追放シーフの成り上がり

白銀六花

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145 魔鋼製武器完成

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 ルーヴェべデルから派遣されて来ていたシストをブレイブに加入させる事を決めた後、魔鋼製武器を手掛けた職人達との打ち上げを予定していた為ファイスへと向かう。
 一緒にシストの歓迎もしたいところだが、仲間達への挨拶もあるだろうとお金を渡して飲みに行って来いと言っておいた。

 ファイスへと辿り着くと七人もの職人が集まっており、待合室のソファへと促されてファブリツィオを待つ。
 そして作業場から布に包まれた武器を持って来たファブリツィオは、テーブルの上に置いて職人達を代表して挨拶をする。

「まずぁ今回、魔鋼武器を依頼してくれた事に俺らぁ職人一同感謝する。普通ぁ素材も手に入るもんじゃねぇからよぉ、苦労も多かったが魔鋼の加工ができたとありゃぁこぉんな名誉な事ぁねぇや」

「ファブ爺さんもこんなに痩せるまで頑張ってくれたんだ。オレの方こそ感謝してる。この仕事に携わってくれたみんなもありがとう」

 ディーノが頭を下げて礼を言うと、職人達からは嬉しそうに早く見せようと急かされる。

「うえっへっへっへっ。まあ待てやぁ。先にこいつの名前ぁ【ライトニング】っつーんだ。ディーノぁ望んでねぇかもしれねぇが属性剣にしちまったからよぉ。気に入らねぇなら魔核外して宝石でも埋め込んでやるがぁ、ウィザードシーフセイバーなんてとんでもねぇ奴が使うもんだ。属性剣のがいいかと思ってよぉ。ほれ、見てくれや」

 ファブリツィオに促されて布を捲るディーノ。
 そこにあったのはユニオンを白色にしたような剣であり、デザインとしてはほぼ同じコピー品のようにも見える。
 鞘から音一つなく抜き放つと、現れた剣身は白地に金の装飾が施され、やはりデザインも装飾が違う以外はやはりコピー品のように見えるのだが……

「これは凄いな。ユニオンよりもさらに洗練されてる」

「おお、わかるかよ。測る事ぁできねぇがユニオンよりぁ硬えと思うぜ。切れ味も俺らが出せる限界のもんだぁ。色ぁユニオンもライトニングも着色でしかねぇがよぉ、その色一つとってもえらい苦労したんだがなぁ」

 歴史にも残る程有名な鍛治師ウォルターの作品であったとしても、ユニオンは今よりも様々な部分で技術の低い時代の剣であり、現代の技術と知識を総動員した職人達の努力の甲斐あってそれを上回る剣が完成したようだ。
 初の魔鋼製武器の製造であったのにも関わらず、自分達でデザインするのではなくユニオンに合わせてきたのは、ディーノが双剣として使うという事で違う物を作るわけにはいかなかったからだろう。

「色は……オレに合わなそうだけどまあいいや。装備のどこかに白入れればバランスも取れるだろうし」

 剣を抜いた状態であれば鞘と剣とで白のバランスも取れそうではあるが、暗殺者のような真っ黒な装いのディーノであればやはり白は浮いてしまうかもしれない。

「んでよ、属性ぁお前さんが持ってきた魔核を埋め込んで雷属性になってるからよぉ、使えるようなら使ってくれや。要らねぇようなら今度外すからよ」

「いや、雷属性もかなり良さそうだったしな。有難く使わせてもらうよ」

 聖銀のエンベルトの戦いを見たディーノとしても、雷属性の使い方は速度特化の自分向きであり、風属性と使い分ける事で様々な戦いができそうではある。
 風属性での爆破の場合は自分自身も弾かれてしまう事から追撃に出る事ができない。
 しかし雷属性での雷撃であれば敵に麻痺を残しつつ、その場から離れる事もない為追撃が可能であり戦いの幅が広がる。
 また、エンベルトは魔法スキルのみでギフト発動時のディーノよりも動きが速く、何かしらの速度を上昇させる方法があるのだろう。
 これまでの爆破加速に加えて今後いろいろと研究してみる必要がありそうだ。

「ディーノ。いや、冒険者ディーノ=エイシス。こいつをお前さんと共に歴史に名を残してやってくれや。頼むぜぇ」

「属性剣ライトニング。確かに受け取った。最強剣の造り手としてファブ爺さんの名前も歴史に残ると思うけどな」

「ガハハッ!最強剣かぁ、そいつぁ最高じゃねぇかぁ!」

 笑うファブリツィオと嬉しそうに拍手する職人の仲間達。
 自身の作品ではないとしても魔鋼に触れられる事自体が奇跡に近い出来事であり、魔鋼製武器を手掛けられただけでも職人としては名誉のある事なのだろう。
 また、完成に至るまでの経験や知識は自分達の技術へと繋がり、これから生み出していく作品にも大きな影響を与えていく事にもなるのだ。

「支払いは言い値を払うつもりだ。手持ちで足りなかったら明日また持ってくる」

「おう、それなんだが、素材ぁお前さんが用意したもんだからよぉ。苦労ぁしたが俺らの一世一代の大仕事だからよぉ。ディーノの言い値で払ってもらおうってぇ俺達ぁ決めてたんだ。いくら払ってくれるよ」

「いいのか?んじゃこれ受け取ってくれ。白金貨三十枚ある」

「ブファッハッハッハッ!あ~、やっぱりディーノぁそーくるかぁ。ユニオンより高えじゃねぇかぁよッハッハァ……だがよぉ、その布の裏ぁ見てくれや」

 もともとディーノの言い値で仕事をする事も、ディーノがとんでもない金額を支払うつもりでいる事も読んでいたファブリツィオは、最初からこの支払いに仕込みを入れていたようだ。
 チラリと布を捲ってみるとメモがあり、そこには(代金はディーノの言い値の半額)と書かれていた。

「半額?」

「おうよ。だが、白金貨三十枚も払うたぁ思ってもみなかったがよぉ、ガハハッ」

 以前ファブリツィオはユニオンが白金貨二十八枚でも納得の金額とは言っていたが、素材の金額を差し引いて加工費だけを考えればもっと安くなるはずだ。
 しかし魔鋼は市場に出回る素材ではない為金額をつける事ができず、ユニオンを溶かして素材にする事もできるが、それでは素材だけでも白金貨二十八枚となってしまう。
 ディーノはこれを全く逆に魔鋼素材の金額を0としてとらえ、加工費と属性の魔核だけで二十八枚と考える事で、今回の加工費を三十枚と提示した。
 実際にユニオンを振るい続けているディーノからすれば、白金貨二十八枚どころか倍以上もの金額を支払っても損はないと思える武器であり、今の自分があるのはユニオンあってこそと感じている。
 そのユニオンと同等かそれ以上の武器を造ってもらえるとするならば、素材を用意したとしてもユニオンより多くの金額を支払うとしても躊躇いはない。
 そしてファブリツィオとしてもこの仕事には儲けどころか自分が大金を叩いてでも携わりたかったとさえ思っており、ディーノからの支払いは少なくても構わなかったのだ。
 白金貨十五枚となれば全員に二枚ずつ渡しても一枚は受け取れる。
 さらにはお土産として他の魔核やティアマトの牙までもらっており、ファブリツィオには全く損はなかったくらいだ。

 だが言い値は言い値であり、お互いに納得したうえで白金貨十五枚の支払いを済ませた。

「じゃ、カルヴァドスで宴会でもしますか!」

「よーし打ち上げだあ!」

 職人達と一緒にこの日はベロベロになるまで酒を呑み交わすのだった。
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