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異世界での生活
004 勉強会
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この世界に来て十一日目。
午前は勉強、午後から練習の日々を過ごす毎日。
そして今日の十五時からは研究者達との話し合いとなり、研究課題に対して千尋と蒼真の知識を提供する事になっている。
リゼも地球から来たとはいえ、まだ八歳だった。
千尋や蒼真、高校生と比べれば知識量は歴然の差だ。
そして千尋は別として蒼真は頭がいい。
千尋は学年中の真ん中くらいで興味がないと勉強を一切しない極端振り。
それに対し、蒼真は学年中常に上位。
全て蒼真に任せて良いんじゃないかと思っている千尋だったが、魔石を生み出せる時点で逃れられない。
午後の訓練では四大属性以外にできる事を模索する事になった。
二人は自分が思う魔法を考え、試行錯誤しながら魔法を作り込む。
二時間はあっという間に過ぎてしまったが、やはり魔法を使うのは楽しい。
納得のできる魔法を二人は完成させられなかったようだが、思いつき程度にリゼに見せた。
理由は名前のある魔法かもしれないからだ。
蒼真は重力操作。
リゼに魔法をかけて怒られ、リゼも蒼真にやり返していた。
魔法名重力操作と安直な名前だった。
この重力操作は物質だけでなく人間や生物にも使えるが、対象が魔力を制御できる場合には簡単に解除されてしまうようだ。
次に千尋は手の指から放電して見せた。
スタンガンをイメージし、親指と中指で放電させた。
困った事にこれも研究課題にあるらしく、千尋には説明できないのが問題だ。
単純にイメージだけでできてしまう器用さだった。
十五時からの話し合い。
最初のテーマは魔石の作り方だったのだが、千尋の行う魔力の圧縮が他に出来る人がいないと、すぐに打ち切られた。
続いて蒼真の氷魔法。
まずはやって見せようと、蒼真が大気中から水を集める。
その瞬間驚きの声があがる。
やはりその辺の知識が無いようだ。
リゼも驚いていたが、地球には八歳までしかいなかった少女が知らなくても不思議ではなかった。
蒼真は大気の事から説明を始め、大気中には窒素、酸素、二酸化炭素、その他は省くが、温度や湿度も存在し、雲は高湿度の集合体と説明した。
ここで火の話も付け加えた。
火に酸素を送り込むと火力が増す事。
それを聞いた研究者達は風で空気を送り込む事で火属性魔法を強くする理由を理解した。
そして本題の氷の話に進む。
まずは熱の話を始め、熱とは物質を構成する粒子の運動エネルギーであると言い切った。
しかし科学的な話をされても研究者達は全くわからない。
そもそも粒子を知らないので当然である。
粒子とは物質を粒として見たときの構成物、分子とは~…… と云々。
話をジッと聞き続ける研究者達とメモをひたすら取り続ける研究者が三名。
メモを取る三人は研究者の中でも若い。
リゼが一番若いのだが、アルバイトというか協力者というポジションの為かメモ係ではない。
一通り物理学的な説明を終えた蒼真だが、まだ水球を手にしている。
たぶん練習のつもりでずっと維持し続けていたのだろう、真面目なやつだ。
そして、魔法はイメージだという事であれば今説明した事の全てを理解しなくても使用できると言う。
蒼真は千尋を指差して一言。
「千尋は今オレが説明した事を全ては理解していないが氷は作れる」
注目を浴びる千尋。
蒼真の方に手をかざして水球を凍らせた。
イメージを持つという事なら水を濁らせ、水は動かないのに中の濁りが高速で動いていると思えばいい。
動かすのではなく、動いているのが通常時。
その動きを遅くするだけで簡単に凍りつくのだが、動きを遅くするのには多くの魔力を消費する。
イメージと魔力の操作。
魔法は発動するのにイメージの方が重要らしい。
魔力制御は魔力を安定させるように考えるのが常識の中、安定させた魔法は実は動いているのが当たり前の状態と考える事はこれまで思いもよらなかった。
氷の魔法を練習する為、全員がコップの中の水に集中する。
リゼはさすが地球人という事もあるのか、それとも蒼真の説明を全て理解したのかすぐにできた。
研究者の仕事は十六時には終わる。
今日は十六時半を過ぎているがみんな氷を作ろうと必死だ。
しばらくすると数名が表面に氷が張り始めたようだ。
温度を下げる事が出来ているという事は練習するうちにできるだろうと十七時半過ぎには解散となった。
研究者達はこの後資料をまとめなければならない。
今日は徹夜かもしれないと騒ぎ始めるが、新たな魔法が地球人ではなく自分達も発動できるのだと嬉しそうに仕事を始めた。
場所を変える時間も惜しいとその場で会議となっている程だ。
きっと晩御飯も食べないんだろうなと思い、あとで差し入れを持って来ようと外に出た。
リゼも一緒に出てきたのでいいのかと尋ねると、あくまでも協力者なので問題ないとの事だった。
食堂に行って研究者の人数分の食事として、持ち運びできるものをたくさん作ってもらえるようお願いした。
三人が食事を終える頃にはたくさんのサンドイッチが出来ていた。
サンドイッチを持って研究室へ向かったまでは良かったが、蒼真が捕まってしまった。
もっと話しを聞かせてくれと研究者に囲まれている。
リゼと千尋は人数分の紅茶を入れて、蒼真を置いて研究室を後にした。
リゼとともに宿舎に戻り、千尋はシャワーを浴びて着替えをした。
(蒼真を待つか)と、テラスに向かう。
テラスで夜空を見上げ、自分の時間を満喫しているとリゼがコーヒーを持って来てくれた。
蒼真を待っている間は他愛ない話をしたつもりだが、千尋の話を興味津々といった感じで聞いている。
千尋は読書といってライトノベルを読む習慣があるり、異世界の物語や魔法の物語にあった内容を話してみた。
こちらの世界には娯楽が少ないのか、千尋の話をず、ずいっと近づいて聞いている。
よほど楽しいのだろう、頬を赤くしていろんな表情をしながら聞いていた。
普段大人っぽく振る舞うリゼも、そんなところは年相応だなと思う千尋だった。
蒼真が戻って来たのは二十二時を過ぎた頃だった。
リゼが蒼真に「研究室に戻ってもう少し時間潰してきて!」と意味のわからん事を言っていた。
「ま、まぁまた明日話しをしよう」
と落ち着かせてこの日は部屋に戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
十二日目。
この世界に来てから毎朝起きるのが早い。
六時前には目が覚めるのはやはり夜に寝るのが早いからだろう。
顔を洗って部屋を出る。
蒼真も同じく部屋を出て来て、研究室の様子を見に行くというので一緒に行く事にした。
研究室から灯りが見える。
中に入ると何人か突っ伏しているが徹夜をしたようだ。
コーザなんかは少しテンションが高くて気持ち悪い。
「見てくれ!」
と、コップの水を凍らせたのを見て途中から練習してたんだろうなと思う二人だった。
実際起きている彼らは今もまだ練習している。
「今日は仕事にならないんじゃないか?」
「今日も十五時から講義をお願いします! 蒼真先生!」
いつのまにか先生になってた。
「無理しないでね」と言い残して研究室を後にした。
宿舎に戻ったが、リゼはまだ起きてないようだ。
千尋と蒼真はいつものように魔力制御を練習する。
千尋は遠くに魔力球を浮かせ、手もかざさないどころか見てすらいない。
それでも安定した魔力球が浮かんでいるあたりは千尋の器用さが影響しているのだろう。
蒼真は見てはいるが手はかざさずに出来るようになっている。
魔法のイメージの話しをしながら時間を潰すが、八時になってもリゼは起きてこない。
「ハラヘッタ」
「同じく」
仕方なく二人はリゼを起こしに行く。
部屋をノックし続けると扉が開き、寝癖をつけて目を擦っているリゼが出てきた。
「おはよう、どうしたの?」
「もう八時だが……」
「うわっ!」と言って扉を閉め、バタバタと音が聞こえてきたので準備を始めたのだろう。
またテラスで待つ事にした。
「ゴメン、寝坊した」
と、申し訳なさそうに謝ってきた。
珍しいなと言うと、昨夜千尋から聞いた物語に興奮して眠れなかったという。
自分のせいかと千尋も反省した。
いつものように午前は勉強だ。
今では字も読めるようになり、書庫から本をいくつか借りて読むようにしている。
リゼも二人が字をある程度読めるようになってからは仕事をしているので午前はいない。
お昼は一緒に食べているが、今日は忙しそうにしているようだ。
千尋達は、自分達に構っていて仕事が溜まっているんではないかと考えると申し訳なく思う。
午後はいつもの練習。
と、いいつつ千尋と蒼真は模擬戦として魔法で戦う事にした。
今後魔獣と戦う事になるなら戦闘訓練もしておかなければならない。
初の魔法戦闘となるが、怪我をしては元も子もないので服を地属性魔法で強化する。
攻撃魔法も魔力量を下げればほぼダメージはないだろう…… たぶん。
10メートルほど離れて戦闘を開始した。
先手必勝。
千尋は複数の火球を蒼真目掛けて放ち、蒼真が三発避けたところで被弾。
まずは千尋が一勝。
仕切り直して蒼真は土の剣を構えた。
再び火球が蒼真を襲う。
蒼真は二発回避し、三発目は土剣で受けた。
千尋に迫る蒼真の足元を火球で爆破し、体制を崩したところで腹に風玉が撃ち込まれる。
二勝目も千尋。
続いて蒼真は水の剣を持って三戦目。
千尋は火球を撃ち込むが水剣に全て打ち消される。
迫り来る蒼真に風玉を三発撃ち込む。
受けた水剣は飛び散り、残り二発を地面に伏して躱す蒼真。
千尋の足元が盛り上がり、バランスを崩したところに蒼真の土剣が振り下ろされた。
これで二勝一敗の千尋。
その後も戦い続け、時間になる頃には千尋十六勝、蒼真が二十二勝となっていた。
十五時からの勉強会。
研究者達の目の下にクマが出来ているのを見て簡単なものにした。
蒼真先生が言い出した事なので研究者側も文句はない。
研究課題にある雷属性について説明を始めよう、としたところで千尋が呼ばれた。
どうやら蒼真の説明では科学的な説明が多過ぎて、理解すのに時間がかかるだろうとの事。
もっと簡単に説明できるのではないかと、千尋が呼ばれたわけだ。
「えー、では雷属性について実演も交えて説明します」
なんか研究者達の表情があからさまに不満そうなのは気のせいだろうか。
しかし、千尋が親指と中指の間にバチバチッと放電させると全員驚愕した。
「まずは最初に言っておきますが、これは雷ではありません。電気を放電しているのです。簡単に言うとこの電気をもっともっと強くしたのが雷となります」
急に真顔で聞き入る研究者達は、説明を続ける間は真剣に聞いている。
実は千尋の魔法の発電イメージは単純。
親指を陰極、中指を陽極とし、親指から魔力電子を出して中指に流すとイメージしただけである。
火属性魔法でガスをイメージして出来た事だ、電気もイケるのは当然だろうと本人は言う。
ただこの世界ではこんな放電現象を見る事がないだろうから再現しにくかったのかもしれない。
また、電気を発生させようとしても電子の流れをイメージしなかったからこそ実現できなかったのだろうと予想する。
扉に触れた時にバチッときた事があるかと問うと皆頷く。
それを静電気といい、静電気も電気である為電気とは身近にあるものだと説明した。
研究者達はもっと詳しい説明は無いのかと問う中、クスクスと笑う蒼真がいた。
「わかりやすい。そのイメージの方が簡単だ」
と言って放電させて見せた。
そして水を凍らせるよりも簡単と付け加えた。
しかし「試してみてよ!」と言われてもおいそれとできるわけでもない。
リゼもできないようだ。
もっと指の間隔を狭くしてと言ったところで研究者の一人がパチッとなった。
それを見て誰もが興奮し、我先にと集中力を高めた。
十六時になる頃には全員ができるようになっていたが、研究資料にまとめる程内容がないことに焦っていた。
「今夜はゆっくり眠れるねっ!」
とサムズアップする千尋は、親指に顔を描いていた。
それを見たリゼは吹き出し、千尋は満足そうに彼女を見ていた。
蒼真はというと、研究者達の放電練習が始まったすぐ後にシャワーを浴びに行った為いなかった。
リゼと共に研究室から宿舎に向かう。
今夜もリゼは宿舎に泊まるそうだ。
リゼにどうしてそんなに服が汚れてるのか聞かれて少し焦る千尋だったが、嘘言っても仕方がないので戦闘訓練をした事を告げた。
同レベルの仲間がいてこそできる訓練だと、全然怒られなかった。が、なぜかリゼは千尋を見つめている。
「明日魔力測定するわよ。たぶんレベルが上がってるわ」
なぜ明日なのか問うと、レベルが上がってすぐだと数値は正確じゃないとの事。
寝て起きる事で超回復的に魔力が上がるから明日測るということだった。
昨日上がったのかもしれないと千尋が言うと、今日の昼とは魔力の質が違うと言い切った。
(しっかりと見てくれているんだなぁ)と嬉しく思う千尋だった。
泥だらけだしまずはシャワーを浴びて着替えてからテラスに向かう。
蒼真は座っていて「お疲れ!」と言ってきた。
まぁ先日蒼真は夜も捕まっていたから文句は言うまい。
リゼに明日魔力測定すると言われた事を告げたが、蒼真もレベルが上がっているのか? と不安になる。
しばらくしてリゼが紅茶を三人分持って来てくれた。
蒼真もレベル上がってるみたいねと言われて安心する千尋。
三人で他愛のない話をし、今日は研究者のみんなも宿に帰って寝てるだろうと笑った。
リゼに忙しそうだけど大丈夫か聞いてみたが、モジモジしながら大丈夫だと言う。
もしかしたら明日の仕事を片付けたのかなと思った。
今日は蒼真を交えて地球での話や、また物語の話などをして二十一時には部屋に戻った。
リゼは「もっと!」と言っていたが寝坊するので諦めさせた。
午前は勉強、午後から練習の日々を過ごす毎日。
そして今日の十五時からは研究者達との話し合いとなり、研究課題に対して千尋と蒼真の知識を提供する事になっている。
リゼも地球から来たとはいえ、まだ八歳だった。
千尋や蒼真、高校生と比べれば知識量は歴然の差だ。
そして千尋は別として蒼真は頭がいい。
千尋は学年中の真ん中くらいで興味がないと勉強を一切しない極端振り。
それに対し、蒼真は学年中常に上位。
全て蒼真に任せて良いんじゃないかと思っている千尋だったが、魔石を生み出せる時点で逃れられない。
午後の訓練では四大属性以外にできる事を模索する事になった。
二人は自分が思う魔法を考え、試行錯誤しながら魔法を作り込む。
二時間はあっという間に過ぎてしまったが、やはり魔法を使うのは楽しい。
納得のできる魔法を二人は完成させられなかったようだが、思いつき程度にリゼに見せた。
理由は名前のある魔法かもしれないからだ。
蒼真は重力操作。
リゼに魔法をかけて怒られ、リゼも蒼真にやり返していた。
魔法名重力操作と安直な名前だった。
この重力操作は物質だけでなく人間や生物にも使えるが、対象が魔力を制御できる場合には簡単に解除されてしまうようだ。
次に千尋は手の指から放電して見せた。
スタンガンをイメージし、親指と中指で放電させた。
困った事にこれも研究課題にあるらしく、千尋には説明できないのが問題だ。
単純にイメージだけでできてしまう器用さだった。
十五時からの話し合い。
最初のテーマは魔石の作り方だったのだが、千尋の行う魔力の圧縮が他に出来る人がいないと、すぐに打ち切られた。
続いて蒼真の氷魔法。
まずはやって見せようと、蒼真が大気中から水を集める。
その瞬間驚きの声があがる。
やはりその辺の知識が無いようだ。
リゼも驚いていたが、地球には八歳までしかいなかった少女が知らなくても不思議ではなかった。
蒼真は大気の事から説明を始め、大気中には窒素、酸素、二酸化炭素、その他は省くが、温度や湿度も存在し、雲は高湿度の集合体と説明した。
ここで火の話も付け加えた。
火に酸素を送り込むと火力が増す事。
それを聞いた研究者達は風で空気を送り込む事で火属性魔法を強くする理由を理解した。
そして本題の氷の話に進む。
まずは熱の話を始め、熱とは物質を構成する粒子の運動エネルギーであると言い切った。
しかし科学的な話をされても研究者達は全くわからない。
そもそも粒子を知らないので当然である。
粒子とは物質を粒として見たときの構成物、分子とは~…… と云々。
話をジッと聞き続ける研究者達とメモをひたすら取り続ける研究者が三名。
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リゼが一番若いのだが、アルバイトというか協力者というポジションの為かメモ係ではない。
一通り物理学的な説明を終えた蒼真だが、まだ水球を手にしている。
たぶん練習のつもりでずっと維持し続けていたのだろう、真面目なやつだ。
そして、魔法はイメージだという事であれば今説明した事の全てを理解しなくても使用できると言う。
蒼真は千尋を指差して一言。
「千尋は今オレが説明した事を全ては理解していないが氷は作れる」
注目を浴びる千尋。
蒼真の方に手をかざして水球を凍らせた。
イメージを持つという事なら水を濁らせ、水は動かないのに中の濁りが高速で動いていると思えばいい。
動かすのではなく、動いているのが通常時。
その動きを遅くするだけで簡単に凍りつくのだが、動きを遅くするのには多くの魔力を消費する。
イメージと魔力の操作。
魔法は発動するのにイメージの方が重要らしい。
魔力制御は魔力を安定させるように考えるのが常識の中、安定させた魔法は実は動いているのが当たり前の状態と考える事はこれまで思いもよらなかった。
氷の魔法を練習する為、全員がコップの中の水に集中する。
リゼはさすが地球人という事もあるのか、それとも蒼真の説明を全て理解したのかすぐにできた。
研究者の仕事は十六時には終わる。
今日は十六時半を過ぎているがみんな氷を作ろうと必死だ。
しばらくすると数名が表面に氷が張り始めたようだ。
温度を下げる事が出来ているという事は練習するうちにできるだろうと十七時半過ぎには解散となった。
研究者達はこの後資料をまとめなければならない。
今日は徹夜かもしれないと騒ぎ始めるが、新たな魔法が地球人ではなく自分達も発動できるのだと嬉しそうに仕事を始めた。
場所を変える時間も惜しいとその場で会議となっている程だ。
きっと晩御飯も食べないんだろうなと思い、あとで差し入れを持って来ようと外に出た。
リゼも一緒に出てきたのでいいのかと尋ねると、あくまでも協力者なので問題ないとの事だった。
食堂に行って研究者の人数分の食事として、持ち運びできるものをたくさん作ってもらえるようお願いした。
三人が食事を終える頃にはたくさんのサンドイッチが出来ていた。
サンドイッチを持って研究室へ向かったまでは良かったが、蒼真が捕まってしまった。
もっと話しを聞かせてくれと研究者に囲まれている。
リゼと千尋は人数分の紅茶を入れて、蒼真を置いて研究室を後にした。
リゼとともに宿舎に戻り、千尋はシャワーを浴びて着替えをした。
(蒼真を待つか)と、テラスに向かう。
テラスで夜空を見上げ、自分の時間を満喫しているとリゼがコーヒーを持って来てくれた。
蒼真を待っている間は他愛ない話をしたつもりだが、千尋の話を興味津々といった感じで聞いている。
千尋は読書といってライトノベルを読む習慣があるり、異世界の物語や魔法の物語にあった内容を話してみた。
こちらの世界には娯楽が少ないのか、千尋の話をず、ずいっと近づいて聞いている。
よほど楽しいのだろう、頬を赤くしていろんな表情をしながら聞いていた。
普段大人っぽく振る舞うリゼも、そんなところは年相応だなと思う千尋だった。
蒼真が戻って来たのは二十二時を過ぎた頃だった。
リゼが蒼真に「研究室に戻ってもう少し時間潰してきて!」と意味のわからん事を言っていた。
「ま、まぁまた明日話しをしよう」
と落ち着かせてこの日は部屋に戻った。
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十二日目。
この世界に来てから毎朝起きるのが早い。
六時前には目が覚めるのはやはり夜に寝るのが早いからだろう。
顔を洗って部屋を出る。
蒼真も同じく部屋を出て来て、研究室の様子を見に行くというので一緒に行く事にした。
研究室から灯りが見える。
中に入ると何人か突っ伏しているが徹夜をしたようだ。
コーザなんかは少しテンションが高くて気持ち悪い。
「見てくれ!」
と、コップの水を凍らせたのを見て途中から練習してたんだろうなと思う二人だった。
実際起きている彼らは今もまだ練習している。
「今日は仕事にならないんじゃないか?」
「今日も十五時から講義をお願いします! 蒼真先生!」
いつのまにか先生になってた。
「無理しないでね」と言い残して研究室を後にした。
宿舎に戻ったが、リゼはまだ起きてないようだ。
千尋と蒼真はいつものように魔力制御を練習する。
千尋は遠くに魔力球を浮かせ、手もかざさないどころか見てすらいない。
それでも安定した魔力球が浮かんでいるあたりは千尋の器用さが影響しているのだろう。
蒼真は見てはいるが手はかざさずに出来るようになっている。
魔法のイメージの話しをしながら時間を潰すが、八時になってもリゼは起きてこない。
「ハラヘッタ」
「同じく」
仕方なく二人はリゼを起こしに行く。
部屋をノックし続けると扉が開き、寝癖をつけて目を擦っているリゼが出てきた。
「おはよう、どうしたの?」
「もう八時だが……」
「うわっ!」と言って扉を閉め、バタバタと音が聞こえてきたので準備を始めたのだろう。
またテラスで待つ事にした。
「ゴメン、寝坊した」
と、申し訳なさそうに謝ってきた。
珍しいなと言うと、昨夜千尋から聞いた物語に興奮して眠れなかったという。
自分のせいかと千尋も反省した。
いつものように午前は勉強だ。
今では字も読めるようになり、書庫から本をいくつか借りて読むようにしている。
リゼも二人が字をある程度読めるようになってからは仕事をしているので午前はいない。
お昼は一緒に食べているが、今日は忙しそうにしているようだ。
千尋達は、自分達に構っていて仕事が溜まっているんではないかと考えると申し訳なく思う。
午後はいつもの練習。
と、いいつつ千尋と蒼真は模擬戦として魔法で戦う事にした。
今後魔獣と戦う事になるなら戦闘訓練もしておかなければならない。
初の魔法戦闘となるが、怪我をしては元も子もないので服を地属性魔法で強化する。
攻撃魔法も魔力量を下げればほぼダメージはないだろう…… たぶん。
10メートルほど離れて戦闘を開始した。
先手必勝。
千尋は複数の火球を蒼真目掛けて放ち、蒼真が三発避けたところで被弾。
まずは千尋が一勝。
仕切り直して蒼真は土の剣を構えた。
再び火球が蒼真を襲う。
蒼真は二発回避し、三発目は土剣で受けた。
千尋に迫る蒼真の足元を火球で爆破し、体制を崩したところで腹に風玉が撃ち込まれる。
二勝目も千尋。
続いて蒼真は水の剣を持って三戦目。
千尋は火球を撃ち込むが水剣に全て打ち消される。
迫り来る蒼真に風玉を三発撃ち込む。
受けた水剣は飛び散り、残り二発を地面に伏して躱す蒼真。
千尋の足元が盛り上がり、バランスを崩したところに蒼真の土剣が振り下ろされた。
これで二勝一敗の千尋。
その後も戦い続け、時間になる頃には千尋十六勝、蒼真が二十二勝となっていた。
十五時からの勉強会。
研究者達の目の下にクマが出来ているのを見て簡単なものにした。
蒼真先生が言い出した事なので研究者側も文句はない。
研究課題にある雷属性について説明を始めよう、としたところで千尋が呼ばれた。
どうやら蒼真の説明では科学的な説明が多過ぎて、理解すのに時間がかかるだろうとの事。
もっと簡単に説明できるのではないかと、千尋が呼ばれたわけだ。
「えー、では雷属性について実演も交えて説明します」
なんか研究者達の表情があからさまに不満そうなのは気のせいだろうか。
しかし、千尋が親指と中指の間にバチバチッと放電させると全員驚愕した。
「まずは最初に言っておきますが、これは雷ではありません。電気を放電しているのです。簡単に言うとこの電気をもっともっと強くしたのが雷となります」
急に真顔で聞き入る研究者達は、説明を続ける間は真剣に聞いている。
実は千尋の魔法の発電イメージは単純。
親指を陰極、中指を陽極とし、親指から魔力電子を出して中指に流すとイメージしただけである。
火属性魔法でガスをイメージして出来た事だ、電気もイケるのは当然だろうと本人は言う。
ただこの世界ではこんな放電現象を見る事がないだろうから再現しにくかったのかもしれない。
また、電気を発生させようとしても電子の流れをイメージしなかったからこそ実現できなかったのだろうと予想する。
扉に触れた時にバチッときた事があるかと問うと皆頷く。
それを静電気といい、静電気も電気である為電気とは身近にあるものだと説明した。
研究者達はもっと詳しい説明は無いのかと問う中、クスクスと笑う蒼真がいた。
「わかりやすい。そのイメージの方が簡単だ」
と言って放電させて見せた。
そして水を凍らせるよりも簡単と付け加えた。
しかし「試してみてよ!」と言われてもおいそれとできるわけでもない。
リゼもできないようだ。
もっと指の間隔を狭くしてと言ったところで研究者の一人がパチッとなった。
それを見て誰もが興奮し、我先にと集中力を高めた。
十六時になる頃には全員ができるようになっていたが、研究資料にまとめる程内容がないことに焦っていた。
「今夜はゆっくり眠れるねっ!」
とサムズアップする千尋は、親指に顔を描いていた。
それを見たリゼは吹き出し、千尋は満足そうに彼女を見ていた。
蒼真はというと、研究者達の放電練習が始まったすぐ後にシャワーを浴びに行った為いなかった。
リゼと共に研究室から宿舎に向かう。
今夜もリゼは宿舎に泊まるそうだ。
リゼにどうしてそんなに服が汚れてるのか聞かれて少し焦る千尋だったが、嘘言っても仕方がないので戦闘訓練をした事を告げた。
同レベルの仲間がいてこそできる訓練だと、全然怒られなかった。が、なぜかリゼは千尋を見つめている。
「明日魔力測定するわよ。たぶんレベルが上がってるわ」
なぜ明日なのか問うと、レベルが上がってすぐだと数値は正確じゃないとの事。
寝て起きる事で超回復的に魔力が上がるから明日測るということだった。
昨日上がったのかもしれないと千尋が言うと、今日の昼とは魔力の質が違うと言い切った。
(しっかりと見てくれているんだなぁ)と嬉しく思う千尋だった。
泥だらけだしまずはシャワーを浴びて着替えてからテラスに向かう。
蒼真は座っていて「お疲れ!」と言ってきた。
まぁ先日蒼真は夜も捕まっていたから文句は言うまい。
リゼに明日魔力測定すると言われた事を告げたが、蒼真もレベルが上がっているのか? と不安になる。
しばらくしてリゼが紅茶を三人分持って来てくれた。
蒼真もレベル上がってるみたいねと言われて安心する千尋。
三人で他愛のない話をし、今日は研究者のみんなも宿に帰って寝てるだろうと笑った。
リゼに忙しそうだけど大丈夫か聞いてみたが、モジモジしながら大丈夫だと言う。
もしかしたら明日の仕事を片付けたのかなと思った。
今日は蒼真を交えて地球での話や、また物語の話などをして二十一時には部屋に戻った。
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商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
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さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
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※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
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魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に
椎名 富比路
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錬金術師を目指す主人公キャルは、卒業試験の魔剣探しに成功した。
キャルは、戦闘力皆無。おまけに錬金術師は非戦闘職なため、素材採取は人頼み。
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キャルは魔剣から身体強化をしてもらい、戦闘技術も学ぶ。
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キャルは剣にレベッカ(レーヴァテイン・レプリカ)と名付け、大切に育成することにした。
クラスの代表生徒で姫君であるクレアも、主人公に一目置く。
彼女は伝説の聖剣を
「人の作ったもので喜んでいては、一人前になれない」
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自分だけの聖剣を自力で作ることこそ、クレアの目的だったのである。
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