追放シーフの成り上がり

白銀六花

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236 パーティー戦

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 聖銀のエンベルトとランド、黒夜叉のアリスとフィオレのパーティー戦。

 エンベルトの体から放電現象が起こり、弓を背負い刺突系の槍を構えたランドは穂先を下げてアリスを見据える。
 アリスもランドへと向き直ると、フィオレは弓をつがえてエンベルトへと矢を向ける。
 駆け出したアリスとその背後を追従するフィオレ。
 迎え討つランドの刺突をアリスの二股に分かれた魔鉄槍で受けつつ、穂先を後方へと向けながらランドへと肉薄する。
 挑戦者が何を仕掛けてくるのかと様子見のつもりで軽く迎え討つつもりが、予想に反してアリスは魔鉄槍バーンから爆槍を射出。
 ランドの槍を弾き飛ばしつつ右脇下を潜り抜けて、その横でフィオレに視線を向けていたエンベルトへと石突きを打ち込んだ。
 想定外のアリスの行動にエンベルトも後方へと体を逸らして回避、態勢を崩されたところへ、アリスの陰から飛び上がったフィオレからのインパクトを乗せた矢が射られた。
 黒夜叉の二人を相手に身体能力向上だけで対処できると思っていたエンベルトは磁場を利用した加速の準備を整えておらず、咄嗟に腕を振り上げることで掌と地面の間に雷の盾を作り出した。
 一瞬しか発生しない雷盾ではあるが、竜種をも殺せる雷撃をはるかに超える出力となるため、フィオレの矢も一瞬で消し炭になった。
 アリスは爆槍の加速力により、エンベルトの前方からすでに通り過ぎているため雷盾を浴びることはない。
 しかしエンベルトは雷盾の出力から体内にある全ての魔力を放出しているため、身体能力向上も切れている。
 今が好機とばかりにフィオレはステルスを発動すると姿を消したままエンベルトへと接近。
 低い姿勢からエンベルトの腹部へと鞘に収めたままのダガーを突き込んだ。

「っ……ぃててて。ああ、ごめんランド。俺の負けだね。この子達すごいよ」

 腹部を摩りながら何を突き込まれたのか理解したエンベルトは、自身の敗北を認めて両手をあげた。
 攻めに回れば一瞬で決めに来るエンベルトではあるが、同時に受けに回った場合は高出力の魔法を発動してしまうと戦闘能力が一気に低下してしまう。
 エンベルトとしては身体能力向上を維持したまま低出力の雷撃で挑むつもりではあったのだが、奇襲前提にパーティー戦に臨んだ黒夜叉がエンベルトの想像を大きく上回ったのだ。
 まさかあのタイミングでアリスが向かってくるとは思わなかった。
 自分の対応に悔やむ部分はあるとしても、この戦いに臨んだことに後悔はない。
 むしろ自身の初の敗北に嬉しささえ覚えているのだ。
 笑顔のまま闘技場から降りていく。

 最強の一角を落として見せた黒夜叉に、会場内は割れんばかりの歓声があがる。
 ただあと一人、聖銀の中では地味な印象を受けるランドだけ。

「まずは一人」

 ポツリと呟いたフィオレは最初から勝つつもりでこの戦いに臨んでいる。
 二体二の戦いで邪魔になるのは雷魔法を発動するエンベルトであり、早々に排除したいと考えたフィオレは二人で一人を潰すつもりで作戦を立てていたのだ。
 これが前衛と後衛に分かれていればまた別の作戦で臨むつもりでいたのだが。

「お前達いいな。楽しくなってきた」

「楽しめるといいわね」

 槍を拾い直したランドは再び穂先を下げて構えると、アリスとフィオレの二人を相手に戦いに臨む。
 二体一になろうとアリスにもフィオレにも強者を相手にどう戦うべきかと慢心も油断もない。
 ランドが動かないのならとアリスが駆け出し、最初と同じようにフィオレが背後に隠れながらランドへと接近。
 今度はアリスが右薙ぎから仕掛けると、槍を滑らせるようにして上方へと払い退けつつフィオレの思考を予測する。
 左右、または上方から向けられる矢となれば前衛のアリスの動き次第で打つ手も変わる。
 右薙ぎを上方に払い退ければ右上か真横のいずれか。
 しかし再びステルスで姿を消したフィオレはランドの目には映らない。
 森や自然を愛するアーチャーとしての直感から一歩前へ踏み込んでの石突きの振り上げ。
 アーチャーであるため自身の感覚のみでの振り上げではあったが、思考が似ている者同士タイミングもほぼ同じ。
 インパクトを込められた矢を打ち払い、その威力に後方に弾き飛ばされるも足を滑らせつつ踏み止まる。
 そこへバーンを振り上げたアリスの爆槍による加速からの左袈裟が振り下ろされ、体を回転させるようにして回避、体を低くまで下ろしたアリスの腹部へと後ろ回し蹴りが入った。
 だがこれで終わる黒夜叉の強襲ではない。
 姿の見えないフィオレを足音と風の動きのみで判断し、ランドとの距離から矢をつがえていると想定しての行動をとる。
 向けられているのが自身となれば位置さえある程度把握できればタイミングも予測が可能。
 弓矢であれば走りながら射るのでは狙いが定まらず、跳躍から射るのがセオリーだ。
 歓声で聞き取りづらくともそれすら聞き分けるだけの聴覚を持つランドは、フィオレの歩幅から跳躍する瞬間を狙って槍を回転。
 矢を打ち払う音が響くと同時にフィオレに向かって駆け出した。
 跳躍のため着地までに接近を許してしまうことになるとしても姿が見えなければ全てを把握することは困難と、ダガーを右手に地を這うようにして右方向へと走り出す。
 しかしそれすら聞き分けるランドは足音の重さからフィオレの態勢を把握し、油断を誘うためあえて回り込ませてからの突き込みを槍で払い除ける。
 体が浮かされたところへ構え直したランドから穂先を向けられた。
 しかしここで蹴りから復帰したアリスが背後から迫り、ランドの突きの直前に炎槍を射出。
 このままでは直撃を受けてしまうと、フィオレとは反対方向、槍を引いた後方へとピアーススキル発動することで炎槍を回避。

 目の前に躍り出たアリスと向き合うランド。
 ピアース後ではあるがスキルの途中キャンセルをする技術があれば硬直することはない。
 炎槍後の左薙ぎをバックステップで回避し、突きを繰り出そうと槍を握り直す。
 しかし姿を消したままのフィオレの動きに気付いたランドはその場で伏せることで矢を回避。
 フィオレでさえ自分のステルスが機能しているのかを疑うほどに、ランドの察知能力は高い。
 続くアリスの突きにランドは槍の巻き上げで払い除け、腕が上がったアリスへと一歩踏み込んで槍の柄を叩きつける。
 右肩を打ち付けられて地面を転がるアリスだったが、同時にランドも左足への異変を感じて顔を歪める。
 フィオレから射られた矢が足の甲へと刺さっていたのだ。
 位置やタイミングを察知できたとしても、さすがに攻撃に合わせて矢を射られては避けるのも難しい。
 ただ先ほどまでとは違うのは、跳躍の踏み込みを強くしての滞空時間を予測させ、地面での停止状態から矢を射ることでランドに矢を射るタイミングを誤認させたのだ。
 ランドからしても相当に厄介なアーチャーである。

 足から矢を引き抜いて投げ捨てたランドと、右肩をだらりと下げたアリス。
 ステルスの発動限界で姿を現したフィオレ。
 ランドは痛みを感じつつも足を地面に踏みつけながら動きを確認。
 やや動きづらくはあるが戦えないほどではないと槍を構え直す。
 アリスは腹部へのダメージと右肩関節が外れたことで左手一本で挑まなくてはならない。
 フィオレはまだまだ戦える状態ではあるが、再使用時間までステルス無しに戦わなくてはならない。
 ダメージ量他総合的に考えるとすでに黒夜叉に分が悪いと見ていいだろう。

 バーンの中央を握ることで片手で構えたアリスと、弓矢をつがえるフィオレ。
 正面から向かえば今のアリスでは簡単に抑えられることになり、フィオレが陰に潜んだところでまとめて薙ぎ払われる可能性もある。
 ならば陰に潜まずに攻勢に回る他ない。

 足にダメージを負ったランドが向かってくることはないだろうと、アリスとフィオレが身体能力を向上させて駆け出した。
 素早さで勝るフィオレが左前方へと跳躍するとランド目掛けて矢を射る。
 アリスの攻撃とタイミングが重なるようにと射った矢だが、無策と思える矢にはインパクトが込められていないだろうとアリスの突きを穂先で巻き上げ、同時に矢をも石突き側で弾いた。
 しかしその瞬間、ランドの体がインパクトスキルの衝撃を受けて闘技場の端まで体を回転しながら弾き飛ばされた。
 予想の裏を掻いたフィオレはそのままランドに向かって加速する。
 アリスもフィオレの背後を追い、震えながら立ち上がるランドへと迫る。

 態勢を立て直す前に追撃を加えたかったフィオレは再び跳躍しながら矢を射るも、普段の穏やかな表情から一変したランドは裂帛の気合いと共に矢を薙ぎ払って駆け出した。
 フィオレが着地すると同時に接近したランドの左逆袈裟からの切り払いをダガーで受け、軽い衝撃の直後に石突き側で左腕でのガードごと側頭部を殴打。
 腰の回転を加えられた一撃はフィオレの体を容易に弾き飛ばした。

 フィオレがいたすぐ後ろまで迫るアリスへと向き直ったランド。
 左後方へと穂先を向けた状態からの左の薙ぎ払いに対し、アリスは防壁を蹴って跳躍するとランドの背後へと着地。
 振り向きざまに低い姿勢からの左薙ぎと、ランドの振り返りざまの逆風の切り上げがぶつかり合い、腕力で勝るランドの槍によりアリスの体ごと宙に打ち上げられた。
 だがこれで諦めるアリスではなく、爆槍を射出してランドへバーンを振り下ろし、その加速力に受け止めた槍ごと体を弾木飛ばす。
 互いに間合いの外へと距離が開いたものの、ランドは最後に見せてやるかとばかりに体を右後方へと引き絞ってピアーススキルを発動。
 その突き刺すことに特化したはずのスキルが大気を突き破って衝撃波を生み出し、アリスの体を場外へと弾き飛ばした。
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