追放シーフの成り上がり

白銀六花

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203 拷問

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 部屋に明かりを灯して縛り上げた男女の覆面を剥ぎ取り、腹部を刺した男に死なれても困ると下級回復薬をかけてやる。
 それほど深く刺したわけでもなく、傷が癒えるのも遅いが死ぬことはないだろう。
 ロザリアが追った女側にも男二人が待ち受けていたらしく交戦したらしい。
 ただ忍び込まれたルチア側とは違って、ロザリア側では本来の武器を持って襲ってきたため苦戦したらしい。
 体の至るところに傷をつけて戻って来た。
 今は回復薬で治療したため元気そうに男の一人を踏みつけている。

「ねぇ貴女、ルビーグラスの追っかけの娘だよね。見た目が違って見えるのは化粧してないから?」

 最初にルチアに布を被せた女はペインで崩れ落ちたものの、一時的に気を失っただけで足の腱を切った痛みで目を覚ましていた。
 しかし目を逸らしたままルチアの質問には答えようとはしない。

「ふぅん。そういう態度とるんだ。拷問するつもりはなかったんだけど仕方ないよね」

 椅子から立ち上がったルチアは女の太ももに手を置いて五割程度の出力でペインを発動。
 意識を刈り取るほどの出力では質問に答えてはもらえないため仕方がない。
 少し痛みに耐えてもらおう。

「ご、ごめ、ごめんなさい……答え、ます……」

 加減したペインの方が効くのかな?
 最大出力だと脳が勝手に痛みを遮断するかもしれないし、この後男共で試してみようか。
 しかしこの女、ギルドの密偵かとも思ったがこの程度で答えるなら違うのかもしれない。
 泣いてるし。

「じゃあさっきの質問から答えて」

「そう、です……ルビーグラスの追っかけをしてます……見た目も言われた通りです」

 化粧してるかしてないかは一目でわかる。
 変装のための化粧だとわからないかもしれないが。

「名前は?」

「イルダです」

 襲ってきた相手の名前なんてどうでもいいけど。

「今回私達を襲ったのは殺すため?それとも拐うのが目的?」

「……答えたら痛くしませんか」

「場合によるかな。それより早く答えて」

「殺すためではありません……目的は貴女方をルビーグラスから引き離すことです」

 聞いた質問とは答えが違うな。
 ルビーグラスから引き離そうとしているのは聞かなくてもわかるし。
 殺すのが目的じゃないならあの被せた布には睡眠薬か何かの薬品を染み込ませてたのは間違いない。
 まあ拐うのが目的と捉えておこう。

「拐った後はどうするつもりだったの?」

「……答えることはできませんっあ゛あ゛っっっ!!ん゛ぐっ……あ゛あ゛ぅっ!!」

 一割くらい出力を上げてみたけどさっきより相当辛そうだ。
 まだこの娘は危機感が足りないようだし、今自分が受けてるのが尋問じゃなく拷問だってことをわかってもらいたい。

「答えたくなるまで続けようね。痛みが引いたらまたおかわりしてあげるから」

「ねぇ、他の客起きてくるんじゃない?猿轡さるぐつわした方がいいかも」

「うう゛っ!!……どうしてっ……私だけ!?あっぐぅっっ!!」

 確かに煩いし猿轡は必要かもしれない。
 とりあえず巻いとくか。

「貴女だけ拷問したんじゃ可哀想だしね。貴女にしたのと同じだけ他の娘にもやってあげる。話さないと話さない分だけ回数は増えるからよ~く考えてね」

 ペインは一瞬の痛みじゃないから辛いだろう。
 ルチアがペインの発動を止めるか持続時間が過ぎるまで激痛が続くのだ。
 痛みの激しさに涙と涎を垂らしながら苦しむ女を見て、なかなか恐ろしいスキルだなと自分でも思うルチア。
 以前はモンスター相手にしか使用したことがなかったのだが、こうして人間相手に使用するとよくわかる。
 拷問向きのスキルだなと。

 さて、イルダが痛みに喘いでいる間に男の方にも聞いてみるか。

「貴方達同じメンバーでのパーティー活動は禁止されたんじゃなかったの?」

 男達の正体は以前ギルドで揉めたことのあるアルヘナの四人だった。
 ルチアとロザリアの手によってパーティーを解散させたのと同時に、アルヘナからいいように扱われていたナイラとトスカを脱退させている。
 あの時殺してやろうかと思っていただけに、二度目の揉めごととなれば容赦しなくてもいいだろう。

「ああ、表向きはな」

「どういうこと?」

「答えてやる義理はねえ」

 拷問確定。
 気が済むまで拷問してから質問してみよう。
 イルダと同じく猿轡を巻いたら出力七割からのボーナススタートだ。
 アルヘナ全員を叩き起こしてからペイン拷問を回していこう。
 アルヘナとイルダの地獄が始まった。



 夜が明けてしまったがルチアの拷問はまだ続いていた。
 ルチアは自分のスキルを知るいい機会だと、出力を変えながらいろいろと試している。
 以前の出力全開のペインでは激痛の中に意識を飛ばすことがあったらしく、出力を抑えた方が痛みを強く感じることがわかった。
 痛みの最高潮は出力七割から八割で、それ以上となると意識が飛んだり戻ったりを繰り返しているため痛みとしては少し和らぐのではないだろうか。
 モンスター相手には出力全開で放っているが、対象の大きさによって効果が変動するため非常にわかりにくかった。
 ただ痛いんだろうなと思うだけ。
 出力五割でも相当な痛みが走るようだが、四割、三割と出力を下げていくと持続時間が伸びて強く重い痛みが続くようだ。
 例えれば出力が高いとザクザクと突き刺さる痛みが繰り返され、出力を下げると刺された刃物が押し込まれているような痛みといった感じか。
 そして面白いことに出力を最大まで下げた場合が……笑い出すのだ。
 全身をくすぐられているような感じなのかわからないが、身悶えるようにして笑っている。
 猿轡をして声も出せず、顔を真っ赤にして身悶える様はなかなかに異様だ。
 でも痛みにはない苦しみがあるようなので拷問レパートリーに加えよう。
 失禁されても困るので途中で止めておく。

 さて、最低出力の次は感覚から一割くらいの出力で試してみようか。
 意外にも低出力でのペインは出力調整が難しく、どの辺が一割くらいか判断がつかなかったので最低出力から始めてみた。
 もっと慣れればしっかりとした出力調整ができるようになると思うが、今は何となくこれくらいといった感覚でやっている。

 ルチアが出力調整に意識を向けていたところでロザリアが立ち上がり、最低出力ペイン後のぐったりとしたイルダに下級回復薬を飲ませてやる。
 そして切られた足の腱には上級回復薬を回し掛け、歩けない傷すらも癒してやった。

「なあルチア。さすがに女相手にやり過ぎじゃないのか?殺すつもりはなかったって言ってるんだしもう解放してやったらどうなんだよ」

 猿轡も外してやり、ルチアを前に女を庇おうとするロザリア。

「じゃあ聞いてみる?自分達がしたことがどんな危険なことか、私達を敵に回したらどうなるかってこと。身に染みてわかったのなら答えてくれるよね?」

 ルチアとしては徹夜したあとで少しハイになっているためか、拷問の続きをまだしてもいいと思っている。
 可哀想だなとも感じていたはずなのに、今は結構楽しくなってきていたりもする。
 もしかするとルチアも真性のサディストなのかもしれない。

「なぁお嬢さん。もし答えてあんたの身に何かあるっていうならあたしが守ってやる。答えらんないなら何かヒントくれ」

「ロザリア甘いんじゃないの?答えろって私は言ってるの」

「うるせーな。放っとけるかよ」

 ルチアとロザリアの視線に火花が散る。

「お、お姉様……ごめんなさい……本当に答えることができないのです……」

 お姉様?
 しかしロザリアと目を合わせつつチラチラと襲撃者の一人に視線を向ける。
 それに気付いたロザリアが顎をしゃくってルチアに知らせる。
 これにルチアもなるほどと思わないわけがない。
 どうやら聞く相手を間違っていたようだ。

「そろそろ起きてるだろうけど……触るのは危ないからロザリアも気を付けて」

「ああ?何に気を付けるんだ?」

「洗脳とか支配系のスキル持ちだと思う。触れると脱力感があって脳に直接命令がくる感じ」

「怖えな。マジかよ」

 ロザリアの言葉にイルダは深い瞬きで肯定を伝えようとする。
 何か察してもらいたいという意思を示しているのだろう。
 正解かはわからないがロザリアもルチアに頷いて見せる。

「まあ強力な能力だけど発動自体は私より遅いみたいだから何とでもなるけどね」

 ルチアは洗脳、支配女に近付いて顔を覗き込むと、目を見開いた女は縛られていた縄を抜けてルチアに触れようと腕を伸ばす。
 しかし冒険者であるルチアの速度は一般人には比べるまでもなく、その手を掴んでペインを発動。
 激痛が全身を駆け巡るり地面に蹲りながら呻き声をあげている。
 おそらくは追っかけ娘レッドベリルのリーダーがこの女ではなかろうか。
 洗脳か支配のスキルを使ってメンバーを操り、思うように他の者を動かしていたとすればこの襲撃の犯人はこの女一人ということになる。
 だが他の者にも意識があることを考えればこれに当てはまらない。
 んん、難しい。
 まあこの女がすべてを握る鍵にはなりそうなのでこのまま拷問すればいいだろう。
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