追放シーフの成り上がり

白銀六花

文字の大きさ
上 下
225 / 257

225 ジャルパ

しおりを挟む
 モンスター蔓延る危険領域内での睡眠はそう満足にはとれるものではない。
 それでも昨日の疲れはある程度取れ、体はあちこち痛いが頭の方はハッキリしている。
 水分補給代わりに下級回復薬を飲みつつ、朝食にはまた携帯食料を口にする。
 あまり美味しい食べ物ではないが栄養価は高く腹持ちもいい。

「さて、よく寝れたかお前ら。俺はまだ結構眠い。あと美味いもん食いてぇ」

「わがまま言うなー」

 今回は火を使えないためソーニャが料理をすることもないが、なかなかに美味しいスープはパーティーにも評判がいいのだ。
 そんな美味しいスープが今回無いのは少し寂しい気もする。

「んであれだ。あいつをどうするか。モンスターである以上は殺っちまっていいとは思うんだけどよ。襲ってこないんなら放っておいてもいいような気もする」

「ディーノも何も言ってなかったしな」

 もし知っていればモンスターについては無駄に教えたがりなディーノのことだ、必要のあることないことなんでも説明してくれたはずなのだ。
 ジャルパを倒すのが目的であれば最初からこの目立つモンスターを討伐目標として進んできただろう。
 だが何も言われていないということは討伐する必要もなく、こちらに害がなければ素通りでもいいのではないだろうか。

「ねぇ。あのモンスターの背後にあるの、ディーノが言ってた神殿じゃない?もしかしたらあれを守ってるのかも」

 遠見筒でジャルパを確認するフィオレが神殿を見つけたようだ。

「じゃあ神殿のとこまで来たんだし目的達成ってこと?」

「違うでしょ。まだここは神殿より手前」

 だとすれば神殿のところまで、ジャルパに近付く必要があるということだ。

「仕方ない。やるか」

「そうね、やりましょう」

 マリオがやると言うならジャルパ討伐に挑むしかない。
 様々な状況で判断して行動していくのが冒険者というものだ。
 ディーノの指示がなくとも挑んでみよう。



 武器を手にジャルパへと近付いて行くと、これまで静かに佇んでいたその巨体が動き始める。
 目には怒りにも似た光を灯し、目の前の敵を排除しようと前傾姿勢で叫び声をあげた。

「もしかしてこいつかなり強えんじゃね?」

「昨日も説明したけど竜種を凌ぐとも書いてあったわよ」

「迫力はティアマト並みだね」

 ジャルパを見た目から分析していると、その巨体をからは信じられない速度で拳が振り抜かれる。
 咄嗟に前に出たジェラルドはプロテクションを発動し、その拳を抑え込もうと力を込めるが。
 その膂力に相応しい威力で殴り飛ばされた。
 上方からの力であれば耐えられたとしても後方へとなればジェラルドの重さだけでは軽々と飛ばされてしまう。
 しかしその威力は尋常ではなく、先ほどまで休んでいた位置ほどの距離を飛ばされてしまう。

「強さもティアマトに匹敵するかもっ!!」

 ジェラルドを殴り飛ばしたことで顔が下方へと向けられていたため、フィオレはその剥き出しになった歯茎へとインパクトの込められた矢を射る。
 顔面を殴られたかのような衝撃にジャルパも顔を後方へと仰け反らせ、フィオレはステルスを発動しながら木々の中に姿を暗ます。
 さすがはフィオレと言いたい判断の早さと的確な行動。
 殴り飛ばされたとはいえジェラルドの防御力であれば死ぬことはない。
 おそらくはまた戻って来るだろうと判断し、マリオ達もジャルパを倒そうと動き出す。

 マリオがジャルパの足元へと駆け寄る中、アリスはディーノのように足元に防壁を展開して空へ駆け上がる。
 速度と足の回転が追い付かず空を駆け回ることはできないが、ある程度の高さまでなら駆け上がることが可能だ。
 レナータは顔を狙いやすい位置を探して岩場に向かって走り出し、ソーニャはジャルパの顔が上を向いている間に振り上げた右腕側へと姿を隠す。
 アリスの攻撃に合わせて仕掛けようとタイミングを見計らう。
 足場にした防壁で魔力をある程度消費しているものの、アリスの出力は並みの魔法スキルよりも高い攻撃力を誇る。
 胸元の高さまで駆け上がったアリスはその距離を詰め、頭上から振り下ろされる拳を掻い潜って炎槍を射出する。
 同時にエアレイドを発動して一気に加速したソーニャのダガーが右脇腹へと突き刺さり、体を捻るようにして引き裂きながら跳躍。
 炎槍は接触状態からではないため威力としては落ちてしまったが、脇腹に深い火傷と傷跡を残して地面に向かって落ちていく。
 ジャルパは双方からの痛みに膝を崩してしまい、尻餅をつくようにして後方へと倒れる。
 駆け寄っていたマリオは倒れ込んだ足を駆け上がりジャルパの膝を蹴って跳躍すると着地点に合わせてストリームスラッシュを発動。
 斬れ味のいい牙剣で腹部を斬り開き、体重を乗せての八連撃が筋繊維をズタズタに斬り裂いた。
 スラッシュの硬直によって動きを止めてしまうものの、起き上がろうとするジャルパから薙ぎ払われることはない。

「強えのは間違いねーけど強度自体は大したことねー!」

 勝利を確信したマリオが声をあげた。
 しかしアリスが退避しようと駆け出したところでジャルパからの地属性魔法が発動。
 大地を破って巨大な岩が突き出した。
 アリスは足元から突き上げられた岩によって弾き飛ばされ、遠く離れた地面を転がり蹲る。
 膝を強打したことですぐには動けないが、道具入れから上級回復薬を取り出して半分傷に掛けると残りを一気に飲み干した。
 やはり踏み込みすぎると攻撃を受ける可能性は跳ね上がり、ダメージを負えば戦闘続行も難しい。
 これがパーティー戦であるためまだ狙いを絞られることはないとしても、ソロだったとすればこのまま叩き伏せられて命を落とすことにもなるだろう。
 そして岩の牢獄内に残されたマリオはというと。
 隙間が多く逃げようとしたものの、高く突き上げられた岩が崩壊、マリオの頭上から降ってくる。
 ここで最も安全なのがジャルパ側というのが不思議だが、魔法を発動した者は基本的に自分には被害がないように発動するのが普通だ。
 それはモンスターとて例外はない。
 ジャルパの足の甲へと転がり込んだマリオ。
 降り注ぐ岩の雨からは避けられたとしてもジャルパがマリオの位置に気付かないはずはなく、そのまま足を振り上げられて空へと投げ出された。
 そして振り上げられるジャルパ右腕。
 死を覚悟するマリオだったが、山なりに射られた矢がジャルパの鼻上へと刺さり、呪闇が視界を遮る。
 呪闇を払おうと顔を拭うもすぐに晴れることはない。
 その間に態勢を立て直す必要があるものの、宙に投げ出されたマリオが地面に打ち付けられればまともに動くことはできなくなる。
 エアレイドはスキル待機時間のため使えないが、ソーニャの速度であれば跳躍力も相当なもの。
 落ちてきたマリオに向かってソーニャが飛び付き、地面に叩き付けられる衝撃を和らげる。
 互いにぶつかった痛みと地面に落ちた衝撃とでかなりのダメージとなってしまったものの、戦線復帰できないほどではない。
 二人とも回復薬を飲み干して戦闘態勢を整える。
 危険な魔法ではあるが、呪闇はモンスターに対して有効な手だ。
 遠くから駆けてくるジェラルドを見て全員での戦闘再開を確信し、アリスが立ち上がったことにも安心する。
 パーティーの最大火力が戦闘不能ではジャルパを倒すのは難しい。

 呪闇が途切れて怒りの咆哮をあげるジャルパ。
 地属性魔法を発動すると地面から激しい振動が伝わってくる。
 このままではマズい、そう思った瞬間にジャルパの顔が大きく右に弾き飛ばされた。
 フィオレのインパクトだろう、魔法も遮られたのか地面の振動も収まった。
 本当に優秀なアーチャーである。

 ジャルパが起き上がるまでにジェラルドがマリオの元まで辿り着き、距離をとっては魔法の的に、ジェラルドに対しても薙ぎ払われてしまうだろうと近距離戦で臨むことにする。
 はあはあと息を切らすジェラルドではあるが疲れを気にしている場合ではない。
 オリオンが駆け出せばジャルパも駆け出し、ジャルパの間合いに入ると再び低空の右拳を振り向けられる。
 これに正面から受けてはまた殴り飛ばされてしまうため、盾を斜めに掲げて潜り抜けるようにして受け流す。
 地面ごと抉られれば殴り飛ばされた可能性もあるが、なんとか凌ぐことができた。
 しかし一撃防いだとしても今度は左の拳を頭上から振り下ろされる。
 これにすぐにマリオとソーニャは退避。
 竜種以上の一撃にジェラルドのプロテクションでも鼻血が噴き出すかと思うほどの重さがある。
 強度こそ低くとも攻撃力だけなら今まで戦ったどの竜種よりも高い。
 足も地面に沈み込み、膝を崩せばそのまま叩き潰されることになるだろう。
 低くなったジャルパの首に左右からマリオの斬撃とソーニャの全身を使った切り裂きとが振り向けられ、拳に乗せられた力を緩めることでジャルパはこれを回避。
 のし掛かる力が緩むとジェラルドは鼻血が出た。
 今以上の一撃を受ければ耳から血が出る可能性さえあるのだ。
 ジェラルドとしては絶体絶命の危機だった。
 しかしここで跳躍しているマリオとソーニャは隙だらけでもある。
 体を起こしたジャルパが右拳を振るい、マリオは咄嗟にソーニャを抱え込んで殴り飛ばされる、が、ここで一人忘れてはならないウィザードランサーが駆け込んでいた。
 岩による突き上げられたダメージによって高い位置までは駆け上がれなかったものの、左脇腹へとバーンを突き立て、体内へ直接炎槍を射出。
 内臓を貫く一撃がジャルパの体を傾かせるのに充分な威力を持つ。
 マリオもジャルパの拳を受けるものの、振り抜くまでに至らなかったことで全身を砕かれずに済んだ。
 地面を転がっていくと先に起き上がったソーニャがマリオへと駆け寄る。
「あっぶね~」と溢す姿に少し涙が溢れつつ、回復薬を叩き付けてすぐにジェラルドの元へと駆けていく。
 新しい回復薬を取り出して頭から掛け流し、埋まったジェラルドを引っ張り出してジャルパに備える。
 アリスもすでに態勢を整えているが、膝のダメージが大きいのか動きは鈍い。
 痛みに悶えるジャルパを前に、オリオンもまた満身創痍な前衛で戦いに臨む。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...