖騎士長の下に聖騎士が十二名。
その下に騎士団団長がおり、各訓練所で訓練、または警備や街の治安を守るなどの仕事の指揮をとる。
上位騎士は騎士団の中でも戦闘能力の高い者がそう呼ばれる。
訓練所の中へと案内され、警備の者にエドワードが言伝を頼む。
待合室に通されてしばらく待つ。
紅茶を飲みながら外の景色を眺める千尋。
布で刀を磨く蒼真。勝手に出てくるランは刀の汚れを指差して指示する。
ミリーは椅子に座ってお昼寝。
リゼだけがソワソワしている。
そして十六時。
訓練所内の闘技場へと案内される。
待ち構えるのは聖騎士長ロナウド。
そして聖騎士十二名と上位騎士百二十名。
エドワードはゴクリと唾を飲む。
嬉しそうに騎士を見る千尋と蒼真。
さて、どんな展開になるのか……
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