150 / 257
150 赤竜戦
しおりを挟む
赤竜の前に魔鉄槍バーンを構えて立つアリス。
膝をつくジェラルドを踏み付けながら回復スキルを発動したレナータは、魔弓ルナヌオーヴァを番えてこの命懸けの戦いに臨む。
チェザリオも「やってやるよ」と覚悟を決めて双剣を握りしめ、赤竜の左後方へと回り込んでいるソーニャも両手にダガーを握って動き出すのを待つ。
アウジリオはさすがと言うべきか、ブレスを多少浴びつつも装備から煙をあげながら立ち上がって盾と剣を構え直す。
そしてもう一人……
「悪りぃ。遅くなったな」
巨剣を肩に担いだマリオも合流し、ここでようやく赤竜討伐にオリオン全員が揃った。
「随分と疲れてそうだがジェラルド、いけるかよ」
「もっとしっかり踏んでほしい」
大丈夫そうだ。
そんな余裕を見せていたところへ赤竜の左前脚が振り向けられ、アウジリオがそれを受け流すのに合わせてアリスの炎槍が腕を焼き付ける。
まだ火炎球から魔力を溜めきれていない事から出力は低かった。
それでも威力が落ちた事でアウジリオでもその一撃を受け流し、これを好機に全力で駆け出したマリオがジェラルドの肩を踏み台にして跳躍。
望み通り踏んでやったようだがジェラルドとしては男に踏まれても嬉しくはない。
マリオは赤竜の顔目掛けてストリームスラッシュを発動。
斬撃が七連まで振り続けられ、鼻先から多くの傷痕を残しながら左目まで斬り裂いた。
赤竜も予想だにしない攻撃に後方へと倒れ込み、地面へと降りたマリオは「どうだ」と言わんばかりに嬉しそうに振り返る。
最大斬撃数を二回も増やしている事から、ソロでのモンスター群討伐戦で何か掴んだようだ。
「クレリック隊は怪我人頼むな。動ける奴は使わせてもらう。赤竜倒そうぜ」
マリオはそう言い残すと倒れ込んだ赤竜へと近付いていき、回復の終えていないはずのジェラルドも立ち上がるとオリオンは前に進み出す。
アウジリオとチェザリオが続き、血を流しつつもアタッカー隊の四人も後を追う。
片目を失った赤竜は追撃がくるであろう事を予想したのか、尻尾を叩きつけながら、そして前脚を振り回しながら起き上がり、同時にブレスを吐き出そうと顔を後方に引き上げる。
しかし姿を消したまま接近していたフィオレからのインパクトが顎下へと射ち込まれ、頭を仰け反らせて後方に倒れ込んだ赤竜。
マリオ達も駆け込んで、暴れ回る前に届く範囲の腹部や脚の付け根へと斬撃を繰り出す。
そして隠れ潜んでいたアーチャー隊もクレリック隊のもとへと駆け付けており、そこから複数の矢が降り注ぐ。
そして赤竜の背後からエアレイドで急接近したソーニャは、背中にある鱗へと掴まって急所である翼の付け根を目指して向かっていく。
しかし倒れ込んだ事で翼が邪魔で目的の場所まで到達できず、気付いていないようであればこのまま様子を見ようと待機する。
赤竜は斬撃と矢を受けつつもそこはさすが色相竜に成りかけの個体であり、体力も魔法スキルもそれ程大きくは消耗はしていない。
フィオレのインパクトやジェラルドの拳は体の芯まで通る攻撃ではあるものの、斬撃による表面的なダメージであれば痛みがある以外に体力がそれ程失われるわけではない。
上位の個体である程傷の治りが早く、浅い傷であればすでに塞がりそうな程に回復している。
深く斬り込まれた左目でさえ時間を掛ければ治す事ができ、痛みはあるとしても完全に見えないわけではないだろう。
腹部に斬り込んだ人間達を払い除けようと前後の脚を振り回して立ち上がった赤竜は、フィオレのインパクトが連続して射ち込まれる事はないと判断したのか翼を広げて空へと舞い上がる。
上空からブレスを吐き出そうと考えているのだろう、旋回しながら口内に膨大な魔力を溜め込んだ。
討伐隊を眼下に収め、狙いを定めて炎のブレスを吐き出そうとしたところ、背中に隠れ潜んでいたソーニャが力いっぱい急所へとダガーを突き刺した。
突然の激痛に悲鳴をあげた赤竜は地面に向かって落下していき、ここで一度退避すべきかとも考えたソーニャは落下の衝撃に合わせて傷を深くしようと予備のダガーも突き刺して全体重を乗せる。
地面へと衝突するとさらに深く、ソーニャの腕まで潜り込む程に突き刺さったダガーを後ろに倒れるようにして引き抜き、絶叫する赤竜の翼に挟まれないようその場から退避。
やはり消耗させるには急所への一撃が有効であり、傷の回復が早い部分ではあるものの、攻撃力の低いシーフが狙うとするならここだろう。
次の機会を狙って待機する。
地面へと落下した赤竜に駆け寄る討伐隊。
回復を終えた盾隊とアタッカー隊の四人が戦線復帰を済ませ、一度は絶望的な状況となったものの少しずつ持ち直してきた。
マリオの指示のもとジェラルドが前に出る事で赤竜の行動を抑制し、前脚による叩き付けを盾隊が受け流し、その威力を引き下げようとアタッカー隊がその脚に攻撃を加える。
隙を見てはレナータが視界を遮り、マリオとチェザリオが顔や首へと斬りかかる。
そして炎槍を危険と見ている赤竜は、アリスを近寄らせまいと警戒を強めている為踏み込めず、フィオレのインパクトはブレスと飛行を阻止する為に使うのだろうとその素振りを見せない。
クリティカルにより急所を狙えるとしても、へたにインパクトを射ち込めば空へと逃げられる可能性がある為フィオレも動けないのだ。
背後への警戒はソーニャ一人へと向けられており、隙があると判断した他のシーフ隊が背後から接近して尻尾の中腹へとダガーを突き刺すも、全身を真横に一回転させた赤竜により、シーフだけでなく討伐隊も一緒に払い除けられてしまう。
どうやら薙ぎ払われたシーフがジェラルドの盾にぶつかってしまった為、そのまま受け止める事ができなかったようだ。
しかし尻尾での牽制が無くなったソーニャはここで一気に駆け込み、エアレイドでの跳躍により赤竜の尾の付け根へと着地。
鱗に捕まりながら再び急所を目指して登り進む。
赤竜の前では討伐隊が倒れており、右前脚が引き上げられる絶体絶命の危機。
しかしこの回転攻撃を好機と見たアリスは跳躍しながら風の防壁で尻尾の上を転がるように回避しており、右前脚の付け根へと最大威力の炎槍を突き刺した。
咄嗟の出来事にも関わらず、赤竜は胸部に炎の魔力を集めた為致命傷とはならなかったものの、右前脚の動きを阻害する程の深い傷痕を残した。
フィオレも討伐隊の態勢を立て直す必要があると考え、顎の付け根部分へとインパクトを射ち込む。
首が左方向を向き、右前脚を上げていた事で地面へと倒れ込んだ赤竜。
この間に討伐隊は態勢を立て直し、倒れた赤竜に向かって再び剣を振りかざす。
赤竜戦は下位竜戦や上位竜戦とは比べられない程に熾烈を極め、無限とも感じられるその体力に討伐隊から一人、また一人と力尽きて倒れていく。
盾隊四人とアタッカー隊三人、スキルを使い果たしたクレリック隊も二人が倒れ、昼に始まった戦いもすでに陽は傾き、およそ四の時もの長い時間を戦い続けた討伐隊の体力も限界に近い。
それでもここまでの戦いにより赤竜の体にも多くの傷が残されており、シーフ隊の活躍によって翼が斬り裂かれて空を飛ぶ事ができなくなっている。
また、右前脚もまともに動かず、集中的に斬り付けられた左の首筋の傷が深く、右側を向く事ができない。
体力は多く残しているとしても相当なダメージを受けており、討伐隊を一掃しようとしてもなかなかできずにいるようだ。
「よぉし。あとちょっとだな」
「はぁ、はぁ……こっちの人数もね」
すでに盾隊が四人とアタッカー隊が五人、アリスとチェザリオもアタッカーとして加わっているが、残る直接戦闘をするメンバーは三分の二を下回っている。
何よりもジェラルドとアウジリオの消耗が激しく、いつ倒れてもおかしくないような状況だ。
もし守りの要となっている二人が倒れるような事があれば、他の盾隊では攻撃を抑え切る事は不可能だろう。
クレリック隊から前線にあがったレナータが二人の同時回復を施している。
シーフ隊も飛行阻害の為に奮闘していた為体力も限界に近く、回復薬も使い果たしてまともに動けそうにない。
ソーニャも急所に三度の攻撃を加えたが、回避が遅れたところに強烈な一撃を浴びて地に伏した。
倒れた位置が討伐隊側の離れた位置だった事から、アーチャー隊の一人が上級回復薬を飲ませて目を覚ましたものの、全身に残る痛みにすぐには動けずにいた。
復帰するまでにはもう少し時間がかかるだろう。
フィオレはシーフ隊が翼を斬り裂いてくれたおかげでブレスを抑える事だけに集中でき、位置も遠くない事から完璧に急所を捉えて消耗させている。
これが討伐隊での連携でなければ待機時間を終える度にインパクトを射ち込むのだが、ブレスを防がなければ隊が壊滅してしまう為多くは攻撃できない。
アリスは討伐隊の最高火力ではあるものの、赤竜が最も警戒を強めている為攻め切れずにいる。
チェザリオは赤竜にも有効と考えられる水属性魔法を使用するものの、前脚から放出される炎の相殺に使用する為魔法攻撃ができないようだ。
こんなギリギリの状態にあるのにも関わらず、これまで死者が一人も出ていないのはマリオの指示の賜物だろう。
倒れる者も少なくないが、赤竜の動きに対して盾隊とアタッカー隊への指示が的確であり、回転攻撃以降は一度も戦線が崩されてはいないのだ。
アリスはマリオに好きに動けと言ったものの、隊を好きに使えとは言っていないのだが……上手く機能している為文句は言えない。
ただしマリオが指示出しに集中する事で攻撃が消極的になり、攻め手に欠けているのもまた事実。
マリオがあとちょっとと言うのであれば、そろそろ攻勢に回ろうと考えているのだろう。
「アウジリオのおっさんや盾職には悪いけど使い潰させてもらうぜ。文句があるなら後で頼む」
「これだけやれてんなら文句はねーよ。絶対に勝つからな」
「とりあえず盾が必要ねーなって状況まで消耗させるからよ」
「本気で使い潰すつもりかよ……まあ好きにやりな」
レナータのスキルによってある程度体力を回復したアウジリオは剣と盾を握りしめて前へと進み、同じくジェラルドもしっかりとした足取りで赤竜へと向かう。
続く盾隊二人も支給された上級回復薬を飲み干し、マリオ率いるアタッカー隊も前に出る。
膝をつくジェラルドを踏み付けながら回復スキルを発動したレナータは、魔弓ルナヌオーヴァを番えてこの命懸けの戦いに臨む。
チェザリオも「やってやるよ」と覚悟を決めて双剣を握りしめ、赤竜の左後方へと回り込んでいるソーニャも両手にダガーを握って動き出すのを待つ。
アウジリオはさすがと言うべきか、ブレスを多少浴びつつも装備から煙をあげながら立ち上がって盾と剣を構え直す。
そしてもう一人……
「悪りぃ。遅くなったな」
巨剣を肩に担いだマリオも合流し、ここでようやく赤竜討伐にオリオン全員が揃った。
「随分と疲れてそうだがジェラルド、いけるかよ」
「もっとしっかり踏んでほしい」
大丈夫そうだ。
そんな余裕を見せていたところへ赤竜の左前脚が振り向けられ、アウジリオがそれを受け流すのに合わせてアリスの炎槍が腕を焼き付ける。
まだ火炎球から魔力を溜めきれていない事から出力は低かった。
それでも威力が落ちた事でアウジリオでもその一撃を受け流し、これを好機に全力で駆け出したマリオがジェラルドの肩を踏み台にして跳躍。
望み通り踏んでやったようだがジェラルドとしては男に踏まれても嬉しくはない。
マリオは赤竜の顔目掛けてストリームスラッシュを発動。
斬撃が七連まで振り続けられ、鼻先から多くの傷痕を残しながら左目まで斬り裂いた。
赤竜も予想だにしない攻撃に後方へと倒れ込み、地面へと降りたマリオは「どうだ」と言わんばかりに嬉しそうに振り返る。
最大斬撃数を二回も増やしている事から、ソロでのモンスター群討伐戦で何か掴んだようだ。
「クレリック隊は怪我人頼むな。動ける奴は使わせてもらう。赤竜倒そうぜ」
マリオはそう言い残すと倒れ込んだ赤竜へと近付いていき、回復の終えていないはずのジェラルドも立ち上がるとオリオンは前に進み出す。
アウジリオとチェザリオが続き、血を流しつつもアタッカー隊の四人も後を追う。
片目を失った赤竜は追撃がくるであろう事を予想したのか、尻尾を叩きつけながら、そして前脚を振り回しながら起き上がり、同時にブレスを吐き出そうと顔を後方に引き上げる。
しかし姿を消したまま接近していたフィオレからのインパクトが顎下へと射ち込まれ、頭を仰け反らせて後方に倒れ込んだ赤竜。
マリオ達も駆け込んで、暴れ回る前に届く範囲の腹部や脚の付け根へと斬撃を繰り出す。
そして隠れ潜んでいたアーチャー隊もクレリック隊のもとへと駆け付けており、そこから複数の矢が降り注ぐ。
そして赤竜の背後からエアレイドで急接近したソーニャは、背中にある鱗へと掴まって急所である翼の付け根を目指して向かっていく。
しかし倒れ込んだ事で翼が邪魔で目的の場所まで到達できず、気付いていないようであればこのまま様子を見ようと待機する。
赤竜は斬撃と矢を受けつつもそこはさすが色相竜に成りかけの個体であり、体力も魔法スキルもそれ程大きくは消耗はしていない。
フィオレのインパクトやジェラルドの拳は体の芯まで通る攻撃ではあるものの、斬撃による表面的なダメージであれば痛みがある以外に体力がそれ程失われるわけではない。
上位の個体である程傷の治りが早く、浅い傷であればすでに塞がりそうな程に回復している。
深く斬り込まれた左目でさえ時間を掛ければ治す事ができ、痛みはあるとしても完全に見えないわけではないだろう。
腹部に斬り込んだ人間達を払い除けようと前後の脚を振り回して立ち上がった赤竜は、フィオレのインパクトが連続して射ち込まれる事はないと判断したのか翼を広げて空へと舞い上がる。
上空からブレスを吐き出そうと考えているのだろう、旋回しながら口内に膨大な魔力を溜め込んだ。
討伐隊を眼下に収め、狙いを定めて炎のブレスを吐き出そうとしたところ、背中に隠れ潜んでいたソーニャが力いっぱい急所へとダガーを突き刺した。
突然の激痛に悲鳴をあげた赤竜は地面に向かって落下していき、ここで一度退避すべきかとも考えたソーニャは落下の衝撃に合わせて傷を深くしようと予備のダガーも突き刺して全体重を乗せる。
地面へと衝突するとさらに深く、ソーニャの腕まで潜り込む程に突き刺さったダガーを後ろに倒れるようにして引き抜き、絶叫する赤竜の翼に挟まれないようその場から退避。
やはり消耗させるには急所への一撃が有効であり、傷の回復が早い部分ではあるものの、攻撃力の低いシーフが狙うとするならここだろう。
次の機会を狙って待機する。
地面へと落下した赤竜に駆け寄る討伐隊。
回復を終えた盾隊とアタッカー隊の四人が戦線復帰を済ませ、一度は絶望的な状況となったものの少しずつ持ち直してきた。
マリオの指示のもとジェラルドが前に出る事で赤竜の行動を抑制し、前脚による叩き付けを盾隊が受け流し、その威力を引き下げようとアタッカー隊がその脚に攻撃を加える。
隙を見てはレナータが視界を遮り、マリオとチェザリオが顔や首へと斬りかかる。
そして炎槍を危険と見ている赤竜は、アリスを近寄らせまいと警戒を強めている為踏み込めず、フィオレのインパクトはブレスと飛行を阻止する為に使うのだろうとその素振りを見せない。
クリティカルにより急所を狙えるとしても、へたにインパクトを射ち込めば空へと逃げられる可能性がある為フィオレも動けないのだ。
背後への警戒はソーニャ一人へと向けられており、隙があると判断した他のシーフ隊が背後から接近して尻尾の中腹へとダガーを突き刺すも、全身を真横に一回転させた赤竜により、シーフだけでなく討伐隊も一緒に払い除けられてしまう。
どうやら薙ぎ払われたシーフがジェラルドの盾にぶつかってしまった為、そのまま受け止める事ができなかったようだ。
しかし尻尾での牽制が無くなったソーニャはここで一気に駆け込み、エアレイドでの跳躍により赤竜の尾の付け根へと着地。
鱗に捕まりながら再び急所を目指して登り進む。
赤竜の前では討伐隊が倒れており、右前脚が引き上げられる絶体絶命の危機。
しかしこの回転攻撃を好機と見たアリスは跳躍しながら風の防壁で尻尾の上を転がるように回避しており、右前脚の付け根へと最大威力の炎槍を突き刺した。
咄嗟の出来事にも関わらず、赤竜は胸部に炎の魔力を集めた為致命傷とはならなかったものの、右前脚の動きを阻害する程の深い傷痕を残した。
フィオレも討伐隊の態勢を立て直す必要があると考え、顎の付け根部分へとインパクトを射ち込む。
首が左方向を向き、右前脚を上げていた事で地面へと倒れ込んだ赤竜。
この間に討伐隊は態勢を立て直し、倒れた赤竜に向かって再び剣を振りかざす。
赤竜戦は下位竜戦や上位竜戦とは比べられない程に熾烈を極め、無限とも感じられるその体力に討伐隊から一人、また一人と力尽きて倒れていく。
盾隊四人とアタッカー隊三人、スキルを使い果たしたクレリック隊も二人が倒れ、昼に始まった戦いもすでに陽は傾き、およそ四の時もの長い時間を戦い続けた討伐隊の体力も限界に近い。
それでもここまでの戦いにより赤竜の体にも多くの傷が残されており、シーフ隊の活躍によって翼が斬り裂かれて空を飛ぶ事ができなくなっている。
また、右前脚もまともに動かず、集中的に斬り付けられた左の首筋の傷が深く、右側を向く事ができない。
体力は多く残しているとしても相当なダメージを受けており、討伐隊を一掃しようとしてもなかなかできずにいるようだ。
「よぉし。あとちょっとだな」
「はぁ、はぁ……こっちの人数もね」
すでに盾隊が四人とアタッカー隊が五人、アリスとチェザリオもアタッカーとして加わっているが、残る直接戦闘をするメンバーは三分の二を下回っている。
何よりもジェラルドとアウジリオの消耗が激しく、いつ倒れてもおかしくないような状況だ。
もし守りの要となっている二人が倒れるような事があれば、他の盾隊では攻撃を抑え切る事は不可能だろう。
クレリック隊から前線にあがったレナータが二人の同時回復を施している。
シーフ隊も飛行阻害の為に奮闘していた為体力も限界に近く、回復薬も使い果たしてまともに動けそうにない。
ソーニャも急所に三度の攻撃を加えたが、回避が遅れたところに強烈な一撃を浴びて地に伏した。
倒れた位置が討伐隊側の離れた位置だった事から、アーチャー隊の一人が上級回復薬を飲ませて目を覚ましたものの、全身に残る痛みにすぐには動けずにいた。
復帰するまでにはもう少し時間がかかるだろう。
フィオレはシーフ隊が翼を斬り裂いてくれたおかげでブレスを抑える事だけに集中でき、位置も遠くない事から完璧に急所を捉えて消耗させている。
これが討伐隊での連携でなければ待機時間を終える度にインパクトを射ち込むのだが、ブレスを防がなければ隊が壊滅してしまう為多くは攻撃できない。
アリスは討伐隊の最高火力ではあるものの、赤竜が最も警戒を強めている為攻め切れずにいる。
チェザリオは赤竜にも有効と考えられる水属性魔法を使用するものの、前脚から放出される炎の相殺に使用する為魔法攻撃ができないようだ。
こんなギリギリの状態にあるのにも関わらず、これまで死者が一人も出ていないのはマリオの指示の賜物だろう。
倒れる者も少なくないが、赤竜の動きに対して盾隊とアタッカー隊への指示が的確であり、回転攻撃以降は一度も戦線が崩されてはいないのだ。
アリスはマリオに好きに動けと言ったものの、隊を好きに使えとは言っていないのだが……上手く機能している為文句は言えない。
ただしマリオが指示出しに集中する事で攻撃が消極的になり、攻め手に欠けているのもまた事実。
マリオがあとちょっとと言うのであれば、そろそろ攻勢に回ろうと考えているのだろう。
「アウジリオのおっさんや盾職には悪いけど使い潰させてもらうぜ。文句があるなら後で頼む」
「これだけやれてんなら文句はねーよ。絶対に勝つからな」
「とりあえず盾が必要ねーなって状況まで消耗させるからよ」
「本気で使い潰すつもりかよ……まあ好きにやりな」
レナータのスキルによってある程度体力を回復したアウジリオは剣と盾を握りしめて前へと進み、同じくジェラルドもしっかりとした足取りで赤竜へと向かう。
続く盾隊二人も支給された上級回復薬を飲み干し、マリオ率いるアタッカー隊も前に出る。
10
お気に入りに追加
1,777
あなたにおすすめの小説
『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~
川嶋マサヒロ
ファンタジー
ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。
かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。
それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。
現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。
引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。
あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。
そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。
イラストは
ジュエルセイバーFREE 様です。
URL:http://www.jewel-s.jp/
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる